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ロンドンから徒然に

未だ不景気

2009-11-30 | 日常
 2年前にこちらに来た頃は、1ポンドが250円近いめちゃくちゃなポンド高だったこともあって何もかもが高く感じました。
 土地鑑がないとはいえ、東京でおそらく5,000万円も出せば買えると思える物件(しかも相当古い)が何億円もしたりするのには、思わず計算を間違えているのかなと、やり直したくらいです。

 いや、いずれにしろこういうことは全然実感の伴わないことなんでどうでもいいんですが、一体皆いくらくらいの給料をもらえばこんな生活感にリアリティを持てるんだろうと好奇心を持ったものです。
 そうしたら、編集社に就職の決まった女の子の初任給が50万円以上ときいてまたびっくり。イギリスの経済は本当にあの頃バブルがはじけるまでまっしぐらに走っていたんですね。
 
 そして今、駅の構内に貼られたポスターには、イギリスの失業率が248万人に達したと書いてあります。



 他の主だったヨーロッパ諸国の経済回復率に比べても、一国だけ遅れを取っているイギリスです。あまりの変わり様を、たった2年の間に見ているので不思議な気がします。

 景気回復策のひとつだったVATの率(今は15%です)も今年一杯で終わり、来年からはまた17.5%に戻るので、もしかして駆け込みでクリスマス商戦だけは調子よかったりするのかな。

お転婆娘

2009-11-29 | 音楽
 電車の中でひどい行いを見たり、隣人が煩かったりしても、イギリス人って黙ったままのことが多いので、けっこう寛大なんだなと思っていたんです。
 ところがある時、実はもちろん快く思ってはいないんだけれど、衝突を起こすのがイヤで黙っていることが多いんだと、何だか日本人的な本音を聞いて驚いたことがあります。

 そうか、皆色々と我慢しながら生きているんだな(笑)
 もしかして、こういったことをストレートに発しない分だけ、あの独特なアイロニックな言い回しが生まれたのかな。

 そんなイギリス人にとっては、何でも本音で喋ってしまう若い女の子の存在は、自分を代弁してくれるという意味で快哉を叫びたくなるくらい痛快な存在でもあるのでしょう。
 リリー・アレンの強烈な個性は、同世代の女性だけでなく、幅広い層に浸透しているみたいです。
 昨晩Brixton Academy(今は命名権の関係もあってO2 Academy Brixtonというのが正式名称ですが)での彼女のソロ・コンサートを見てきました。



 本当は自分の節操もない音楽ジャンルのコンサート歴を揶揄しながら、とうとうアイドルにまで行きました、と書こうかと思ったのですが、いやいやなかなか面白かったです。
 出だしはサウンドが割れてどうしようもなく、彼女の声も埋もれてしまって聴き辛いし、ちょっと来たことを後悔したのですが、進むに連れてポップな節回しが魅力的に思えてきて、何より彼女の存在感とそれに合った声質が心地良くなってきました。



 それにしても驚いたのが客層。もちろん若い女性が中心なのですが、よく見るとけっこう年配のカップルとかもいて、彼らがまたノッているんです。本国での人気の高さを改めて思い知りました。

 本音での発言が引き起こすゴシップが先に立って、本来の音楽があまり正当に評価されないような気もしますが、まぁ変に大人しくなるよりはお転婆娘のままでいてほしい気がします。

おとなに

2009-11-28 | 日常
 実は12月を前にしてもそれほど寒い日がなかったので、この分だと冬は楽勝かなと思っていたら、この数日はなかなか冷え込んでいます。
 今回のフラットは建物全体に共通の暖房が軽く入っているので、うちにいる限りはそれほど寒さを感じることもありませんが。

 ただ、人間の体感って本当に不思議なもので、この冬空の下で殆どトレーナー1枚に近い格好で平気にしている人もいれば、夏でもコートを羽織っている人を見かけます。
 こちらで小学生を見かけると、ショートパンツですね。そう言えば日本でもそうですが、冬でも子供はその格好で平気ですよね。 



 そう言えば思い出したことが。
 詳細までは覚えていませんが、小学生の時に各校からの代表が何名かずつ集まって合宿状態で過ごす催しがありました(あれは一体何だったんだろう?)
 夏なので男の子は皆ショートパンツなわけです。(今は知らないけれど、その当時はそれが普通の小学生の格好だったんです)そんな中で最上級生の6年生の中に、長いパンツを履いている人がいたのですが、僕には彼が凄くおとなに見えてしまいました。
 それからは小学生のくせに、夏でもショートパンツは拒否していました(笑)

