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ロンドンから徒然に

2女性アーティストの展覧会

2013-05-24 | アート
 昨今の政治家達の一連の発言からも分かるように、まだまだ女性に対する差別というものは存在するんですね。一応民主主義国家である日本の今でさえそんな状況ですから、数十年も前の、しかも体制の違う国での状況はどんなものだったんだろうと考えてしまいます。
 なおかつそれがまだまだ女性の進出が一般的ではない分野だったとしたら……

 Saloua Raouda Choucair はレバノン最初の抽象画家と言われています。1916年というと、フランスの占領が始まるすぐ前に生まれたということですね。
 テート・モダンで先月始まった彼女の展覧会は、美術館レベルでは世界で初めて行われるものだということです。

 実は全然どんなアーティストかも知らずに好奇心から見に行ったのですが、予想していたよりも洗練されたイメージで、それでもやはりどこかやや強い光が感じられるような(これ勝手に僕が思うベイルートからの先入観なのかも)絵画でした。
 と言っても、作品は多岐な分野に渡り、絵画の他にフィーチャーされていたのは50年代から80年代にかけての彫刻達。素材は様々でガラスや木、石、etc.
 でもまぁいずれも“抽象”なのですが、その中で例外はポスターにもなっている自画像(左の写真)。意思の強そうな表情が“具象”されていますね。



 ところで同時に他のフロアーでも同じく女性アーティストの展覧会が行われていて、それが右の写真のポスター Ellen GallagherのAxME。こちらはアフリカ系アメリカ人。1965年生まれですが、彼女の世代でさえそうなのか、作品の根底にはある種の黒人差別へのプロテスタントが感じられます。

 こちらの展覧会は全部で11(だったかな?)の部屋を使う、巨匠顔負けの規模で、作品自体も巨大なスケールのものが展示され、見応えがありました。
 作品群はこれまた多岐に渡り、絵画、プリント、コラージュ、レリーフ、彫刻に加えてビデオまで。どこか不安を覚えてしまう影を残しているかと思うと、ユーモアの断片が見られて思わず笑ってしまったり、また強い志みたいなものにたじろいだり……すごく才能のあるアーティストだと改めて感心しました。



 それにしても、この2本の展覧会が両方とも女性アーティストというのが、このタイミングで考えると何だか印象的。もしかして世の中の男性の女性差別発言は、心の奥でどこか女性のパワーをおそれているところから来るんじゃないかと思わず勘ぐってしまいました。

またひとつ馴染みのお店が...

2013-05-20 | 日常
 仕事の都合もあってあちこちのサイトの会員になっているもので、毎日届くメールの数は凄まじいものがあります。
 なので、まずは日本語のメールから整理していきますが、どれも嬉しい便りばかりでホッとします。

 ところが先週は、その中にひとつだけ残念な内容が。馴染みだったレストランが閉店するというのです。

 僕はね、けっこう食べること好きなんですよ。でも旬の食材や調理の仕方を具体的に注文できるほど通ではないので、その日の食べたい気分みたいな抽象的な我が儘に応じてくれる(そしてもちろん的確な料理にまとめてくれる)お店は本当に重宝していたんです。

 このところよく“情報”ということについて考えることが多くて、断片はこのブログでも触れましたが、食の世界も当然情報社会の渦に巻き込まれていますよね。
 その意味ではレストランもある程度発信上手でないとやっていけない時代になったのかなぁ。掲載拒否する頑固なお店は、そのこと自体が情報として発信されて有名になったりする皮肉な現象もあるけど。

 料理の写真は載せません。こんな真夜中にお腹空いても困るので。

気持ちの良い裏切られ方(映画ですけどね)

2013-05-17 | 映画・演劇
 映画を観る際には余計な先入観を持って臨みたくないので、できるだけ前知識なしに出かけます。それでも頻繁に映画館に通っていると予告編には接してしまいますよね。

