日本人の短所は見ないふりをする
森保一氏のA代表監督就任が発表された。発表会見では、日本サッカー協会の田嶋幸三会長が『ジャパンズ・ウェイ』なる標語を掲げ、今後は「日本人らしいサッカーをやろう」としきりにキャンペーンを張っていた。日本人の長所を生かし「良いところを伸ばそう」というわけである。
これだけ聞くと、一見もっともらしい。だがその実、協会が言ってることは「日本人のアラが目立たないサッカーをしよう」ということだ。日本人の短所には見ないふりして頰かむりし、いまできるプレイ=長所だけでやって行こう、という単なる現状維持路線である。というのも日本協会はハリルでほとほと懲りたからだ。
ハリルが日本人の「ダメなところ」をさんざん指摘したせいでサッカーファンが離れてグッズも売れなくなり、観客入場者数やテレビの視聴率、広告収入が下がってサッカー人気が下降した、と協会は誤認した。で、(おそらく)この理由からハリルを解任したのだ。
ハリルは課題をあげ修正を呼びかけた
確かにハリルは日本人の苦手なプレイ=短所にあえてフォーカスし、「日本人が抱える課題を修正しよう」と呼びかけた。私は正しいアプローチだと思う。いったい問題点はどこにあり、それを修正するには何をすべきか? を考えるのがサッカーで強くなる近道だと考えるからだ。
で、ハリルは例えば「日本人はインテンシティが低すぎる。もっと球際で激しく競ってデュエルしよう」、「日本人はポゼッションにこだわりすぎて安全な横パスやバックパスばかり繰り返す。もっと『前へ』の意識を強く持ち、タテに速く攻めよう」と訴えた。
実際、そのおかげでJリーグではインテンシティが上がり、データによれば球際の強さが向上した。またタテへの速さでいえば、代表チームではボールを保持したCBの吉田や槙野、昌子らが、サイドに開いたWGの足元へ正確な放射状のロングパスを入れるようになった。それだけでなくライン裏に走り込むFW浅野らにCBから正確なウラへの長いスルーパスが通るケースも増えた。
それまでペップ政権下のバルセロナに強い影響を受け、足元へのショートパスばかり繰り返していた日本代表(日本サッカー界)は確実に変わりつつあった。
ハリル路線を切り真逆に振れた協会
いやバルセロナならたとえ中盤でショートパスを何十本繋ごうが、最後はメッシら強力なアタッカー陣がゴールを決めて落とし前をつける。だがFWに決定力がなく、フィニッシュへ行く意識が低くシュートすべき局面でパスしてしまう日本代表では、バルセロナとちがい単にショートパスを何本も繋いでいるだけでいつまでたってもゴールできない。数字上のポゼッション率を伸ばすだけの、単なる「ボールキープゲーム」で終わってしまうーー。
この傾向はジーコジャパンあたりから特に強くなり、日本が長年抱える「病巣」になっていた。で、ハリルはこの構造化した日本の問題点を持ち前の分析力で鋭く見抜き、「もっとタテに速く」と訴え課題を修正しつつあった。
そこへ田嶋会長が独断で横ヤリを入れ、(おそらく)サッカー人気低迷に気をもむスポンサーやらテレビ局、電通などの利益共同体に忖度してハリルを切った。そしてハリルが掲げた「あえて日本人の短所に注目し問題点を修正しよう」との路線をバッサリ切り捨て、その正反対に位置する「日本人の長所を生かそう」「(課題には目をつぶり)日本らしいサッカーをしよう」とキャンペーンを張り始めたわけだ。非常にわかりやすい展開である。
だが彼らが言う「長所を生かす」とはウラを返せば「苦手なプレイはしない」ことであり、失敗しない得意なプレイだけやりトライがないことを意味する。これではいつまでたっても日本人の短所や弱点は直せず、問題点を潜在化させるだけだ。「見た目のいいプレイ」ばかりにこだわる短期的な発想はいかにも「商売」を気にする彼ららしいが、それでは長期的にはW杯ベスト8はおろか1次リーグ突破にあくせくするレベルで終わるだろう。「日本らしいサッカー」といえば聞こえはいいが、協会のいう「長所を生かす」は滅びの道だ。
