HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

今度は卵

2012-02-27 | 旅・イベント
 こちらに住んでいて未だに慣れない習慣は大抵宗教に絡んでいます。ロンドンにはご存じのように多種多様な民族が住んでいるので、ますます複雑になるわけですが、とりあえずキリスト教系だけを考えてみてもやっぱりピンとこないことが。

 これからのカレンダーを考えると、春のイースターがそのひとつ。で、これがいつなのかというと、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」???
 しかも、太陰暦によって決められた日のために、グレゴリオ暦を用いる西方教会とユリウス暦を用いる東方教会では日が違うと来ています。

 まぁ難しい理屈はともかく、イースターの時に楽しいのはイースター・バニーやイースター・エッグ。キリストの復活をその生命の源に準えているんでしょうね(ウサギは多産だし)。
 このイースター・エッグ(もっとも最近では卵を象ったチョコなどが多いみたいですが)をあちこちに隠して子供達に探させるという遊びもあります。

 で、今年のイースターに向けては、実に楽しい催しが市内で展開されています。
 The Fabergé Big Egg Huntと名付けられたこのイベント。市内の12のゾーンに隠された200以上の大きな卵を探すというもので、それぞれの卵に隠されたキーワードをテキストすることで100,000ポンド以上の価値のあるThe Diamond Jubilee Eggが当たるチャンスがあるとのこと。またオークションでそれぞれの卵を手に入れることもできるそうです。

 そう、これ、以前このブログでも書いたことのあるエレファント・パレードのエッグ版ですよね。実際あの時と同じように著名なデザイナーによる作品もあります。
 とりあえず、うちの近くの公園で見つけた卵たちを幾つか並べておきます。





 eggsceptionalでeggsclusiveな(笑・これ公式の説明に用いられていた単語です)イベントなので、ロンドンに来られる機会のある方は楽しんで下さい。

Thanks!

2012-02-26 | 日常
 きっと新年を迎えるに当たって色んな誓いを立てた人が多いと思うんですよ。
 さて、もうそれから早くも2ヶ月が経とうとするこの時期、振り返ってどうですか?少しは実行できています?

 ダメだったら次の機会は誕生日かな?
 でも、この日からはきっと……なんて、繰り返していい年齢でもなくなると、本当に何やっているんだろうな、と(苦笑)
 
 これまでの年月の積み重ねを良い意味での経験にできればいいんですが、まっさらな卵の状態から始められたら、なんてことをつい考えてしまう人も多いでしょうね。
 <下の写真の卵、ちょっと気になるでしょ?これについては、また後日>



 あ、もう日付が変わってしまったけれど、今日(2月25日)は誕生日でした。たくさんのお祝いメールありがとうございました。
 今年こそはきっと……(笑)

燃料電池車

2012-02-23 | 日常
 もしロンドンに初めて旅行に来たとします。街歩きをして夕方ホテルに戻り鼻をかむと驚くことが。
 そう、ティッシュが真っ黒になってしまいます。これ本当なんです。そのくらい交通量が多い上に排気ガスがきつい。

 一体規制はどうなっているんだろう。街の再開発など何もかもがオリンピックに照準を合わせて動いているのに、こういったことがそのままでいいんだろうか、と思っていたところ、昨年末だったかこんなニュースが。

 Mayor of London Welcomes Zero-Emission Vehicles that will be on London’s Roads in Time for the Olympics.
 オリンピック開催時には排気ガスを出さないゼロ・エミッションの燃料電池車を走らせるというのです。

 燃料電池車と言っても馴染みがないかもしれません。いや、僕もはっきり理解しているわけではないので自信がないのですが、水素と酸素を反応させて取り出した電気(つまり水の電気分解の逆向きのわけですね)で動かす車です。
 同じ電気自動車でも、従来の充電式だと発電所が必要になるわけで、本来の趣旨と矛盾してきますもんね。

 話を戻して、市長の話だと、このインフラ整備として“水素ステーション”を作る他、15台のロンドン・タクシーを燃料電池仕様にし、その他5台のオートバイもバイクタクシーとして活用するとのことなんです。
 たかだか15台や20台の車で環境が変わるとはもちろん思えませんが、シンボルとしては面白い存在になりそうです。この後が続いてくれるかな?

