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JR九州の観光トロッコ列車「TORO-Q」~今月運行を終えた異色列車

2009-11-30 | 鉄道[九州・JR]

   

今月は名鉄パノラマカー最後の残党として知られ、中間車を先頭車化改造した異端車として知られた名鉄7100系や、神戸のポートライナーで開業当初から活躍し、日本の新交通システム車両としては極めて初期の部類に入る車両だった神戸新交通8000系などが退役した事が話題になっていますが、他に今月退役した車両の一つとして、JR九州の「TORO-Q」が挙げられます。

「TORO-Q」は大分県・湯布院観光のパーク&ライド促進の為に、南由布駅前に観光客向けの駐車場を設置し、由布院~南由布間をピストン輸送する目的で運転されていた列車で、僅かな乗車時間となるこの程度の区間でも、ただの臨時列車で終わらせない辺りは、数々の変り種列車を走らせているJR九州ならではと言えます。

車両基地が大分にある事から、この出入庫を兼ねて全車自由席のピストン列車以外に、大分~由布院間で指定席制の臨時快速列車としても走らせていたのも特徴で、ピストン列車の方は4年程前に青春18きっぷで久大本線を利用した際、由布院駅での待ち時間&青春18きっぷでそのまま乗れるという事もあって、MAKIKYUも一度だけ乗車機会があったものでした。

車両は「TORO-Q」の名前通り、中間に貨車改造のトロッコ車両を挟み、両端に気動車を配す非常に奇妙な編成を構成しており、気動車は既存の旧型気動車・キハ58形とキハ65形を各1両ずつ塗り替えて「TORO-Q」専属としていました。
(「TORO-Q」塗装の気動車は、「TORO-Q」運転日以外の日に大分地区の普通列車として用いられた事もあった様です)

2両の旧型気動車は「TORO-Q」のトロッコ車両や、近年JR九州が走らせている観光列車などとは異なり、車内は特に観光列車向けの改造などは施していないのですが、キハ58形は以前快速「シーサイドライナー」に使用するために改装を施し、特急並みの比較的グレードの高い座席を装備していました。

とはいえキハ58形の豪華な設備は、一区間だけをピストン輸送する列車に必要不可欠とは言い難く、もう1両の気動車であるキハ65形(JR四国→JR九州への譲渡車)は、JR四国仕様のボックス席がそのまま残存するなど、2両の気動車間での設備格差が極めて大きく、この様は老朽車両の寄せ集め列車ならではと言っても過言ではありません。

こんな編成でしたので、キハ58形は非常に乗り得感のある車両だったのですが、一応観光列車だけあって殆どの乗客は物珍しいトロッコ車両に乗車し、外の風に触れながら乗り心地の悪さを楽しんでいる事もあって、豪華な設備も殆ど注目されず、ガラガラで機関車代用状態と言っても過言ではない状況だったのも印象的で、まして設備的にも有り難味を感じる事のないキハ65形などは、観光客人気の面では言うまでもない状況でした。
(余談ながらMAKIKYUが「TORO-Q」に乗車した際はキハ58形に乗車し、時折トロッコ車両の乗り心地も試すという状況でした)

しかしながら元々数が多くない車両の上に、ジョイフルトレインへの改造や廃車が進み、装いこそ異なるとはいえ原型の雰囲気を残す貴重な車両という点では、キハ58形以上に希少で注目の存在でしたが、敢えてこの車両を選んで乗車する乗客がどの程度いたのかも気になるものです。

ちなみにMAKIKYUが「TORO-Q」に乗車した際には、老朽車両の寄せ集めだけあり、この列車はいつまで走り続けるのか…と感じた程でしたので、「車両の老朽化と代替車両が存在しないため」として引退が発表された際にも、特に驚きはしなかったものでしたが、徹底的に拘り抜いた感のあるJR九州の観光列車とはまた違った面白さのある列車が一つ消えていくのは、ちょっと寂しいと感じるものです。

また「TORO-Q」退役後も。由布院パーク&ライド対策のピストン輸送列車が運転されるのか否かも気になる所ですが、今後も由布院~南由布間の臨時ピストン列車を設定するのであれば、自家用車で観光に訪れた人間が、ちょっと列車に乗るだけでも楽しめる様な車両を走らせるなどの工夫にも期待したいものです。
(他所から来た鉄道事情に疎い観光客を喜ばせるには、国鉄型のキハ47形辺りでは当然NGですが、既存の車両でも新鋭のキハ220形200番台辺りなら充分インパクトはありそうですので…)

写真は「TORO-Q」の外観とガラガラのキハ58形車内、観光客が集うトロッコ車内の様子です。


首都圏の「バス共通カード」・来年7月限りで利用終了に

2009-11-26 | バス[首都圏]

 

最近首都圏の各バス事業者で、現在1都3県の路線バスで幅広く利用できる磁気式のプリペイドカード「バス共通カード」の販売及び利用の終了が相次いで告知され、昨日付けでHPや車内ポスターなどでの告知を行った事業者が多数存在しています。
(一部事業者ではそれ以前から告知しており、中には京成バスの様に先月に告知を行っている事業者も存在します)

MAKIKYUも昨日各者HPをはじめ、横浜市内を運行している神奈中バス車内などでも告知を目撃していますが、その告知内容は来年(2010年)春にバス共通カードの販売を終了(大半の事業者は3月31日に販売終了予定ですが、東武バスグループなど一部販売終了予定日が異なる事業者も存在します)し、同年7月末限りでバス共通カード取り扱い各事業者での利用を終了、以降5年間に渡って無手数料・利用金額割合に応じたカード残額の払い戻しを行うというものです。
(バス共通カード販売終了後も、7月末までの利用可能期間内の払い戻しは、プレミア分を除いた残額から手数料を差し引いた金額になりますので要注意です)

