HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

U2のルーフトップ・コンサート

2009-02-28 | 音楽
 友人からのメールで久々にビートルズの話題になり、“LET IT BE”のDVD化の話題に及んだところでした。あの映画は何と言っても最後の旧アップル・オフィスの屋上でのライヴ(ルーフトップ・コンサート)が興奮ものですよね。行われたのが1969年の1月30日ですから、丁度40年前のことになります。
 今でこそ温暖化云々で、確実に平均気温は上がっていると思いますが、あの日のロンドンは記録によれば摂氏2度。その上、屋上で風が吹いているわけですから大変。映像を見ても寒そうですよね。

 ところであの場所(3 Savile Row)は繁華街からわずかに入り込んだ場所に位置しますから、予告なしのゲリラ・ライヴとはいえ人が集まるのは当然で、ましてやそれがビートルズの生演奏(しかも久しくライヴが途絶えていた)となったら、もう寒さのせいじゃなく鳥肌が立ちそうですよね。

 あ、そうだ、話が戻りますが、その友人からの最後のメールを読んで、このルーフトップ・コンサートのことを思い出しながらTVを点けたら、BBCニュースでU2が生で歌っていたのです。しかも放送局の屋上。今日は彼らのニュー・アルバムのプロモーションのためラジオに生出演していて、その流れの行動のようです。
 これも予告なしのシークレット・ライヴだったのですが(少なくとも建前は)、これまた繁華街に近いこともあって、周囲はこの偶然を楽しむ人達で一杯になっていました。彼らにとって幸いだったのは、今日のロンドンは久々にコートも要らないくらいの暖かさだったことかな。



 U2はご存じのように、初期からずっと音楽的にも冒険を繰り返してスタイルを変化させつつも、宗教紛争、反核、薬物問題、人権問題など社会性の強い歌を歌い、しかもそれがセールスに直結しているという希有なバンドです。(全世界で1億数千万枚のアルバム・セールス!)
 ヤワなラヴ・ソングとは離れた位置にありながら、もっと深いところでの愛を歌う真摯な姿勢がきっと皆に受け入れられているのでしょうね。ニュー・アルバムが楽しみです。(日本では世界に先駆けての発売なので、もう聴けるんですよね)

ショッパホリック

2009-02-27 | 映画・演劇
 本屋さんという空間が好きなので、ついふらりと立ち寄ってしまいます。毎回変わる平積みの新刊を眺めて、一生のうちに読める冊数を考えると悲しくなってしまいます(このうちの何パーセントを読むことができるんだろう)
 そうなると取捨選択をしなければならないわけです。日本にいた時は何行か立ち読みして、殆ど“勘”あるいは“匂い”みたいな本能的なもので嗅ぎ取って買っていましたが(今、考えるとリスキーですねぇ)、残念ながら英語本でそこまでできるわけもなく、じゃ、いっそのことカバーの絵で選んでしまおうか、なんて思ってしまいます(これまたリスキー)

 仕事柄(?)女性の間でのベストセラーという紹介にはつい目が行ってしまうのですが、その中のひとつがソフイー・キンセラSophie Kinsellaの“The Secret Dreamworld of a Shopaholic”。日本で『レベッカのお買い物日記』のタイトルでシリーズ化されているものの第1作目がこれだと思います。
 金融情報誌のジャーナリストとして働く(この経緯にまた色々と含みがあるのですが)レベッカの使命は“賢いお金の使い方を説くこと”であるにもかかわらず、実は......というコメディーなのです。

 この小説が、舞台をロンドンからNYに移して最近映画化されました。その名も“Confessions of a Shopaholic”。アメリカでは小説もこのタイトルでリリースされたようです。
 多分この手の映画、日本にいたら観ることもなかったでしょうが、さすがにイギリスでのベストセラーの映画化ということで話題になっていますし、以前ここでも書いたように、Cineworldの会員になっていて何本でも定額で見放題なので、あまり躊躇せずに軽いノリで観られるのです(これはリスキーじゃないでしょ?)