 ライアン・ゴズリング Ryan Gosling とブラッドリー・クーパー Bradley Cooperが主演の『The Place Beyond The Pines』の予告編を観た際には、今を時めくふたりの男優に犯罪者と警官として対峙させる人気取りのサスペンス映画だと思ったんです。



 ところがところが、彼らが実際にそれぞれの人生で交差する場面は物理的には文字通り一瞬だけ。物語は思わぬ展開を見せます。
 日本は封切り前だと思うので詳しくは書けませんが、冒頭のシーンからして凄い緊張感。主人公が自分の“職場”へ赴く背中を追って、カメラはずっと長回しです。そこから続く140分。重厚な三部作と言ってもいい作りで、予想を見事に(良い方向に)裏切ってくれました。
 もちろん細かく批評すれば粗も見えるでしょうが、そういうことを超越するエネルギーがあって、僕は大好きな映画でした。

 予想と違ったという意味ではもう一本。いや、こちらは予告編さえ触れることがなく、ただポスターを見ただけ。



 『Love Is All You Need』。邦題は『愛さえあれば』。おまけにピアース・ブロスナンPierce Brosnanが主演。
 ハハハ、これだけ見ると相当ベタでしょ?どうしてそんな映画を観たかって?
 何だかねぇ、このところ子供向けのアニメやらSFやらばかり溢れていて、ちょっと“おとなのロマンス”みたいなものに接したかったのが一点、それからずっと寒かったのでどこか暖かそうな場所の映画がいいなというのがもうひとつの理由(だってこのポスターから判断するに明らかに舞台はイタリアでしょ?)。

 そして本当のこと言うと時間的にこれくらいしか合うのがなかったんですよ。しかも夕食時に少し酒を飲んで眠たかったので、台詞にも苦労しないような単純な物語がいいかな、と。

 ところがこれまた予想と全然違う展開。
 第一いきなり字幕ですよ。僕はてっきりイギリス映画だと思っていたのに最初の台詞がデンマーク語。あれっ?...そこからいきなり眠気も覚めて、そのうち上手い話の進め方に惹き込まれて……
 結論から言うと、これまた気持ちの良い裏切られ方でした。単純な中年同士のラヴロマンスを超越して、家族の在り方や女性の自立みたいなテーマまで想起させる、なかなか憎い作り。

 あとで監督をチェックしてみたら、知る人ぞ知るスザンネ・ビア Susanne Bier。彼女はアカデミー賞の外国語映画賞を取ったこともある優れた人物なんですが、どちらかというと重々しい作風なんですよ。それが今回のような、ある意味こなれたハッピーエンドの映画を撮るというのも意外でした。

 まぁ、気持ちの良い裏切られ方なら何度でも経験したいものです。

デジタル音楽時代に欠けていたもの

2013-05-14 | 音楽
 まったくね、「今度こそ」と先日ブログに書いたばかりなのに、また春がどこかに逃げちゃいました。今日は最高気温が10度までしか上がらず、おまけに雨。街はコート姿で溢れていました。
 こんな日は古傷の膝が痛むんですよ。夕方医者に行ってとりあえずの治療をしてもらいました。先生が自分でもバンド組んでいるくらい音楽好きな方なので、診察の間も盛り上がって楽しいですが。

 本来ならこれから野外コンサートが楽しみな季節になるのですが、この天候の調子だと、さて......スタッフも大変でしょうね。昨夏は雨が続いて土がぬかるみ、ステージを設営できずに中止なんてハプニングもあったし……

 たまにコンサートをプロデュースする立場になって、やっぱり色々と見え方が変わりました。何よりもあの華やかなステージの裏で働いているスタッフの姿がよく見えるようになって、たまにPAや照明がおかしくなったりすると、まるで自分のことのようにドキドキします。
 それに脇で支えるバンドメンバーやバッキング・コーラスの人達。それぞれが技量で言えばメインのアーティストにも引けを取らないにもかかわらず、きちんと主役の立て方を知っています。