 残念ながら現時点では相変わらずの排気ガス蔓延の街です。今日は時間に余裕があったので川沿いを歩いて移動。



 通常ならばこの期間は北風が強く、雪さえ降るのが当たり前なんですが、今日からしばらくは穏やかな気候が続くみたいで、多分日本よりも暖かいと思います。今日なんか最高気温が16度、最低気温も9度くらいなんですもん。
 このまま春が来ないかな。

次の幽霊話は

2012-02-20 | 日常
 ロンドンの地図を改めて眺めてみると、緑がやけに目立ちます。Regent Park、Hyde Park、Kensington Gardens、Green Park、Battersea Park、etc. ...東京や大阪など日本の大都会と比べると比較にならないくらいの比率で公園の面積が占めていると思います。

 “近い”というには少し距離があるのですが、うちから最寄りの公園はというとSt. James’s Parkになります。ここの素晴らしい点は中央に大きな池があり、たくさんの鳥たちが生息していること。渡り鳥も多いので、季節によって様々な鳥たちを観察できます。

 池の東側にDuck Islandと呼ばれる小島があるのですが、ここに住み着いていて名物になっているのが実はペリカン。他の鳥たちと比べると明らかに大きな目立つ姿をいつもそこで見ることができます。

 ……そのはずなんですが、このところ見あたらない。どうしたんだろうと思っていたら、違う場所で発見。先日たまたまバッキンガム宮殿側まで行く用事があって丁度彼らのいつもの住処とは反対の西側の道を通りかかると、そこに3羽固まって,観光客に囲まれていました。



 3羽と書きましたが、実は以前はいつも4羽で群れていたんです。ところがここのところ1羽見あたらない。どうしたんだろう?死んでしまったのかな?

 ところで、Duck Islandの前の道には、夜になると血にまみれた首無しの女性の幽霊が出るという伝説があります。1815年に主人に殺された妻の死体がこの池に投げ込まれたという話なんです。
 案外と昔からペリカンがここに住み着いていて、それが歩く姿を白いドレスを着た女と間違えたんじゃないかと勝手に空想しているのですが、さて?

 今ふと考えたけど、このいなくなったペリカンが夜になると現れるなんていう次の恐い話はどうかな。

天才と天才達 ~ Picasso and Modern British Art

2012-02-19 | アート
 前回触れた草間彌生が、統合失調症で現在も闘病生活を送りつつたくさんの作品を生み出しているのはご存じの通りで、それによって起きる幻覚や幻聴が作品にも影響を与えているとよく言われます。

 精神の“病”というのは特に最近になって分析が進んだせいかよく取り沙汰されますが、これだけおかしくなっている社会に“適応”している僕たちの方が(いや、僕はあまり十分に適応しているとは言えないけど・笑)むしろおかしいんじゃないだろうかと思うことがよくあります。

 まぁ、そのあたりはともかく、アーティストの目には一般の人が見ているものとは違う形が映っており、それゆえそれらが描き出された作品を見て、自分の内面の目が驚いてしまうのでしょう。そしてそれらのアーティストを僕らは天才と呼んでしまいます。
 
 その意味では子供の頃からずっと好きだったのがピカソです。彼の絵を見ているとひとりでいつまでも空想の世界で遊ぶことが出来ました。おとなになってからは、作品数が多いこともあって、各国の美術館で初めて発見する作品が多いことも楽しみのひとつです。

 2月のロンドンは新しい展覧会のラッシュで、今度はテート・ブリテンでピカソの絵を中心にした《Picasso and Modern British Art》が始まりました。



 タイトル通り、ピカソに影響を受けたと公言しているイギリスのアーティスト7人(ヘンリー・ムーア、フランシス・ベーコン、デイヴィッド・ホックニーを含む)の作品を並行して展示する試みです。

 イギリスではこういった企画が受けるのか、同じようなテーマで何回か見たことがあります。その中でももう10年ほど前(この時は旅行で来たロンドンですが)にテート・モダンで開催された《Matisse Picasso》は秀逸でした。この場合はマチスが先輩になるわけですが、互いに影響を受け合うふたりの天才アーティストの作品の対比が非常に興味深かったです。