 主演はアイラ・フィッシャー。と言っても出演作の殆どが日本未公開なので知らない人の方が多いでしょう。でも脇をジョン・リスゴーやクリスティン・スコット・トーマスといった名優が固め、監督はP.J.ホーガンです。
 おきまりのドタバタ劇と言ってしまえばそれまでですが、何故か好ましい映画に仕上がっています。きっと登場人物たちが皆、欠点はあってもイヤなやつじゃなかったからなんでしょう。

 それにしても“shopaholic”という言葉、ドキッとする人も多いんじゃないですか(笑)

COOL ! な日本の若者文化

2009-02-26 | 日常
 友人の娘が成長して、この頃日本の若者のファッションに興味を持っています。以前も日本に一時帰国した折に“Harajyuku”で何か買ってきてくれと頼まれたのですが、一体何が“原宿っぽい”のか分からず終いでした。その後本人から説明を受けたら、いや、詳しいこと!
 
 そう言えば、以前リヴァプールでポールのライヴを観た時も、一緒になったイギリス人に、娘がJ-POPに夢中になっていると聞きました。どうやらヴィジュアル系のロック・バンドのことらしく、その娘さんの周りでも凄い人気らしいです。
 こちらにいる日本人の女性(もう大分年齢の高い方です。失礼)に、彼らが人気あるのは「足が短いので、化粧をすると人形みたいで可愛いからなのよね」なんて解説を受けましたが、本当かどうかわ分かりません(笑)

 それからゲームの人気はもう言うまでもないこと。最近ではレコード店のフロアの一番良い場所を争うくらいになっています。

 そんな中、実はイギリスでの「漫画人気」は他の国(アメリカ、フランス、ドイツ等)に比べたらずっと遅れていました。イギリスでのオリジナルの漫画は単純であまり深みのないものだったので、出版社の保守的な性格も相まって、あまり盛り上がりを見せなかったのです。

 ところがこのところどの書店に行っても“MANGA”の文字が目に付くようになりました。
 日本の漫画は、「ストーリーもしっかりしていて“COOL !”」なので、熱中する若者達が多くなってきて、出版社も無視できない存在になってきたのです。書店も時々イベントを開き、その際には明らかにそれと分かる若者たちが集まってきます。こんな姿を見ていると、あぁ日本と同じだなと感じます。



 ところで漫画好きで有名な首相は、ずっと苦戦が目立ちますね。日本としては若者文化の発信の道具として漫画を利用したいと思っているでしょうが、このままでは漫画がCOOL !と思われなくなるんじゃないかと心配です(笑)

彼は君のことを...

2009-02-25 | 映画・演劇
 『おくりびと』がアカデミー賞を取りましたね。きっと日本ではこの不況下での明るい話題で盛り上がっていることでしょう。

 イギリスでも『スラムドッグ・ミリオネア』が作品賞他8部門で受賞し、その中にはダニー・ボイルの監督賞も含まれ、またケイト・ウィンスレットの主演女優賞など、イギリス映画としてはおそらく『イングリッシュ・ペイシャント』の時以来と思われる快挙で、あらゆるマスコミが競って取り上げています。
 その反動なのか、外国語映画賞のことなど全く触れられることもなく、ちょっとそれも寂しい気がしますが...
 
 アメリカでの受賞式の視聴率も、かつてのような勢い(『タイタニック』を最後に沈んでいます。あ。洒落じゃないですよ)ではないにしろ盛り返しているみたいですね。映画全体の興行成績も勢いよく上がっているみたいです。ただ、式直前の興行成績を見ると、時期の割には意外にアカデミー・ノミネート作品が伸びていないんですよね。
 どうしてかというと、賞には多分縁がなさそうな、他の商業的作品がけっこう人気を集めているからなんです。

 そのひとつが“He’s just not that into you”です。このタイトル何だか覚えにくいでしょ?要するに、「彼はそんなに君に惚れているってわけでもないよ」といった意味で、彼がいまいち自分に対して煮え切らないのは、きっと他に理由があるからだわ、という女の子の言い訳を冷たく否定しているんですね。



 このドラマ、女優の名前だけ挙げても、ジェニファー・アニストン、ジェニファー・コネリー、ジニファー・グッドウィン、スカーレット・ヨハンソン、ドリュー・バリモア、という錚錚たるメンバーです。誰かひとりずつでも簡単なラヴ・コメディーなら作れちゃいそうですよね。