ICカード導入事業者における磁気バスカードの販売・利用終了は、近年国内各地で見受けられ、最近ではバス業界国内最大手の西日本鉄道(西鉄)グループのバスカード・よかネットカード発売停止(利用は来年3月31日まで・よかネットはバスでは4月以降利用不可能なものの、4月以降も鉄道での乗車券購入等で利用可能)などが代表例です。

首都圏近郊でも富士急グループ<共通>バスカード(この<共通>は富士急グループ内の富士急山梨バス・富士急静岡バスなどを指し示し、富士急グループ以外では利用不可でしたが、バス共通カードが利用不可能な山梨・静岡県内の富士急グループ路線バス利用時には重宝したものでした)の利用終了などがあります。

ICカードと磁気カードの並存状態では、車載のカード読み取り機器や営業所でのデータ処理装置の維持コストが大きい事などを考えると、磁気カードの廃止&ICカードへの一本化は時代の流れといえ、日本国内における磁気バスカードで、利用者数や取扱車両数がダントツの1位となっているバス共通カードの廃止も、いつ告知されるのか気になっていたものでした。

磁気・IC両カードの体制を維持するために運賃の値上げを行う位ならば、ICカード利用可能エリアが拡大し、既存磁気カードの利用可能エリアをカバー出来る様になれば、ICカードへの一本化が妥当なのは言うまでもない事で、これに伴って現在では殆ど利用がない自社専用バスカード(神奈中・京急など)の利用も同時に廃止するのは当然と言えます。
(ただ関東バスの様に、バス共通カードとは異なるメリットがあるDAYカードを廃止し、おまけに磁気カード機器使用停止と便乗して紙製回数券まで発売停止する事例もあり、これは感心できません)

しかしながら今回のバス共通カード廃止に関しては、廃止理由として表向きは「PASMO/Suica(以下PASMOなどと記します)の利用が順調に増大し、バス共通カードからの移行が進んで…」などとは謳っているものの、現状では鉄道利用のためにPASMOなどを利用する乗客が、別個にバス共通カードを路線バス利用のために使用している事例(MAKIKYUもその一人です)が多く、利用の増大はむしろ現金利用客のPASMOなどへの移行が進んでいる方が遥かに多いのでは…と感じます。

バス共通カードの利用が今でも多いのは、5000円券(5850円分利用可能)の割引率が高い事が挙げられ、カードを取り出して読み取り機器に通す手間があるとは言え、積算ポイントが月毎に精算されるなど、余り有り難味を感じない現状のPASMOなどを用いた際の特典サービス「バス特」(バス利用特典サービス)より割引率の面で有利になっています。

そのためPASMOなどでのバス運賃精算時には東京都交通局(都営バス)の乗継割引(この特典があるために、MAKIKYUも都営バス利用時はPASMOを使う事もあります)を除くと、バス共通カード取扱車においては、PASMOなどを利用する事による運賃面でのバス共通カード5000円券を上回るメリットが殆どありません

バス共通カードの販売が概ね終了となる4月1日以降は、「バス特」のチケット付与率が若干向上され、極一部のケースで5000円のバス共通カードを利用するより得(殆どの場合は損です)になりますので、西鉄の様に極一部の例外を除いて磁気バスカードよりICカード(nimoca)利用が大幅に不利な状況(それでもポイント付与に加え、西鉄バスでは乗継割引などが存在しますので、現金利用よりは有利ですが…)などに比べれば、まだマシとも言えます。

とはいえ現状のMAKIKYUのバス共通カード利用状況(特定路線を高頻度で利用する事はなく、割引率の高い5000円券を購入して様々な事業者を利用し、一枚を概ね3ヶ月程度で使い切ります)では大損で、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中にも、同感と感じる方は少なくないと思います。

ICカードへの一本化で機器維持コストに加え、カード発行費用(使い捨ての磁気カードは一枚につき数十円程度の作成費用がかかりますが、ICカードではチャージして繰り返し利用できる上に、割高なカード費用は基本的に利用者からデポジット(預かり金)として領収しています)なども削減でき、ICカードへの一本化は初期投資は嵩むものの、長期的に見ればコスト的にも有利ですので、今回のバス共通カード廃止はICカード化を口実とした制度改悪&便乗値上げと言っても過言ではありません。

PASMOの発行事業者である株式会社パスモは、機械にタッチするだけの便利さや鉄道・バス・物販(電子マネー)での相互利用が可能な事を前面に打ち出すと共に、路線バスでの「バス特」が非常に有利であるかの様に錯覚させる広告などを相次いで告知していますが、乗継割引が存在する都営を除くと、バス共通カード取扱車を利用する殆どのケースでは、5000円のバス共通カードに比べて不利な事は告知しておらず、利用者に優良誤認の印象を与えていると言っても過言ではありません。

バス事業者の運営が厳しく、止む無く割引率の切り下げを行うのであれば、その旨を告知して旅客の理解を求めるべきで、現状のバス共通カード利用より旅客に不利益な事を告知せず、タッチするだけの便利を強調し、まして「バス特」が非常にお得であるかの様に告知して今後はPASMOをご利用下さいなどと案内するのは論外です。

それでもバス共通カードの割引率と、PASMOなどの便利さという両者の選択肢が存在する状況ならまだしも、問題点の多い「バス特」の制度を若干手直ししただけでバス共通カードを廃止するのは暴挙と言え、株式会社パスモには首都圏路線バスの利用客の一人として、苦情の申し入れをしたいと思った程です。

しかし株式会社パスモHPのお問い合わせ項目には、同社の問い合わせ番号やメールアドレスなどの標記がなく、「PASMOに関するお問い合わせは、PASMO取り扱い事業者の駅・バス営業所などにおたずねください。」と出ており、各運行事業者へのリンクを表示して問い合わせる様に仕向けているのは呆れた限りです。

