HOBNOBlog

ロンドンから徒然に

初夏に欠かせないイベント

2011-05-29 | 旅・イベント
 今日は欧州チャンピオンズ・リーグの決勝がウェンブリー・スタジアムで行われるとあって、両軍のユニフォームに身を包んだファンが街のあちこちで気勢をあげていました。
 いや、フットボール(イギリスではサッカーのことです)のことを書こうと思っているんじゃないんです。

 チェルシー(と言ってもフットボールはこれまた関係ないんですが)の一角はこの数日間、フットボールのファンとは似ても似つかない層で溢れました。
 今、恒例のチェルシー・フラワーショーが開催されているんです。(会場となったロイヤル・ホスピタルでは昨年話題になった『象』が入り口で迎えてくれます)



 イギリスの冬は寒いし暗いしで相当惨めですが、その代わり春・夏の素晴らしさで十分お釣りが来るくらいです。そのひとつの象徴が花。公園や庭を彩る花たちが咲き誇る姿は本当に見事です。
 人々もガーデニングや窓辺の花の世話に本当に熱心で、その力の入れようには感心してしまいます。

 そこでこのチェルシー・フラワーショー。理想の庭園や花造りを見た上で、実際に花や種子、ガーデニングの道具などを買うこともできるとあって広い層(やっぱり年配の方が多いですが)に大人気で、毎年チケットはソールド・アウト。ロンドン以外の町からも大型バスで乗り付けるほどの盛況ぶりです。

 あ、もう毎年このブログでも取り上げているので、あまりくどくどと書く必要もないかな。とりあえず今年展示されていた花の写真を何枚か載せておきます。








 そしてガーデン。まぁ、例えるならファッション・ショーみたいなものですから、この通りの庭造りを楽しめる人なんてそうはいないと思うのですが、皆熱心に説明を受けています。少しでもエッセンスを受け継げるなら楽しいでしょうね。(でもうちのフラットには庭どころかベランダさえないですからね)





 段々フットボールよりこちらの方に興味を持つようになっている自分に気付いて、ふと周りの年配の方々に共感を覚えてしまいました。



価値観

2011-05-26 | アート
 ロンドンに住んでいても、日本のワイドショー的なニュースまで(もちろん細部までは分かりませんが)伝わってきます。三谷幸喜と小林聡美が離婚したと聞いて驚きました。ある意味理想的なカップルだと思っていたので残念です。

 でも、もっとがっかりしたのがその時のコメント。「価値観の相違」なんてありきたりな理由を出すとは思わなかったので、ちょっと違和感を覚えました。(だって三谷幸喜ですよ。もっと意表を突く言葉を期待するでしょ)

 そもそも価値観がまるきり一緒の男女なんて、よほどのことがない限りあるわけがなく、お互いの価値観を尊重し合えるかどうかがカップルにとって大切なことだと思うんですが…...いや、僕がこんなこと偉そうに言えた義理じゃないですが。

 ところで価値観と言えば、コンテンポラリー・アートに関する評価は常に論争を呼びます。
 いつもこういう時に例として出されるのが、煙草の吸い殻や空き瓶、コンドーム、血の付いた下着などが散らかった汚いベッドの展示。
 この作品『My Bed』で有名なアーティストがトレイシー・エミンTracey Eminです。

 今、彼女のこれまでの活動を集大成した展覧会『Love is what you want』がサウスバンクのHayward Galleryで開催されています。



 タペストリー、彫刻、ネオンサイン、エッチング、写真、ビデオ等々多岐に渡る作品群の中には、自慰シーンのペインティングや使用済みのタンポンの展示など相変わらずcontroversialな作品も多いですが、何故か僕の目には今回はかなり「おとなしく」映ったのです。

 酔っぱらってTVのインタビューに対応したり、これまでベッドを共にした男の名前(キュレーターまで含む)を全部作品の中に実名で載せたり、表面的にはアグレッシブに見える彼女の内面に潜む、実は繊細な部分や傷つきやすさみたいなものを、ファンは嗅ぎ取っていると思うのですが、今回は随分とそういう面が表立っていると感じたのは僕だけでしょうか。

 ダミアン・ハーストと並んでYBAs(Young British Artists)の代表のように言われた人気アーティストも今年の7月で48歳になります。最近のインタビュー等では成熟した内容の発言も目立つようになりました。

 常に自分を主題に、また物理的にも描く対象にして作品を創造していた彼女。もしかして僕らが見ていたのは(あるいは興味を抱いていたのは)、彼女を通した作品というより、作品を通した彼女自身の姿(あるいは私生活)だったのかもしれません。だから彼女の過去の作品でさえ、今の姿を反映して見え方が変わってきたのかな。

 この先どう変わっていくのかと興味を持つ一方で、いくら歳を重ねてもやっぱりやんちゃな娘でいてほしいとも願ってしまいます。

西洋の中庭の東洋の動物

2011-05-23 | アート
 今年の5月は何だか例年よりも肌寒く感じます。来週の天気予報を見ても最高気温が20度に達するのは水曜日だけ。中には16度なんて日もあります。
 それでも青空が覗くとやはり気持ちは踊り、子供達は水遊びに興じようとします。