 まぁ優秀な群像劇というにはいまひとつの出来で、欠点も多く、おそらく評論家からの批判は出るでしょうが、僕自身はけっこう楽しめました。女優達もお互いあまり出しゃばるでもなく、むしろ控えめな様子だったのが、今振り返るとちょっと印象的です。
 それにしてもこの映画、カップルで観に行くと、けっこう痛い思いを抱く人も多いんじゃないかな(笑)

 いずれにしろ、アート系から商業系、大型作品から小粒のもの、色んなタイプの映画が揃うのはファンにとっては嬉しい限りで、映画館も不況下で逆に活気を呈している感があるのが嬉しいです。

豚の貯金箱

2009-02-24 | 日常
 先日買ってきたチーズ(ブイヤ・サヴァラン / ブリア・サバラン)はいつもより少し高い値段でした。何故かというと、中にトリュフが挟まっていたんです。ゆっくりと小さく切りながら香りを楽しみました。

 ところで、トリュフには雄豚のフェロモンと同じ成分が含まれていて、それゆえトリュフ狩りに雌豚を使うんだという話は有名ですが、本当なんでしょうか?
 貪欲な豚が掘り出したトリュフを食べてしまうことが多いので、今では訓練しやすい犬を使うとか言うのも聞いたことがありますが、その他にもフランスでは豚でイタリアでは犬だとか、白トリュフと黒トリュフで両者を使い分けるんだとか、いやはや豚を巡る謎はたくさんあります。



 でも最大の謎は、何故貯金箱のデザインは豚を模しているのか、ということじゃないでしょうか?
 これってやっぱり疑問に思う人が多いみたいで、ネットで調べてみたらけっこうたくさん同じテーマで扱っていました。回答はどれも殆ど同じで、大きくは2つに分かれていました(もしかしたら、どれもひとつの回答を引用しているのかな?)簡単に言うと;

① 昔のヨーロッパではpyggと呼ばれるオレンジ色の土で食器が作られていたのだが、ある時貯金箱の注文を受けたイギリスの陶芸職人がpyggとpigを勘違いして、豚の形をしたものを作ったところ、これが人気を呼んで定着した。
② 韓国では豚がお金を意味する語と同じ綴りということから、演技の良い動物と見なされていて、貯金箱に採用した。

 う~ん、一見納得するような気もするけれど、怪しくもあるなぁ(笑)。いずれにしろ、豚の体型や、食べ物に対する貪欲さや、子だくさんのイメージは、金が貯まるような気はしますけどね。
 ちなみにうちで東京時代に使っていた貯金箱はペンギンの形をしていました。もちろん(?)お金は貯まりませんでした(笑)

ジェーン・バーキンとアウンサンスーチー

2009-02-23 | 音楽
 ジョン・バリー(作曲家)、セルジュ・ゲンズブール(歌手・作曲家・監督・俳優...なんて定義付けさえ難しい多彩な才能ですが)、ジャック・ドワイヨン(映画監督)という錚錚たるメンバーを挙げれば、誰のことを言いたいか分かると思いますが、これらの男性達と結婚し、その間にもうけた子供達がまた写真家や俳優として活躍している(ケイト・バリー、シャルロット・ゲンズブール、ルー・ドワイヨン)というのだから凄いですよね。

 でも、その人ジェーン・バーキンほど、若い頃の華やかでスキャンダラスなイメージ(尻軽な英国女とまで言われたことも)と実態がかけ離れている人はいないんじゃないでしょうか。
 これまで何回かライヴを観ていますが、そこで感じる彼女の性格は、素朴で知的で穏やかといった正反対のイメージです。もちろん年齢を重ねたきたせいもあるでしょう。

 彼女がニュー・アルバム“enfants d’hiver 冬の子供たち”をテーマに、Barbicanでコンサートを開き、前から2列目という近い席で楽しんできました。
 正直言うと、最初に舞台に姿を現した彼女を久しぶりに見た時、さすがに長い年月を感じずにはいられませんでした。それもそのはず昨年の12月で62歳になっているのです。それでも時折見せる表情に若い頃の面影を感じます。