首都圏における交通系ICカードも、先月訪問した隣国・韓国では随分便利で割安感を感じ、韓国の首都・Seoulとその近郊で通用するT-moneyでは現金利用時より割安なICカード利用運賃を設定し、地下鉄・広域電鉄といった都市鉄道(KORAILをはじめ、現在韓国の首都圏では6事業者に跨って運行していますが、空港鉄道以外は路線の運行事業者に関わらず運賃制度が共通化されています)と市内バス、或いは市内バス同士を乗り継いだ際の運賃通算といった、ICカードならではの機能を駆使した非常に先進的なシステムを導入しています。

その上釜山(Busan)市内や近郊の地下鉄・市内バスとのICカード相互利用をはじめ、地方都市の市内バスでの利用対応も着実に進むなど、非常に便利な事から利用も非常に定着しており、韓国には時折旅行で訪問するだけのMAKIKYUですら、韓国における首都圏の公共交通機関利用では、他地域との間を利用する際の列車利用を除くと、殆どICカード利用という程です。

ちなみにT-moneyをはじめとする韓国の交通系ICカードは、PASMOなどより後発だから先進的なシステムが…というのではなく、PASMOの発売開始よりも以前からこの様な先進的なシステムが実現しており、MAKIKYUが初めてICカードを利用して路線バスに乗車したのも、日本国内ではなく韓国の釜山という程で、日本国内でもPASMOより導入時期が早いICカードの中で、ICカードならではの機能を駆使した魅力的な特典を備えたカードが幾つも存在します。

PASMOは後発で他都市の事例を研究し、より良いシステムを実現する余地が充分あったにも関わらず、ICカードならではの機能をサービスや利便性向上に活用していないどころか、ICカード化に便乗した改悪と言わざるを得ないのが現状で、首都圏における交通系ICカードの現状を、玄界灘を挟んだ東アジアの隣り合う2カ国間で比較した場合、日本に居住する日本人の一人であるMAKIKYUとしても、路線バス利用時の利便や特典などで日本方に軍配を上げるのは…と感じてしまうのは悲しいものです。

とはいえICカードはポイント付与率を変更する事をはじめ、特定区間・時間帯における割引運賃設定やポイント付与増大なども容易で、既に都営バスで乗継割引を実施している事などを踏まえると、同等の仕組みを他事業者が導入する事も容易な筈です。

バス共通カードからの全面移行時には、感心できないPASMOなどの状況も、ICカードの特性を生かし、その後の全体的な制度改善や、事業者毎の独自割引特典設定などに期待したいと感じたものです。

写真はバス共通カード利用終了に関する神奈中バス車内の告知案内と、来年7月限りで利用終了となるバス共通カード・神奈中バスカード・京急バスカードです。
(バスカードの画像は左側2枚がバス共通カードで、最も出回っている現行標準デザインの5000円券と、バス共通カード導入直後の時期に出回っていたデザインの1000円券です)


大山阿夫利神社下社から…

2009-11-22 | 日本国内その他

 

昨日「MAKIKYUのページ」では、大山観光電鉄(大山ケーブル)に関して取り上げましたが、おまけとしてケーブルカーの終点からすぐの大山阿夫利神社下社と、眼下に眺める景色の写真を公開します。

大山阿夫利神社下社の紅葉は、朱色に色づいたものや真っ赤なものなど様々ですが、真っ赤に色づいているのは品種の違いが影響している様です。

また大山阿夫利神社下社から眺る眼下の景色も、やや曇り気味だったのが残念でしたが、江ノ島の姿が意外と目立つと感じたものでした。


大山観光電鉄・大山鋼索線~車内には小田急線電車との共通項も…

2009-11-21 | 小田急グループ

  
  

昨日MAKIKYUは所用で平塚市郊外の某所へ出向く用事があったのですが、所用は午後からだったものの直ぐに済んだ事もあり、その足でお隣の伊勢原市内にある大山へ出向いていました。

大山へ出向いたのは、今が見ごろの紅葉見物や眼下に望む相模湾などの景色を楽しむ事も勿論ですが、意外と近場でありながらまだ乗車した事がなかった大山観光電鉄(大山ケーブル)への乗車も目的の一つでした。

大山観光電鉄は小田急グループに属する事業者で、大山鋼索線と呼ばれる路線は伊勢原駅からの神奈中バスが発着する大山ケーブルバス停から、約10分程土産物屋などが連なる坂道を上がった大山ケーブル駅を起点としています。

約10分とはいえ結構な坂道ですので、足の不自由な方などは結構難儀するのでは?と感じたものでしたが、この大山ケーブル駅からは、阿夫利神社下社近くの阿夫利神社駅まで約800m程の短い道程を、片道約6分で運行しています。

戦前に開業した路線ながら、戦時中の金属供出などで長期運休を余儀なくされた過去もありますが、1965年の運行再開以降は、今日に至るまで同じ車両を40年以上使い続けています。

そのため同じ神奈川県内を運行する小田急グループのケーブルカーでも、箱根登山鉄道の新鋭車両などとは趣きが大きく異なりますが、「おおやま号」「たんざわ号」と名づけられた2両のケーブルカーは更新工事や近年の塗装変更を経ており、英文字のロゴや近年制定された小田急グループのブランドマークを付けた姿は、古参車両ながら今風の雰囲気を感じる一面もあります。

2両のケーブルカーは外観だけでなく、車内のモケットなども敢えて異なるものを用いており、往復で異なる車両に乗車したMAKIKYUは、両者を乗り比べる事が出来ましたが、これに加えて途中駅(大山寺駅)降車時用に比較的新しいタイプのバス用降車ブザーが取り付けられている点も、他のケーブルカーでは余り見られない特徴と言えます。

車内には「小田急車両 平成5年」という更新年を示すプレートが見受けられ、車内の化粧板も小田急線の電車と同種のものが用いられているなど、初めて乗車する路線にも関わらず、月に数回程度利用機会のある小田急線との共通項が、幾つも見受けられた点も興味深いものでした。

また800mを僅か片道6分といえども、278mもの高低差があるのはケーブルカーならではで、あっという間に高度を上げるケーブルカーの車中から日頃の生活圏を一望するのは、遠方へ出向いた際に乗車するケーブルカーなどとは別の面白さも感じたものです。

この大山ケーブルは伊勢原市内だけあって、東京都心からも比較的近くアクセスも容易な上に、小田急線・神奈中バスとセットで割引されたフリーパスの設定(MAKIKYUは今回平塚市内へ出向く所用などもあって、ケーブルカー往復のみの乗車券を購入したのですが…)などもありますので、興味のある方は是非一度大山ケーブルに乗車してみては如何でしょうか?

