ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

前川ダム

2016-07-12 21:28:07 | 山形県
2016年7月10日 前川ダム
 
前川ダムは山形県上山市中山の最上川水系前川右支流忠川にある山形県県土整備部が管理する治水目的のロックフィルダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、前川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への補給を目的として1982年(昭和57年)に竣工しました。
洪水被害が頻発した前川の治水を目的にダム建設が企図されましたが、前川本流にダム建設適地がなかったことから河道外貯留方式が採用されました。
具体的には前川東方の灌漑用溜池である忠川池をダム化する一方、前川本流上流の南陽市小岩沢に分水口を設け、豪雨などで水量が増加した場合にはここで水量をカットしてダムに導水する仕組みとなっています。
同じような仕組みは千葉県の矢那川ダムや長野県の小仁熊ダムでも採用されています。
 
前川ダムと分水口の位置関係。地図の赤マルが分水口です。 
 
上山市街から国道13号を南下すると国道に前川ダムを示す案内板があります。
下流から。
非常用洪水吐は横越流式、導流部下部の四角い穴に下部放流設備のジェットフローゲートを装備
向って右手の河川維持放流設備から放流が行われています。
 
天端に上がります
右岸の横越流式洪水吐。 
 
左の建屋が管理事務所、職員の常駐はなく巡回のみ
右は取水設備。
 
洪水吐導流部と減勢工
1枚目の写真は下流の橋付近から撮ったもの。
 
天端は車道。
 
総貯水容量440万立米のダム湖。
有効貯水容量410万立米のうち洪水調節容量は240万立米。
堆砂容量と従来の忠川池の既得取水権を含めた不特定利水容量分200万立米が常時貯留されています。
ダム湖は湖面利用が許可されており、ヘラブナ釣りスポットとして人気のようです。
 
天端から。
 
前川ダム分水口からの導水路
最上位地図の緑マル地点です。
 
上流から前川ダム分水口。
右が前川ダムへの導水路、左が前川本流です。
 
下流から
本流にはゲートがあり、洪水の際にはゲートを閉め水を前川ダムへ送る仕組みです。 
 
 
 
前川ダム分水口の碑。
 
(追記)
前川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 
0440 前川ダム(0487)
山形県上山市中山
最上川水系前川
FN
50メートル
265.5メートル
4400千㎥/4100千㎥
山形県県土整備部
1982年
◎治水協定が締結されたダム

菖蒲川ダム

2016-07-12 16:27:09 | 山形県
2016年7月10日 菖蒲川ダム
 
菖蒲川ダムは山形県上山市菖蒲の最上川水系須川右支流菖蒲川にある灌漑目的の重力式コンクリート・フィル複合ダムです。
山形盆地を南北に縦断する須川は最上川最大支流ですが、蔵王の火山活動に加え明治以降の硫黄採掘により昭和10年代より酸性化が顕著となり須川を主水源とする流域農地約500ヘクタールに多大な悪影響を与えていました。
そこで新たな灌漑用水の確保を目的に農林省(現農水省)の補助を受けた県営事業で1973年(昭和48年)に竣工したのが菖蒲川ダムです。
しかし当ダムだけでは流域全体の真水化には遠く及ばず至らず、1994年(平成6年)の鉱毒対策事業『上山東部地区』の竣工によりようやく須川流域の灌漑用水真水化が実現しました。
ダムの管理は上山市土地改良区が受託しています。
 
上山市街から県道263号を東に向かい、菖蒲川に沿って市道を左に取ると菖蒲川ダムに到着します。
まずは右岸高台から俯瞰、ダム便覧に掲載された写真と同じアングルです。
左右両岸がロックフィル、中央が重力式コンクリートの複合ダムです。
 
右岸から。
両岸がロックフィルになっており、中央が低い左右対称の逆三角形の堤体はまるで翼を広げた猛禽の様な美しさです。
さらに赤と青の鮮やかなコントラストが彩りを添えます。
重力式コンクリート堤体が低くなっているのは、万一の堤体越流の際に両岸のフィル堤体が洗堀されることを防ぐためです。
 
ここ数日の雨で水位が上がり放流のおまけつき。 
 
天端は車道。
ゲート部分だけ下流側に張り出しています。
 
赤いローラーゲートと青い手すりの対比が鮮やか。
 
減勢工。
 
左岸から。
 
右岸にあるインクライン。
 
総貯水容量54万5000立米。
 
(追記)
菖蒲川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0436 菖蒲川ダム(0485)
山形県上山市菖蒲
最上川水系菖蒲川
GF
31.1メートル
210メートル
545千㎥/413千㎥
上山市土地改良区
1973年
◎治水協定が締結されたダム