 さて今回の展覧会は?
 ピカソの作品には《The Three Dancers》を始めとする見応えのあるものも含まれていて楽しめたのですが、全体の印象で言うと何故か少し薄味に感じてしまいました。他のたくさんのアーティストと並べることで今回は何故だか逆に少しインパクトが薄まってしまったような気がします。この天才が他の天才達を圧倒し過ぎたのかな。

 もっとも都合で時間がなくて少し駆け足で見てまわってしまったという自分の側の理由によるものかもしれません。7月半ばまで続くようなので、もう一度ゆっくり楽しんでこようと思います。

Yayoi Kusama

2012-02-15 | アート
 最近年上のイギリス人の友人が、自分の親の時代も含めて昔話をしてくれたのですが、思った以上にこの国も保守的だったようで、特に女性はそのことによって色んな分野で苦しんだ様子が窺えました。
 でもきっと昔の日本なんてその比じゃなかったんでしょうね。

 1929年生まれの女性が、そういった時代にアートの世界に邁進するなんてことは随分とタフな生き方だったに違いないのですが、この人は初めから世界を標準に見据えて活動してきて、今また何回目かのブームを迎えているようにも感じます。

 テート・モダンで先週から草間彌生の展覧会、その名もずばり《Yayoi Kusama》が始まりました。
 次々と自分のスタイルを変えつつ、水彩、パステル、油彩、彫刻はもちろんのこと、美術以外にもファッション、映画、小説、詩集、そして例の“ハプニング”を始めとするイベントなど、様々な分野で活躍してきた彼女の才能を、かなりのスペースを取って展示しており、とても楽しめました。

 何と言っても象徴的な水玉と網模様はやはり印象的で、会場の外もほら下の写真の通り、ドットで埋め尽くされていました。




 こちらの人にも評判は上々みたいで、大体において好意的な評が多く、何よりもチケットを求める長い長い列が、その人気のほどを示しています。また、インタビュー・ビデオを見る人の顔には、作品のみならず、彼女自身の存在感に圧倒されている感じも見て取れました。

 先日のブログの続きじゃないですが、何もスポーツや電化製品ばかりでなく、世界に誇れる日本はこういった分野にもあるんですね。

工事中のロンドンから

2012-02-13 | 日常
 今ロンドンの街を歩くとあちこちで工事中の看板が目立ちます。地下鉄駅や橋、公園の改装を始め、街並み全体の様相が変わってしまいそうなくらいの大々的なものまであります。
 既に1年以上をかけてのものが多いのですが、その殆どの終了予定が今年2012年。オリンピックの時期に照準を当てているんでしょうね。



 その肝心のオリンピックに対する熱がロンドンではあまり高くないというのは最近よく聞く話なんですが、これだけ色んな国からの移民が多い街ですから、きっと開催日が近づいてくればそれなりの盛り上がり方は見せるでしょう。
 きっと僕自身も日本人選手の姿をTVで見かけたら、特に馴染みのないスポーツでも応援してしまうんだろうな。

 ロンドンは普段から人種や国籍を超越して生活できる場所ではあるのですが、やはり海外で暮らす身としては、ふとした場面で日本人としてのアイデンティティを深く意識することもあります。それは時にはささやかな見栄だったりもするわけですが、例えば日本の製品の技術を褒められたりすることでもやはり嬉しいわけです。

 その意味でショックだったのが、ここに住み始めてすぐに電気街にTVを買いに行ったときのこと。同等の値段とスペックの製品の中から選ぼうとしたら、「それは●●●(某日本メーカー)だから画質が悪いのでやめといた方がいいよ」と言われ、韓国製品を薦められたんです。

 もちろんこれが真実かどうかは分かりません。販売のマージンとかが絡んでいるかもしれないですしね。ただ、それまで少なくとも家電の技術的には日本が絶対だというのは、世界中どこでも同じ認識だと思っていただけに、値段やデザインその他の付加的な要素とは違う根本のところで否定されたのがちょっと辛かった記憶として残っています。

 別にその象徴というわけでもないですが、ロンドンの繁華街ピカデリー・サーカスの有名な広告塔から昨年はSANYOが無くなって(昨年3月1日のブログ参照)、韓国のHyundaiがそれに代わっています。これで残る日本企業はTDKのみとなりました。