写真は「たんざわ号」外観と車内の様子、今日を感じさせる側面の標記(上段)と、「おおやま号」外観と車内の様子、車内の製造・更新年を示すプレート(下段)です。


ムン山~富川間を走る座席バス5000番~中扉付きのUNIVERSEも…

2009-11-20 | バス[大韓民国]

  
(お断り:汶山の「汶」はgooブログの仕様上、タイトルとして使用できず文字化けするため、タイトルではカタカナで代用しています)

先月MAKIKYUが韓国を訪問し、7月に運行を開始したばかりの京義電鉄線に乗車した後は、終点の汶山(Munsan)からそのまま来た道を返すのも…という事で、5000番の座席バスに乗車する機会がありましたので、今日はこの座席バスに関して取り上げたいと思います。
(余談ながら京義電鉄線に乗車した後は、そのまま座席バスに乗車した訳ではなく、また汶山の駅とターミナルも少々離れているのですが…)

5000番の座席バスは坡州(Paju)市の汶山ターミナルを起点に、高陽(Goyang)市内を経て金浦大橋(Gimpo-Daekyo)を通り、富川(Bujeon)市内の富川ターミナルへ至る路線で、概ね毎時2本程度(韓国の路線バスにしては、運行頻度は少ない部類に入ります)が運行されています。

この路線の経路は、Seoul郊外にある衛星都市の北部と西部を、都心を通らずに運行する形態となっており、坡州市内~高陽市内では部分的に鉄道とも並行するものの、日本ほど郊外の都市間を結ぶ鉄軌道系の交通機関が発達していない韓国においては、この様なバスが郊外の都市間を結ぶ公共交通機関として重要な役割を果たしており、同種の路線は首都圏(Seoul都市圏)においては多数存在します。

途中の高陽市内では3号線の馬頭(Madu)駅なども経由し、この日は夜に高陽市内で知人との待ち合わせがあったMAKIKYUとしては、この路線に乗車すると汶山~高陽市内の移動で京義電鉄線とは異なったルートが楽しめ、丁度良い事もあって乗車したものでした。

運賃は運行距離が比較的長く、所要時間も全区間乗り通すと片道約2時間程度を要するだけに、市内バスでお馴染みの均一制ではなく、区間制の前払い(信用方式)となっており、車内には区間毎の運賃を表示した三角表も貼られていました。

そのため乗車時に行き先を申告する必要があるのですが、乗車時に行き先を申告せず、ICカード(彼の地では普及率が極めて高く、MAKIKYUもこのバスにはT-moneyを利用して乗車したのですが、カード利用率は8割を超えている様に感じたものです)をそのまま読取機にタッチする乗客の姿も多く、その都度乗務員氏が行き先を訪ねる光景が印象的でした。

ICカードでの運賃収受も日本の信用方式を導入している一部路線の様に、降車停留所無申告でICカードをタッチすると最大運賃が引き落とされる(MAKIKYUが住んでいる横浜市内では、東戸塚駅~緑園都市駅間の神奈中バスなどが代表例で、日本の首都圏で均一運賃区間~対キロ運賃区間に跨る路線では同種の路線が多数存在しますが、210円区間の利用にも関わらず乗客が行先を申告せずにカードをタッチし、終点までの220円を引き落とされ、過収受分を乗車券などで返金している姿を良く見かけます)のではなく、エラーメッセージ(韓国語なのでMAKIKYUの語学力では殆ど聞き取れないのですが…)が流れ、金額を設定しないと運賃がカードから引き落とせない仕組みとなっている点は評価できるもので、この点は日本の信用方式を導入しているICカード導入路線も見習って欲しいものです。

ちなみにMAKIKYUが乗車した汶山ターミナル~馬頭駅間では2800Wとなり、電車利用の約2倍となりますので、現地の物価を考えると決して安いとは言い難い(それでも日本の路線バスなどに比べれば割安です)ですが、電車利用では乗換えが必要な区間(汶山~馬頭駅間では大谷(Daegok)駅で乗り換え)を乗り換えなしで移動できます。

それに座席バスだけあって、リクライニングシートに腰掛けてゆったりと移動できるのもメリットで、それも汶山ターミナルで見かけた5000番の充当車両が、MAKIKYUがまだ乗車した事がなかった現代の新型高速・観光用車両UNIVERSEだった事も、この路線に乗車した動機の一つだったのですが、UNIVERSEに限らず首都圏の座席バス・広域急行バスでは観光タイプの車両に中扉を装備したタイプの車両が結構良く使われており、こんな車両は日本ではなかなか乗車する機会がありませんので、中扉付きの観光タイプ車両に乗車できる事(この手の車両が用いられている場合、当然ながら降車口は中扉です)も魅力的です。

またMAKIKYUが5000番の座席バスに乗車した際は、乗車時間が夕方だけあって途中で日が暮れてしまったのですが、汶山ターミナルを出発してから暫く坡州市内を走る間は車窓も楽しめ、その途中では北朝鮮に近いエリアを走行しているだけあり、コンクリート製のバリケード(タイヤの広告が付いており、今すぐ使う機会はなさそうな雰囲気ですが…)が設けられている箇所も見受けられました。

右側通行である事に加えてバリケードの姿も、如何にも異国のバスに乗車していると感じ、UNIVERSE(それも中扉付き)に初めて乗車できた事もあって、電車に比べて割高な運賃を支払った甲斐も充分あったと感じたものです。

座席バスは他の路線バスと同様に、案内も殆ど韓国語だけに電車に比べると外国人の利用はやや難しいですが、Seoul周辺の移動では電車や一般市内バスを利用する事が多いMAKIKYUとしても、たまに乗車してみるのも面白いのでは…と感じたもので、今回取り上げた5000番に限らず、興味のある方は機会がありましたら、是非座席バスにも乗車してみては如何でしょうか?

