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ロンドンから徒然に

美術館がシェルターに

2008-11-03 | アート
 毎日のように新聞を賑わしている経済危機ですが、誰かのコメントに「自分が生きている間に世界恐慌を経験するとは思わなかった」というのがありました。心の中で恐れながらもどこか自分とは関係のない世界だと感じていることはたくさんあると思います。

 子供の頃“第三次世界大戦”という言葉にものすごい恐怖心を抱いた時期があります。漫画から受けた影響が大きかったので、成長するに連れてそんなことはありえないと思うようになりました。ところがアメリカとソ連の間の冷戦が終結したにもかかわらず、むしろ世界はきな臭い状況になってきているように感じます。

 もしも50年後のロンドンで“非常事態”が発生したら?......そんな一見SF的でありながらも、今なら十分に危機感も覚える空想をアートにしたのがドミニク・ゴンザレス・フェルステルDominique Gonzalez-Foersterの『TH2058』です。



 テート・モダンをシェルターに見立てて、内部に200台のベッドを設置し、それぞれに本(これがまた近未来のSF小説ということで凝っています)が置かれています。

 

 Unilever社の提供で2000年からずっと続いている、タービン・ホールを使っての巨大な展示イベントの9作目になるのですが、その1回目に展示されたルイーズ・ブルジョアの巨大な蜘蛛“ママン”がさらに大きくなって、アレクサンダー・カルダーの“フラミンゴ”(これまたオリジナルよりも巨大!)と対峙するように置かれています。



 さらには恐竜や齧りかけのリンゴなどが置かれていますが、これも実は他のアーティストの作品で、最近のアートはこういう風に他人の作品を素材として使いながらオリジナル作品を作り上げるというのが、ひとつの流行になっているように感じます。
 そう言えば音楽の世界でも、他のミュージシャンの曲をサンプリングしてオリジナル曲に紡ぎ上げるという手法が既に確立していますが。



 さて、実際にこの巨大な蜘蛛を見上げながら、同じく蜘蛛の形をした警報装置や、雨の場面が映し出されるスクリーンに目を移していくと、何とも言えない不安感が募ってきます。
 ただ、子供たちにとっては楽しい遊園地と一緒みたいで、オブジェによじ登ったり、ベッドの上で飛び跳ねたりしていました。

 こんな子供たちに「自分が生きているうちに世界大戦が起きるとは思わなかった」なんてことを言わせないようにしたいですね。