HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

カッコいい騒音

2008-11-30 | 音楽
 昔からよく耳を褒められます。いわゆる福耳というやつで、耳朶が大きいのです。だからお金が貯まるね、と言われるのですが、残念ながらこれは当たっていないようです。もうひとつ占いでよく言われる晩年に恵まれるというのを信じるしかないかな(笑)

 でも、耳が大きいせいかどうか、他人の聞こえない音が聞こえたりします。そして困るのがロック・コンサートでの大音量。いや、これは単純に年齢のせいかもしれませんが、あのデカい音の洪水の中にいると、耳が痛くなってどうしようもなく、その場にいるのが苦痛になるのです。
 でも最近、これは単純に音量の問題じゃなくて、音楽がノイズになるかどうかの話だと気付きました。きちんとロック・“ミュージック”になっているときちんと心に響くのです。

 昨晩プライマル・スクリームPrimal Screamのライヴに行ってきました。
 金曜日の夜は通常より会場の時間もちょっと遅く、開始も(通常はメインが9時くらい)9時半近くになりました。日本だともう終わろうかという時間ですよね。
 いつものことではあるのですが、観客はもうすっかり出来上がっていて、会場内はビールの匂いがむんむんとしています。そればかりか、開演から間もなくするとビニールのカップごと空中高く投げ上げられます。あの水飛沫ならぬビール飛沫の被害に会うと洗濯がけっこう大変なのです。野球で優勝してビールかけなんてなると喜びの大きさで相殺できるのでしょうが。



 ヴォーカルのボビー・ギレスピーBobby Gillespieは(もう40代半ば?)相変わらず細身のジャケット姿です。彼を見ていると不思議なエネルギーを感じます。力強いってわけではないのに、何があっても絶対に倒れることはない、といった、変な例えですが“柳の木”みたいな粘りのある強さ(笑)
 他のメンバーも淡々と、しかし息の合った演奏で盛り立てます。バックに流れる映像や、ストロボを多用した照明で、会場は巨大なクラブと化して、満員の聴衆が踊り狂います。

 といった状況にあって、つい用心するのを怠りました。昨晩以来耳は痛く、ずっとシーンと鳴り続けています。結局どんなに心に響いても、大音響には勝てないということみたいです。

キャット・イヤー

2008-11-29 | 日常
 久しぶりに友人宅の子猫の登場です。
 うちを訪ねると、まず僕のバッグのベルトに狙いを定めて攻撃してきます。椅子に座ると今度は靴紐。それにも飽きるとジーンズに爪を立てて膝の上までよじ登り、遊ぼうとねだります。まだ生後1年も経たない子供ですから、遊びたくて仕方ないんでしょうね。



 猫の1歳っていうのは人間の何歳くらい?キャット・イヤーというのは聞いたことがありませんが、ドッグ・イヤーの1年は通常人間の7年を指すので、猫もほぼ同じくらいなんでしょうか?
 このあたりもいい加減なもので、4~7年(これだけでもけっこう幅がある)という人もいれば、おおまかに10年という人もいます。さらに体重によって成長(言いかえれば老化)が変わるともいうので、はっきりしたことは分かりませんね。まぁ、人間も個人差があるので、あまり気にしなくてもいいのかな。

 ところでこの“ドッグ・イヤー”、もともとIT業界の成長の速さ(この業界の1年は通常の7年に当たる)を現わす言葉として使っていたのですが、もう最近は言い古されてしまってカッコ悪いのか、あまり聞かれなくなりました。
 その“速さ”ゆえか、このところ業界の第一線の人間も様変わりして、インタビューとかに登場する人に時々全然知らなかった名前もあります。押しの強さだけが目立った一昔前の人材とは違って、皆優れた技術と頭脳に裏打ちされた優秀な人が揃っているのに感心します。

 でも、彼らのインタビューを聞いていると、よく“勝ち負け”がキーワードで使われていて、本当に競争の激しい身を削るような業界なのが良く分かります。いくらたくさん稼げても、こんな世界に身を置きたくないな、というのが無精者の僕の本音ですが(笑)その若さとエネルギーには本当に感心します。
 欲を言うなら、外から客観的に見ていると、日本の人たちの発想はまだまだアメリカの豊かなアイデアには追いついていない気がします。そのうち度肝を抜くような斬新な事業が日本から出て欲しいと思います。

ゴースト (!?)