 思春期の頃におとなに憧れるのは誰しもでしょうが、それが酒やタバコに向かう人が多いのかな。
 でも、今の世の中もっと恐い状況になっていて、こういった気持ちに付け込むのかどうか分かりませんが、子供にも麻薬汚染が広がっていると聞きます。

 ロンドンでも、地域によっては夜の様相ががらりと変わって、駅を降りると売人が寄ってきたり、脇にそれた暗がりで注射をやったりしているのを見たこともあります。
 こんな環境の中で過ごさなければならない子供たちを、ちゃんと守る義務がおとなにはあると思います。

冬の匂い

2009-11-27 | 日常
 冬はもちろん寒さも辛いのですが、何より日が短いのが寂しいです。3時半に打合せを入れたりすると、西の空には早くも夕焼けが。
 打合せを終えて出てくるともう夜の風景です。
 

 
 キングスロードもいよいよクリスマスの飾り付けが終わりました。昨日ブログに書いた街灯のクリスマス・ツリーはこんな形で活躍しているんです。



 クリスマスの情景って、綺麗だけれどどこか寂しいですよね。
 このところほんのちょっとずつ上手くいかないことの繰り返しで何だか精神のリズムが悪かったので、気分転換に美容院で髪を切ってきました。お祓いみたいなものですが(笑)ちょっと切りすぎてしまって、それはそれで落ち着きません。

 よくアーティストは、言葉やメロディを自分のまわりからキャッチするんだと言いますが、そのためのアンテナとして髪の毛は長い方がいいんだとか聞いたことがあります。
 それはともかくとして首の辺りが寒いです。風邪ひかないようにしなきゃ。

 さて、もう一息、頑張って乗り切りましょう!

和製英語

2009-11-26 | 日常
 『ジャパニーズ・イングリッシュ』という言葉がありますよね。訳せば『和製英語』となるんでしょうが、実はこのJapanese English自体が既に和製英語なのでややこしい。

 ひとつの例は単語をいくつか重ねて意味が分かるようになっているもの。
 映画の吹き替えに『アフレコ』(つまりafter recording)という言葉を使いますが、これはdubbingが正しいです。『マグカップ』と言いますが、別にカップは付ける必要がなくmugです。

 また、それらしい語尾変化をして英語的にしているものがあります。
 『エネルギッシュ』(これはenergeticですね)という言葉も『ファンタジック』(fantasticはありますが)という言葉も実際にはありません。

 日本語で普段カタカナにして使っているこんな言葉が実は意外と難しかったりしますよね。車の『ハンドル』も(steering)wheelですし、『プレイガイド』はticket agencyかな。

 こういった次元とは少し違うんですが、この時期になるといつも思うこと。日本ではクリスマスChristmasの省略語によくX’masとアポストロフィを付けて使いますよね。でも(間違いなのかどうかは分かりませんが)英語ではこれを使うことはなくXmasが普通です。なんだかアポストロフィを付けた方が意味ありげで謎めいていて面白い感じもしますが。

 さてさて、もう各地でイルミネーションも設置し終わっていると思っていたら、今日は街灯にクリスマス・ツリーを飾っていました。



 あぁもう11月も終わる。スガさんのライヴが近づいてきて、毎日必死で動き回っています。このところ毎晩夢に見るんですよ。よく夢にありがちな、現実では絶対に起こりそうにないへんてこな出来事(笑)
 明日も会場と打合せしますが、もしかして音楽用語にも和製英語が多いのかな?ちょっとチェックしておこう。

Olde & New

2009-11-25 | 日常
 日本語の歌を聴いていると、相手のことを呼ぶのに、君とかあなたとかおまえとかあんたとかたくさんあるし、自分のことも、僕とか俺とかおいらとか(今時誰がこんな言葉を実際に使うのかは知りませんが・笑)出てきますね。

 対して英語だとこれが全部youとIで済んでしまうわけです。前後の文章の使いかたでニュアンスの違いはもちろん出るんでしょうが。
 ただまぁ、相手への呼びかけだと、thereとかmy dearとかあるいはhoneyとかdarlingとかあるのでいいのかな。

 じゃ、時代劇で“そなた”とか“なんじ”とか“そち”とかに当たるのは何かというと、これは古語のthouを使うようです。これの所有格がthy、目的格がtheeとなるのですが、以前古い演劇を見に行ったところ、こんな用語が駆使されてさっぱり理解できませんでした。

 ここまでの古語はともかくとしても、たまにわざとおどけて使われる言葉があります。oldeとかはその良い例で、意味的にはoldで済むところをわざとeを付け加えることで古風でトラディショナルな感じを出そうとしています。
 olde worlde『古風な』なんて言葉はworldにもeを付けていますね。

