すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【へっぽこ文章講座】わざと説明しないことのかっこよさ

2005-10-06 02:39:07 | へっぽこ文章講座
 カゼが直るまで更新は休むと言いながら、またまた書いちゃお。最近、私のお気に入りブログになっている『bogusnews』についてである。お題は、「説明しすぎる文章」って面白さを殺しちゃう場合があるよね、ってお話だ。

 この『bogusnews』、実際にあったニュースをふたひねりし、パロディとして読ませるユーモアが身上である。いわば1年365日がエイプリルフールみたいなノリだ。

 このテの文章は、かなりの技術がないと成立しない。だけど筆者は、毎回、きっちり仕上げてくる。特に10月3日付の「Yahoo!ロボット検索中心へ変更 非難の声も」のデキは抜群だった。このエントリーを読み、「筆者はひょっとしてプロなのかな?」と思ったくらいだ(プロだったらゴメン)。

 で、今回、まな板にあげるのは、10月5日付の「[阪神買収] 村上ファンドの裏に謎の外国人?」である。ただし残念ながら(この人がもっているだろう能力を考えれば)失敗作としてだ。みなさん、まずは先に上記のエントリーをお読みいただきたい。

 さてネタバレになるのでどこまで分析していいものやらむずかしいのだが……このエントリーはご覧の通り、右上段に掲載してある写真と、本文の中盤に出てくるコメント「ヘドロのにおいを漂わせていた」を読んだ時点で、オチがわかるしかけになっている。

 阪神という球団の歴史に関するちょっとした知識とユーモアを解するセンスがあれば、この「ヘドロのにおいを漂わせていた」のくだりでぷぷっと吹き出して「いっちょうあがり」な作品なわけだ。

 で、読み手のレベルをそこに設定するならば、本来ならこの文章は、最終段落にもってきた『この老紳士、風体と「かなりの資本をもっているらしい」という以外のことは一切わかっていない。ただ、阪神に強い恨みを抱いているのは確かなようだ』の二行で、サラリと締めくくって終わるのがベストだ。

 そのほうが余韻も残るし、さりげない締め方が逆にインパクトを生む。ココで切ったほうが文章としては絶対におもしろい。

 ところが残念なことに、筆者はそのあとに余計な一文をつけ加えてしまう。最後にオチを自分で説明してしまうのである。この最終段落にあるコメントの部分は、完全な蛇足だ(失礼)。

 ひょっとしたら筆者の頭には、こんな思いがよぎったのかもしれない。

「道頓堀に投げ込まれたアレのことを知らない人が読んだら、なんのことだかサッパリわかんないかもしれないな。だったらラストでちょっと説明しておこうか」

 文章を書く上で「どこまで説明すればいいのか?」って、とてもむずかしい問題だ。説明不足のせいで読者が意味をくみ取れないのでは、それこそ意味がない。

 だけどその一方で、わざと説明せずにやめておくという寸止め戦法も、これまた高等な文章技術のひとつである。今回のケースで使ってほしかったのがまさにコレだ。

 今回のネタは、アレがかつて道頓堀に投げ込まれたことを知らない人が読んだらそもそもアウトなのだ。どんなに筆者が説明しようが、笑えないものは笑えない。だってその人は笑うための予備知識がないんだから。だったらもう割り切って、説明しないことを選択するのが正解だ。

 つまり本文の中ほどに出てくる「ヘドロのにおいを漂わせていた」を読んだ時点で笑えない人は、もう見切っていいのである。もし私がこの筆者の担当編集者だったとしたら、そう進言しただろう。

 以前、私はエントリー『人は映画の中に「観たいもの」を観る』の中で、映画は説明しすぎるととたんに色あせてしまうと書いたことがある。これは映画に限らず、文学や美術、音楽など芸術全般にいえることだ。

 たとえばユーモアがわからない人に、ユーモアの意味を説明するのって最高にダサい。笑う才能がない人は、どうしたって笑えないものだ。

 仮にあなたが友人にジョークを言ったとき、意味が通じず笑ってもらえなかったとしよう。

 でもそこであなたはわざわざ、「いや、いまオレが言ったのはジョークなんだよ。意味はコレコレこうでさぁ~」などと説明し直したりはしないだろう。なぜならあなたが放ったジョークは、相手に説明している時点ですでに失敗なのだから。

 同じようにゲージュツがわからない人に、その意味を解説するのは無粋だ。世の中には、わかる人だけわかってればそれでいいやみたいな世界ってやっぱり存在する。

 というか今回、たまたま私は他人の文章をサカナにし、エラソーに論評なんぞをぶっこいているが……もちろん私だって毎回、同じことに頭を悩ませ、七転八倒しているひとりである。

 現に今回のエントリーにしても、仮に10人がコレを読んだとしていったいそのうち何人に意味をわかってもらえるだろうか? 私は不安でいっぱいだ。

 ああ、うまく説明できてないよなあこのエントリー。すんません。出直してきます。やっぱりブログ書くのはカゼが直ってからにしようっと。
コメント (5)    この記事についてブログを書く
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5 コメント

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そこまで考えていただいてありがたいですよ (匿名希望)
2005-10-06 03:02:55
くすくす。



ちなみに後半が蛇足になっているのは、「宇宙猿人ゴリ」のセリフをどうしても引き合いに出したくてたまらなくなったからです。ダイエットは何事においても大事ですね。



今後とも厳しくご批評ください。



P.S.

あら。月アスに書かれてる方ですか。にへいさんに会うことがあったらよろしくお伝えください。
面白くない (佐藤秀)
2005-10-06 07:52:16
両方ともかったるくって面白くなかった。ヘドロのにおいまで読まないと分からないなんてよほど鈍い。
スペクトルマン (18DDH)
2005-10-06 09:49:43
というかゴリだってわかるヤツがそんなにいるとは思えない…
こんにちは (松岡美樹@管理人)
2005-10-07 06:01:41
あ、やっぱプロの方でしたか?(笑) またよろしくです。
Unknown (mrcms)
2005-10-20 08:32:49
おー。

久々に来てみたのですが

さすが鋭いエントリ!



私はよーく理解しました。素晴らしい!

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