ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

クマが出没するわけ

2010-11-22 19:38:14 | 獣害問題
 クマとドングリの生態について説明したところで、クマはどうして人里に出没するのか?という点について論じていきます。クマの出没原因には大きく分けて2つあります。
1. 山の餌が足りない
このように書くと、簡単そうに見えますが、実態を把握することが大変難しい原因です。よく熊森は(奥山の)ドングリがなくなったからだ、広葉樹が減ったからだと言いますが、クマは食性が広く、行動圏もまた広い動物です。仮にドングリが凶作でも、山ブドウやアケビのような液果が豊作ならそちらを食べます。地域ごとに豊凶作もありますから、ある地域で凶作なら、別の地域に移動するということもクマには可能です。
餌がなければ、移動すればいいじゃない。くまだもの。
また、ドングリもすべての種が一斉に凶作になるのではなく、種ごとにパターンがあります。たとえばブナはだいたい5年に一度豊作になり、そのほかの年は凶作ですが、ミズナラの場合は2年に一度豊作になるというように種によって違いがあります。数年連続してドングリがどれも凶作という状況は考えにくいのです。ただし、複数種のドングリの凶作が重なる年は実際に起こります。全国的に多くのクマが出没した2004年や2006年では複数種のドングリが凶作ないし大凶作でした。

2. 人里近くに餌が豊富と気付いた
そもそも、野生の植物より人が育てた作物、果実のほうが栄養価が高く、美味しく、密集して存在します。2でクマはドングリをかみ砕いて消化すると述べましたが、それはドングリからすれば自分の子孫が育ちません。その対策としてドングリ類は一般にタンニンという物質が多く、苦いです。話がそれますが、お茶の渋みもタンニンによるものです。クマにしても、タンニンが消化を阻害するので、ミズナラの場合、炭水化物の消化率は64.2%、粗タンパクが17.3%という研究報告があります。このように消化阻害物質が多いということは、人間にとっても不味く、栄養になりにくいことを意味します。そのため人間が栽培している農作物はそういう植物側のガードを品種改良で意図的に崩しています。ということは、クマも山で美味くもない(と彼らが思っているかはわかりませんが)ドングリを食べるより人里でトウモロコシやリンゴを食べたほうが消化吸収もいいし冬眠のためのエネルギーを効率よく得られます。人里に行けば、廃棄された作物や人間の食べ残しがたくさんあります。こういったものがクマに限らず野生動物を人里に誘因させる原因となっているのです。
人里に来る頻度が多くなれば、それだけ人と接触する機会も増え、お互いにとって不幸な事故にもつながってしまうのです。


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2 コメント

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細かいことですが・・・ (ホルモン)
2010-11-24 15:54:19
クマはどうして人里に出没するのか?というよりは、どうしてクマの出没が増えるのか?とするのが正しいのではないでしょうか?

山の餌が十分な年でも出没数は0にはならないし、2はそもそも1度出没してからの話です。

ニュアンスの問題だと思いますが、出没するかどうか、ということと出没が増えるかどうか、では意味が異なると思います。
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ホルモンさん (梨(管理人))
2010-11-24 21:23:50
ちょっとそこら辺は補足記事の方でがんばってみます。
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