<続き>
〇第3章・アユタヤー 輝ける交易の都
アユタヤ―は1351年に建国され、その後400年に渡って繁栄した交易都市国家である。アユタヤーでは、スコータイから受容した上座部仏教が華やかに発展した。1431年にアンコール帝国を、1438年にはスコータイを直轄領としたポーロムマラーチャティラート2世(在位1424-1448)が建立したワット・ラーチャブーラナの仏塔からは、当時の栄華がしのばれる多くの金製品や仏像、交易で得た品々が発掘された。
(ワット・ラーチャブーラナ 出典:グーグルアース)
一方、クメール文化の影響を受け、王の権力と神聖さを高めるためのバラモンの儀礼や位階制度が整えられた。
そのワット・ラーチャブーラナから出土した金製品を紹介したい。これらの金製品はプラーン(仏塔)の『クル』と呼ばれる地下空間に埋蔵されていた。
仏塔の宝物を奉納する行為は、未来のダルマラージャ(仏法王)のためのものとされ、将来にわたって仏法が正しい王によって守られ、国の安寧と繁栄を願って行われるものであった。この仏塔は内部に舎利を収めた仏舎利塔で、スリランカ様式とインド東北部のパーラ様式が混交しているという。
チェンマイ王の権力と威光を示す玉座模型で、チェンマイ県ホート郡のワット・チェディースンにて出土した。そこでは仏の功徳を象徴する舎利塔の模型も合わせて出土しており、北タイにおける王権と仏教を考える上で貴重である。
下の写真は、そのワット・チェディースン址である。チェンマイ中心部からは100kmの距離であり、なぜこのような距離が離れた廃寺跡から出土したのか?・・・不思議である。
(出典:グーグルアース)
この第3章では、出品番号82と83で三界経が展示されていた。残念ながら紹介できる適当な画像が見当たらないが、タイの仏教や仏教美術を知るには絶好の遺品である。
三界とは、欲界、色界、無色界という仏教的宇宙を構成する三界について説かれる。アユタヤーでは特に欲界に重きが置かれており、具体的にその世界が記述される。その内容は説法として語られ、寺院壁画や出品の絵入り写本のように視覚化され、タイ人社会に深く浸透した。次回は第4章を紹介したい。
<続く>