 道を歩いていたらピンクに塗られた可愛い車の横に“Olde Sweet Shoppe”の文字が。このshoppeもshopより大げさに『専門店』みたいなニュアンスを出そうとしているみたいです。
 このお店、SOHOにある言わば駄菓子屋みたいなところなのです。なるほどその意味では古いイメージを出すoldeを付けるのはぴったりなんでしょう。



 ところがこの車、よく見ると何やらコードが引き出され、それが道端にあるjuice pointと書かれた棒に繋がっています。何だろうと思ってよく見たら、電気自動車がエネルギーを補給していたんです。



 古いイメージの駄菓子屋の車が最新のエコカーだなんていうのも、ちょっと良いな。

そりゃないよ

2009-11-24 | 日常
 日本で祝日でもこちらは関係ないので、今日も仕事でした。昼からは何ヶ所も外を走り回る予定なので、その分午前中はデスクワーク。このスケジュールの組み方には実はわけがあって、今日やっとブロードバンドの工事に来ることになって、うちで待機してなきゃならなかったのです。

 指定時間の幅が広い(朝8時から午後1時までの間)ので朝早くから起きてパソコンに向かいます。mobile broadbandのため相変わらず遅い速度の通信ですが、なに工事さえ終われば従来のペースを取り戻せるぞと自分を慰めていました。

 ところがそのまま12時近くになっても音沙汰がない。一応1時までにはまだ1時間以上あるものの、午後の予定を考えたらぎりぎりに来られたのでは間に合わなくなります。
 念のためと思い問い合わせの電話を入れてみました。次々と自動音声案内のオプションを通り過ぎた後やっと係の人に。すると......

 なんと工事がキャンセルされて今日は来ないというのです。
 え、そりゃないだろう。メールで確認して、レターも入っていて、電話までかかってきて、全部今日来るって言っていたじゃない。

 「申し訳無い、調べてすぐに連絡します」のでというので、いつ頃になりそう?と訊くと、「24時間以内に」。
 念のため説明しますね。これ24時間以内に連絡しますということであって、24時間以内に改めて工事に来るというんじゃないのです。

 それじゃ困るので何とかしてくれと言うと、電話をたらい回しにされた挙げ句、「何かの間違いでキャンセルされたみたいなので、もう一度初めから申し込みをして下さい」
 そんなこと言われてもねぇ、今日の工事だって申し込んだのは一ヶ月前だよ。この暮れの忙しい時にいちからまた申し込むともしかして来年なんて言われかねないよね。

 ねばってねばってやっと妥協案が、キャンセルが出た場合のウェイティング・リストのトップに載せておいてすぐに連絡するので、という内容。
 あぁ、いつになることやら。

 今の通信速度では、このブログの写真をアップするだけでさえすごく時間がかかるんです。
 ということで、今日は写真のアップができません(と、体の良いさぼりです・笑)

A Serious Man

2009-11-23 | 映画・演劇
 ジャイアンツの優勝パレードがあったみたいですね。何を隠そう子供の頃からのジャイアンツ・ファンだったので、今年の活躍は海外にいても嬉しく思っていました。
 以前はどこかの球団で活躍した4番打者ばかり集めて何ともちぐはぐなラインナップでしたが、今はそういった引き抜きだけでなく、生え抜きのベテラン、そして若手がそれぞれの役割をきちんとこなしてバランスが良く、原監督の采配にも迫力が出てきて良い感じになっていると思います。

 スターばかり揃えるとなかなか上手い結果が出ないのは野球ばかりでなく映画でもそうで、たくさん有名な俳優が並び立つというのはなかなか難しいみたいです。
 それは手練れの監督を以てしてもそうみたいで、コーエン兄弟の前作『Burn After Reading』も、ブラッド・ピットやジョージ・クルーニー等大スターを揃え、もちろん並の作品に比べたら非常に面白かったのですが、いまひとつ監督独自の“毒”が出ていなかったような気がして物足りませんでした。

 そこへもう新作の登場です。『A Serious Man』。これきっとコーエン兄弟ファンなら楽しめる映画だと思います。
 今度は比較的(というより普通の人には殆ど)無名の俳優を揃えたのですが、これが皆素晴らしい演技で笑えます。いや“笑えます”と言っても腹の底から笑えるコメディじゃなく、所謂gallows humourあるいはblack humourと言われる種類の皮肉さに満ちあふれた笑いです。



