ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

日向神ダム

2022-06-15 20:00:00 | 福岡県
2022年5月25日 日向神ダム

日向神(ひゅうがみ)ダムは左岸が福岡県八女市黒木町大淵、右岸が同町北大淵の一級河川矢部川本流にある福岡県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
当初矢部川には建設省直轄事業によるダム建設が計画されていましたが、1953年(昭和28年)の西日本大水害を受けて、県は『矢部川総合開発事業』を採択、工場進出で電力需要旺盛な大牟田向け発電を行うため県企業局が事業参加し1962年(昭和37年)に日向神ダムが竣工しました。
日向神ダムは福岡県最初の補助多目的ダムで、矢部川の洪水調節のほか矢部川流域1万2000ヘクタールへの不特定灌漑用水への補給と安定した河川流量の維持、福岡県企業局大渕発電所(最大出力7500キロワット)でのダム式発電を目的としています。
また翌年には下流1キロ地点に大渕発電所の逆調整池として松瀬ダムが完成しました。

まずはダム下へ
渓谷の狭隘部にそそり立つその姿は偉大で、79.5メートルの堤高以上の高さを感じます。
クレストラジアルゲート2門、コンジット高圧ローラーゲート2門のほかダム下部両側ににフィクストコーンバルブ2条を備えた美しいシンメトリー。


ラジアルゲートをズームアップ。


こちらは県企業局大淵発電所
建屋は新しく近年刷新されたようです。


天端に上がります。
まず目に入るのは対岸に屹立した天戸岩と呼ばれる大岩壁。
岩はマグマの貫入によって生成された日向神溶岩と呼ばれる安山岩です。


天端に鎮座するエメラルドグリーンのガントリー
コンジットおよびコーンバルブの予備ゲートを運搬します。


天端は車道ですが幅は狭く離合は難しい。でも車はほとんど通りません。
路面にはコンジットゲート用のグレーチング。


天端から。


ダム湖は細長く上流に続き総貯水容量は2790万立米となります。
ダムは狭隘な渓谷をうまく利用して作られ堤体積はわずか23万5000立米、貯水効率118倍と効率のいいダムです。


右岸のトンネル
天端両岸がトンネルという珍しいダム。


取水設備の向こうに繋留設備があります。


ダムは日向神溶岩と呼ばれる硬い安山岩の岩壁をつないで建設されました。
日向神溶岩はダム周辺のみ分布しており、ダム建設地点は地質的にも絶好の場所と言えます。




(追記)
日向神ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2410 日向神ダム(1857)
左岸 福岡県八女市黒木町大淵
右岸        同町北大淵
矢部川水系矢部川
FNP
79.5メートル
146メートル
27900千㎥/23900千㎥
福岡県県土整備部
1962年
◎治水協定が締結されたダム


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