2008-11-28 | 日常
 夜の散歩をしていると時々変な人達に出逢うことがあります。

 ずっと抱き合ってキスしながら(いや、その場に立ち止まっているんなら分かるんですが)道を歩いてくるカップルがいます。彼を先頭になんですが、後ろ向きなので進行方向が見えているはずがないのです。その上彼女の方も目を閉じているときては、危なっかしくて見ていられません。
 と言いながら、最初は面白くて思わず観察してしまいました。ところがそれからその道を通る度に同じカップルが同じように歩いているのに出くわすのです。あまりに同じ行動で、心なしか同じような服を着ているようなのが、ちょっと不気味でした。
 最近見なくなってしまったのですが、元気にしているのでしょうか?

 先日はローラー・スケートの集団に会いました。寝静まるにはまだ早い夜の街で、車もけっこう早いスピードで飛ばしているのですが、その脇をすり抜けていきます。信号が変わった瞬間にシャッターを押したのですが、もちろんこんな夜中ではきちんととどめることができません。その姿はまるで幽霊みたいです。
 と思ってゾッとしたのですが、あのカップルってまさか......



 ロンドンには古い建物がたくさん存在することもあって、ゴースト伝説があちこちにあります。また街灯が例のランプのような光なので、ますますそれっぽい雰囲気を煽ります。大真面目に、どこそこにはこんな理由でこんな幽霊が出てこんな悪戯をする、と書かれた本がたくさんあります。
 夏が遅くまで明るいので、どちらかと言ったら夜の長い冬の方がそんな気分が募ってしまって怖くなります。

 

 最近夜遅くまで仕事をしています。この辺りは本当に静かなのです。それというのも隣が大きな墓地なので......(!!!)そうだ、隣は墓地だったんだ。
 いきなり壁で大きな音がしました。

 と思ったら、これって暖房(こちらに特有のradiatorというあのパネル式のものです)の音でした。上に書いた本によると、いわゆるポルターガイスト現象(家具が動いたり音を立てたり)が多いのですが、こんなに古い建物だと、あちこちガタもきているのでそんな現象も不思議じゃないのかもしれません。

 なんて書きながらドキドキしています。我ながら臆病だな(笑)

冬の桜

2008-11-27 | 日常
 時々電車の中で違和感を覚えることがあります。これは一体何なのだろうとよく観察してみると服装なのです。いや、色んな民族の人が乗り合わせているので、服装の違いそのものは当たり前なのですが、そういうことじゃないのです。

 これはむしろ夏の方が顕著だと思うのですが、ノー・スリーヴの人の横に厚手のコートを着た人が座っていたりするのです。1日のうちでもころころと気温が変わるせいだとも言えるでしょうが、どうも体感温度が違っているように思えてなりません。
 つい先日も寒風の中震えながら帰っていると、トレーナーだけの男女とすれ違いました。別に上着を抱えているわけでもないので、今家から出てきたばかりというわけでもなさそうだし、近くに車を止めているような様子でもないし...まぁ、確かに寒さには平気かもしれないという体格ではあったのですが。

