新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

英語の単語や熟語をカタカナ語化して使うのは疑問だ

2024-05-04 07:49:01 | コラム
カタカナ語排斥論者は言う:

一寸堅い話になるかと思うが、私の意のあるところを宜しくご理解の程を。

先日から「パワーハラスメント」略して「パワハラ」、英語で書けばpower harassmentを取り上げて論じてきた。岡田康子氏がこの表現を創造された経緯にも触れたし、岡田氏の「英語のbullyingでは我が国の職場での上席者即ち権力の行為を表現し切れていないからharassmentにした」という主張も学んだ。“power”を「権力」を表すことに使ったとも知った。

何れにしても、私は日本語にある言葉(漢字)の意味するところ忘れて、英語の単語をカタカナ語にして使う場合に往々にしてその意味を正確に把握できていない場合があるのが宜しくないと思っている。

卑近な例では「テンション」然り「メリット」然りである。「ケースバイケース」も誤解による誤用なのだ。何度も指摘してきたことで、表音文字であるアルファベットで構成された英単語には、漢字とその熟語のような深く且つ広い範囲の意味はあまりないのだ。故に、英単語をカタカナ語化して使う時には、十分に辞書などを引いてからにして欲しいのだ。

そういう視点からすると、岡田康子氏がbullyingではなくharassmentだと主張された点は、排斥論者にはもう一つ納得がいかない説だし、英語の単語の意味を正しく理解しておられたのかとの疑問も残る。

この際、読者諸賢にお分かり頂こうと、私が言わんとする要点を詳しく述べていこう。その前に、私が屡々引用するOxfordだが、ある読者から「一般の方にはOxfordなどと言われても、何の事か理解されないのではないか」と指摘されたので、ここに改めて「Oxford English Dictionaryとは」をWikipediaから引用してみる。私は非常に権威ある「英英辞典」であると認識して依存して長年使ってきている。

>引用開始
『オックスフォード英語辞典』(オックスフォードえいごじてん、英: Oxford English Dictionary) は、オックスフォード大学出版局が刊行する記述的英語辞典である。略称はOED。『オックスフォード英語大辞典』とも呼ばれる。世界中の多様な英語の用法を記述するだけでなく、英語の歴史的発展をも辿っており、学者や学術研究者に対して包括的な情報源を提供している。」
<引用終わる

という次第である。

このOEDを使って、岡田康子氏が違うのではないかと疑問を呈しておられたbullyの解説を訳して「人がその力か権力を使って弱者を驚かすか傷つけること」と出ている。

一方のharassは「屡々受け身で使われる」とあって「(誰かに)不愉快なことを言うか、そういう行為をして圧力をかけて困らせるか不快に感じさせる」となっていて、二義的には「相手に継続的に攻撃をかける」とある。

私には方がカタカナ語の「ハラスメント」の方はbullyに近いと思うのだ。アメリカで使われ出したsexual harassmentとは「口頭での攻撃で驚かすとか傷つけることではない」と理解していた。本部で教えられた例は“「貴方の今日の服は素敵だね」と言えばsexual harassmentである”という事だった。部下が提出した書類を破り捨てることはまるで違う。

私が指摘したいことは「上司または上席者が権力を使って配下にある人を侮辱するとか傷つけることが宜しくないことは明らかであるとは言え、その行為を簡単に英語の単語をカタカナ語化して表現するべきか」と疑う点なのである。ハラスメントという必然性が感じられないのだ。「上司または上席者の権威の濫用」即ち「不当行為」とでも表現できたのではないかと思うのだ。

カタカナ語に本来の英単語乃至は熟語を拡大解釈して何か余計な含蓄を持たせるようにすることは、英語の教育上からも好ましくないと思う。だが、困ったことに「ハラスメント」(=harassment)本当の意味を理解/認識しないで「カスハラ」だの「マタハラ」などと言う造語を産み出して軽佻浮薄さを厳しく批判したい。販売業の担当者や駅員を怒鳴るとか手を上げるのは犯罪ではないか。

先日も某有名私立大学の法学部の教授と懇談した際にも話題になったことで「女性職員のお尻や胸に触った行為は到底ハラスメントではあり得ず、猥褻行為という立派な犯罪であろう。何の行為にでもハラスメントを使って表現するのは軽率な言葉の誤用だ」となった。

英単語を借用して何かを表現しようとするのならば、最低/最小限でも権威ある英和辞典を引いて、より正確を期そうとするならば殆どの電子辞書には載っているOxford English Dictionaryで調べてからにすべきではないのか。同時に注意すべきは「英語の単語は表音文字であって、漢字とその熟語のような広範囲に解釈できる場合は少ない」という点なのだ。


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