スワローズはジャイアンツの「二の舞」になってしまうか:
日本シリーズ第4戦の観戦記である。私はこれまでで最も見所があった試合だと評価した。その第一はバッファローズの中島監督が良く投げていた山岡を4回に塩見に三塁打を打たれたところで、アッサリと引っ込めて宇田川を出してきたことである。誰かが「三振を取りに来ました」と解説したのが印象的だった。私は「中島監督は1点勝負と見て、その虎の子の1点を守りきろうとする気か」と読んだ。
私は既に「もう何年も前のことだったか忘れたが、ジャイアンツがホークスの育成から育てた150km超の速球を軽々と投げる中継ぎの投手たちに捻られた事」を指摘してあった。即ち、パシフィックリーグには速球派の投手が多いのに対して、セントラルリーグはそうではない言わば技巧派が多いので、速球に不慣れなジャイアンツの高給取りの打者たちが対応出来なかったのと同じ現象がスワローズにも起きるのでは」ということ。その速球派の代表がバッファローズの育成上がりの宇田川であり、山崎颯太郎だった。余談だが、私は浅学非才にして「颯」と書いて「ソウ」と読むとは知らなかった。
宇田川は塩見の後の山崎を3―2から見え見えのフォークボールで三振に取り、続く復調したかに見える山田をフォークボール見送りの三振で危機を切り抜けてしまった。フォークボールに効果があったのは、速球が皆150km超だったからだろう。山崎颯太郎の速球も見事なもので、私は決して「状態が良い」とは見ていない村上に159kmを投げ込んで打ち取って見せた。「だから言ったじゃないか」なのだった。高津監督はこの事態を想定していただろうが、これから先の速球対策は容易ではあるまい。だが、彼らが出てくる度に如何に少ない回数であっても、好投する保証はない気もするが。
この試合はバッファローズの良い所ばかりが出ていたと見ていた。前日の解説者だった宮本慎也と藤川球児が共に「バッファローズの打者たちは迷いがあるようで、打ちに行くべき投球を見送るし、打つべきかどうかの迷いがあって結果的に凡打になってしまっている」と批判していた問題点が、この試合では程良く修正されていた、その所為かスワローズの投手のインサイド責めに遭って参っていた杉本が、綺麗なスゥイングで適時打を放って1点を取り、それを守り切ってしまった。
スワローズはMVPを狙っていると誰かが指摘していた塩見が当たっていて何度か好機を作ったが、肝心要の山田・村上・オスナの3名が速球派の投手に会って沈黙したので、1点差に泣いたのだった。私は問題が村上宗隆にあると思うのだ。彼はそもそも「ここぞ」という試合を決定するような機会には余り打っていないと思い込んでいる。この問題点は山田哲人にもある。
彼村上はシリーズでもホームランは打ったが、試合を決めるような場面ではなかった。また、55本を打った後からは何かが狂ってしまったようで、気負い込んでいるのか早打ちになっているし、打ちたいと狙っている投球を待っていられないような焦りが見える。昨夜も打てなかったのは技術的な問題よりも、3冠王の重圧と4番打者の責任感に負けてしまっているのではと見ている。3冠王であっても何でも、22歳の若者では経験も少ないし、未だ発展途上かも知れないのだ。
バッファローズは昨夜には勝つには勝ったが、安打数が少なかったし、吉田正尚がスワローズの投手たちに巧みに抑えられている。一昨夜、藤川球児が指摘していたように捕手たちの経験不足というか、配球には問題が残るようだ。我が国の野球では「捕手のリード」が常に取り沙汰されるが、ダルビッシュが指摘したようにMLBでは「気の毒になるほど言われない」そうだ。アメリカでは投手たちが「我こそは」とばかりに自分が持っている最高の球種を投げて打者と勝負するのだから、捕手のリードなど問題にならないと聞いている。昨夜でも宇田川も山崎の自分の最高の投球をしただけで、捕手のリードの手柄とは見えなかった。
今夜からはバッファローズの速球派中継ぎ投手対スワローズの打者の勝負が見所になると思っている。同時に、スワローズの山田と村上が何処まで対応できるかということでもある。当たっているオスナが打っていたのは全て高目で、低くアウトサイドに投げられると空振りばかりだった。
昨年大活躍でシリーズのMVPの中村悠平は、速球派ではない自分たちの投手陣のリードで手一杯なのか、全く打つ方に生彩がない。勝負とは怖い物で、彼にはチャンスが巡ってくる傾向があるし、バッファローズの杉本にも同様な現象が生じている。昨夜は一本打ったが、今夜はどうなるだろうか。村上は速球対策を考えたのだろうか。
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