【掲載日:平成23年11月1日】
桜花 今盛なり 難波の海
押し照る宮に 聞しめすなへ
防人検閲 一段落の合間
思わずに 思い浮かべし 田辺福麻呂
(図らずも 今 ここ難波
福麻呂殿 齎しの 歌綴り
あれも 難波宴であった
もう 十一年が経ったか
あの時 都には成れなんだが
この 賑わい 昔と変わらずじゃ)
天皇の 遠き御代にも 押し照る 難波の国に 天の下 知らしめしきと 今の緒に 絶えず言ひつつ
《古の 天皇が 開かれて お治めされた 難波だと 伝え言われて 言い継がれ》
懸けまくも あやに畏し 神ながら 我が大君の うち靡く 春の初めは 八千種に 花咲きにほひ 山見れば 見の羨しく 川見れば 見の清けく ものごとに 栄ゆる時と 見し給ひ 明らめ給ひ 敷きませる 難波の宮は
《今の御代なり 天皇が 霞棚引く 春始め 色とりどりの 花咲いて 見惚れる山は 青々と 見とれる川は 清らかで 物それぞれに 栄えてて ご覧なされて 晴れ晴れと お治めなさる 難波宮》
聞こし食す 四方の国より 奉る 貢の船は 堀江より 水脈引きしつつ 朝凪に 楫引き上り 夕潮に 棹さし下り あぢ群の 騒き競ひて
《支配の及ぶ 国々が 貢の物を 船乗せて 堀江浜から 漕ぎ進み 朝の凪には 上り 夕の凪には 差し下る まるで味鴨 騒ぐ様や》
浜に出でて 海原見れば 白波の 八重折るが上に 海人小舟 はららに浮きて 大御食に 仕へ奉ると 遠近に 漁り釣りけり
《浜を出てみて 海見たら 幾重重なる 波の上 漁師小舟が 浮かんでて 差し上げ奉る 供御のため 海のあちこち 漁してる》
そきだくも おぎろ無きかも こきばくも ゆたけきかも 此処見れば うべし神代ゆ 始めけらしも
《なんと広々 してるんや なんと豊かな 眺めやろ 成程そうか 神代から ここ都した 尤もや》
―大伴家持―(巻二十・四三六〇)
桜花 今盛なり 難波の海 押し照る宮に 聞しめすなへ
《難波海 光る海辺の 大宮は 桜の花が 今盛りやで》
―大伴家持―(巻二十・四三六一)
海原の ゆたけき見つつ 葦が散る 難波に年は 経ぬべく思ほゆ
《海原は 豊か波打ち 葦の散る ここ難波宮 末長あるよ》
―大伴家持―(巻二十・四三六二)
【二月十三日】
――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
{訳してみよう万葉集】へ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます