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ロンドンから徒然に

画家の手紙~The Real Van Gogh

2010-01-31 | アート
 数ある今年の展覧会の中でもおそらく目玉になると思われる“The Real Van Gogh : The Artist and His Letters”が開催されています。ロンドンでは40年ぶりと言われるこのゴッホの本格的な展覧会は、65点の油絵と30点のデッサンのみでなく、タイトルが示す通り35通の手紙に特徴付けられています。



 開催前から地下鉄の広告などで大々的に宣伝されていたこともあって、会場となるロイヤル・アカデミーでは、今日もチケットを買うたくさんの人の列が出来ていました。しかも、こちらでは人気の展覧会は時間制の入場方式を取っていて、すぐに入れるわけではありません。購買時に(あるいは予約時に)指定された時間に行かなければなりません。(こんな時、会員でつくづく良かったと思います。いつでも自由に入れるんです)



 ところがそんな入場制限にもかかわらず、今日はけっこう日本の美術館と同じように混んでいて、ゆっくり前の方で見ることができませんでした。ましてや手紙の小さな文字を見るのは大変です。もっとも大半はオランダ語で書かれているので、結局内容に関しては音声ガイドに頼りましたが。
 “大半は”と書いたのは、中にはフランス語や英語で書かれているものもあるのです。大抵は弟テオに宛てたものですが、そのほかベルナールやゴーギャン等の画家仲間に送ったものもあります。

 手紙を読んで(聴いて?)感じるのはゴッホの絵に対する一直線の情熱です。次の絵の構想をテオに語り、デッサンまで添えられた手紙と、それが具現化された油絵を並べて見ていると、その意図が深く感じられるような気がします。
 また中には絵筆やパレット等の購入をテオに依頼する内容のものもあり、財政的にも心情的にもゴッホを支えた弟のテオの存在感もよく伝わります。

 絵の方は、ポスターに使われた“Self-portrait as an Artist”のような良く知られた作品もありますが、マスターピースで固めたという印象よりは、どちらかというと掘り出し物を上手く並べたという印象です。
 音楽に例えるなら、有名楽曲でストレートに進行するコンサートでなく、MCも交えながらミュージシャンの人間性に触れるライヴといった感じでしょうか。

 それにしてもたかだか10年程度の(しかも売れない)画家生活というのが本当にもったいなく思えます。

聖マルティン教会の内部

2010-01-30 | 旅・イベント
 今、写真を整理していたら、何日か前のブログで聖マルティン教会の内部の写真をアップすると書いておきながら、そのままだったのに気付きました。



 ケルン(ドイツ語でKöln)は英語でCologneと言います。ラテン語のColonia(植民市)を語源としていることから分かるように、この街はもともとローマ植民市として建設された街なのです。滞在中もあちこちで工事現場を見ましたが、ローマ遺跡の保護に神経を使っている様子でした。

 その後の趨勢はここで簡単に書けるようなものではないと思いますが、かつて街の中心だったのが聖マルティン教会のある旧市街で、尖塔の大きなこの建物は街のランドマークだったに違いありません。
 その後、大聖堂(こちらはゴシック様式)にその座は奪われましたが、ロマネスク様式のこの建物は美しくて好きです。

 では、内部の写真を載せて、今日は“おやすみなさい”





Ozu 映画の人気

2010-01-29 | 映画・演劇
 TVは大抵ニュース専門番組を付けているので、あまりドラマだとか他の番組は詳しくないんです。でも誰でもその存在を知っているのが長寿番組の“EastEnders”。放送が始まったのが1985年2月といいますから、なんと25年も続いていることになりますね。

 いわゆるsoap operaと言われる類のメロドラマなんですが、そう言い切ってしまうとコアなファンに叱られそうなくらい、家族に関する色んなテーマが詰まってドラマティックです。
 実はこれまで殆ど見たことがなく、今年になってたまたまその時間帯に(あ、ソープオペラから連想するような午後の時間帯ではなく夜にやっています)TVを点けたら気になって何回か見てしまったのです。

 というのも、チャンネルを合わせたらいきなり同性愛のふたりのラヴシーンがあって、しかもそのひとりが(因習的にこういうことには煩いと思われる)インド系の男性で、さらに別の女性との結婚を控えているという緊張感に満ちた設定でした。