 もっとも、日本がこういった技術競争や売上競争で常に最先端にいるのがいいのか、それとも他の道があるのかはまた別の問題で、これはある意味人の生き方とも繋がるわけで、なかなか難しい問題ではあります。
 何を幸せと感じるかは人それぞれ価値観も違うことだし、結論もまた色々あるんでしょうが、とりあえずどういう道を選んでもそれが誇りと思える生き方だけはしたいですね。

David Hockney展

2012-02-05 | アート
 昨年は一度も真冬用のコートに袖を通しませんでした。そのくらい例年よりも暖かい気候が続いたロンドンですが、ここ一週間ばかりは0度を下回る日もあり、なんだか“懐かしい”気がする空気感に震えています。

 それでもロンドンの人にとって重要なのは、寒さよりもむしろ空模様らしく、どんなに寒くても青空が覗いているのならHappyだとのことです。確かにその意味ではどんよりしたあの灰色の空でなければ、気持ちは暗くなりません。

 ところが昨日はどうにも怪しげな重たい曇り空で、もしやと思ったら案の定、夜から雪。今朝起きたら見事に積もっていました。この冬初めての雪です。




 そんな中久しぶりに美術館に出かけました。Royal Academyで最近始まった《David Hockney RA : A Bigger Picture》。
 日曜日ということもあってか、チケットを買い求める人の長い列が出来ていましたが、幸い僕はサポート・メンバーなのですぐに入ることができました。

 デイヴィッド・ホックニーは言うまでもなくイギリスを代表する現代画家ですが、今はLAに定住して活動を続けています。
 しかし今回の作品はEast Yorkshireの“風景画”が中心。しかもここ数年の作品が多く、今年75歳を迎える彼の精力的な活動には感心します。



 作品は同じ場所が季節を変えて描かれ、展覧会のタイトル通りスケールの大きなものが多いのですが、そのヴィヴィッドなカラーには遠くからでもやっぱり目が惹き付けられてしまいます。

 興味深かったのは、iPadを使って作成された作品群。それらが巨大に引き延ばされて展示され、従来のものとはまたタッチの違う独特の世界を創り出していました。こういった風に技術の進化を軽々と自分のものにして、アートの高みにまで昇華してしまうのはすごいですね。

 僕らはどうもその技術の進化たるツールに振り回されているようで、何を目指しているのかを忘れがちになりそうな感があります。手段はあくまで手段で、大切なのはそこじゃないですもんね。

川勝さん

2012-02-01 | 音楽
 月曜日にロンドンに戻ってきました。ずっと暖かかったのに、どうやらここに来てロンドンの冬らしさを取り戻したみたいで、霙交じりの空がうらめしいです。

 せっかく暖かいはずのカンヌも滞在した週末全ての日が雨。どうせ朝から晩まで会場内で過ごさなければならないのなら、変に未練がましくならずに仕事に精出せていいや、と割り切ることにしました。雨は雨なりに普段見られない景色も映し出してくれるし。



 さいわいfnac(CDやDVD、本、音響機器などを取り扱うフランスのチェーン店)は遅くまで開店しているので、ヘッドフォンで視聴したり、本を眺めたり(フランス語なので辞書なしでは、読むというよりこの表現の方が当たっているかな・笑)は仕事が終わった夜でもできました。

 それにしてもフランスにはやっぱり知らないアーティストがたくさんいます。殆どイギリスには紹介されていませんしね。むしろ日本の方が音楽にしろ、映画にしろ、フランスや他のヨーロッパ圏の文化は紹介されているんじゃないでしょうか。

 こういったマイナー(?)なカルチャーあるいはサブカルチャーを日本に浸透させた功績というと必ずこの人を挙げなければならないでしょう。
 川勝正幸氏。自宅の火災で亡くなったというニュースを見て驚きました。

 彼とは大昔にたった一度だけ仕事をしたことがあります。当時大人気だった某ミュージシャンのコンピレーション・アルバムのセットを企画しようとして、彼に参加をお願いしたんです。
 僕から投げかけたテーマに対する回答は、さすがに様々な音楽に精通していて、またこよなく愛している人ならではの素晴らしい切り口でした。

 結果、自賛できるほどの良い企画になったと思ったのですが、レコード会社だったかプロダクションだったかのガードが固くて、結局商品としては実現できなかったのが今となっては残念でなりません。

 R.I.P.