MAKIKYUのページ

MAKIKYUの公共交通を主体とした気紛れなページ。
初めてアクセスされた方はまず「このページについて」をご覧下さい。

AUTS試験車両に遭遇~中国の地鉄車両を連想する雰囲気も…

2014-07-15 | 鉄道[大韓民国・広域電鉄/地下鉄等]


先月MAKIKYUが韓国を訪問した際には、KORAIL湖南(Honam)線列車に乗車中、一老(Illo)駅で非営業の試験車両が稼動している姿を目撃する機会もありました。

MAKIKYUは韓国を訪問する度にKORAILを利用し、以前にも提川(Jecheon)駅で振子式試験車(TTX:Tilting Train eXpress)の運行に遭遇し、同車に関する記事も取り上げた事がありますが、今回の試験車両遭遇はそれに続く2例目となります。
(以前取り上げた振子式試験車両・TTXに関する記事をご覧になりたい方は、こちらをクリックして下さい)

振子式試験車両は、山岳線区における曲線区間の速度向上などを目的にしており、優等列車用車両の試験車両という事になりますが、今回遭遇した試験車両はAUTS(Advanced Urban Transit System)と呼ばれ、車両1両当たり両開きドアを4箇所設けた通勤型仕様で、試験車両でも性質は全く異なるものです。
(JRに例えるならば、どちらも試験車として製造され、僅か数年で廃車となったE991系(TRY-Z)とE993系(ACトレイン)並みの差異があります)

AUTSは韓国で不定期刊行されている鉄道雑誌「Railers」でも取り上げられ、表紙を飾った事もある車両ですので、存在自体はMAKIKYUも以前から知っていました。

とはいえ主に試験運行を行っている箇所が、ソウルから約400km離れ、釜山からも決して近くない湖南線の末端近く、おまけに試験車両故に確実に運行している訳ではありませんので、実際に稼動している姿を見るのは初めてでした。

また一老は日本での知名度は余り高くなく、この地名を初めて聞くという方も居られるかと思いますし、日本人観光客が余り足を運ばない所かと思いますので、韓国内に在住している方は別として、日本から訪問した旅行者でこの車両の姿を見た事があるという方は、余り多くないかと思います。


この車両の風貌は、比較的日本の通勤電車に近似した点が多いKORAIL広域電鉄や、同線と一部区間で相互直通運転を行っているソウルメトロで活躍する車両とは異なり、客ドアがプラグドアになっています。

パンタグラフ(韓国の通勤電車は下枠交差式ばかり)もKTX(フランスTGVベース)など、ヨーロッパ由来の車両を連想する形状のシングルアーム型になっているなど、他の通勤型車両とは大きく異なる車両である事が一目で分かる異質なものです。

車体長などの車両規格こそ異なりますが、個人的には中国の南方で活躍する地鉄車両(SIEMENSやALSTOMなど、欧州系メーカー標準仕様車をカスタマイズした車両が多数活躍しています)を連想する雰囲気を受けたものでしたが、プラグドアは外観こそスマートなものの、中国・上海などで混雑時のドア開閉に支障を来すなどの難があり、後の増備車で取りやめになった前例もありますので、混雑線区での採用は厳しい気もします。

外見で判別できる差異だけでなく、メカ的にも様々な新機構を取り入れている様で、できることなら発車や停車時の走行音なども聞ければ…と感じたものでしたが、列車乗車中に停車した際に偶然車中から目撃しただけで、せっかくの試験車遭遇も、窓越しに眺めるだけしかできなかったのは少々残念に感じたものでした。

また確実に遭遇できるとは言い難いものの、このAUTSが頻出する一老駅は、田舎の小駅だけあって停車列車も限られており、高速列車KTXは全て通過となっています。

都会的な雰囲気のAUTSが佇むには場違いな印象の所と言っても過言ではなく、アクセスし易いとは言い難いのが現状で、近隣の主要都市・木浦からは短距離故に、KORAILの運賃体系なども考慮すると、レールパスの類でも所持していない限り、列車利用は…とも感じます。

一老駅を発着する木浦市内発着の市内バス(108番・800番)は運行本数も限られ、こちらもバス大国の韓国にしては余り至便とは言い難いのが現状です。
(それでも両者を合わせれば毎時3本程度は確保されていますので、日本の地方都市に比べれば至便で、運賃も比較的割安に設定されているのは有り難いのですが…)

そのため外国人旅行者にとっては、AUTS狙いでの一老訪問はやや難易度が高い気もしますが、機会があれば木浦市内バス乗車も兼ねて一老駅を利用するのも…と感じたものでした。
(ハングルが読めないと、単独行動はややハードルが高いと思いますが、市内バスの経由地・行先などを記したハングル標記解読が可能で、何度かの韓国個人旅行暦があれば、単独行動でも何とかなると思います)