  アメリカやイギリスのファミリー・ドラマを形容するのに、時々crockery-smashing rows(陶器を粉々にするような騒ぎ)という言葉が使われますが、事ほど左様にストーリー展開が派手だということなんでしょうか。

 そんな外国の人に古い日本映画、特に小津安二郎監督の静かな深い瞑想的な(言い換えれば“地味”とも映りかねない)家族の表現なんて理解されるんだろうかと疑問でしたが、なんとどの映画評も絶賛して、たくさんの人が映画館に足を運んでいるみたいです。



 その流れで是枝裕和監督の“Still Walking(歩いても 歩いても)”も公開され、小津監督の流れを継ぐ作品だと紹介されています。

 考えてみたら、日本に比べたら明らかに子供の数が多く、“家族”という単位がむしろ日本の古い映画の設定に馴染む環境なんじゃないでしょうか。
 彼らもこれらの映画を観て考えるところが多いのでしょうね。

ひとりのフレンチ

2010-01-28 | 旅・イベント
 ロンドンに戻って来た途端に、また税金やら何やらの事務仕事に追われて(締め切り間近!)その上この寒さ。カンヌでの、コンファレンスが中心とはいえ、音楽三昧がもう随分昔の話の感じがします。

 CDも買い漁ってきました。イギリスにはあまりフランスのポップスは紹介されないので、できるだけ新譜で面白いものを見つけようと思うのですが、まともに動かない試聴機が多いのにびっくり。
 うまく希望のCDを選べなかったり、片方の耳からしか聞こえないヘッドフォンだったり......初めは僕の操作方法が悪いのかと思っていましたが、隣でフランス人が大きな声で悪態を吐いていたので(笑)やっぱり機械のせいだと思います。

 フランスで次の楽しみはやっぱり料理かな。フランス料理は好きなんですが、困るのはひとりでテーブルを予約するのが気が引けることですね。
 その中でこのレストランは、気軽に入れてわりと美味しいんですよ。いちいち“田舎風”と書いているようにどれも見かけは地味で素朴な料理なんですけどね。いつも流行っていますが、早い時間に行けば大丈夫です。



 アラカルトはなくて、メニューだけです。
 まず小さなグラスにシャンパンが注がれて、前菜は自家製のテリーヌとハムとサラダを自分で好きなだけ取ります。と言っても僕の胃袋じゃたくさんは食べられませんが。
 続いてサーモンのマリネがウォッカと一緒に供されます。この組み合わせが合うんです。ちなみにハーフボトルのワインはメニューに組み込まれています。



 メインはいくつかから選べるようになっていますが、今回は兎の腿肉のマスタード・ソースにしました。



 なんて書いているうちにまた食欲が出てきました。真夜中なのにどうしよう(笑)

蚤の市とブティック

2010-01-27 | 旅・イベント
 ロンドンに戻ってきました。空港に着いた時点(午後3時)で気温は2度。それでも以前の大寒波の時に比べたらまだましなのですが、何しろ温和なカンヌからの戻りですから、やけに寒く感じてしまいます。

 そう言えばカンヌでは朝方からペタンクに興じる人をたくさん見かけました。ロンドンのような寒さの中ではちょっと辛いですよね。
 仲間同士で和気あいあいと笑顔のひとつでもこぼれるかと思いきや、投球の時も、どちらがビュット(目標となる小さな球)に近いかを計る時も真剣そのもの。単純に遊びというよりやっぱり“競技”なんですね。



 その近くでは蚤の市が。これ他の日に別の場所でも見つけましたから、土・日だけってわけでもなさそうです。どういう風に棲み分けしているのかな?
 ガラクタからちょっと掘り出し物っぽいものまで、いつもながらこういうのを見るのは楽しいです。エスカルゴ用の皿(カタツムリがデザインされています)があったり、200種類もの香辛料が並べられたりしているのはフランスならでは?




