ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

クマによる被害

2010-11-25 18:35:36 | 獣害問題
 昨日の記事については、拙速に書いたもので、後から見直すとわかりにくいところが多かったので、熊森批判の中でしっかりと言及したいと思います。
今回は人里に出たクマ、人と出会ってしまったクマによってどういう被害が引き起こされるかということです。
それでは、クマが人間に与える被害としてどのようなものがあるのでしょうか?
農作物や家畜への被害
リンゴやスイートコーン、家畜などが狙われます。先月末には福島県でチャボの入った鳥小屋が襲われ、50羽いたチャボは数羽を除いてすべて殺されました。

林業への被害
 クマによって木の皮を剥がれるという被害がよく報告されます。カラマツや杉など針葉樹が多いようです。詳しい理由はまだ解明されていませんが、樹皮の下の層に含まれる糖類が目的なのではという仮説があります。

水産業への被害
 養殖場のニジマスなどが狙われます。魚の餌もまた狙われることがあります。魚の餌には魚粉などのタンパク質が使われていますしね。けっこう、専用の魚の餌っていいにおいします。

養蜂への被害
はちみつなどを目当てに巣箱に執着することがあり、これが引き金で事故にあったケースもあります。

これらをある程度まとめた被害額は平成20年度の「全国の野生鳥獣類による農作物被害状況について」を見ると、一番被害額が大きいのはシカで58億1600万円です。その次がイノシシで53億7600万円、サルが15億4200万円、クマで3億6300万円です。クマは被害額だけで見れば少ない部類です。そもそもイノシシやシカほどは個体数がいないというのもありますが。ただし、クマは1頭あたりがものすごく食べますから、被害にあった農家1戸あたりで見るとまた違ったものになるでしょう。また、クマの被害額が多いのは、果樹、飼料作物、野菜、工芸作物です。とりわけ、飼料作物と工芸作物に多いようです。
ここ数年の被害額の推移としてはイノシシが獣ではトップでしたが、シカが追い上げて20年度には追い越しています。

人身事故
環境省の22年度の速報を見てみましょう。
H22年度におけるクマ類による人身被害について[速報値]
ここ何年かの人身被害を見ていくと、ヒグマも含めた全国でだいたい約50件~150件といったところです。たいていの年は50件前後に収まっています。注目していただきたいのは北海道で年間600~800件の出没がある斜里町などがありながらも道全体ではここ数年5件以下に収まっています。それだけ、対策に力を入れ、かつ理解ある人がいるということです。
一番気になるであろう死亡件数は平均すると、クマによる死亡者は1年に1人くらいです。
このほかにも、人家に入って食べ物を漁ったという被害などもあります。ここでは代表的なものを紹介しました。
次回は行政のクマ対策についてです。

参考
全国の野生鳥獣類による農作物被害状況について(平成20年度)

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