植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

やくざが怖くて裁判官は務まるか

2021年08月25日 | 時事
テレビもコロナでうんざりしているのでしょう。コロナ以外の話題を報道することが多いように感じます。

 全国で唯一特定危険指定暴力団 に指定された工藤会の組長の死刑判決が出ました。近代的な裁判制度になって、長い歴史の中で「暴力団トップ」の死刑判決は初めてなんだそうです。やくざ映画を観ても、直接トップが出かけて行って、抗争相手やらターゲットにドスを向けるとか、ピストルを撃つシーンはざらにありません。組長が凶器を持つのは、健さんが殴り込みにきて一対一になったときぐらいでしょうね。

 通常は、周りの若頭とか舎弟頭などに「黙らせろ」とか「あとは任せる」とか言うのです。(あくまでテレビ・映画の中ですが。)すると、今度は若くて無鉄砲なチンピラとか、薬中毒や病気で長くない組員にお金とピストルを渡すのです。実行犯になって出頭すれば、10年くらいで出所します。組長は、知らなかった、若い者が勝手にやったで済ませます。共同正犯として起訴するには証拠もなく、後の祟りが怖いので、過去の判例に倣って、殺人でも「緩い」判決となってきたのです。

 今回の北九州の一連の事件は、暴力団同士の抗争ではないこと、利権・金銭目的で、堅気の市民を殺めたこと、しかも4件もの殺人事件を連続的に工藤会の組員が起こしたことが極刑になった最大の理由であります。工藤会は何十年もの間市民を巻き込んだ抗争・傷害事件を起こしてきたのです。裁判員裁判の対象から外し、裁判官が有罪判定で死刑の判決を下した、というのは今後に大きな影響を及ぼします。

 直接証拠が無くても、やくざの組長が命じたと断じる相当な事情・犯意・状況証拠で「殺人罪」として死刑にできる、となると全国の広域暴力団もうっかりヒットマンを送り出せなくなります。組長は、これまで何年かムショ暮らしをすれば済んだのが、死刑になるのですから。

 もう一つ心しなければならないのが「報復」であります。死刑判決で、司法・警察・裁判所が「一罰百戒」で、抑止力となることを狙うなら、やくざは、組長を「とられ」、メンツをつぶされたままおめおめと引き下がらないかもしれません。これから同様な判決を下した裁判官がどういう目に合うかを、世間に示して「脅かす」必要があるのです。

 閉廷時、被告人はあんた生涯後悔するぞ」と怒声を浴びせたそうです。それが負け犬の遠吠えにならぬのが「反社会的勢力」やくざの怖いところです。若い者が黙っちゃいない。裁判は裁判長一人のせいでなくても、象徴として狙われるでしょう。所管の警察幹部もしかりです。特に、本人でなくその家族や関係人を狙うのが卑劣なところなのです。いや、実際に何もしなくても大声で脅かされて事だけで、十分効果があることも知っているのです。人を脅かして金品をせしめるプロ集団ですから。

 かつて、ワタシも自分の仕事などで、そういう類の組長・組員と対峙したことが数回あります。その時に怒鳴られた思い出は、心のどこかに沁みこんで一生忘れないでしょう。

 今回の地裁の裁判官たち、あるいは捜査や起訴に携わった人たちの、勇気や英断、正義感は讃えられるべきでしょう。そしてその指揮官たちは、反社からのいわれなき報復に、数年は厳重な警戒が必要だろうと思います。
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