写真は5000番に充当されている現代UNIVERSE(中扉付き)と車内のリクライニングシート、車中から眺めた道路上に設置されたバリケードの様子です。


電鉄化された京義線&331000系電車~以前より利便性は大幅に向上したものの…

2009-11-18 | 鉄道[大韓民国・広域電鉄/地下鉄等]

   

先月MAKIKYUが韓国を訪問した際には、既存の韓国鉄道(KORAIL)京義(Gyong-ui)線を電鉄化したSeoul駅~DMC(Digital Media City)~汶山(Munsan)間にも乗車する機会がありました。

同区間はSoeul駅寄りの一部区間こそ、列車線を運行する一般列車の水色(Susek)にある車両基地への回送や、高陽(Goyang)市の幸信(Haengjin)にあるKTX(高速列車)の基地への回送などが多数運行しており、この関係で以前から複線電化となっていましたが、幸信以北の区間はSeoul近郊とはいえ単線非電化で、気動車による通勤列車が毎時1本程度走るだけのローカル線でした。

そのため地下鉄3号線(大谷(Daegok)駅で接続)や、広域急行バスをはじめとする多数の路線バスに比べると、京義線の利便性は格段に劣るものでしたが、7月に晴れて汶山までの複線電鉄化が完成し、通勤型電車による高頻度運転が開始されています。

運賃面も電鉄化と共に地下鉄・広域電鉄のネットワークに組み込まれる様になり、3号線などと乗り継いだ場合にも運賃が一体で計算されると共に、T-moneyなどの交通カードを利用した場合は、接続する路線バスとの乗継運賃が適用になるなど、運行本数の増大だけに留まらない劇的な進化を遂げています。

この京義線の電鉄化に合わせ、車両も331000系と呼ばれる新形式が導入されており、最近KORAILで続々と登場している6桁番号の形式は、MAKIKYUも未だに馴染めないものですが、デザイン的には1号線系統の各路線で活躍する5000系電車の最新型などと同種の円いデザインが特徴的です。

また331000系は専ら交流区間のみを走行する事もあって、5000系の様な交直両用車ではなく交流区間線用車となっており、両数も8両編成であるなどの違いがあり、スペック的には中央電鉄線[龍山(Yongsan)~回基(Hoegi)~徳沼(Deokso)~菊秀(Kuksu)]間を走る電車(以前は6000系と称していましたが、今日では321000系に改番されています)と非常に類似しています。

ただ331000系では321000系に見られる特徴に加え、車体が最近のKORAIL通勤型電車では一般的なステンレス製ではなく、アルミ合金製に改められている事が挙げられます。

これに加えて車内もLCDモニターによる案内装置をドア上に装備し、車両間の貫通路もガラス面積の大きい自動式になるなど、最新型車両らしく進化した部分が幾つも見受けられ、電鉄化で格段に利便性が向上した京義線に相応しい車両と言えます。

しかしながら京義電鉄線は、地下鉄6号線と接続するDMC駅以北では昼間毎時4本程度の電車が運行され、汶山・一山(Irsan)方面から都心へ抜けるには、途中で3号線や6号線に乗り換える事で利便性はある程度確保出来るものの、Seoul駅~DMC間は列車線の回送列車が多数運行している関係もあって、連結両数こそ5両→8両に増えたとはいえ、以前の気動車時代と同様に昼間毎時1本の超閑散ダイヤとなっています。

この区間の各駅では列車の本数が限られている旨を告知しているものの、これでは都市交通機関としての使い勝手は極めて悪いのが現状です。

その上Seoul駅は乗り場も駅裏手の分かり難い場所にあり、仮設駅の様な雰囲気ですが、1回用カード利用ではSeoul駅での1・4号線との乗り継ぎの際に運賃が通算されないなど、使い勝手はまだまだと感じるものです。

これに加え京義電鉄線は駅構内の配線が2面4線など、緩急結合運転を行うのに適した構造となっている駅も多く見受けられるのですが、運行される列車は殆どが各駅停車で、急行運転を行う列車は朝のSeoul駅方面行きで僅かに存在している程度です。

現状では過剰とも感じてしまう設備は、将来南北統一が実現して都羅山(Dorasan)より先へ向かう列車が多数運行する事も想定しているのかもしれませんが、現在の汶山までの電鉄区間だけでも片道約1時間程度を要するだけに、高頻度の急行運転にも期待したいと感じたものです。

この様にまだ走り始めてまもない京義電鉄線は、以前の非電化単線時代と比較すると大きな進歩を遂げたものの、最新型車両や立派な設備は持て余している印象があり、都市交通としてはまだまだ改善の余地があると感じたものです。

しかしながら今後龍山~DMC間にある貨物線を複線電鉄化(実態はほぼ新線建設の様なものですが…)し、この路線を介して京義電鉄線~中央電鉄線間の直通運転を行う計画もありますので、この路線が開通すれば都心部へのアクセスは大幅に改善されますが、その暁にはDMC以北での昼間時間帯における急行運転開始なども期待したいと感じたものです。

写真は331000系電車の外観とその車内、分かり難いSeoul駅の京義電鉄線乗り場と、現状では設備を持て余している水色駅の様子です。


KORAIL・「ヌリロ」号で活躍する日本製の新型電車

2009-11-16 | 鉄道[大韓民国・KORAIL列車]

   

先月MAKIKYUが韓国を訪問した際には、6月に営業運転を開始したばかりの新列車「ヌリロ(누리로/Nooriro)」号に乗車する機会がありましたので、今日は「ヌリロ」号とこの列車に使用される新型電動車に関して取り上げたいと思います。