 これはレコーディングでも言えることで、だからこそアーティストや制作者はライナーノーツのクレジットに彼らの名前を載せて、その労をねぎらうんだと思います。

 さて、ここでふと気付かれるかもしれませんが、今やダウンロードやストリーミングが視聴のメインになっているデジタル時代。そこに表記されているのはせいぜいアーティスト、タイトル、アルバム、ジャンルくらいですよね。

 そこで、グラミー賞の主催者として有名な The Recording Academy(The National Academy of Recording Arts & Sciences, Inc.)が提唱したのが “Give Fans the Credit”キャンペーン。デジタル・ライナーノーツにバックのミュージシャンやプロデューサー、エンジニア等を載せようという主旨の動きです。



 このニュースが流れたのが昨年の夏だったんですが、このほどやっとそれに賛同する会社が現れました。デジタル・オンライン・サービスの Rhapsodyです。これから何ヶ月かかけて完成させるとのことですが、どういう形になるのか楽しみです。



 一昨日のブログでインターネットの時代に情報過多になったというようなことを書きましたが、こうして逆に情報が少なくなった部分もあるんです。
 でも、やっぱりその良さはあるわけで、例えばバックで弾いているベースが気にいったので、彼が参加しているアルバムをもっと聴いてみたいとかいったケースの場合、デジタル・ライナーノーツがあれば、それを検索するのはむしろアナログよりも楽にできると思います。

 実際、映画なんかだと、主演だけでなく、監督やプロデューサーで観るかどうかを選ぶなんてこともあるわけで(脚本家やカメラマンで、なんて通な人もいるかも)、音楽もそういう注目の仕方で臨んでいる人だってきっといますよね。

 ところで音に関しては、所詮(と言うと言い過ぎですが)デジタルの音はアナログの音の情報量を埋めきれないんです。どんなに精度を高めていっても理論上どの部分かは必ず欠如するわけなんですから。
 両者聴き比べると、やっぱりアナログの音の暖かさに気付くと思います。そう、情報には“暖かさ”が必要ですよね。

情報

2013-05-13 | 日常
 昔、某英会話学校のTVCMで「tangible」という言葉を(確か)関根勤さんが連呼していたのを覚えています。直接日本語には訳しにくいですが、実際に触れることができる、そこに明らかに存在しているものに使います。

 形が見えるものに付ける価値というのは割と理解し易いでしょうが、形の見えないものはさてどういった基準で判断すればいいものか?

 「情報」なんて、形が見えない最たるものかと思いますが、「ぴあ」を始めとした情報誌が発刊された当時は、あぁ情報に対して金を払う時代が来たんだと感慨深かったものですが、それらの全てが今は廃刊。

 さてロンドン。
 昔旅行で訪れた時には『Time Out London』が必須でした。あわよくば滞在時に面白いライヴを見たり、美術館の催しに滑り込んだり、話題の映画を先取りしたり……そのための情報は殆どこの情報誌から仕入れていました。



 ところが…..
 いや、まだ存在するんです。でも最近無料になって売店の前や書店のレジの横で山積みされているのにびっくり。
 そう言えば新聞の『Evening Standard』も随分前から無料だし、『Metro』は最初から無料の新聞だし、情報イコール無料というのが最近のスタンダードになってしまいました(でも当然これは情報を受ける我々からの見方なので、マネタイジングの方法が変わっただけで、情報に価値があるのは変わりないんですが)。

 もちろんこれら全ての現象がインターネットの影響。本当に大きく情報の在り方を変えてしまいましたね。
 でも今度は溢れる情報をどう整理するかが至難の業。買い物ひとつを取っても、出てくる検索結果が膨大過ぎて途方に暮れている人もおられるのでは?
 ソーシャルだとかキュレーションだとか色んなタイプの解決方法が出てきて、さて何年か後に今度はどういう形に落ち着いていることやら。