 高校1年生の時(大昔ですね)鉄道の線路のすぐ側にある校舎の横に桜の木がありました。この桜、秋になると綺麗な花を咲かせるので名物になっていました。ところが皆が付けた愛称が“ボケ桜”。本来春に咲かせるべき花を秋に満開にしてしまうので、ボケてしまって季節を間違えているんだと解釈していたんですね。
 桜というのは、確か葉にあるホルモンが花を咲かせるのに関連していて、台風やら何やらでこれが被害に会うと、抑制のバランスを失って変な時期に咲くんだというのを聞いた気がします。でも、この桜の木がそんな目に会っていた様子はありません。だから愛情も込めて“ボケ”の冠は定着していたのです。

 ところが卒業後に、ちゃんと秋や冬に咲く桜の種類もあるんだということも知りました。花弁が八重の十月桜、一重の冬桜...だったと思います。いずれにしろ、ボケ桜くんごめんなさい。
 随分昔に帰省した折に、懐かしくて会いに行きましたが、校舎も建て直されて、桜の木も無くなっていました。残念でした。

 ロンドンの街を散歩していて、冬咲く桜を見つけました。ボケ桜を思い出しました。もしかしたら体感温度の違うイギリス人の桜かもしれませんが。


“ONCE”の感動再び~スウェル・シーズン

2008-11-26 | 音楽
 昔CDの企画の仕事をしていた頃、CMソングばかりを集めたアルバムを作ったことがあります。化粧品だとか車だとかのCMに使われた有名な曲ばかりをコンピレーションして収めたのです。
 CMですから、僕たちの耳に慣れているフレーズは、1曲のうちほんの何十秒足らずのわけです。したがってサビの部分だけだったり、曲の冒頭だけだったりしか印象に残っていません。するとカッコ良かったはずの曲が退屈な曲に思えたり、逆にもっと深みのある曲だったことに気付いたりして、意外な発見がありました。

 丁度1年前ある映画を観た時にこのことを思い出しました。1回しか観ていないので、これは僕の思い込みかもしれないことを断っておきますが、この映画で流れる音楽は全て通しだったのです。逆の言い方をすれば、その他のシーンでは一切音楽が流れません。つまり1曲分全部流すか、まるっきりないかという潔い選択だったのです。それに(もしかしたら後でダビングしているかもしれませんが)流れる音楽も全部一発撮りのようなライヴ感がありました。
 音楽を主題にした映画は数あれども、ここまで徹底したものはこれまでなかったんじゃないでしょうか。それほど楽曲へのこだわりを感じて印象深かったです

 その映画の名前は『ONCE』。日本語タイトルでは『ONCE ダブリンの街角で』とサブタイトルも付いています。その副題でも分かる通りダブリンの街が舞台で、そこに住む貧しいストリート・ミュージシャンと楽器店でピアノを弾くことを何よりも楽しみにしているチェコからの移民女性の物語です。
 監督のジョン・カーニーは以前アイルランドの人気ロックバンド“ザ・フレイムス”でベースをやっていた元ミュージシャンで、主演のグレン・ハンサードはそのザ・フレイムスのリード・ヴォーカル。そして実際にチェコ出身のシンガー&ソング・ライターであるマルケタ・イルグロヴァが共演しています。

 2つのハンディ・カメラだけで、3週間足らずの撮影期間という低予算映画(1,800万円)にもかかわらず、全世界でヒットし、おまけに挿入歌“Falling Slowly”がその年のアカデミー賞歌曲賞を取るという快挙を成し遂げています。



 前置きのつもりだった映画の話が長くなりました。昨晩グレンとマルケタのユニット“スウェル・シーズンThe Swell Season”のライヴを観てきました。

 ロイヤル・アルバート・ホールのボックスのフロント席(いや、値段は一緒なんですけどね)に、本番が始まる9時前に滑りこむと同時に照明が落ちて、ひとりで現れたグレンがギター1本でマイクも使わずに生声で、広いホールの観客に向かって熱唱します。

 そして続けて現れたマルケタとのデュエット。後はバックのメンバーを従えての緩急付けた演奏で、全体がシンプルな割に飽きさせることなく、あっと言う間の2時間でした。
 映画でお馴染みの曲や、今日が初めてという新曲、どれも歌に込められた愛情の深さを感じられる、久々に静かな感動の良いライヴでした。