 朝早い時間のせいもあったかもしれませんが、お客さんは皆地元の人のようです。皆素朴で庶民っぽい人達ばかり。
 ところが海岸沿いのクロワゼット通りは高級ホテルや有名ブランドのブティックのオンパレード。こちらは間違いなく観光客がメインです。



 ニースとかに比べると、一見何もなくて地味に感じるカンヌですが、それなりに贅沢のできる人達にとっては買い物だとかカジノだとかヨットだとかで優雅な遊びができる街なんでしょうね。
 いつまで経ってもそちらの遊びはできそうにありませんが(笑)

カンヌ最終夜

2010-01-26 | 旅・イベント
 夏は乾燥してしまう地中海性気候のコートダジュールも、冬は適当に雨が降ります。で、今日は朝からずっと雨。もっともこのくらいの霧雨状態はロンドンでも多くて、大抵は傘もささないですし、どうせ1日の大半は会場内なので問題ありません。

 今日は日本を代表してソニーミュージックエンタテインメントの盛田会長の講演があったり、夜は“JAPAN NIGHT”で盛り上がったりと、日本をフィーチャーした日でした。
 僕はその他“British Acoustic”やLisa Hanniganを見ました。

 ところで今夜中の2時半過ぎ。さっきホテルに帰ってきたばかりです。
 実はオーガスタの森川さんも昨晩遅くこちらに着いて、今晩はソニーミュージックとエイベックスの方達とも合流して一緒に食事だったんです。



 見事に魚料理に特化したレストラン(肉は一切なし)で楽しんだ後、彼らの宿泊先のホテルのバーで打ち合わせ(という名目の呑み会・笑)
 写真は4kgもあるというメインの魚の岩塩包みです。

  昨晩着いたばかりの人が殆どなのに、明日は皆もうパリやロンドンに行く(僕は戻るんですけどね)ので、全員にとって今晩がカンヌの最終夜なんです。
 それにしても皆さん、素晴らしくタフ。時差ボケをものともせず、この元気ですもんね。こういった逞しさに日本の音楽業界は支えられているのかな。

南アフリカのミュージシャン

2010-01-25 | 旅・イベント
 冬季オリンピックがもうすぐですね。でもイギリスではあまり盛り上がっていないように感じるのは僕だけでしょうか。
 考えてみたら高い山もないし、イギリスにスキー場ってあるのかな?スコットランドに数ヶ所あるというのは聞きましたが、それもあまり雪は多くないと言っていたような……もっとも、異常気象だったこの冬はどこも雪には困らなかったでしょうが。

 ということで、イギリス人にとって今年は冬季オリンピックの年ではなく、むしろサッカーのワールド・カップの年ですね。開催地はご存じの通り南アフリカ。
 
 話がカンヌに戻ります。実は同じ音楽関連と言っても、昨日までは正式にはネットに特化したコンファレンスだったのです。で、今日が正式なイベントの開催日。オープニング・ナイトは南アフリカのミュージシャン達のプレイで飾られました。(そう言えば北京オリンピックの年は中国のミュージシャンだったような)

 某ホテルのballroomとsalonの二部屋を使って繰り広げられた競演はそれぞれのミュージシャンに特徴があってなかなか面白かったです。
 たくさんのグループが次々と出てくると音響や照明にトラブルは付きもので、僕なんか中途半端ながらもステージに出る側もスタッフの側も経験しているので、何か問題がありそうな場面に出くわすと他人事と思えず今でもドキドキしてしまいます(笑)

 それにしても世界中にはまだまだ日本人には馴染みのないミュージシャンがたくさんいます。
 左の綺麗な女性はLiraという、ややJazzとかR&B寄りのシンガーです。なかなか華があります。歌い始めると男性陣がたちまち前に陣取ってカメラを向けていました。
 対して右のおばさん(失礼!)はNothembiというベテラン・シンガーで、この人の存在感は凄い!ギターなんか殆ど単音弾きで、高音弦と低音弦を交代でスライドさせるだけなんですが、これが歌にぴったりはまってしまいます。歌はどこか沖縄民謡にも通じるような素朴かつ高揚感のあるメロディーと声。



 客席にいる南アフリカの人達(と言っても皆音楽業界の人なのですが)のノリも素晴らしく、ダンスにこちらもつい釣られてしまいます。



 ステージのバンドメンバー達は黒人・白人の混合が多く、ひと昔前のことを考えたら今は幸せだなと思ってしまいます。それとも音楽が人種を越えて結びつけるのかな。
 ワールド・カップの成功を祈ってます。

monetise

2010-01-24 | 音楽
 ブログには基本的に仕事の話は書かないことにしているんですが、音楽関連のものは趣味みたいなものですから(あ、決して軽いという意味ではないですよ)許されるかな。

 今日は朝から夕方までホールに籠もってコンファレンスでした。驚いたのは全てのテーマに必ずmonetise(米語だとmonetize)という言葉が出てくること。音楽を仕事にするからには、そりゃ稼げなくては仕方のない話ですが、ここまでストレートに金に直結する話題になることはあまり無かったような気が……

 要するに音楽自体はますます愛好者を増やしているけれども、皆がそれに金を使わなくなったので、業界としては一体どこで儲ければいいんだろうという話なんですね。
 考えて見たらYouTubeの例を挙げてみても分かるように、(画質はともかくとしても)昔だったらこの何分かの映像だけで十分金が取れた素材でしたが、今や皆がタダで見られるのが当たり前と思っている時代です。確かにビジネス・モデルをどう構築するかは難しい問題になっているのかもしれません。

 ところで、このコンファレンス、お昼休みともう一回の休みを挟みます。そのランチタイムに海辺に行ったのですが、ここには豪華なヨットが並んでいます。これだけで普通のマンションくらい買えてしまうのかなと思いながら歩いていると人だかりのしている場所があります。何気なく見てみたら、なんとMIKAが降りてきました。今晩のNRJ MUSIC AWARDS主催のイベントをやっていたみたいです。



 で、夕方ホールを後にすると、隣ではそのNRJ MUSIC AWARDSの開催前で、スターの到着を待ってたくさんの人が周囲を取り囲んでいます。間違って(笑)中に入れてもらったので、赤絨毯を正面から撮りました。ここを歩いていくんですね。
 暫くすると続々とノミネートされたミュージシャン達の到着です。中には昼間見かけたMIKAやロビー・ウィリアムズの姿も。うん、さすがにオーラがある。でも、フランスのミュージシャン達はあまり馴染みがなく、周囲の騒ぎ具合を人気の尺度にしていました。



 このノミネートされた人達はきちんとmonetiseできているんでしょうね。

カンヌから

2010-01-23 | 音楽
 やっぱりラテン系の言葉の方が好きですね。フランス語、イタリア語、スペイン語......何だか会話自体が音楽のような気がしませんか。
 今、カンヌにいます。ここはイタリアに近いからか、言葉もパリの人と比べるとやや母音が強くてイタリア語っぽい響きに感じます。レストランでもピザやパスタを扱っているところが多いですしね(笑)



 このあたりはコートダジュールCôte d’Azurと呼ばれるのですが、これをそのまま訳して日本では紺碧海岸とも言いますね。文字通り青い空と青い海が広がる絶好のリゾート地で、世界各地からたくさんの人が訪れます。
 と言っても、それは殆ど春から夏にかけての話で、冬はさすがに人手も少ないですが。

 ところでカンヌと言えばやっぱり大抵の人がカンヌ映画祭を思い浮かべるんじゃないでしょうか。街を歩いていたら昨年のポスターを見つけました。



 で、ここがその会場となるPalais des Festivals et des Congrèsです。いつも冗談で赤絨毯を踏んでみるのですが、今日はできませんでした。明日行われる音楽祭NRJ MUSIC AWARDSの準備で入り口前が塞がれていたのです。近くの豪華ホテルには、ここに泊まるスター達を見ようとするのか大きな人だかりができていました。



 そのホテルですが、映画祭の時期は本当に値段が暴騰します。普通観光地のホテルはオン・シーズンとオフ・シーズンの2料金制になっていますが、カンヌではさらにもうひとシーズンあるんじゃないかと思ってしまいます。

 実は今もMIDEMという音楽見本市のシーズンなので、映画祭ほどじゃないですが通常よりも高い料金が設定されるのです。というか、なかなか予約自体が取れなくて苦労するのですが、今年はちょっと様子が違っていました。会期が近づいてきたら割といくつも空きが出てきたのです。

 もしかしたら、キャンセルがたくさん出たのかもしれません。そろそろ脱却かと思われる不景気ですが、音楽業界はまだまだきついみたいですしね。
 こういう時こそ逆に夢のある音楽で皆を幸せにしてくれるアーティストが出てきてほしいと思います。

追記~困った!

2010-01-22 | 日常
 ついさっきメールソフトに異常があって、気づいたら昨年の8月以降の送受信メール全てが消えてしまいました。
 それ以降に知り合った方、並びに最近重要なメールをいただいた方、申し訳ありませんが折を見てまた連絡いただけませんか。