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ドイツ 経済復活のカギは

2020-06-02 07:00:00 | 報道/ニュース

5月11日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


感染者が約17万人(5月11日時点)に達したドイツ。
3月下旬から4月にかけて1日の感染者数がピークを迎え
その後 感染拡大のスピードが緩やかになっているとして
4月20日に一部の店舗を再開し
5月6日にはさらなる緩和に踏み切った。

5月6日
記者会見に臨んだメルケル首相。
全ての小売店に営業を認めるという大幅な緩和に踏み切った。
(ドイツ メルケル首相)
「パンデミックの最初の段階を過ぎたと
 自信をもって宣言できます。」
人と人との距離を保つ“接触制限”など
感染拡大を防ぐ措置は続けながら
レストランやホテルについても
状況を見ながら営業再開を認めるとしている。
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う制限措置で
大きな打撃を受けてきたドイツ経済。
政府が予測している今年の経済成長率は ー6,3%。
現実となれば
リーマンショックの影響を受けた2009年を超えて
戦後最大の落ち込みとなる。
経済再生のためカギを握るとみられているのが
基幹産業の自動車産業である。
ドイツでは
“7人に1人が自動車と関わる仕事に就いている”と言われている。
(ドイツ経済研究所 ユンカー副部長)
「自動車産業にはゴムの加工など幅広い業種が関わります。
 ドイツ経済にとって非常に重要な意味を持つ産業です。」
自動車メーカーの最大手 フォルクスワーゲン。
これまで止まっていた生産を再開させ
本社工場でも主力の小型車の組み立てを始めている。
作業員は一定の距離を保つなど感染対策を実施。
フル生産の役割で始めた稼働率を
今後 徐々に高めていく方針である。
生産の再開が
販売店や部品メーカー
そして経済全体に対する重要なメッセージになると強調している。
自動車産業などを立て直すうえで支えとなるのが
雇用を維持するための制度である。
クルツアルバイトと呼ばれるこの制度。
仕事がなく従業員の賃金が減れば
その分 最低6割を国が給付する。
不景気になっても企業は高い技術を持つ従業員を解雇せずに済み
景気が回復に向かえば
一気に増産に転じることができる。
メルケル政権は今回この雇用調整制度を拡充。
給付の割合を条件付きで
4か月目からは7割
7か月目からは8割に引き上げる特例を導入した。
この制度を活用し操業を続けている工業用ファンのメーカー。
車向けの部品の生産は売り上げの2割ほどを占めていた。
しかし自動車メーカー各社が生産をストップしたため
注文が大幅に落ち込んだ。
そこで
国内の従業員6,700人の半数について
制度を利用して勤務時間を短縮。
このうち自動車用部品の生産などに関わる700人は完全に休ませ
自宅待機にしている。
(工業用ファンのメーカー CEO)
「クルツアルバイトがなければ従業員を解雇していたでしょう。
 制度のおかげで
 必要となれば従業員に戻ってきてもらうことができます。」

雇用調整制度は
4月26日の時点で75万社以上が申請し
1,010万人がクルツアルバイトの給付を受ける対象になっている。
これはリーマンショックのあった2009年の330万人よりもはるかに多い数である。
投じた額も100億ユーロ余(約1兆1,500億円)。
この制度は評価されたのはリーマンショックの時だった。
多くの企業がこの制度を使って従業員を雇い続け
ドイツ経済は力強い回復を果たしたことに
大きく貢献したと言われている。
政府は新型コロナウィルスの感染拡大を受けて
この制度の要件を大幅に緩和した。
申請の条件として
それまでは仕事が減少した従業員の割合が3割以上とされていたのが
1割以上に変更し
より多くの企業が給付を受けられるようにした。
さらに
給付期間が長くなるほど給付の割合を増やすことにした。
この制度のもと
従業員は原則として最大12か月間給付を受けることができる。
対象となるのは正規雇用者だけでなく
派遣労働者も含まれている。
財政均衡を重視してきたドイツ政府は
7年ぶりに新規の国債を発行してまで企業を支える様々な支援策を打ち出してきたが
先行きは非常に不透明で厳しくなっている。
ドイツ経済が再生していく上で
やはり自動車産業が軌道に乗ることが不可欠である。
特定の産業だけを優遇する反発がある一方で
メルケル首相は
“雇用の面でも自動車産業はドイツにとって特別な意味がある”と指摘している。
ただ4月の新車の販売台数は
ヨーロッパ各国で9割以上減るなど
急激に落ち込んでいる。
ドイツでも新車の登録台数は6割落ち込んだ。
こうした状況を受けて5月5日
メルケル首相と自動車産業の代表らが
車を購入した人に補助金を支給するなどの景気の刺激策などの協議を行なっていて
作業部会を作って今後も意見交換を重ねるとしている。
専門家は
”経済の再生は感染収束のタイミングに左右される“と指摘している。
(ドイツ経済研究所 ユンカー副部長)
「ウィルスに打ち勝つことができれば
 政府のさまざまな支援策により
 ドイツ経済の回復は比較的早く進む可能性が高いです。
 ただ問題はこの危機がいつ終わるかです。」
感染収束の見通しが立たない中でも
どこまで経済復活への環境づくりを進めることができるのか。
ドイツ経済の正念場が続きそうである。

 

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