 あぁ、ライヴやりたいなぁ。

スケート失敗談

2008-11-25 | スポーツ
 ロンドンの緯度は札幌と同じ、と確か昔地理の授業で習った(でも暖流のおかげで北海道ほど寒くはないとも)ような気がするのですが、まぁそう考えると多少寒くても当たり前とは言えます。この季節、活発な性格の人はウィンター・スポーツに夢中になっていると思うのですが、実は僕はスキーが出来ません。いや、一度もやったことがないので、できるかどうかさえ分からないのです。

 生まれが九州で、近くにスキー場がなかったというのを一応理由にしていますが、実は不精者なので、重装備の上に朝早く起きてスキー場まで出かけるなんてのが、ちょっと......同じ理由でゴルフもやりません。いや、これはむしろあの服装がイヤということの方が強いですが。

 それでもさすがにスケートくらいはやっていました。十代の頃はそこそこには滑れましたよ。何しろ1回転は無理でも、後ろに滑りながらそこからジャンプして半回転くらいはできましたから。
 それがある日、そのジャンプに失敗しました。整備前の氷の表面が少し穴状になっていて、そこにジャンプしようとした直前のトウピック(ブレード先端のギザギザの部分です)をひっかけてしまったのです。あれだけ激しく転倒したのは後にも先にもあれ一回切りですが、口の中を切ってえらく派手な怪我に見えました。

 ところがその後、あの恐怖を身体が覚えてしまって、思い切り動けないのです。野球でデッドボールを受けて恐怖心が癒えないと、内角の球に踏み込めないのと一緒でしょうか。おかげでスケートからも遠ざかり、いよいよ冬のスポーツに縁が無くなってしまいました。

 最近浅田真央ちゃんの調子が悪いようですが、何だか分かるような気がします。一度ジャンプに失敗して悪いイメージを身体と気持ちが覚えてしまうと、なかなか振り払うのが大変なのでしょう。なまじ“大人”になってしまったので、考え過ぎてしまうでしょうし、成長期の身体と気持ちのバランスを取るのも難しいのでしょうね。
 あの子供の頃の天真爛漫な感じを取り戻しておおらかに滑ってほしいものです。

 さて、この冬もサウス・ケンジントンの屋外スケート場がオープンしました。自分はそんな心境になれるかな?



Keep your feet off the seat.

2008-11-24 | 日常
 今朝は天気予報通りに雪が降りました。前の冬は全然雪を見ることがなく、このまま終わるのかと思っていたら4月になって2回も積もるという異常気象でしたが、ある意味今年は“正常な”寒さなのかもしれません。
 日本も寒くなってきたよ、というメールをもらいます。それでもネットで気温を調べたら、この先数日間ロンドンの最高気温は東京の最低気温より下回る予報です。

 こんな時はコタツに入って、蜜柑でも食べながら本を読んで......なんてことできるわけがありません。
 それでも家での生活は靴を脱いでスリッパに履き替えています。時々訪ねてくる外国人(家の修理の人とかもいるのでイギリス人に限らないんですね、これが)も、その辺りのことを分かってくれて、ドアを開けると靴を脱いでくれます。

 歴史のあることだから、たぶん靴の造りもよく出来ているとは思うのですが、一日中履き続けていると疲れそうな気がします。
 そのことと関係があるのかどうか、この写真を見て下さい。



 実はこれ、ロンドン名物の2階建てバスの最前列の席なのですが、若い女性が足をドンと縁に乗っけているのです。2本の足ともそうしているのですが、さすがに角度上そこまで堂々とは撮れませんでした(笑)
 この光景は特に珍しいわけでもなく、電車の中でも見慣れた光景になってしまっています。たまに映画館でも、後ろの席から伸びた脚がすぐ横に突き出ていてギョッとすることがあります。

