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ロンドンから徒然に

“ONCE”の感動再び~スウェル・シーズン

2008-11-26 | 音楽
 昔CDの企画の仕事をしていた頃、CMソングばかりを集めたアルバムを作ったことがあります。化粧品だとか車だとかのCMに使われた有名な曲ばかりをコンピレーションして収めたのです。
 CMですから、僕たちの耳に慣れているフレーズは、1曲のうちほんの何十秒足らずのわけです。したがってサビの部分だけだったり、曲の冒頭だけだったりしか印象に残っていません。するとカッコ良かったはずの曲が退屈な曲に思えたり、逆にもっと深みのある曲だったことに気付いたりして、意外な発見がありました。

 丁度1年前ある映画を観た時にこのことを思い出しました。1回しか観ていないので、これは僕の思い込みかもしれないことを断っておきますが、この映画で流れる音楽は全て通しだったのです。逆の言い方をすれば、その他のシーンでは一切音楽が流れません。つまり1曲分全部流すか、まるっきりないかという潔い選択だったのです。それに(もしかしたら後でダビングしているかもしれませんが)流れる音楽も全部一発撮りのようなライヴ感がありました。
 音楽を主題にした映画は数あれども、ここまで徹底したものはこれまでなかったんじゃないでしょうか。それほど楽曲へのこだわりを感じて印象深かったです

 その映画の名前は『ONCE』。日本語タイトルでは『ONCE ダブリンの街角で』とサブタイトルも付いています。その副題でも分かる通りダブリンの街が舞台で、そこに住む貧しいストリート・ミュージシャンと楽器店でピアノを弾くことを何よりも楽しみにしているチェコからの移民女性の物語です。
 監督のジョン・カーニーは以前アイルランドの人気ロックバンド“ザ・フレイムス”でベースをやっていた元ミュージシャンで、主演のグレン・ハンサードはそのザ・フレイムスのリード・ヴォーカル。そして実際にチェコ出身のシンガー&ソング・ライターであるマルケタ・イルグロヴァが共演しています。

 2つのハンディ・カメラだけで、3週間足らずの撮影期間という低予算映画(1,800万円)にもかかわらず、全世界でヒットし、おまけに挿入歌“Falling Slowly”がその年のアカデミー賞歌曲賞を取るという快挙を成し遂げています。



 前置きのつもりだった映画の話が長くなりました。昨晩グレンとマルケタのユニット“スウェル・シーズンThe Swell Season”のライヴを観てきました。

 ロイヤル・アルバート・ホールのボックスのフロント席(いや、値段は一緒なんですけどね)に、本番が始まる9時前に滑りこむと同時に照明が落ちて、ひとりで現れたグレンがギター1本でマイクも使わずに生声で、広いホールの観客に向かって熱唱します。

 そして続けて現れたマルケタとのデュエット。後はバックのメンバーを従えての緩急付けた演奏で、全体がシンプルな割に飽きさせることなく、あっと言う間の2時間でした。
 映画でお馴染みの曲や、今日が初めてという新曲、どれも歌に込められた愛情の深さを感じられる、久々に静かな感動の良いライヴでした。

 あぁ、ライヴやりたいなぁ。

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