すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】私が「ハリル解任」に転じた3つの理由

2016-10-15 07:47:12 | サッカー日本代表
代表選手を育てる選手起用ができない

 過去に何度も書いたが、ハリルが志向するサッカーの方向性は正しい(ゾーンディフェンスをベースにしたハイプレス&ショートカウンター)。弱小国である日本が、ワールドカップの本大会で強豪国を相手にグループリーグ突破を狙うのにぴったりの戦術だ。ゆえに私は以前からハリルにポジティブな興味をもち、ずっと観察を続けてきた。

 だがハリルは「戦術以外」の面で減点ポイントが多い。その最大の要素が選手起用だ。彼は戦術で相手チームを上回ることはできても、選手起用で後手を踏む。スタメン選び、選手交代ともに硬直的で穴がある。

 まずハリルは数年単位で将来を見据えた「育てる」起用ができない。レギュラーは海外組完全固定で、彼らが所属チームで試合に出ていようがいまいが関係なし。「この11人が売り切れたら終わりです。彼らと心中します」みたいなギリギリの戦い方しかできない。(注/この記事を書いた2016年時点では、ハリルはレギュラー組を完全固定し若い選手をまったく使おうとしなかった)

 そもそも対戦相手が高校サッカー部レベルのアジア2次予選など、若手発掘の場に使えばいいのだ。だがハリルは2次予選でも海外組をズラリ揃えた鉄板フルメンバーで臨んだ。おかげで若手や国内組が育たず、今になって海外組がケガ人続出で自分の首を絞めている。それでもハリルは「海外組以外、だれを選ぶんだ? いたら教えてほしい」などと居直るのだからすごい。いや、ほかならぬあなた自身が門戸を閉ざし、若手を育ててこなかったのが悪いのだ。

 かくて2年後のロシアW杯ではアラサー(30才前後)の高齢選手をズラリ並べて戦うことになる。これでは決して日本サッカー界のためにならない。

最大のテーマは世代交代だ

 さかのぼればハリル就任当初、私はメキメキ頭角を現してきた​武藤嘉則や柴崎岳ら若い選手が積極起用され、てっきり世代交代が実現するものと期待していた。いつまでも本田ら北京五輪世代が代表のメインでは将来性がない。だがハリルは若手を呼んでも、試合に出場させるのは決まって後半の残り5分や10分になってから。顔見せみたいな使い方しかしない。これでは若手が力を示すのは奇跡的な確率だろう。

 例えば最近では原口がレギュラーに定着しそうな活躍を見せているが、彼にしろ以前は後半30〜40分台にしか起用されない時期が続き苦労した。たまに使われ結果を出しても、それ以降はまたパッタリ起用されない日々が続いた。

 清武にしても同じだ。彼は2015年11月のシンガポール戦や今年のキリンカップに出場し、プレイ内容も非常によかった。だがそれ以降もスタメンは「絶不調・香川」の完全固定で結局ロクに使われない。やっと先日のイラク戦でスタメン出場しすばらしい結果を出したが、続くオーストラリア戦ではまたスタメン落ちした。代わりにピッチに立ったのは、メンタルの壊れた抜け殻のような香川だった。愕然とした。

 たまに使われ結果を出しても、以後また起用されないのでは選手はいったい何を目標に頑張ればいいのか? 脱力するだけだ。士気が落ちる。チーム力アップにならない。そもそも今のネガティブな精神状態の香川を起用するとは、ハリルは人間のメンタルと運動機能の関係を心理学的に理解しているとは思えない。

 日本代表は香川に期待し、いったい何年チャンスを与え続けてきたのか? もういいかげん結論を出してもいい頃だろう。代表チームの香川は別人だ。所属チームで出たり出なかったりするのは個人の自由だが、「代表」は特別な場所である。つぎ込んだリソースに見合う活躍をしたか? で厳正にジャッジされるべきだろう。

巧みな選手起用が「マジック」を起こす

 さて一方、選手起用は試合で「マジック」を起こすエネルギー源にもなる。魔法の杖だ。

 選手は監督に使ってもらって初めて「この監督のために死ぬ気でやろう」と意気に感じる。そうしたメンタル面での高まり=アグレッシブさが負け試合を逆転するモチベーションになったり、番狂わせを起こすエネルギーになる。起用されることがメンタル面で大きな力になる。だがハリルは選手を「このおっさんのためなら死んでもいい」と思わせるようなタイプじゃない。

 例えば試合中や選手の交代時、選手に指示を出すときのハリルの態度は目も当てられない。半ばキレながら、激しいゼスチャーで一方的に喚きまくる。まるで奴隷にムチを入れるご主人様のようだ。選手を「乗せる」ような声掛けとはまったく逆である。その証拠にメンタルの弱い香川などは絶対にハリルの目を見ない。あれではムチを入れるどころか、選手を萎縮させるだけだ。選手をモチベートするのではなく「アンチ・モチベーター」になってしまっている。

 こんなふうにハリルは選手のメンタルを自在に操り、そのことで士気を鼓舞し、巧みに勝利をたぐり寄せるような選手起用ができない。

問題はW杯本大会でその監督がどう機能するか?

 結局、ハリル政権下では若手が出場するのは難しいのだ。仮に結果を出してもスタメンに定着するのは天文学的な確率である。例えば引き分けに終わった先日のオーストラリア戦(アウェイ)では、最初の選手交代が後半37分と遅すぎた。で、試合後にハリルはベンチにいた浅野と斎藤についてどうコメントしたか? 

「彼らは経験がなく、プレッシャーに負けるのではないかと途中起用をためらった」

 要するにハリルは「10年修行してなければ包丁は持たせない」みたいな選手起用しかできないのだ。これでは若手が育つわけがない。逆にそこでリスクを冒し使って初めて選手は育つのではないか? 本番で使うつもりがない(信用してない)選手をなぜ呼ぶのか? という疑問と併せ、選手の扱いに一貫性がない印象がぬぐえない。

 巷間、「イラク戦で引き分け以下ならハリルは解任」とか、「アウェイのオーストラリア戦に負けたら解任」などと言われていた。だが、そもそもそんな目先の試合の勝ち負けだけで「続投」だの「解任」だのを決めていいのか? 私はむしろ2年後のW杯本大会でその監督がどんな役割を果たし、どう機能するか? で決めるべきだと考える。

 30代の選手をズラリ並べたチームで本大会グループリーグを敗退したって何の意味もない(若手で負けるなら別)。単に今後2年間をドブに捨てるだけだ。だが監督がハリルのままではかなりの確率でそうなる。

 ゆえに私はハリルを解任すべきだと考える。
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