「ヌリロ」号は6月に新たに設定された列車種別で、運賃体系上は既存の「ムグンファ(무궁화/Mugunghwa)」号と同格になっており、市販の時刻表でも「무」(무궁화の略)と表示している程(駅での案内や乗車券には、「ヌリロ」号の名称が用いられているのですが…)ですので、既存「ムグンファ」号との差は新型電動車を用いている事や、停車駅が多い事程度で、実質的に「ムグンファ」号の一部と捉えても良い程です。

この「ヌリロ」号は現在Seoul~天安(Cheonan)~温陽温泉(Onyang-Oncheon)~新昌(Sinchang)の広域電鉄運行区間内のみを運行しており、列車の発着ホームこそ主に列車線ホームを用いているものの、日本の大都市近郊私鉄における有料特急列車に近い雰囲気があります。

使用車両は「ヌリロ」号運行に合わせて新造された200000番台の電動車が専属で用いられており、この電車は韓国の鉄道では久々の日本製(HITACHI)となっているのも大きな特徴です。

「ヌリロ」号用の新型電車は4両1編成(両先頭車が制御車・中間2両が電動車)となっており、MAKIKYUが乗車した列車は4両編成でしたが、列車によっては2編成併結の8両編成でも運行されます。

座席は回転式のリクライニングシートが並び、「ムグンファ」号や日本のJR在来線特急普通車とほぼ同レベルの居住性を誇りますが、「ムグンファ」号では装備していないテーブルを肘掛に内蔵している点は評価できるものです。

またHITACHI製という事もあってか、初めて乗車した車両にも関わらず、車体の側面形状や窓構造などは何処かで見た車両という印象を受けたものですが、比較的シンプルな雰囲気にまとめられた客室内に加え、座席モケットの色なども影響してか、東京~房総方面を走るモノクラスのJR特急型電車を連想したものです。

ただ如何にも最近のKORAIL車両といった雰囲気の前面や、低床の列車線ホームに対応した出入口扉などは、日本製ながらも日本の電車とは異なるものですが、この車両は列車線だけでなく広域電鉄ホームでの発着も出来る様に、出入口扉部分のステップは現在、KORAILではこの車両だけでしか見られない収納式となっています。

低床・高床双方のホームで発着できる構造の車両というと、中国国鉄の客車列車などを連想しますが、「ヌリロ」号の場合は中国の様に係員が跳上式の鉄板を操作するのではなく、低床ホームでの発着時にドア扱いと前後して収納式のステップが稼動するもので、ドア扱いを行う車掌以外の係員の立会いなしでも、低床ホームでの乗降扱いが可能になっています。

各駅到着時の案内放送(自動放送)でも、注意を促す案内が行われており、人海戦術に頼る鉄道とのレベルの違いを感じたものですが、現段階では「」号停車の大半の駅で低床ホームからの発着となっていますので、これだけの装備は過剰に感じてしまう程で、高床ホームでの発着時は出入口限定&鉄板等でステップを塞ぐ方法でも充分な感じがしたものですが、将来の運用区間拡大を目論んでの先行投資なのかもしれません。

現行の「ヌリロ」号列車設定はビジネス利用に主眼を置いているのか、平日(月~金曜日)のみ運行の列車が多く、土・日・祝日の運行本数が極端に少なくなるのは難点と言えますが、電動車ならではの高加減速性能を生かし、列車線運行列車にしては停車駅が多いにも関わらず、既存の一般列車(ムグンファ号)と遜色ないダイヤで運行しているのは大きな特徴と言えます。

またKORAILの列車線では久々の動力分散方式を用いた電動車(EMU)で、その上ROTEMなどの国産車両が多数活躍するKORAILにおいて、これまた久々の日本製であるなど、独自の名称だけでなくその中身も異色の存在です。

今後の更なる活躍にも期待したいもので、KORAILでSeoul~天安・温陽温泉方面を移動する機会があれば、是非選んで乗りたい列車ですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も興味がありましたら、是非一度乗車を検討してみては如何でしょうか?


韓国鉄道 9001型ディーゼル動車(RDC)~近郊型から格上げ改造されたムグンファ号用気動車

2009-11-14 | 鉄道[大韓民国・KORAIL列車]

    
先月MAKIKYUが韓国を訪れた際には、昨年から走り始めたRDC(Refublishied Diesel Car)と呼ばれるディーゼル動車(気動車)に乗車する機会がありましたので、今日はこの車両に関して取り上げたいと思います。

RDCは近年まで首都圏をはじめ、慶尚道や全羅道方面などでも多数が運行されていた「通勤列車」(旧統一号)用に運用されていたCDC(Commuter Diesel Car)と呼ばれる近郊型のディーゼル動車を、ムグンファ号用に格上げ改造した車両です。

韓国鉄道(KORAIL)では京義(Gyong-ui)線の電鉄化による車両取替えや、慶尚道や全羅道方面における通勤列車の相次ぐ廃止などで、CDCの活躍舞台も今や京義線と京元(Gyongweon)線の末端区間に限られています。

そのためCDCの余剰が相次ぐ状況となったものの、製造から10年少々を経過した程度でまだまだ使用できる上に、通勤列車として運転されていた列車のムグンファ号への種別格上げが相次いだ事も、CDC→RDCへの改造が行われる大きな要因となっています。

RDCへの改造車は車両番号が従前の先頭車9500番台・中間車9600番台から、先頭車9000番台・中間車9100番台に改められると共に、RDCへの改造後は専らムグンファ号として運用されるため、車体色を赤系統に改めています。

その上ただでさえ幅が狭く、両開き扉とはいえ乗り降りに時間を要する片側2箇所の客扉の一つを埋めてしまい、1扉車に改造した事も大きな特徴と言え、この様はローカル線で月に1回程度代行輸送なしの列車運休を行う、JR某社の近郊型気動車を改造した観光向け車両を連想させるものがあります。


