新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

あらためて「我が国とアメリカの文化比較論」を

2020-09-15 10:01:25 | コラム
我が国は機会均等で平等か:

この度菅義偉氏が自民党総裁に選出された。菅氏は「秋田県生まれで農家の長男である」とあらためて述べられた。またマスコミ報道も美談扱いにしていた「集団就職で上京され、法政大学の2部のご出身だった」という誤報も修正した。地盤・看板・鞄の背景もない無派閥の菅氏が総裁(総理)になられることは、私が日頃指摘して来た「我が国が如何に機会均等で人を平等に扱っているか」を明らかに示しているかの、凄い実例であると思う。妙な表現になるが、これで野球の東京6大学の中で総理大臣が出ていないのが立教大学を残すだけになった。

ここで、私が機会均等でも平等でもないと看做しているアメリカはどうかと眺めてみよう。アメリかではトランプ大統領はIvy Leagueのペンシルバニア大学出身だがMBAを取得されてはいない。前任者のオバマ大統領はLL.D.(法学博士)の弁護士だった。だが、トランプ内閣でも中央省庁の長官と幹部、補佐官等々はほとんどがMBAが法律の博士号保持者である。即ち、そのよう地位にある者は富有層かアッパーミドル以上の出自の人たちだという事だと思う。中央の官庁の幹部は下から上がってくるのではなく、大統領が替わる度に入れ替わるのがアメリカ式だと理解している。

ここでビジネスの世界にも目を転じれば、アメリカの大手企業でも地位の上昇、職の安定・安全を確保する為には、今やMBAは必須だし、LL.D. 乃至はJ.D.の有資格者が多いのだ。尤も、私が転出したW社でも1970年後半にはその辺にMBAが幾らでもいた。我が国でもここ何年かは大手企業の会長・社長、役員というのか執行役員には大学院博士課程修了者かMBAが多くなっている。明らかに時代は変化したと。私は認識している。

これまでに何度か指摘してきたことで、アメリかではビジネススクールには入学までに4年間の実務経験が求められるようになってきた。即ち、我が国との違いである。そこでの2年間の学費は最低でも1,000万円/年を要するが、そこには授業料の他に教材費や寮費がかかる。寮費が必要な訳はアメリカ全土から遙か彼方の東部もIvy Leagueを目指すのだから当然だろう。法科大学院(Law School)もこの程度の学費が必要だろう。富有層の子弟でなければ、そこで学ぶのは大きな経済的負担だ。だから奨学金制度があるし、返済を滞らせてはならない学生ローンがあるのだ。

このアメリカの制度と比較すれば、深く考えなくとも分かることで、我が国の方が遙かに誰に対しても平等で言わば機会均等であると言えると思っている。卑近な例を挙げてみれば、昨14日の「夜報道1930」に出ていた立憲民主党(になるはずの党)の小川淳也氏は東大を出て総務省経由で衆議院議員になったのだが、自ら「パーマネント屋の息子」と名乗り、我が国の機会均等説を語っていた。それを言うならば、過去に故・田中角栄氏がおられたではないか。

余談の部類かと思うが、我が友YM氏はアメリカのビジネススクールで1週間1コマを受け持ち、その1度の(彼の場合は120分にして貰ったとか)の収入は1,000ドだったそうだ。即ち、2校を掛け持ちしていたのだから、年収にすれば10万ドル見当。何が言いたいかと言えば、これでは有名私立大学には裕福なというか、大手の企業の幹部の子弟が多くなるのは当然だし、その授業料が年間で5~7万ドルにも達する訳だということ。

私には我が国とアメリカの何れの制度と言うか文化が良いかは俄に断定できない。だが、我が国の文化から考えれば「明らかにその世界というか、アメリカの企業に身を投じていくのは向き・不向きがある」とは言える。少なくとも私はの場合はアメリカの会社の仕組みのお陰で61歳まであの世界で生き残れたのだと考えている。私は四大出身者で、修士号はなくてしかも外国人だから、出世できない為の条件が整っていた。アメリかでは中間層は「肩書きは貰えても地位の上昇はほぼ絶対にない」と承知で入って来ていると聞いた。聞けば、州立大学の4年制の出身者が多かった

最後に確認しておくと、私はこれまでに何度か「アメリカの大手企業がこういう世界だとは知らないで転出していった。迂闊だったかも知れない」と回顧した。だが、我々が大学の4年間を終えた頃には、ビジネススクール等があったかどうかすらも知らなかった。だからこそ、述懐していたことは「アメリカの会社があのような文化というか仕組みで動いていると事前に承知していたら、果たして転出しただろうか」なのだ。



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