 英語とフランス語を織り交ぜて(たまににごちゃまぜでしたが)、時に客席まで降りてきて、ライヴを進行する彼女の顔からは終始笑顔が絶えませんでしたが、ただ一度ニュー・アルバムからの新曲を披露する時に顔がこわばりました。
 このアルバム、全ての詩を彼女自身が作っているのですが、そのうちの1曲が『アウンサンスーチー』で、「アウンサンスーチーはもうすぐ亡くなり、良く売れるTシャツの絵柄になるだろう...」というショッキングな歌詞から始まります。もちろん現在のミャンマーの軍事勢力に反対する社会的な歌であり、近年アムネスティの活動などに賛同している彼女の精神から生まれた曲なのでしょう。とても力強さを感じる異色の曲です。

 歳を取ってから逆に、素直に自分の精神のままでいられる居場所を見つけたように思えます。これからもずっと音楽や映像を通じての活動を続けていってほしいものです。

ヴェニスで思い出した本木雅弘さんのこと

2009-02-22 | 旅・イベント
 カメラを持って旅に出ると、それこそ切りがないくらい撮りたいシーンに出くわします。でも躊躇するのは、昔からいやと言うほど誰もが扱ってきた典型的な観光名所を撮る時です。
 有名な場所を訪れた“確認のための記念写真”にはしたくないので、自分が美しいと感じる気持ちがうまく表現できればいいのになと思って、光の加減や被写体の偶然を期待してしまいます。



 そういう意味ではプロのカメラマンって本当に凄いですよね。偶然を必然として技術的に取り込んでいかなければならないんですから。風景もそうですが、人物の撮影となると、背景だけでなく多様なモデルの表情からベストを引き出さなければなりません。
 アカデミア橋のたもとでウェディング・ドレスの撮影をやっているのに出くわしました。真冬に(特にこの日は寒かったのです)ノー・スリーヴのドレス1枚というのは辛そうです。



 実は僕もプランナーとして制作の現場には何度も付き合っていますので、こういった大変さは何となく分かります。冬に夏のシーンの撮影の時なんて、薄着に耐えることだけでも大変なのに、氷を口に含んでもらって温度を下げ、息が白くならないようにすることもあるんです。こういうことに耐えるモデルさんや俳優さんも凄いですよね。

 この逆に真夏にセーターを着ての撮影なんてこともあります。思い出すのは随分昔のことですが、ある夏都内某所で撮影をして移動中に、同じく撮影で移動中だった部隊(男性ファッション誌じゃなかったかな)とすれ違いました。その相手のモデルがまだ随分と若かった本木雅弘さんだったのですが、ぶ厚いセーターを着ているにもかかわらず、爽やかな感じでカッコ良いのです。
 するとすれ違う時に彼が僕の方を向いて丁寧に挨拶してくれたのです。

 もしかして誰かと間違えたのかもしれませんし、あるいは同じ撮影隊ということでの挨拶だったのかもしれませんが、いずれにしろ、若くて人気者なのに(普通は天狗になりますよね)きちんとした礼儀正しい人だなという印象を持ちました。
 そういうイメージがあったので、映画『Departures おくりびと』を観た時も、死者に対して分け隔て無く、礼節を以て向き合う主人公の態度が自然に本人に重なりました。

 僕はもちろん彼のことを知っているわけでもなく、仕事上の付き合いも一度もありません。それでもたった一回の印象がずっと残ることもあるわけです。
 かたやでヴェニスのレストラン。某人気店に行ったのですが、観光客に対する態度の横柄さにはびっくり。きっと一見客だけでも成り立つ場所だから、そういう態度が習慣化しているんでしょうね。今回の旅で唯一後味の悪い経験でした。

 それやこれやでヴェニスで本木さんのことを思い出したという次第です。もうすぐアカデミー賞の発表ですが、『おくりびと』は外国語映画賞にノミネートされています。良い結果が出ればいいですね。

日本人(女性)のパワー健在

2009-02-21 | 旅・イベント
 ロンドンで“日常”が再開しましたが、写真もたくさん撮ったことだし、もうちょっとだけヴェニスのネタで書いてみようかと思います。