ストーンズの前座

2013-05-09 | 音楽
 ブログを“冬眠”している間に知らせ忘れていることがたくさんありそうなんですが……そうだ、まずストーンズのコンサートの追記。
 案の定(と言うべきか)追加公演が発表されて、これは先行予約で難なくチケット入手できました。

 夏ですから日が落ちるのは遅くて、照明のことを考えると9時くらいから彼らの出番だろうと思っています。いや、この時間でもまだまだ明るいんですが、何しろ最近は近隣の方の苦情を考慮して終了時間厳守!それを過ぎると罰金はともかくとしても(実際彼らは昨年のO2公演では2回とも支払っていますが)昨夏のブルース・スプリングスティーンのライヴの時なんて電源ごと引っこ抜かれましたからね。

 さて、そうなると何時に出かけるかが問題。
 正午の開場で延々夜の11時過ぎまでですから、ひとりでスタンディングというのはちと辛い。じゃ前座で決めようかな。

 そこで名前を見てみると、Jake Bugg、Tom Odell、The 1975……活動歴50年を越す大ベテランバンドからしてみたら、まるで子供、いや孫のような世代の若手が並んでいます。
 最近こういった生きの良いミュージシャンがUKやアイルランドから次々に出てきているんですが、皆なぜか昔の懐かしいサウンドを彷彿とさせて、個人的には嬉しいですねぇ。
 このライヴには参加しませんが、この他にもThe Strypesなんて皆ティーンエイジャーなのに骨太のロックンロールで、ポール・ウェラー、ジェフ・ベック、ノエル・ギャラガー、エルトン・ジョンなどの一流ミュージシャンが彼らの“ファン”だと言っているんですよ(逆じゃないですよ)
 ......と書いていて今調べたら、Jake BuggもStrypesも、もう日本で公演しているんですねぇ。さすが日本は早いなぁ。

 さて、こうした新人アーティストの情報を全てCD買ったりダウンロードしたりするのはちょっとリスキーなんですが、便利なのはspotifyなどの無料音楽配信(その代わり時々CMあり)。もちろんミュージシャン自身には聴かれた回数に応じて支払われる仕組みですが。
 僕自身はCMもなく時間無制限で音質も良くモバイルでも聴ける有料配信にしていますが、それでも月に10ポンド以内の定額で聴き放題。



 こうやって見てみると、音楽業界の収益の仕組みもまるっきり変わってきましたね。何だかあまりにシステムが複雑になって来ると、その場で良いライヴに投げ銭するようなシンプルに自分の感動を伝える仕組みがそのうち盛り返してきたりして(笑)音楽自体が先祖返りしている気がするのもそういった反動からかな。

今度こそ

2013-05-09 | 日常
 今度こそは宣言してもいいと思うんです。春が来た!(随分遅いけど)
 先月は何度も何度もこれで安定したと思った途端に裏切られ、またセーターやコートが必要になったりしていましたが、もう2週間以上穏やかな天候が続いて、公園に行くとあちらこちらで花が咲き誇っています。
 



 早速週末は散策を楽しみましたが、たくさんの人(ばかりでなく蝶や鹿やダチョウまで……えっ?)が春の光を楽しんでいました。




 ローズガーデンはまだちょっと早くて蕾のままでしたが、花屋の店先ではもちろん薔薇は溢れています。(そう言えばフラワーショーももうすぐだ。)



 それにしてもこちらの人の生活の中にはなんと自然に花が取り込まれていることか。
 何気なく薔薇の一輪でも家に買って帰るような……ことが似合う男性ってなかなか日本人にはいないんですよね。こちらに赴任していた人が日本に帰国するとそういうことをするようになると聞いたことがあるんですが、本当かな?

 さて、このブログも殆ど冬眠状態だったので、ぼちぼち目覚めなきゃ。