 地下鉄に貼られたポスターを見つけました。“ほんのちょっとの気配”という標語に対して、男の子が“僕は座席に足を乗せない”、女の子は“私は座席にバッグを置かない”と言っています。
 日本人より脚の長い彼等ですから、窮屈なのも分からないではないですが、それなりに美人の女性が隣の席を買い物袋で占有し、足を前の席にドンと投げやっているのを見ると、ちょっと興醒めしてしまいます(笑)


オークションの下見会

2008-11-23 | アート
 イギリス人の友人が年末・年始をパリで過ごす計画を立てています。意外なことに、これまでパリには2度しか行ったことがないと言うのです。ロンドン~パリ間と言えば、飛行機で1時間、ユーロスターでも2時間半で行けるわけですから、僕の感覚では丁度東京~大阪間に当たる距離で、皆けっこう頻繁に行っているのかと思っていました。

 ルーヴルにもオルセーにも行ったことがないので、今度行こうと思うんだが入場料は無料だよね、と言うのですが、残念ながら有料です。ルーヴルで9ユーロ、オルセーで9.5ユーロします。今はユーロが大分下がったので1,000~1,200円といったところでしょうか。

 どうして彼がそう思うかというと、ロンドンでは公立の美術館・博物館はどれも無料で入れるからなのです。本当にこの点は誇れることだと思います(もっとも、寄付を募るボックスはちゃんと置かれていて、3ポンド=約450円以上を希望していますが)

 ついでにもうひとつ、無料で美術品を見る方法がありますよ。
 
 今日、クリスティーズChrisitie’sに行ってきました。サザビーズSotheby’sと並び称される有名なオークション・ハウスですが、ロンドン市内に2つ競売場を持ち。そのうちのひとつがうちから歩いていけるくらいの距離にあります。
 お目当ては26日に行われる“写真”のオークションの下見会です。この時は当日オークションにかけられる作品が一堂に会し、自由に見て回ることができるのです。

 ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、エリオット・アーウィット、マニュエル・アルバレス・ブラーヴォなど、写真ファンにはたまらない作家の作品がずらりと揃っています。
 どれも素晴らしいものばかりでしたが、一番“欲しい”と思ったのはアンドレ・ケルテスの『フォーク』です。白い皿の上に乗った1本のフォークを写しただけのものなのに、その絶妙な構図と質感が、単なるモノにとどまらない別世界を作り上げています。

 欲しいなぁ、でも......情が移らないうちに引き上げました(笑)


熊と狐

2008-11-22 | 日常
 海外に住んでいると、幼馴染からのメールがむしろ以前より増えたりします。色々と語り(書き?)合っていると、こちらがあまり覚えていないことが話題になって面白いです。
 中学生の頃の好みの話になりました。好きな色だとか、好きな花(相手が女性の場合はこんな項目まで出てきます)だとか続いた後に、食べ物ではマーマレードが好きだったよね、と言われて、これにはちょっと驚きました。自分で全然意識したことがなかったのに、何故かそう思わせるようなことがあったんでしょうね。

 その時浮かんだのが“マーマレード・サンドイッチ”。実はこれ有名な“くまのパディントンPaddington Bear”の好物なのです。



 ところでこのパディントンの出身国を知っていますか?
 もちろん、イギリス人作家(マイケル・ボンド)の作品に出てくるキャラクターですから、その意味ではイギリスと言ってもいいのですが、第一巻によると、彼はペルーからの密航者として描かれているんですね。オリジナルの名前は発音しにくいということで、見つかった駅の名前にちなんでパディントンと呼ばれるようになったのです。

 やはりイギリス人作家(いや、正確にはスコットランド人ですが)のアラン・アレキサンダー・ミルンの手になるキャラクターで有名なのが“くまのプーさん”。架空のキャラクターとはいえ、彼が登場する“100エーカーの森”のモデルとなったハートフィールド村は“プー・カントリー”として未だに訪れるファンが跡を絶ちません。

 こんなのどかな田園風景にロンドンから電車とバスの乗り継ぎで1時間~2時間ほどで行けるのです。
 その意味ではロンドンだけが例外的に大都会なのでしょうが、それでも世界の他都市に比べると大きな公園があったりして、緑に恵まれているような気がします。それこそ、そこらから野生の動物でも出てきそうな...