 あ、一部の剽軽な大人達も含むかな。



 いや、決して僕がこの大人達の中に含まれていたわけじゃなく、見てみたい展示がここの中庭にあったんです。
 中国人アーティストAi Weiweiの『Circle of Animals / Zodiac Heads』という展覧会が今Somerset Houseで開かれています。

 名前の通りブロンズで象られた十二宮の動物たちが、イギリスの古い館の前に並べられている様は、ある意味東洋と西洋の文化交流の象徴のようで感慨深いものがあります。




 しかしこの作者Ai Weiwei氏が、未だに中国当局の手で抑留されたままであることを考えると(4月18日のブログ参照)、この像の前で無邪気に戯れる子供達との対比が辛く感じられてしまいます。

 そもそもこの展覧会自体が、その中国政府の拘束に対する抗議の意味も含めて急遽決定したものらしく、NYでも類似のものが行われています。こういった行動の早さとその質の高さ(アートを以て抗議するという意味で)に関しては、いつも英米の対応に感心してしまいます。

 このような各国の動きに対応する意味でか、中国政府はAi氏の容疑を経済犯(20日には脱税と明示)と説明していますが、さて真偽のほどは。

 この青空の下で映えるブロンズ像と、それを見て楽しんでいる人達の姿を、作者自身にも早く見せてあげたいものです。

偉大なるB級映画

2011-05-18 | 映画・演劇
 言語は生き物ですから、当然年代によって変化があります。大体は発音が楽な方に向かうようで、例の《彼氏》のアクセントが頭高から平板になっているのは典型的な例かもしれません(これに関しては実は対象によって使い分けているという説もあるのですが)

 英語もそうで、よく若者と会話していると《innit》という音が耳に入ります。これ、実は《isn’t it》のことなんです。“Cold, innit?”みたいな感じで使われます。

 こんなアクセントが飛び交う映画を先日観ました。
 『Attack the block』 移民の多いサウス・ロンドンを舞台に、不良少年の一団がエイリアンと戦うという奇想天外な発想なんですが、期待せずに映画館に足を運んだら、これが実に面白くて驚きました。
 新聞などの紹介ではホラー映画の括りにされていますが、ある意味青春物語であり、またコメディであり、サスペンスでもあり、時代風刺の映画でもある、と色んな要素を盛り込みながら実にテンポよくまとめられています。



 不良少年のリーダー(まだ15歳)を演じる黒人少年が非常に魅力的で、クールな中にも寂しげな表情を見せたりする時が、若き日のデンゼル・ワシントンを彷彿とさせます(誰もそう言わないので、これ僕だけの感想みたいですが)。他の子供達もすごく自然な演技でキャラクターもちゃんと描き分けられています。また脇を固めるおとな達もうまく配置され、子供達を盛り立てます。

 そしてエイリアン。このデジタル技術真っ盛りの時代にあって、もうB級映画の極みなんですが、それでもその登場のタイミングや見せ方が『ジョーズ』みたいで、まさにこの点はホラー映画。

 この映画の監督Joe Cornish、実はもとコメディアンで、これが監督デビュー作品なんです。またひとり才能のある監督の登場です。
 考えてみたらコメディって、タイミングとテンポがすごく重要な要素になると思うんです。その意味では監督に向いているのかもしれません。ともかくこれからの作品も期待されるでしょう。

<ところで>

 元コメディアンの映画監督と言うと、やっぱり北野武監督が浮かびますよね。十数年以上前に初めてロンドンに滞在した頃にはすごく人気者で、レンタルビデオ店にも彼の作品はたくさん並んでいました。
 暴力の中に美学を持ち込む、あの独自の手法は高く評価されていましたが、このところその名前を聞く機会が少ないのが寂しいです。

それに代わってというわけでもないんでしょうが、最近三池崇史監督が注目を浴びています。『十三人の刺客 13 Assassins』は字幕入りで今でも各地で上映され、評論家の採点も高いです。



 そう言えばカンヌ映画祭で彼の新作『一命』が上映されますね。大好きな監督河瀬直美さんの『朱花の月』も。
 両作品に頑張ってもらって、是非ロンドンでの上映を待ちたいです。

山で獲れる魚

2011-05-14 | 日常
 土曜日にはうちの近くでもマーケットが開きます。野菜や果物、海産物、乳製品などが並べられ、朝早くから賑わっています。
 産地名を見てすぐにどの辺りか判別できるほど地理には詳しくないんですが、いずれにしろかなり遠くから運ばれているのは間違いなく、この人達は随分朝早く(あるいは前日の夜遅く)からロンドンを目指して車を走らせているんだと思います。
 有機野菜だとか果物、それから搾れるジュースなどを見ていると、田舎の長閑な風景が浮かんできます。魚となると、さてどの海で獲れたものなんでしょうね?



