【掲載日:平成23年6月10日】
薮波の 里に宿借り
春雨に 隠り障むと 妹に告げつや
聖武帝詔書に受けた 感懐
長歌多産
天平 天平感宝 天平勝宝と改元
聖武帝 退位
多事多端の一年は 暮れていく
大嬢を 手元した 家持
暮から 新年に掛けての宴席
風情薫る 歌が生まれる
【宴席 雪 月 梅を詠む】
雪の上に 照れる月夜に 梅の花 折りて贈らむ 愛しき児もがも
《雪の上 月も照ってる この宵に 梅花贈る様な 児ぉ居て欲しな》
―大伴家持―〔巻十八・四一三四〕
【目 秦石竹館 宴】
我が背子が 琴取るなへに 常人の 言ふ嘆きしも いや重き益すも
《石竹はん 琴上手やな 謂れ通り 聴いたら直ぐに しみじみするよ》
―大伴家持―〔巻十八・四一三五〕
【正月二日 国庁饗宴】
あしひきの 山の木末の 寄生木取りて 插頭しつらくは 千年寿くとぞ
《寄生木を 梢から採り 插頭すんは 千年長寿 祈る呪い》
―大伴家持―〔巻十八・四一三六〕
【正月五日 久米広縄館 宴】
正月立つ 春の初めに かくしつつ 相し笑みてば 時じけめやも
《新しい 春の初めに こんなして 笑顔交わすん 春に相応し》
―大伴家持―〔巻十八・四一三七〕
新年宴が 終われば 公務が待っている
家持 砺波郡へ 墾田地検索に出向く
雨に降り籠められ 書記役宅での宿り
大嬢を 慮っての歌
薮波の 里に宿借り 春雨に 隠り障むと 妹に告げつや
《藪波の 里で宿借り 春雨を 凌ぐて妻に 伝え呉れたか》
―大伴家持―〔巻十八・四一三八〕