 水の都で移動の足は船だというのは書きましたが、ボートをよく見てみると、エンジンはHONDA、SUZUKI、YAMAHA...とほぼ全部が日本製です。車の走らないヴェニスの街で日本車が見あたらない代わりに、こんなところに進出しているんですね。最近日本のパワーが色んな面で落ちているように感じているのですが、こんなところを見るとまだまだ健在だと思ってしまいます。



 パワーという意味では、到着初日に街を歩くと聞こえてくるアジア系の言葉は殆どが中国語が韓国語で、観光のパワーも日本は押されていると感じたのです。
 いや、何が凄いかというと、次のような点。

 3日前のブログに書いたように、カーニバルの期間なので街中は仮面を被った仮装の人達で溢れてしまいます。これの撮影のために、観光客のみならず、雑誌関連のプロのカメラマン風な人たちも訪れていて、完成度の高い仮装ほどたくさんの人達が周りを取り囲んで、撮られる側も熱心にポーズを取ります。



 カメラを構える側はそれなりに互いに気を遣って、撮影の邪魔にならないよう位置取りしているのですが、そんな空気にお構いなしに、中国や韓国の人達(ごめんなさい、あくまで一部の人達の話です)は、そんな被写体の横につかつかと歩み寄って、グループで何枚か記念撮影をして去っていくのです。その間他の人達はカメラを持つ手を休めなければなりません。
 凄いなぁ、きっと日本人はこんな時遠慮してしまうんだよね。と、むしろその“あつかましさ”に力強ささえ感じたのです。

 ところが翌日、どういうスケジュールの巡り合わせなのか、今度は行く先々日本人の団体旅行客で溢れています。何だか一昔前の海外旅行の風景を見るような感覚でした。
 それにこれまた昔の日本人のパワーを感じる“あつかましさ”なのです。面白かったのは男女のグループの会話。皆で仮装の横に立って記念撮影をしたがっているのですが;

 男:「え、側に行ってもいいんですかねぇ?」
 女:「何言ってんの。そんなこと躊躇してたら皆の分撮れないでしょ。早く行って。次、私ね。」

 これ、誇張じゃなく本当に側で聞いた通りの会話なんです。おまけに2組目の仮装に拒否されたら、その女性「意地悪ねぇ」と大きな声で言ってました(笑)いや、たくましい!

 ちなみに、仮装する人たちは、毎年参加している“プロ”のような人もいれば、ホテルのレンタルで衣装を借りている観光客もいます。このままの服装でカフェやレストランにも入ってしまうので、本当に街全体がタイム・スリップしてしまうのです。



 ちびっ子たちも、ちょっとテーマは違いますが(笑)喜んで参加しているようです。こんな子らが病み付きになって、またおとなになって仮装してしまうのかな。


「ヴェニスはいつか消えるのよ」

2009-02-20 | 旅・イベント
 ロンドンに戻ってきました。たった3日間(最初の日は午後遅くからだし、今日は午前中だけだったので、実質2日間かな?)の滞在でしたが、カーニバルの期間だったので印象も普段より強烈だったかもしれません。
 楽しそうですね、とのメールもいただきましたが、単純に“楽しい”というのとも違う複雑な気分です。観光客で溢れているサンマルコ広場(ここが仮装した人たちの一番多い場所でもあります)から抜け出し、ひとりで狭い迷路を歩いていたりすると、ふと悲しい気分にさえなったりします。何なんでしょうね、これは。

 水面に映る古い建物やゴンドラの影を見つめていると、本当にこの土地は水の上に浮いているんじゃないかと錯覚する時があります。この脆さ、怪しさが気持ちを不安定にさせるのかもしれません。
 


 “不安定”という意味では、ここは本当に物理的にも問題があります。
 干潟に丸太の杭を大量に打ち込んだ土台の上に建物が建てられているのですが、対岸での工業用の地下水のくみ上げで地盤沈下が起こっているのです。そのせいか、街を歩いているとたくさんの傾いた建物を見ることができます。中にはピサの斜塔顔負けの傾いた塔も。

 

 有名なacqua altaと呼ばれる高潮で起きる水没したサンマルコ広場の写真を見たりすると、温暖化現象も加わって、本当にヴェニスはいつか水没してしまうんじゃないかという気さえします。