最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
プラグドア採用決定 (NaCl)
2014-07-26 13:06:49
いつも韓国の鉄道について取り上げていただきありがとうございます。取り上げてくれるブログが少なく、情報が貴重なので助かります。
AUTSについてですが、シングルアームパンタグラフとプラグドアの量産車への採用が決定したそうです。
プラグドアは日本ではメンテナンス性の悪さや故障の多さのために嫌われている印象を受けるので、採用されるとは思っていませんでした。一方、ヨーロッパでは、寒冷地での気密性の確保やフラッシュサーフェス化などのメリットから新型車の大半に採用されています。
フラッシュサーフェス化は清掃が容易になることから開閉窓にカーテンが付けられない内倒れ式が採用されるほどヨーロッパでは需要があるんですが、日本では下降窓が多いせいかあまり考慮されず、残念ながら側面の凸凹は残ったままですね。
そのほか、日本では新幹線に至るまで車両限界ギリギリまで拡張しようとするあまり、単調な箱型断面になりがちですが、ヨーロッパでは必ずしも箱型断面にとらわれず、側面や屋根上のRを大きく取った車体形状が多いですね。個人的には側面や屋根上のRを大きく取ってドーム型天井にした方が、高速列車では空気抵抗面で有利な他、実際の断面積以上に広がりがある印象を受け、車内空間の使い方は全体的にヨーロッパの車両の方が上手いのではと思います。日本でも建築デザイナーの岡部氏が監修したVSEや、ノイマイスター氏監修の東京メトロ10000系は車内空間の使い方が上手いように感じます。


返信する
追記 (NaCl)
2014-07-26 16:58:57
よく考えたら既に新盆唐線の車両やITX青春にプラグドアが採用されていましたね。既存のトングリ風のステンレス車にプラグドアは韓国ならではかもしれません。またドア自体も韓国では標準的な、ステンレスに窓が接着式で取り付けられたものとなっています。(「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い車両」に似ていますね・・・)
どちらも韓国製ながら、日本の川崎重工や近畿車輛などと同様、レーザー溶接が採用されており、技術力は侮れないかもしれません。アメリカやオーストラリアでもステンレス車だらけですが、レーザー溶接どころか、ひずみを隠すためにコルゲートが入った車両がいまだに新造されているくらいなので、外観に無頓着みたいです。ヨーロッパではそもそもステンレス車自体が少ないです。
返信する
優等車などであれば… (MAKIKYU)
2014-07-26 22:03:55
NaCl様こんばんは。

プラグドアも混雑やドア開閉の迅速性をあまり重要視せずに済む優等車などでは、採用価値は充分あると思いますが、通勤線区で混雑が激しい路線だと、開閉できないトラブルなどもありますので、一長一短かと思います。

またKORAIL列車線やヨーロッパの鉄道などは、ホーム高さが低い=ドアもステップ付きで下方向に細長くなりますので、戸袋を不要にするメリットが大きくなる事も、プラグドアが多い要因かもしれません。

フラッシュサーフェス化も湿度が高く暑い地域では、窓の開閉やカーテンの使用を考慮しなければならないという事で、普及が進まないのかもしれません。

地域や国の実情が、車両形態にも表れるのは興味深いものですが、原設計を流用した輸出車両などでは実情に合わない車両なども多数見受けられ、KTXの一般室座席や空間の狭さなどは、輸出車両における悪例の代表格ですね。
返信する
ステンレス車 (通行人)
2015-01-05 15:12:37
韓国人である私も行きにくい一老駅を行かなんてすごいです!
ステンレス車と言うと、京春線で運用していた電車二編成が1号線に移籍して運行中であることが考えね。ご存知のように京春線車のアルミに8両にされていた、2量を新たに新造して投入しましたよ。ところで問題は、新たに新造した車がステンレスでされているという点です(...)
(http://translate.google.com/translate?hl=en&sl=ko&tl=ja&u=http%3A%2F%2Frigvedawiki.net%2Fr1%2Fwiki.php%2F%25EC%25BD%2594%25EB%25A0%2588%25EC%259D%25BC%2520311000%25ED%2598%25B8%25EB%258C%2580%2520%25EC%25A0%2584%25EB%258F%2599%25EC%25B0%25A8%3Faction%3Dshow%23s-3.3.5&sandbox=1)
返信する
通り過ぎただけなのですが… (MAKIKYU)
2015-01-05 15:29:56
通行人様はじめまして。

この記事で使用している画像は、こちらが昨年6月に済州島へ足を運んだ後、ソウル市内(龍山)へ足を運ぶ途中、木浦→井邑で乗車した列車(ムグンファ号)の車中から、一老駅停車中ガラス越しに撮影したものです。
(ちなみにこの日の移動経路は、済州市内中心部~(市内バス)~済州港~(シーワールド高速フェリー・高速船ピングドルフィン)~木浦港~(市内バス)~木浦(駅)~(KORAIL・ムグンファ号)~井邑~(KORAIL・itxセマウル号)~龍山です)

時間的余裕があれば、木浦市内バスを利用して一老駅を訪問するのも…と思うのですが、この車両の出没情報を掴んでいる状況ではない上に、済州→ソウルを一日で移動するという旅程の制約もあり、昨年訪問時は通り過ぎるだけという状況でした。

また京春線電動車の転用車両(アルミ車)に、ステンレス製車両を2両組み込んで1号線転用というのも、趣味的には注目の話題ですね。

抵抗制御車で製造時期の異なる車両が混在する編成や、ステンレス製車両(旧5000番台)の一部で、抵抗制御車からの転用車(鋼製車)を組み込んだ編成が存在する事などを踏まえると、決してありえない話でもない気がします。

とはいえ新造ステンレス車をアルミ車の様に車体塗装するのではなく、無塗装状態で組み込むとなると、異端車として非常に目立つ存在になる事は明らかで、KORAILでは今後この様な編成が当たり前になるのか否かも気になる所ですね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。