森保一氏のA代表監督就任が発表された。発表会見では、日本サッカー協会の田嶋幸三会長が『ジャパンズ・ウェイ』なる標語を掲げ、今後は「日本人らしいサッカーをやろう」としきりにキャンペーンを張っていた。日本人の長所を生かし「良いところを伸ばそう」というわけである。
これだけ聞くと、一見もっともらしい。だがその実、協会が言ってることは「日本人のアラが目立たないサッカーをしよう」ということだ。日本人の短所には見ないふりして頰かむりし、いまできるプレイ=長所だけでやって行こう、という単なる現状維持路線である。というのも日本協会はハリルでほとほと懲りたからだ。
ハリルが日本人の「ダメなところ」をさんざん指摘したせいでサッカーファンが離れてグッズも売れなくなり、観客入場者数やテレビの視聴率、広告収入が下がってサッカー人気が下降した、と協会は誤認した。で、(おそらく)この理由からハリルを解任したのだ。
ハリルは課題をあげ修正を呼びかけた
確かにハリルは日本人の苦手なプレイ=短所にあえてフォーカスし、「日本人が抱える課題を修正しよう」と呼びかけた。私は正しいアプローチだと思う。いったい問題点はどこにあり、それを修正するには何をすべきか? を考えるのがサッカーで強くなる近道だと考えるからだ。
で、ハリルは例えば「日本人はインテンシティが低すぎる。もっと球際で激しく競ってデュエルしよう」、「日本人はポゼッションにこだわりすぎて安全な横パスやバックパスばかり繰り返す。もっと『前へ』の意識を強く持ち、タテに速く攻めよう」と訴えた。
実際、そのおかげでJリーグではインテンシティが上がり、データによれば球際の強さが向上した。またタテへの速さでいえば、代表チームではボールを保持したCBの吉田や槙野、昌子らが、サイドに開いたWGの足元へ正確な放射状のロングパスを入れるようになった。それだけでなくライン裏に走り込むFW浅野らにCBから正確なウラへの長いスルーパスが通るケースも増えた。
それまでペップ政権下のバルセロナに強い影響を受け、足元へのショートパスばかり繰り返していた日本代表(日本サッカー界)は確実に変わりつつあった。
ハリル路線を切り真逆に振れた協会
いやバルセロナならたとえ中盤でショートパスを何十本繋ごうが、最後はメッシら強力なアタッカー陣がゴールを決めて落とし前をつける。だがFWに決定力がなく、フィニッシュへ行く意識が低くシュートすべき局面でパスしてしまう日本代表では、バルセロナとちがい単にショートパスを何本も繋いでいるだけでいつまでたってもゴールできない。数字上のポゼッション率を伸ばすだけの、単なる「ボールキープゲーム」で終わってしまうーー。
この傾向はジーコジャパンあたりから特に強くなり、日本が長年抱える「病巣」になっていた。で、ハリルはこの構造化した日本の問題点を持ち前の分析力で鋭く見抜き、「もっとタテに速く」と訴え課題を修正しつつあった。
そこへ田嶋会長が独断で横ヤリを入れ、(おそらく)サッカー人気低迷に気をもむスポンサーやらテレビ局、電通などの利益共同体に忖度してハリルを切った。そしてハリルが掲げた「あえて日本人の短所に注目し問題点を修正しよう」との路線をバッサリ切り捨て、その正反対に位置する「日本人の長所を生かそう」「(課題には目をつぶり)日本らしいサッカーをしよう」とキャンペーンを張り始めたわけだ。非常にわかりやすい展開である。
だが彼らが言う「長所を生かす」とはウラを返せば「苦手なプレイはしない」ことであり、失敗しない得意なプレイだけやりトライがないことを意味する。これではいつまでたっても日本人の短所や弱点は直せず、問題点を潜在化させるだけだ。「見た目のいいプレイ」ばかりにこだわる短期的な発想はいかにも「商売」を気にする彼ららしいが、それでは長期的にはW杯ベスト8はおろか1次リーグ突破にあくせくするレベルで終わるだろう。「日本らしいサッカー」といえば聞こえはいいが、協会のいう「長所を生かす」は滅びの道だ。