ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

世木ダム

2021-04-12 14:09:43 | 京都府
2021年3月26日 世木ダム
 
世木(せぎ)ダムは京都府南丹市日吉町天若の淀川水系桂川上流部にある関西電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
新庄発電所の取水ダムとして1950年(昭和25年)に着工され、翌1951年(昭和26年)に竣工しました。この間に、電気事業再編令により日本発送電が分割され新たに9電力会社が誕生していますので、着工は日本発送電、運用開始は関西電力ということになります。
その後、1997年(平成9年)に4キロ下流に日吉ダムが完成したことで世木ダムの堤体の大半は天若湖に水没しましたが、ラジアルゲートを撤去し全面越流式の発電用取水ダムとし現在も稼働を続けています。
世木ダムで取水された水は約3.6キロの導水路で下流の新庄発電所に送られ最大6700キロワットのダム水路式発電を行っています。
既存のダムが新ダム建設によって水没するケースは相応数ありますが、水没後も稼働し続けているケースは世木ダムと神奈川県の沼本ダムの2例のみです。
 
日吉ダムから府道58号線を上流に向かうと世木ダムに到着します。
まずは下流から
6門あったラジアルゲートは撤去され自由越流式ダムとして稼働しており、従来の発電目的に加え日吉ダムの貯砂ダムとしての役割も持っています。
天若湖の水位が低いと美しい越流を見ることができますが、今回は水位が高いため文字通り「水没」状態。
 
ズームアップするとわずかながら越流してるのがわかります。
左岸(向かって右手)のゲートは元の排砂ゲートになります。
 
この手の発電用ダムとしては珍しく天端が遊歩道として開放されています。
 
ゲート部分だけ階段で高くなっています。
これは昭和20~30年代前半の発電用ダムでよくみられる形状です。
扶壁に撤去されたラジアルゲートの跡がくっきりと残っています。
 
両側にもともとの低い高欄が残り、新たに背の高い手すりが付け加えられています。
 
円形のバルコニー
これはもう戦前の香りが漂う作り。
 
円形の線は撤去されたラジアルゲートの跡
縦の溝は予備ゲート嵌め込み用の戸当たりかと思います。
 
上流から遠望
天若湖の水位が高いため上下流どちらから見てもほとんど見分けがつきません。
 
新庄発電所への取水口
昭和20年代らしく大掛かりな取水設備になっています。
 
日本では2例しかない水没後も稼働しているダム。
できれば天若湖の水位が低い時期に再訪して越流を愛でたいものです。
 
1399 世木ダム(1609)
京都府南丹市日吉町天若
淀川水系桂川
35.5メートル
138.2メートル
5595千㎥/2790千㎥
関西電力(株)
1951年


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