ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

日吉ダム

2021-04-11 03:01:39 | 京都府
2021年3月26日 日吉ダム 
 
日吉ダムは京都府南丹市日吉町中の淀川水系桂川上流部にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
桂川は淀川の主要支流の一つですが、保津峡が狭隘な閉塞区間となっており豪雨のたびに上流の亀岡盆地が自然遊水地となり甚大な洪水被害をもたらしてきました。
一方戦後の水道需要増大に対処するため1962年(昭和37年)の「水資源開発促進法」により淀川水系では水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められ、桂川においては1972年(昭和47年)に同公団により上流部への多目的ダム建設事業が着手され、長期の補償交渉を挟んで1997年(平成9年)に日吉ダムが竣工しました。
日吉ダムは水資源機構法による多目的ダムで、桂川の洪水調節、既得取水権への用水補給と安定した河川流量の維持、京阪神地区への上水道用水の供給を目的としています。
平成25年の台風18号や平成30年7月豪雨の際には設計最高水位まで貯水を行うなど、日吉ダムは保津峡上流域はもとより下流の京都市街の洪水被害軽減に大きく貢献しています。
 
事業計画から建設着手まで長期にわたる補償交渉があったことも踏まえ、建設省(現国交省)より『地域に開かれたダム事業』の指定を受け、ダム下流に温泉複合施設兼道の駅として「スプリング日吉」が設置されました。現在では日吉ダム一帯は丹波地方を代表するアウトドア・レジャースポットとなっており、ダム訪問者数は岩手県の御所ダムに次ぐ動員数を誇り、ダムツーリズムの顕著な成功例となっています。
以上の点を評価し日吉ダムは日本100ダムに、ダム湖の天若湖はダム湖百選に選定されています。
 
道の駅の駐車場に車を置き、芝生の広場を進むと名物のループ橋越しに日吉ダムが姿を現します。 
 
本体着工が1993年(平成5年)とまだバブルの余韻が残る時代の影響もあるのか、重厚感を持って前面に張り出すゲート扶壁など斬新なデザインとなっています。
クレストにはラジアルゲート4門、常用洪水吐としてコンジットに高圧ラジアルゲート2門を装備
さらに左岸(向かって右手)に利水放流設備として放流管が2条設置されています。
 
ダム下のループ橋のおかげでいろんなアングルからダムと正対できます。
洪水吐が左岸に寄っているので気づきませんでしたが、ゲートや扶壁はシンメトリーになっています。
 
左岸を通る府道58号線も絶好の展望ポイントとなっており、個人的にはここからの眺めが一番好みです。
堤高は67.4メートルと際立って高いわけではありませんが、巨大な扶壁がまるで5体の巨人像のようにも見え数字以上の存在感を醸し出します。
 
天端は2車線はあろう幅広の道路ですが、徒歩のみ通行可能です。
 
上流面は重力式ダムとしては珍しくわずかに傾斜しています。
 
円形の取水設備と無塗装のシルバーのゲートがメカニカル感を際立たせています。
 
天端から
やはり円形のループ橋に目が向きます。
 
ダム湖の「天若湖」
総貯水容量は6600万立米。
 
右岸から
いわゆる「襟」の部分がなく、堤頂から連続してバケットカーブに続いてゆきます。
手前のエレベーター棟及び、2階のバルコニー、1階のダム博物館は開放されています。
 
コンジットゲートの高圧ラジアルゲート
ガラス越しですが常時目にすることができます。
 
追記(追記)
日吉ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

1407 日吉ダム(1608)
京都府南丹市日吉町中
淀川水系桂川
FNW
67.4メートル
438メートル
66000千㎥/58000千㎥
水資源機構
1997年
◎治水協定が締結されたダム