 そう言えば(なんて言いながら宣伝ですが・笑)HOBNOBの歌に『モノクローム・モノローグ』というヴェニスをテーマにした歌があります。西川と随分昔に、この仮面のカーニバルをテーマに話し合って作りました。引用して終わります。
(CDをお持ちでない方、ホームページから少しだけ視聴もできますので、よろしければ http://hobnob.jp/CD.html アルバムの最初の曲なので、意識して長いイントロが続きますが)

 【 モノクローム・モノローグ 】

 雨に濡れたヴェニスは モノクロームに霞んで
 君と僕だけに色がついていた そんな気がしてた
 雨宿りのカフェ・フロリアン 時間は逆に流れて
 人いきれの中君がささやいた そんな気がしてた
 「ヴェニスはいつか消えるのよ」

 カルナヴァルのサンマルコ 世界は踊り続けて
 君と僕だけが仮面はずしてた そんな気がしてた
 さまよい込んだ小道で 震える猫を抱き上げ
 振り向いた君は他人の目をした そんな気がしてた
 「ヴェニスはいつか消えるのよ」

 どこかでふたりはぐれることがあっても
 迷う君を捜し出せる いつか
 いつか いつか いつか ......


 夜明け前の海際は ゴンドラ達も眠って
 君と僕だけが目を覚ましていた そんな気がしてた
 世界が目覚めぬように 声をひそめて話せば
 ふたりは時の彼方に来ていた そんな気がしてた
 「ヴェニスはいつか消えるのよ」

 消えて行くヴェニスを超え時間も超えて 
 戻る場所を見つけだせる いつか
 いつか いつか いつか ......


<作詞:西川泰明、作曲:野中正道>

ホテル・ダニエリ

2009-02-19 | 旅・イベント
 ヴェニスの街を歩き回る時には地図から目を離してしまいます。道が複雑でいちいち見るのが面倒ということもありますが、あの複雑に入り組んだ狭い道にぶつかると、つい知らない方向に向かってみたいという誘惑にかられるからです。何も目的を持たずに歩いても、迷い込む道々に発見(ある時は不思議な懐かしさ)があって楽しめます。

 実は何故方向音痴の僕がそんな冒険ができるかというと、どこかに必ずサンマルコ広場への方向を示す標識があるので、いざとなればそれを頼りに歩けばいいからです。根性なしで長距離を走るのは苦手ですが(笑)歩くのは全然苦にならないので、むしろ車の嫌いな僕にとっては有難い街かもしれません。

 あ、車の話をし忘れましたが、街中は車が走っていません。あったところで通れるような広い道路はなく、すぐに運河に突き当たるのでどうしようもないでしょう。
 代わりの足が船です。バスも船、タクシーも船、荷物を運ぶのも船になります。複雑に入り組んだ運河をうまく利用して目的地の近くで船を下りるわけです。観光用にはゴンドラが有名ですね。
 ちなみにゴンドラは観光目的ですのでまぁ分かりますが、水上タクシーもとても高いです。でもまぁ自分の目的地に一番近いところに止めることはできます。しかし、そこからはもちろん歩き。歩きにくい石畳の上をスーツケースを転がして歩かなければなりません。



 今回は高い値段を知りながら水上タクシーを利用しました。理由があるのです。
 ホテル・ダニエリHotel Danieliはおそらくヴェニスで一番高級なホテルですが、ここは隣に運河が流れていて、横付けした水上タクシーから直接チェック・インができるのです。一度これをやってみたかったのですが、今回2泊だけなので、ちょっと贅沢してみました。



 昔から名だたる文豪や作曲家などが宿泊し、映画にも登場するこのホテルは、タイム・スリップしたヴェニスの街をそのまま集約したような空間で、観光客で一杯の外の喧騒が嘘のようです。
 ところで映画と言えば、『ニキータ』で、結果的に彼女の最初の“任務”地となったのがこのホテルでした。彼女にしてみたらその直前の夢のような時間から、たちまち現実に引き戻されたような瞬間だったでしょう。
 さて、明日はもう夢の世界からロンドンの現実に戻ります。