 自分達の経験(息子役?)に基づいたストーリーなのか、ユダヤ系一家の話なのですが、ほんのちょっとのきっかけで連鎖する不幸に見舞われる主人公のまぁ惨めなこと。この気の弱い大学教授を演じるマイケル・スタールバーグが良い味を出しています。
 
 それにしても、映画の中のラビ(ユダヤ教の師。英語の発音だと“ラバイ”ですが)の徹底的に茶化されること。気の利いたことを言ってそうで、本当に誰かが困っている時には結局何の役にも戯言のようにも思えて、あ、これって人生相談みたいな時の回答と同じだな、と感じた次第です。

ウォーレス・コレクション

2009-11-22 | アート
 街はいよいよクリスマス商戦に向かって華やいで、イルミネーションの下たくさんの人達が買い物に繰り出しています。
 デパートや商店が建ち並ぶ(MarbleArchの駅とBond Streetの駅の間の)Oxford Streetもその例外ではありませんが、歩いて数分くらいの距離で、その喧噪が嘘のような空間に遭遇します。

 Oxford Streetから北に延びるDuke Streetをまっすぐ歩いて下さい。Manchester Squareという広場にぶつかります。ここにあるのがWallace Collectionです。



 もともとHertford Houseと呼ばれるこの建物、名前の示す通り、外交官兼政治家であったハートフォード侯爵の邸宅として1788に建てられたもので、その後も代々この屋敷が住居として使われてきました。
 初代からずっと美術品をコレクションしてきましたが、特に4代目は熱心だったと言われています。

 この4代目、実は生涯独身を通し、正式な奥方はいなかったのですが、愛人との間に息子が存在しました。これがRichard Wallaceで、彼にはハートフォード家の財産が、屋敷を含め殆ど遺贈されました。
 彼が早くからコレクションを国家に寄贈する意思を示していたこともあって、死後未亡人が彼の名前を冠することを条件に設立されたのがこのウォーレス・コレクションというわけです。

 写真撮影が禁止なのでお見せできないのですが、内部はひとことで言うと“ロココ調の優美なフランス館”とでもなるでしょうか。作品自体もフランス絵画が多く、その他にも彫刻、陶器、家具、武器などが全部で5,500点も飾られています。

 そんな常設展に加えて、時々特別展をやるのですが、今日はそんな雰囲気とは似ても似つかないダミアン・ハーストの作品展が行われていました。“No Love Lost, Blue Paintings”というのですが、何しろモチーフが骸骨、隣接する絵画とのあまりのコントラストがかえって面白かったですが。



 ここの中庭にはカフェもあって、食事やお茶を取ることができ、寛げます。何より団体客が殆どいないので、いつもはひっそりしていたのですが、今日行ってみたらたくさんの人で溢れていました。

 不況以来、入場料の要らないロンドンの美術館は週末に人々の訪れる場所の上位に躍り出ているみたいで、こんな穴場も対象になってきているのかもしれません。またどこかから別の場所が穴場として浮上してくるのでしょう。

educ

2009-11-21 | 日常
 街を歩いているとあちこちに英語学校の看板が目立ちます。休憩時間と思しき時間帯に当たるとそれこそ各国語のオン・パレード。まぁ当然イギリス人の生徒はいませんよね。

 じゃ、イギリス人が外国語をどれだけ熱心に学んでいるかというとけっこう疑問で、確か数年前には外国語が必修科目から外され、一切外国語を勉強しない生徒も相当数いると聞きました。

 英語は単にイギリスの言語(あるいはアメリカの言語)という枠を超えて国際語として位置づけられているので、外国人にとっては真剣に学ばなければならない言語でしょうが、イギリス人にはもともと母国語なので、これを喋れさえすればまず大きな問題はないですもんね。

 でもこういった傾向には批判も出ていて、今度は小学生にラテン語を必須にしようという動きも出ています。
 確かに何故外国語を学ぶかと言ったら、これって必ずしも“役に立つから”じゃないですよね。言語を学ぶことって歴史や文化抜きにはできないので、そのあたりのおもしろさもあるはずです。
 まぁ、だからと言っていきなりラテン語というのもまた極端に走りすぎだと思うのですが(笑)



 ところで、教育を表す英語educationのeducという語源はラテン語だと聞きました。
(本当かどうかは定かでないのですが)その意味は“与える”ことじゃなく“引き出す”ことだそうです。つまり先生は自分の知識を生徒に押しつけるのではなく、生徒の良いところを引き出してあげなくてはいけないわけですね。

 念のため広辞苑を引いてみたら、“人間に他から意図をもって働きかけ、望ましい姿に変化させ、価値を実現する活動”とありました。なるほど。