 ところで、京都では山で獲れる魚がいるのをご存じでしょうか?
 正解は鱧(はも)
 いや、もちろん山に生息するわけはなく、笑い話のひとつと言っていいんでしょうが。
 実は行商人が京都に運ぶ最中に鱧はしょっちゅう逃げ出して、その泥まみれになった魚を捕まえる様子を見た人の口から、京都では山に鱧がいる、ということになったそうなんです。

 交通手段の発達していない時代、海が近くにない京都で、夏場に鮮度の良い魚を食べようと思うと、生命力の強い鱧(いかにもそんな顔つきですよね)が一番だったんでしょう。
 そういった事情のせいか東京ではあまりポピュラーでもない鱧が、京都では夏の風物詩と言ってもいいくらい生活に根付いている気がします。僕も住んでいた頃はあれを食べないと夏が来た感じがしませんでした。

 先日日本に帰って大阪出張の折に京都に宿泊しましたが、鴨川沿いに“床”が組まれていました(あぁ、もうそんな季節なんだな)。ここで鱧を食べればもう完璧に夏モードですけどね。



 なんてことを色々考えていたら日本食が恋しくなって、久しぶりに寿司を食べに行きました。綺麗な手鞠寿司です。味もなかなか。さすがに鱧のねたはなかったですが。



2分間毎のジョギング

2011-05-10 | スポーツ
 旅に出る時には、機内に持ち込める程度の大きさのスーツケースにします。着替えも最小限にするので大抵はこれで事足りるのですが、日本に帰るとなるといつもたくさん本を買ってしまって、結局余分なバッグが増えてしまいます。

 今回はそれもできるだけ抑えたつもりなんですが、それでもやはりひとつにまとめるのは無理。何とかうまく整理しようとして邪魔になったのが実はシューズ。せっかく日課になるくらい馴染んできたジョギングなので、日本滞在中も続けようと持参したものの、結局使わず終い。なんとまぁ無駄な荷物だったことか。

 正直言うと走るのって苦手だったんですよ。いや、うちの家系はけっこう運動に強くて、国体やインターハイの出場者(中には優勝)までいるんですが、考えてみたら皆短距離走者か球技系。多分長距離の血筋じゃないんでしょうね。

 そこに来て根性無しの(しかも子供の頃は心臓疾患があった)僕なので、長い距離を走るなんて始めから諦めていたのですが、教えられたのがちょっと走っては(早足で)歩き、また走っては歩くというきっかけ作り。何でも最初は2分毎にこれを繰り返すのがいいとのこと。

 でも、時計見ながら走るなんてできないし、第一そんな退屈なことが続くわけがない。
 そこで考えたのが、2分台の音楽を聴くこと。1曲聴きながら走り、次の曲で歩く…

 ところが最近の音楽はどれも長くて、2分台で終わる曲なんて皆無。
 で、たどり着いたのが結局ビートルズです。初期の作品は殆どが2分台。しかもアルバムは14曲入りときているので、これを何枚か続ければいいわけです。
 それにしてもこの短い楽曲の,シンプルながら引き締まった完成度に改めて感心した次第です。何度聴いても飽きないし。



 今日St John’s Woodに行く(音楽とは全然関係ない)用事があって、世界一有名な横断歩道を久々に渡りました。アビーロード・スタジオはscaffoldingに囲まれて惨めな外観になっていましたが、相変わらずの落書きを見るだけでも楽しかったです。
 またいつかあの中に入って仕事したいな。

即席ビーチ

2011-05-08 | 旅・イベント
 今月4日にロンドンに戻ってきました。2週間あまりのブランクに、友人達はとても素晴らしい穏やかな気候を楽しんだらしく(しかもこの間イースター・ホリデーを含む長期休暇)、僕が戻ると共に下がってしまった気温と鬱陶しい雨に、普段晴れ男を自認している面目もつぶれ、何だか謂われのない責任を感じてしまいました。

 しかし、ロンドンでは(良い天気もですが)悪い天気も長続きはしません。日曜日の今日なんか、朝早くこそ天気予報通りのひどい雨にもかかわらず、出かけようとした途端たちまち晴れ間が覗き、行き先を急遽川辺に変更しました。
 そこでSouthbank。対岸にセント・ポール寺院などを臨むこの川辺の散歩は、晴れた日には最高です。途中で古本市をひやかしたり、ベンチで休んで日光浴したり……

 今日は少し景色が違っていました。夏の間だけの企画なんですが、海から砂が運び込まれ、Beach Huts(小屋ですね)が幾つか作られ、川辺が即席のビーチになっているんです。
 子供達が砂遊びしたり、ミニ・コンサートが開かれたりと、すっかりリゾート・ムードの中に交じって楽しんできました。




 少なくとも僕がこちらに来てからの何年かの経験で言うと、ロンドンの7月・8月はむしろ寒い感じさえして、もっとも気持ち良いのが5月・6月です。
 こちらへ戻る飛行機も空いていたところをみると、日本の皆さんは休日も皆近場で済ませているのでしょうが、是非この季節ロンドンまで足を伸ばしてみて下さい。