ドアを埋めた箇所はステップの張り出しが残存している上に、車両によっては窓配置がいびつになるなど、見るからに改造車という雰囲気を強く匂わせており、この姿は趣味的には面白みもあるのですが、2扉のままでは駄目だったのか?とも感じてしまったものです。

車内もムグンファ号用に格上げしただけあって、従来のセミクロスシート(クロスシート部分は転換式)から、日本の特急普通車並みの回転式リクライニングシートに改められています。


内装もRDC化の際にようやく難燃性に改められる(韓国では地下鉄車両の難燃化はほぼ完了していますが、CDCの内装は未だに難燃化されていない状況です)と共に、客扉と客室の間に仕切りが設ける改造も施しています。

JRで両開き2扉の近郊型気動車を優等列車向けに格上げ改造した車両が、改造後もデッキなし(ワンマン運転を行うには、この方が都合が良い事も影響していると思いますが…)で優等列車として運用されている状況と比較すると、この点はRDCが一歩リードしていると言えます。

またCDCは客扉が車端ではなく、中央寄りに設けられている事から、RDC改造後も残された客扉と車端にある貫通路との間は、両先頭車はトイレなどの設置があるとはいえ、やや中途半端な空間になってしまうのですが、現在1編成4両で運行されているRDC(CDC時代は3~5両で1編成を構成:以前は5×2の10両編成もラッシュ時間帯などに存在していました)では、編成内各車両で全て様相が異なっているのも大きな特徴です。


その内先頭車の一方は車端以外の客室と同じリクライニングシートが装備されているのですが、もう一方の先頭車は何故か高速列車(KTX)とほぼ同じタイプの座席(座席モケットの色は異なるのですが…)を向かい合わせに設置し、その間にはテーブルも設置(ムグンファ号の座席は背面や肘掛にテーブルの装備はありません)するなど、グループでの利用などに適した空間となっています。


中間車の1両は「Mini Mini Cafe」と称し、飲料水の自動販売機やコイン式のゲーム機が設置されており、最近KORAILの列車で食堂車に代わって連結されるようになったカフェ車の簡易版といった雰囲気ですが、僅か4両編成の気動車でこれだけの空間を設けているのは、一部の観光列車などを除く日本の鉄道と比較すると、贅沢な印象を受けるものです。

中間車のもう1両は、客扉との間にデッキが設けられたとはいえ、CDC時代と同様にロングシートが配置されており、つり革が並ぶ姿も見られるなど、RDCの中では設備的に最も見劣りする区画となっており、ロングシート自体も近年KORAILの広域電鉄で幅広く用いられている難燃化座席そのものの非常に薄くて硬い代物で、CDC時代に比べて改悪されていると言っても過言ではない状況です。


そのためこんな区画を敢えて選ぶ人物も…と思ったのですが、MAKIKYUが乗車した列車では2名程の利用客が居り、うち1人は多少日本語が話せる人物だった事もあって事情を伺った所、「足を伸ばせてこちらの方が楽」と話しており、専らフリースペース的な使い方をされている様でしたが、この区画も一応座席番号は振られており、乗車券購入時にこの区画を指定されたら…と感じたものでした。

このRDCは現在大邱(Daegu)~馬山(Masan)・東大邱(Dong-Daegu)~浦項(Pohang)間のムグンファ号を中心に活躍しており、この2系統はどちらも韓国の地方都市間を結ぶ列車にしては比較的至便ですので、大邱へ出向く機会があれば比較的容易に試乗も可能です。
(前者は一部に退役が近いと言われるNDCも運用されています)

また今後RDCへの改造を済ませた車両が続々と登場し、更に運行区間が増えたり、変動する事も予想されますが、現段階では長項(Janghang)線の金・土・日祝日のみ運転される牙山(Asan)駅発着の列車にも充当されている様で、新型電車「ヌリロ」(こちらも近日中に取り上げたいと思います)と合わせての乗車も面白いかもしれません。

通勤列車が次々と列車設定廃止となり、CDCの余剰車が多数発生した際には、まだまだ使える車両にも関わらず…と思ったものでしたが、ムグンファ号用に改造を受けて再び活用される事になったのは喜ばしいものです。

韓国の列車線では機関車牽引の客車列車や、それに順ずる動力集中方式の車両が主流を占めており、これは日本の鉄道と異なった雰囲気が楽しめて悪くないのですが、動力分散方式に慣れ親しんだ身としては、やはり床下から走行音が聞こえてくる動車は魅力的です。

電化も進む今日ではディーゼル動車の大増備は余り期待できず、少数派のまま推移していく公算が高いと思いますが、今後の活躍にも期待したいと感じたもので、この記事を見て興味を持たれた方は、是非RDCへの乗車も検討してみては如何でしょうか?


国際旅客ターミナル~釜山駅を運行する循環バス

2009-11-13 | バス[大韓民国]

   

MAKIKYUが先月韓国を訪問した際には、福岡からの高速船が到着する国際旅客ターミナルから釜山駅まで、循環運行を行っているシャトルバスに乗車する機会がありましたので、取り上げたいと思います。

このバスは以前は運行しておらず、国際旅客ターミナルで高速船やフェリーを下船してから、個人旅行で釜山市内各方面へ向かうには、徒歩で最寄り駅の地下鉄1号線中央洞(Jungang-Dong)駅やその近くにあるバス停留所まで向かうか、或いはタクシー等の使用しなければならず、中央洞駅まではさほど遠くないとはいえ、雨天時や重い荷物などがある場合はやや不便な状況でした。

しかしながら近年は福岡からの高速船が健闘し、釜山を訪れる外国人観光客(殆ど日本人かと思いますが…)も増えている事もあり、国際旅客ターミナル~釜山駅(地下鉄で中央洞駅から1駅:地下鉄だけでなくソウルへ向かうKORAIL京釜線列車の大半も発着します)の間を循環運行するバスが運行されており、先月の韓国旅行ではMAKIKYUもこのバスに初めて乗車する事が出来ました。

