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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

蟲麻呂編(13)うなひ処女の

2009年10月01日 | 蟲麻呂編
【掲載日:平成21年10月27日】

葦屋あしのやの うなひ処女をとめ八年児やとせごの 片生かたおひの時ゆ
 小放髪をはなりに 髪たくまでに 並びる 家にも見えず・・・
 

【御影町東明の処女塚】


芦屋浜  小高い丘に 虫麻呂がいる 
〔これも  哀れな話 伝えずに くものか〕
葦屋あしのやの うなひ処女をとめ
八年児やとせごの 片生かたおひの時ゆ 
小放髪をはなりに 髪たくまでに 
並びる 家にも見えず 
虚木綿うつゆふの こもりてませば 
見てしかと 悒憤いぶせむ時の 垣ほなす 人のふ時

芦屋あしやに住まう うないの処女おとめ
 つの歳から 年頃までも 隣も見せへん 箱入り娘
 見たいもんやと  胸焼き焦がし 引きも切らない 求婚話》 
血沼壮士ちぬをとこ うなひ壮士をとこの 盧屋ふせやく すすしきほひ あひ結婚よばひ しける時は 
やき太刀たちの 手柄たがみ押しねり 白檀弓しらまゆみ ゆぎ取りひて 
水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ きほひし時に
 
血沼ちぬ壮士おとこと うなひの壮士おとこ 火花を散らす 嫁取りきそ
 こなた太刀たちげ かなたは弓で 水中みずなか火の中 いといもしない》
吾妹子わぎもこが 母に語らく 
まき いやしきわがゆゑ 大夫ますらをの 争ふ見れば 
生けるとも 逢ふべくあれや  ししくしろ 黄泉よみに待たむと 
隠沼こもりぬの 下延したはへ置きて うち嘆き 妹がるぬれば

《優しい処女おとめ 嘆きて母に
 こんな詰まらん 私のことで  あたら男が 命を賭ける
 生きての結ばれ 考えせずに  あの世で待つと 言い告げおいて
 本心隠し あの世の旅へ》 
血沼壮士ちぬをとこ その夜いめに 見取りつつき 追ひ行きければ 
後れたる 菟原壮士うはらをとこい あめあふぎ 叫びおらぴ 足ずりし たけびて 
如己男もころをに 負けてはあらじと 懸佩かけはきの 小剣をだち取りき ところづら め行きければ
 
血沼ちぬ壮士おとこは 夢見て知って 遅れてなるかと 死出追い旅に   後で気の付く 菟原うはら壮士おとこ 叫び足ずり 歯ぎしりわめ
 負けるものかと おっとり刀 あの世までもと 後追いかける》 
親族うからどち い行きつどひ 永き代に しるしにせむと 遠き代に 語り継がむと 
処女墓をとめづか 中に造り置き 壮士墓をとこづか 此方こなた彼方かなたに 造り置ける
 
《残る家族は 悲しみ集い
 処女おとめの塚を 真ん中挟み 右と左に 壮士おとこの塚を 悲劇伝えに 造ってまつる》
故縁ゆゑよし聞きて 知られども 新喪にひもごとも きつるかも
《身内びとでは 無い者なのに いわれ聞いたら 泣かずにおれぬ》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一八〇九〕 
葦屋あしのやの うなひ処女の 奥津城おくつきを と見れば のみし泣かゆ
芦屋あしのやの 菟原処女うないおとめの 墓のとこ 通るたんびに 悲して泣ける》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一八一〇〕 
はかうへの なびけり 聞きしごと 血沼壮士ちぬをとこにし 寄りにけらしも
《墓の上 木の枝なびく やっぱりな 血沼壮士ちぬのおとこに 気があったんや》
                       ―高橋虫麻呂歌集―〔巻九・一八一一〕 

蕭々しょうしょうたる浜風
虫麻呂の袖を  抜けて 吹きすぎる




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