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ロンドンから徒然に

今井美樹さんの初海外ライブ

2015-01-24 | 音楽
 以前は外出するついでにCDショップに立ち寄るのが習慣でした。でも今や(これはロンドンに限ったわけではないですが)めっきりショップ自体が減ってしまって、その上売り場面積も小さくなり、その結果在庫している商品もかなりメジャーなものに限られてしまっているので、そこには何か発見するわくわく感を望むべくもありません。

 その上、こちらではiTunesのようなダウンロードよりさらに進んで、Spotifyを始めとする(無料)ストリーミングが定着しており、CDのようなフィジカルな商品を買おうとすると、もうAmazonに頼らざるをえないのかなという感じです。

 ところで、そのAmazonが設立されるよりもずっと前、というかまだインターネットなんて誰も利用していなかった頃(80年代です)、音楽と映像のカタログ(つまり紙媒体での通信販売)を企画して発行したことがあります。
 今考えるとちょっと早すぎて無謀だったんですが、世間の売れ筋とは全然違うセールス結果が出たりして、その企画のエッセンスは後にコンピレーションCDを考える際に役立ちました。

 ある号の企画の際、邦楽洋楽問わず“女性ヴォーカル”の特集を組もうと思い立ち、たくさんの音楽を聴きまくりました。新鮮な“発見”だったのが今井美樹さんのアルバム。当時としては珍しくポップス感覚に溢れて、何よりもその伸びやかでナチュラルな声質に魅せられました。そのままBGMとして流しても良し、深く歌詞まで踏み込んでも面白い。これは素晴らしい!と感心した次第です。

 その今井美樹さん、何と来年でデビュー30周年を迎えることになります(Time flies!)そういった意味でも新しい節目の一歩になりそうな初海外ライブが昨晩Cadogan Hallで開かれました。もちろん彼女が今在住しているからということが一番の理由なんですが、それでも何よりロンドンがその地になったことは嬉しい限り。

 通常はクラシック畑のコンサートに使われるCadoganでということで、バックはピアノと弦楽四重奏というクラシック系の潔い編成。
 ただ、そのピアノを弾くのが、ビョークやジャミロクワイ、インコグニート、スーパーグラスなどといった人気ポップ・ミュージシャンのアレンジでもお馴染みのSimon Haleとあって、バラッドのみならず、リズミカルな曲でもすごく良い味付けで、結果から言うと大成功でした。

 セットリストは新旧織り交ぜての編成。今年春発売予定のニューアルバムのために上記のSimon Haleが作った新作や、ユーミンの曲のカバーアルバムとして大ヒットした『Dialogue』からは『卒業写真』。もちろんヒットシングルも織り込まれ、中でも『PRIDE』と『PIECE OF MY WISH』は圧巻でした。

 「すっごく緊張している」という彼女の言葉とは裏腹に、ずっと安定した歌唱を保ち、昔と変わらぬ伸びやかな声に(ついでに言うならスタイルも変わっていない・笑)感動さえ覚えました。
 ご本人も充実感一杯だったということは、終演間際に見せた目に光るものや、その後のプライベートパーティでの満面の笑みにもうかがえました。
 是非またこの地でのコンサートの開催、それから30周年に向けた新たな活動の成功を祈っています。


Tolerance

2015-01-16 | 日常
 若い頃から暇ができると海外の様々な場所を訪ねました。旅の何が楽しいかと自問して“異文化に触れる”ことだと思っていましたが、何日何週間の滞在で触れる異文化など所詮上っ面なことにしか過ぎません…そのことを今回のシャルリー・エブドへのテロ事件で一層考えさせられました。

 言論の自由は守られるべきだし、テロはどんな理由であれ糾弾されるべきだと思います。このことは疑いありません。

 ただ “言論の自由”とて当然無制限ではなく、例えばナチズムを賞賛するなどということが許されるはずはないのです。このことは、痛ましい過去の歴史という事実が厳然として存在するので、誰もが納得するでしょう。

 では、今回のように宗教が絡んだ場合の基準はどこに持てばいいのでしょう?
 偶像崇拝を禁じるイスラムの教えから言えば、預言者ムハンマドを(ましてや風刺の形で)描かれるというのは言論の自由の範囲を超えて許しがたい表現かもしれません。(繰り返しますが、かと言って短絡的にテロ行為に及ぶことが許されるわけはありません)

 ところで “異文化”という視点は単純に自分達に馴染みのない(それゆえ理解し難い)民族のものに向きがちですが、ふと考えてみると、日本人にとって慣れたつもりのヨーロッパ文化でさえ異国の文化には違いないわけです。

 そのヨーロッパでは、そもそもこれだけ様々な国に様々な民族が住み、国境をまたいでの交流がなされる中で、割と我の強い主張をも含めて多様な表現の自由を許すことこそがバランスを取る方法だったと思うのです。それゆえ絶対に守られなければならない価値観に違いありません。
 そういった意味でのヨーロッパの土壌に根付いた“表現の自由”の重みを、おしなべて自分を抑えることで社会秩序を守ろうとする傾向のある僕達日本人は同じ感覚で共有しているんでしょうか?

 ともあれ、異文化の衝突に対する完全な解決策は簡単に見いだせるはずもなく、事件以降あちこちのニュースで目に付くのはTolerance(寛容)の文字です…異なる価値観を理解し認め合うこと。
 もちろん口で言うほど簡単なことではなく、むしろ目に付くのはIntolerance(不寛容)。イスラム教徒の女性への嫌がらせやモスクへの攻撃。その中には発砲や放火までもが含まれます。一部のテロリストと一般のイスラム教徒には何の関連もないにもかかわらず。
 テロへの憎悪がテロまがいの行為を呼び起こすというのは悲しい現実です。

 それにしても驚くべき数字は、連続テロに抗議するフランス国内の370万人の大行進、また500万部まで増刷予定というシャルリー・エブドの最新号の発行数。これだけ多くの人達が表現の自由を守るために立ち上がったのは凄いことです。

 ただ、もしこれが一時の扇情的なムードに煽られての行動だったとすると、今後ふとしたことでどんな方向に向いてもおかしくないと、どうにも僕はここにもある種の危うさを感じてしまいます。

 とにかく世界が平和であってほしい。単純にそんなことしか今は言えないけれど。

あけましておめでとうございます!

2015-01-01 | 音楽
 2015年の年明けも豊穣な音楽の中で迎えることが出来ました。“押尾コータロー カウントダウン・スペシャルライブ2014→2015”。来ていただいたたくさんの方々に感謝です。幸せな仕事納めでした。
 綾戸智恵さんのゲストに加え、さだまさしさんの飛び入り出演という嬉しいサプライズ。昨年ともまたひと味違う素晴らしいライブになったと思います。

 とにもかくにも
 あけましておめでとうございます!今年もよろしく。明日にはもうロンドンに戻ります。