goo blog サービス終了のお知らせ 

令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

坂上郎女編(4)黒馬来る夜は

2010年05月14日 | 坂上郎女編
【掲載日:平成22年3月30日】

佐保川さほがはの 小石踏み渡り ぬばたまの
             黒馬くろま来る夜は 年にもあらぬか



坂上郎女いらつめ 眼が輝いている
〈あの  当世一の美男 麻呂さま
 いま  権勢の不比等様 四男
 どこで  私の名など
 たわむれかしら
 私も  大伴家も 捨てたものでは ないのね〉

むしぶすま なごやが下に せれども 妹とし寝ねば 肌し寒しも
あったかな 布団で寝ても 肌寒い お前と一緒 寝てへんからや》
                         ―藤原麻呂―〈巻四・五二四〉 
よく渡る 人は年にも ありといふを 何時いつの間にそも 我が恋ひにける
辛抱しんぼして 一年逢わへん 彦星ひとあるに 辛抱のできん 恋してしもた》
                         ―藤原麻呂―〈巻四・五二三〉 

小躍こおどりの郎女 隠せぬ喜びを 歌にする
佐保川さほがはの 小石踏み渡り ぬばたまの 黒馬くろま来る夜は 年にもあらぬか
佐保川さほ渡り あんた黒馬うま乗り 来るのんは 毎夜ずっとの 年中欲しで》

                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五二五〉 
千鳥鳴く 佐保の川門かはとの 瀬を広み 打橋渡す と思へば
《千鳥鳴く  佐保の川の瀬 広いんで うち橋作る あんた来るなら》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五二八〉 

逢瀬おうせ重なり 郎女の いぶかり心ごころ 本気ごころ
千鳥鳴く 佐保の河瀬かはせの さざれ波 む時もなし 我が恋ふらくは
《千鳥鳴く 佐保の川瀬の 細波なみみたい 寄せる思いが 止まれへんがな》 
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五二六〉 
娘子をとめらが 玉櫛笥くしげなる 玉櫛の 神さびけむも 妹に逢はずあれば
《美しい 櫛箱みたい 上等な 人間ひとなって仕舞う 逢わんかったら》
                         ―藤原麻呂―〈巻四・五二二〉 
佐保河の 岸のつかさの 柴な刈りそね ありつつも 春しきたらば 立ちかくるがね
《佐保川の  土手に生えてる 草刈らんとき そしたなら 春来たときに 隠れ逢えるで》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五二九〉 
でてなむ 時しはあらむを ことさらに 妻恋つまごひしつつ 立ちていぬべしや
《帰るんは  頃合いあるで 奥さんが 恋しなったて 言う人あるか》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻四・五八五〉 
〈あんなことを  おっしゃって
 冗談だわ  冗談に違いない
 私を かまっているのね
 これも  愛情の裏返し
 ・・・きっと〉