ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

スゲタ溜池

2023-06-09 17:15:44 | 福岡県
2023年5月19日 スゲタ溜池

スゲタ溜池は福岡県八女市黒木町木屋にある灌漑目的のアースフィルダムです。
八女市黒木町では9基の灌漑用溜池が堤高15メートル以上のダムとしてダム便覧に掲載されていますが、うち7基が位置未確認となっています。
スゲタ溜池もその一つで、ダム便覧には1933年(昭和8年)に黒木町の事業により竣工と記されており、当時の町営事業で建設されたと思われます。
管理は北方約280メートルに位置する狸穴溜池ともども吹原耕地整理組合が行っており、池の東方、剣持川左岸傾斜地に広がる棚田に用水を供給しています。
狸穴溜池にある石碑には『スゲ田狸穴溜池』と記されており、二つの池は同一事業で建設されたことがわかります。
両池は上下池の関係にあり今回の訪問で狸穴溜池からスゲタ溜池に通じる導水路も確認できました。

二つの溜池の位置関係
緑が狸穴溜池、オレンジがスゲタ溜池
赤い線が狸穴からスゲタに通じる導水路(推測)
両池の水は地図の東方(向かって右手)傾斜地の水田に用水を供給します。


スゲタ溜池はダム便覧に経緯度が記載されていますが数値が誤っており、正確な位置は八女市が作成した『ため池ハザードマップ』特定できます。

池の手前150メートルあたりから
ダム便覧のテーマページ『福岡県八女市の位置未確認ダムについて』では、池直下でブドウ栽培が行われている様子が伺えますが、訪問時は耕作放棄されていました。


草生した水路沿いを辿り何とか堤体下へ。
堤体は定期的に草が刈られているようですが、訪問した時期が悪かったようでそこそこ草が伸びています。
ダム便覧やため池データベースでは堤高23メートルとなっています。
この写真ではそこまでないように見えますが、池の基部はさらに深く、この写真の足元は池の中段辺り。


コンクリート製の底樋桝。
田植え時期を控え勢いよく水が流れています。


底樋桝から伸びる灌漑用水路、等高線状に伸びています。
水路は半ば泥に埋まっていますが、樹脂製のパイプが設置され水はそこを通ります。


天端によじ登ります。
こちらも程々草が伸びていますが、草刈りは行われているようです。
天端の栗の木がいいアクセント。


左岸に貯水池に流れ込む水路があります。


ダム便覧には狸穴溜池とスゲタ溜池は水路でつながっており、上下池の関係にあるとの記述があります。
この水路は狸穴溜池からのもので、スゲタ溜池の水の大半は狸穴溜池からの補給によると思われます。
ただ、田植え時期を控え用水補給は最盛期のはずですが、水路には水は流れていません。


上流面
石積等の護岸は確認できません。


左岸の池栓
取水した水は上記底樋桝へと送られます。


総貯水容量2万5000立米の小さな溜池ですが、水位は御覧の通り。
底樋桝からは勢いよく水が流れる一方、上下池の関係にある狸穴溜池からの補給はありません。
高齢化や離農などで需要量が減ったのかも?


天端から左岸を望みます。
下の筋が狸穴溜池からの水路、上の筋が池栓。


右岸を掘り込んだだけの洪水吐。


洪水吐導流部
竹や倒木が重なりかなり荒れた状態。

振り返って見ると、狸穴溜池から続くと思われる水路を辿ってみればよかったとちと後悔。

2386 スゲタ溜池(1987)   
ため池データベース 402101014 
福岡県八女市黒木町木屋 
矢部川水系剣持川左支流(河川名不明)
 
 
23メートル 
48.5メートル 
25千㎥/25千㎥ 
吹原耕地整理組合 
1933年