貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

上松宿:寝覚めの床 9月24日 

2017-01-06 11:09:02 | 日記
上松宿:寝覚めの床

9月24日 8:27~10:45

 臨川寺の境内を抜けると、すぐ中央本線の

線路下を潜ると、切り立った河岸段丘の間を

珍しい奇岩の風景に目が奪われる。

 木曽川の水の色は、雨上がりでも浅黄色で、

岩にぶつかる水の音が絶え間ない轟音も輪唱

の響き・・・。どこを撮っても天画である。

浦島太郎がこの岩の上で寝覚めたというの

が地名の由来である。

私も1時間後横になり寝そべったが、岩の

ひんやり感がすこぶる心地よく、天然のオー

ケストラが奏でる「浦島太郎」の曲を聴いて

いるようであった。

 謡曲『寝覚』には、長寿の薬を三度飲んで

三度若返り千年生きたという翁が登場すると

いう。

川下にある美術館とモニュメントのある

広場の方からご夫婦か父娘連れの方と説明板の

所で擦れ違う。女性の方が、足を洗いに一本立

っている水道の所へ行かれる。

「美術館の方は如何でしたか。」

「特に・・・。」という返事だったので、

寝覚めの床の方へ歩いて行く。

警報音のブザーが耳障り乍ら進むと、「立ち入

り禁止」の札。ここまでかと諦めて戻ると、

二人乗りの関西電力の小型トラックが来て停止

した。お一人は、川の様子を目視し、もうひと

かたが「立ち入り禁止」の札を外して持って来

られる。挨拶を交わし、立ち入ってよいかの確

認をとる。

 瞬時の幸運に感謝!一番乗りである。

 取りあえず寝覚めの床という床の上から風情

を楽しもうと道なき岩場を慎重に突き進む。

滑って転んだら大怪我だ。「最近も救急車で

と・・・。」受付の方の注意もあったので、

より慎重にゆっくり浦島堂を目指す。

 すると、跡を追うように4・50代の男性が

一人忍者の如く岩から岩へ飛ぶように見える。

「今日は幸運です。美術館の方から入ると無料

です。」という話。

 たぶん立ち入り禁止だという判断だったのか

な。「私は臨川寺から入ったら、200円でし

たね。」。

 木曽らしいといえば木曽らしい。

入口によって対応が違う。これまた一興。

その方の跡を追いたいのだが、とてもとても。

数年前だったら…?只淡々と自分のペース…!

何とか浦島堂に辿り着く。

 そこで、20代の若者二人と出会う。

 私ひとり汗びっしょり。一息つき、飴玉を

しゃぶる。素手の若者二人にも「どうぞ」とお

裾分け。「ありがとうございます。」と快活な

応対。

 幸運な寝覚めの床の寸話をし、それぞれの

感性の赴くままに・・・。

 浦島堂は、一枚岩の上に立ち、十数本の赤松

に囲まれ守られている。

 とにかく自然の凄さ、素晴らしさに圧倒。

 水の音が弛まず勢いよく、「ダッダー ダッ

ダー」「サアーサア-」という輪唱。

 雨上がりなので浅黄色の水の地色だが、白波

の線が場所場所によって見事。

 規則的であったり、そうでなかったり・・・。

 頂上の緑の松に囲まれた所で再度寝そべる。

 ひんやりとした感じが、汗ばむ体をしっとり

とほほえむように包んでくれた。

 空は灰白色一色。松の枝には、小さく尖った

松ぼっくりの実がいくつか実っていた。

行きはよいよい、帰りはこわい・・・。

 這うようにして一つ一つの床岩を降り、

その場その場の光景を目に焼き付けておこうと

した。

 臨川寺の和尚が「畑を打つ 土中の虫に詫び

ながら」という箴言をも噛みしめて・・・。

 一切は無常、そして無上に!

芭蕉はこんな光景をさぞ喜んだであろうに、

なぜここで一句も詠まなかったのだろう?

 『更科紀行』では「途中で出会った老僧がいろ

いろ話しかけてくるので気が散って一句もまとめ

ることができなかった』と愚痴をこぼしている

が・・・・。あながち言い訳でもないだろう。

道案内板



線路下を潜って



崖に咲く花



寝覚めの床




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