本沢ダム

2016-07-12 13:38:39 | 山形県
2016年7月10日 本沢ダム
 
本沢(もとさわ)ダムは山形県上山市狸森の最上川水系本沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
1952年(昭和27年)に本沢溜池として竣工、1991年(平成3年)から2004年(平成16年)にかけて大規模な改修が行われました。
ダム便覧ではこの改修の竣工を竣工年度とし、管理は最上川中流土地改良区が行っています。
ちなみに神奈川県にも本沢ダムがありますがこちらは『もとさわ』、神奈川は『ほんざわ』と読みが異なります。
 
ダムは国道348号沿いにあります。
堤体下流面。
 
天端。
 
ダム湖。
すぐそばを国道348号が走っています。
総貯水容量15万7000立米。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
左岸から
堤体中央に斜樋があります。
 
アングルを変えて。
 
ダム下には下りなかったので底樋は確認しませんでした。
 
(追記)
本沢ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
3366 本沢ダム(0483)
ため池コード
山形県上山市狸森
最上川水系本沢川
17.5メートル
81.2メートル(ため池データベース 91.5メートル)
157千㎥/157千㎥
最上川中流土地改良区
2004年
◎治水協定が締結されたダム

木川ダム

2016-07-12 12:15:27 | 山形県
2016年7月10日 木川ダム
 
木川ダムは山形県西村山郡朝日町立木の一級河川最上川水系朝日川にある山形県企業局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により、新たに東北電力(株)が誕生します。
同社は戦後の電力不足を補うために積極的な電源開発を進めますが、送電網末端部にあたる山形県では東北電力だけでは電力需要を賄いきれず公営発電である県企業局による電源開発が併せて進められました。
企業局は包蔵水力豊富な朝日川に着目し1956年(昭和31年)より電源開発に着手、1958年(昭和33年)に木川ダムと朝日川第一発電所(最大出力9000キロワット)が完成しました。
さらに1960年(昭和35年)には木川ダム上流に旭川第二発電所(最大出力4800)キロワットが完成、併せて1万3800キロワットの発電能力を持つに至りました。
 
朝日川に沿って県道289号を遡上し、Asahi自然館への道を分け擦れ違いがやっとの隘路を3キロ走ると左手に木川ダムが見えてきます。
青い縦長のローラーゲートが1門、高い導流壁が特徴。
訪問時は取水ゲートの交換工事のため発電所が停止しておりクレストゲートが開放されていました。
 
どうしても縦長のゲートに目が行ってしまいます。
雪国らしく被覆されたゲートビア。
 
 
高い導流壁。
放流で激しい水煙が立ち上っています。
 
天端は立ち入り禁止。
 
正面に朝日第一発電所への取水口があります。
訪問時は取水ゲートの交換工事中です(この日は休工中)のため取水は行われていません。
 
(追記)
木川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0426 木川ダム(0482)
山形県西村山郡朝日町立木
最上川水系朝日川
31.5メートル
73.5メートル
840千㎥/540千㎥
山形県企業局
1958年
◎治水協定が締結されたダム

上郷ダム

2016-07-12 11:06:07 | 山形県
2016年7月10日 上郷ダム
 
上郷ダムは左岸が山形県西村山郡朝日町常盤、右岸が同町大滝の一級河川最上川本流にある東北電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
芭蕉の句でも『さみだれを流して早し』と読まれた最上川ですが、支流では大正期より電源開発が進められたものの本流の発電所は1914年(大正3年)に稼働した旭発電所1基のみでした。
1951年(昭和26年)の電気事業再編成で新たに誕生した東北電力は高度成長による電力需要増加に対処するため各所で電源開発を進めます。
上郷ダムもその一つで1962年(昭和37年)に建設され上郷発電所で最大1万5400キロワットのダム式発電を行います。
上郷ダムは最上川本流にある唯一のダムです。
 
国道287号線を南下し朝日町中心街を抜けると右手に上郷ダム湖が見えてきます。
上郷ダム公園の標識に従って右に折れるとダム湖右岸に到着します。
ダムはローラーゲート5門装備、右手に取水ゲートが2門あります。
豪雪地帯ということでピアの管理橋は被覆されています。
 
左岸に回ります。
減勢部にはバッフルピアが並び、対岸委ダム式発電所の上郷発電所が鎮座。
 
天端は『関係者以外の車両の通行をご遠慮ください』と書かれていますが、実際には地元住民の生活道路として利用されているようです。
 
ダム湖
総貯水容量766万立米ですが堆砂が進み、有効貯水容量は189万立米。
 
減勢部のバッフルピア。
 
右岸の上郷発電所。
 
発電所を魚道が回り込みます。
 
発電用取水ゲート。
 
右岸には作業船が繋留され湖岸には流木処理施設があります。
 
(追記)
上郷ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0429 上郷ダム(0481)
左岸 山形県西村山郡朝日町常盤
右岸         同町大滝
最上川水系最上川
23.5メートル
166メートル
7660千㎥/1890千㎥
東北電力(株)
1962年
◎治水協定が締結されたダム