 なんて思っていたら、キツネ!
 いつもの夜の散歩の途中のことです。大きな尻尾をピンと立てて、あの逆三角形の顔で用心しながらこちらを見ていました。いったいどこから現れてきたのでしょう。
 キツネが住めるくらい自然が街に残されていると思っていいのか、それとも住処である自然が荒らされて食べ物を求めて街に出て来ざるをえなかったのか。

 慌てて写真を撮ろうとしているうちに、素早く逃げていってしまいました。何だか一瞬幻を見てしまったような感覚でした。あれっ、やっぱり狐に化かされたのかなぁ。


テロと慈悲

2008-11-21 | 日常
 昨日書いたキングス・クロス駅は、鉄道のキングス・クロス駅King’s Crossとセント・パンクラス駅St. Pancrasへアクセスする地下にあり、地下鉄の駅としての正式名称は両方の鉄道駅の名前を併記したKing's Cross St. Pancrasとなります。
 実はこの駅の悲劇は昨日書いた事件にとどまりません。2005年7月7日に起こった同時多発テロの一環で、この駅を通るピカデリー・ラインの電車が爆破され“少なくとも”(実は人数がはっきり分かっていないとも聞きます)26人の犠牲者を出しています。

 2001年9月のニューヨークでの同時多発テロ以来、テロは世界中の注目を集めるようになり、このロンドンでの事件も覚えている方は多いと思います。しかし政治的な背景は少し違うとはいえ、それ以前にもテロは多く起きていました。僕の前回の赴任時にはIRAのテロがまだ問題になっていた時期で、実際事件後の現場などにも何度か遭遇しています。

 そして何よりも大きなテロは、リビアの工作員による(未だに国としての直接関与を正式に認めてはいないようですが)1988年12月21日のパンナム機爆破事件です。
 フランクフルトからロンドンを経由しニューヨークに向かう便に爆弾が仕掛けられ、スコットランドのロッカビー村Lockerbie上空で爆発した機体は村の民家も巻き込んで、結局乗員16名、乗客243名、村の住民11名の合計270名もの死者を出す大惨事になったのです。

 この事件の犯人として捕まったアブデル・バゼット・メグラヒ容疑者の名前がつい最近ニュースで聞かれました。彼は終身刑を受けていたのですが、実は癌だということが判明し、余命を家族のもとで過ごすため保釈の請求を出したのです。
 結果は...認められませんでした。

 この結論は様々な議論を呼び起こしたようですが、僕が一番印象的だったのは Dr Jim Swireという人の発言でした。この人は自分の娘が被害者になっているにもかかわらず、“我々の目指すところは復讐ではない。保釈は認めるべきだ”という趣旨の発言をしているのです。
 知り合いのイギリス人に尋ねたら、彼はこの人物のことを当時からよく覚えており、知的な人だったという印象があるということでした。

 さて、振り返って自分だったらどうか?頭の中では理解しているつもりであっても、自分の身内が殺されたりした場合に(いや、たとえ身内でなくても)、こんなに冷静で慈悲深くいられるかな?
 こういうケースまでが対象になるかどうかは知りませんが、日本でも“裁判員制度”がもうすぐ始まろうとしています。いざ自分がその立場になった時にどこまできちんとこなせるかと思わず不安を抱いてしまいました。
 そんなことを考えながら見上げたキングス・クロス駅の近くの上空では、飛行機雲が綺麗でした。