世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

謎のサンカンペーン鉄絵文様盤

2015-03-22 09:10:09 | サンカンペーン陶磁

 先般2月3日に「新発見のサンカンペーン鉄絵文様」なるタイトルで、当該ブログにUp Dateした。それはBlog<の~んびりタイランド2>の新発見のサンカンペーン鉄絵文様に関する記事を参考にしたものであった。
 そのBlogに紹介されている写真の解像度は、残念ながら低く、詳細が分からなかった。その記事によると、2011年11月のバンコク大洪水で水没した東南アジア陶磁博物館が、2014年11月に再開館した記念レクチャーで発表されたものらしい。
 そこには蜂や蟷螂、蟹と思われる文様が描かれている。これらを当該ブログで「新発見のサンカンペーン鉄絵文様」として紹介したところ、コメント氏より、これらは後絵の盤である可能性が高いとの指摘を受けた。

 話は反れる。今年の6月から6-8カ月間の予定で、チェンマイに滞在するつもりである。その際ランパーン古窯址を訪れたいと考えているが、訪れるからにはランパーンに所在する博物館を見学したいと思い、インターネットで検索すると「○○○」なるBulogがヒットした。色々豊富な内容で力作のBulogであるが、ここに例の蟷螂、蟹の鉄絵盤が、比較的明瞭な写真でもって紹介されている。
 写真を掲載したいところだが、他人様の写真でもあり、そうにもいかないので、スケッチした写真を掲げておく。


 スケッチではわからないが、これはサンカンペーンには存在しない、釉上彩つまり後絵の蟷螂文である。その最大の理由は、鉄絵の部分だけ見事に釉薬のガラス質の光沢がみられないことである。そのことが如実に釉上彩であることを表しており、低火度鉄絵顔料によるものか、化学的顔料によるものと思われ、多分後者であろう。つまり鉄絵顔料部分が、くっきりと艶消しで、濃淡無しの単調に発色し浮き上がっている。
 通常、サンカンペーンの鉄絵は釉下彩で、鉄絵にダミ等の濃淡や場合によっては滲みが発生する。この蟷螂文の盤はそれらが全くみられない。
 問題は次の文様である。そのスケッチを掲げておく。図柄は蟹の爪が魚を挟んでいる。魚文はポピュラーな図柄で、よく描かれている。


 高台底には、、右回りの鉋目による削り痕が現れ、サンカンペーン特有の粗い胎土が伺われることから、器胎は本歌であると考えられる。写真で詳細が分からないのは、鉄絵部分で、これが釉上彩なのか釉下彩なのか、判断がつかないことである。口縁の蔓唐草文は滲みが認められるが、この発色と見込みの魚・蟹図の鉄絵の発色が異なるようにも見える。
 Blogを見ると盤の入手先は、チェンマイのM通りの骨董店のようである。そこは、?の品物も置いており、結局後絵か本歌か手に取って見なければ判断がつきにくい。この蟹の図柄の盤は、もう一点紹介されており、そこには二匹の蟹が向き合う図柄である。この写真も判断しにくい、釉上彩にも見え釉下彩にも見える。これも手に取ってみなければ判断できない。
 バンコクの東南アジア陶磁博物館で、蟷螂、蟹の図柄は後絵と紹介されていることもあり、後絵の可能性もあるものの断言はできない。一度手に取って観察したいが、そうもいかないであろう。