ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

鋸山ダム

2024-02-05 08:00:00 | 千葉県
2016年1月21日 鋸山ダム
2024年1月26日
 
鋸山ダムは千葉県安房郡鋸南町元名の元名川水系元名川にある鋸南町建設水道課が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
昭和30年代に入り房総各自治体では海水浴客など観光客の増大に対応して、水道事業の開設が進みます。
1959年(昭和34年)に旧保田町と勝山町が合併して誕生した鋸南町も例にもれず、合併直後に町営水道を認可、その上水道水源として1962年(昭和37年)に竣工したのが鋸山ダムです。
ダムと合わせて鋸南町浄水場など水道施設も完成し同年給水が開始されました。
その後数次にわたり事業拡張が行われ、1979年(昭和54年)には2番目の水源として元名ダムが竣工、さらに1993年(平成5年)には利根川から取水し水資源機構房総導水路を経由した南房総広域水道企業団(通称南水)からの受水も始まり、現在の鋸南町の水道普及率は99%に及びます。

鋸山ダムはダム下、天端が立ち入り禁止になっており2016年(平成28年)1月の初訪時は下流から遠望するにとどまりました。
2024年(令和6年)1月の再訪時は事前に鋸南町に見学申請を行い、建設水道課職員様の案内で見学が叶いました。
撮影日時のない写真はすべて再訪時のものです。
 
鋸南町の国道127号線から町道を東進、町営鋸南町浄水場をやり過ごし約1.5キロ、車で10分弱で鋸山ダムに到着します。
ダム下は鋸南町建設水道課の資材置き場になっており立ち入り禁止
初訪時はここから遠望するのみでした。
(2017年1月28日)

 
再訪時は敷地の中で見学。
放流設備はクレスト自由越流頂5門だけという上水ダムらしい造り。

 
導流部下部に土砂吐ゲートがあります。
手前に伸びる細く黒い管が河川維持用のパイプ。
訪問時は貯水量が少なくなっており維持放流は中止。


堤体直下まで寄ります。
扶壁に溝が見えますが、完成当初はスライドゲートが嵌め込まれていたそうです。


資材置き場入り口から100メートルほど先に天端への入口があります。
上水用の貯水池ということでフェンスが閉ざされ完全立ち入り禁止。


フェンスの先にはコンクリートの構造物。
各種ダム紹介サイトなどでは副ダム?止水工?などの憶測がありますが・・・
職員さんによれば『これはただの通路』。
(2017年1月28日)


通路の先にもゲートがあり水利使用標識が設置されています。
県管理の二級河川ということで普段目にする水利使用標識とは書式が異なる。


いったん高さ10メートルほどの地山を登ります。
頂上には竣工記念碑があり竣工は昭和卅七年九月と記されています。


記念碑から堤体を見下ろすと
ゲート部が高く上流側の取水設備は半円形で、いかにも昭和30年代の上水ダムらしい造り。


堤頂の幅は1メートルほど。


天端からダム下の眺め
斜めの白い線の下に浄水場への導水管が埋設されています。
ちょっとわかりづらいのですが、写真左上側に微かに東京湾が見えます。
ということで『海が見えるダム』認定!


総貯水容量は14万7000立米
少雨のため貯水率は40%台。
まだ深刻というレベルではありませんが、職員さん曰く『まとまった雨が欲しい』。


クレスト自由越流頂
上記のように完成当初はスライドゲートが設置されておりその溝が残ります。


取水設備上のバルコニーを見下ろします。
右手のハンドルはそれぞれ4段ある取水口の操作用
左の二つのハンドルは水量調節用
基本水量調節は開放のままで、この2つのハンドルを操作することはほとんどないそうです。

 
ゲート上にもハンドルが並びます。
これはかつて設置されていたスライドゲート開閉用でゲートが撤去された今使われることはありません。

これは土砂吐ゲート開閉用
ハンドルは撤去され土砂吐は閉められたまま。


天端から導流部を見下ろす
越流しても放流量は多くなく減勢工も小さい
よく見ると副ダムがあります。


鋸山ダム見学の詳細は鋸山ダム・元名ダム 見学』をご覧ください。

昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
 
0686 鋸山ダム(0198)
千葉県安房郡鋸南町元名
元名川水系元名川
19.1メートル
55メートル
147千㎥/131千㎥
鋸南町建設水道課
1962年


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