この循環バスは昼間で概ね1時間に2~3本程度運行しており、市内バスがひっきりなしに行き交う釜山市内の状況を考えると、本数はやや少なめと感じますが、国際旅客ターミナルではターミナルのすぐそばに発着しますので、国際航路利用の場合には非常に便利です。

運賃も一般900W(現金支払時)となっており、中央洞~釜山駅の1駅間だけを地下鉄に乗車するより安価なのも魅力ですが、これに加えて使用車両には「全国交通カード使用可能」とハングルで書かれたステッカーが貼られており、釜山市内で出回っている地下鉄・バス共通のICカード「HANARO CARD」をはじめ、近年相互利用が可能となった首都圏(Seoul都市圏)の「T-money」なども利用可能となっています。

これらのICカードで運賃を支払った場合は、釜山市内や首都圏の市内バスなどと同じく、現金利用より運賃が割引されて800Wで乗車でき、釜山港到着後にターミナル内で日本円のトラベラーズチェック(旅行者小切手)を両替しようにも、現金しか取り扱いできない(以前T/Cを両替した事もあるのですが…)と言われ、ウォンの持ち合わせが少なかったMAKIKYUとしても随分助かったものでした。
(余談ながらT/Cは釜山駅近くの国民銀行で両替できましたが、余り外国人やT/Cの取り扱いに慣れていないのか、結構手間取ったものでした)

この循環バスで運用されている車両は複数あり、MAKIKYUが乗車した車両は現代(HYUNDAI)製の中型車・AEROTOWNで、途中で路上駐車の車が多数停車している路地を走行する事などを考えると、この路線に適した車両と感じたものでしたが、他にも大宇(DAEWOO)製の低床車も目撃しています。

MAKIKYUが乗車したAEROTOWNは、車内はスーツケースなどを持ち込んでも支障が無い様に、一部座席を撤去して荷物置き場が設けられているのも特徴で、その上車内放送は一般の市内バスで流れる韓国語だけでなく、Englishや日本語の案内も行われていました。

そのため初めて釜山を訪れた外国人観光客でも利用しやすく、運賃や乗車時間の面でも手頃ですので、韓国のバスに乗ってみたいけど、複雑な路線網や韓国語のみの案内(この問題は最近徐々に改善されています)では…と考えている方にもおススメです。

また高速船やフェリーを下船してから直ぐに釜山駅へ向かい、列車で各地を目指す旅程を考えている方にも有用な路線ですので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も釜山へ行かれる機会がありましたら、この循環バスへの乗車を検討してみては如何でしょうか?

写真は国際旅客ターミナル~釜山駅間の循環バスで、MAKIKYUが乗車したAEROTOWNとその車内、乗車中のワンシーンと国際旅客ターミナルで見かけた大宇製の低床車です。


未来高速「KOBEE」~日韓間を結ぶ韓国の高速船

2009-11-11 | 船舶[海外関連]

 

先月MAKIKYUが韓国を訪問した際には、博多~釜山間の日韓間往復で高速船(ジェットフォイル)を利用したのですが、現在同区間の高速船はJR九州高速船「BEETLE」と未来高速「KOBEE」の2社が運航を行っています。

両者は以前競合して運航を行っていましたが、2006年に共同運航を開始し、予約発券業務の集約化やダイヤの調整を行って現在に至っており、共同運航開始後は乗船券の相互利用可能化などで、乗客の利便性が向上している事は有り難い限りで、共同運航開始以降は、割引率の高い各種往復割引運賃や、回数乗船券類などを利用した場合に、往復で異なる事業者の船舶への乗船も可能になっています。

しかしながら共同運航開始以降はBEETLEが主に午前博多/午後釜山発、KOBEEが主に午前釜山/午後博多発のダイヤとなり、韓国を訪れる日本人旅行者にとってはBEETLEは利用しやすいものの、KOBEEは利用し難いダイヤ設定となっています。

そのためBEETLE/KOBEEの共同運航開始以降も、なかなかKOBEEを利用する機会はなかったのですが、先月韓国を訪問した際は、帰国日の釜山を午後に出国する2便中の1便がKOBEEでの運航となっており、今まで乗船機会の無かったKOBEEへ乗船する丁度良いチャンスという事で、出航時間はBEETLEより30分程早かったのですが、この便を選んだものでした。

KOBEEは現在3艘(KOBEE・KOBEE Ⅲ・KOBEE Ⅴ)が運航に供されており、MAKIKYUが乗船した船はKOBEE Ⅲでしたが、元々は香港~澳門間で用いられていた船を用いています。

KOBEEの3艘は「Boeing 929」と呼ばれるジェットフォイルで、BEETLEと同種の船ですので、装いこそBEETLEとは異なるものの、外見や運航速度などはBEETLEと大差ないものですが、運航事業者が異なるだけに、船内の内装などに違いが見受けられたものでした。

内装は華やいだ雰囲気を感じる改装後のBEETLEとは対照的に、比較的落ち着いた雰囲気を感じるもので、座席肘掛の形状が統一されている事なども評価できる点(BEETLEは複数形状の座席が混在しています)ですが、間接照明を多用している点は雰囲気は良いものの、窓際頭上に荷棚が設けられていない点は、BEETLEに比べ実用面でマイナスと言えます。

船内設備も普通席のグレードは両者共に大差なく、少しだけリクライニングする座席などは同様ですが、BEETLEでは改装前は1階前方(ジェットフォイルはBEETLE・KOBEE共に客室が1階と2回に分かれており、座席定員は双方合わせて200名程度です)に売店が設けられ、改装後は売店を廃止して物品販売をワゴンサービスで係員が巡回する形態に改められると共に、1階前方部分にグリーン席(普通運賃に加え、片道3000円の追加料金が必要です)を設けていますが、KOBEEではグリーン席の設置は無く、売店も1階後方に設けられているなどの違いがあります。

またKOBEEは韓国の事業者(未来高速)が運航する船舶だけあって、船内では一応日本語も通用するものの、乗組員は全て韓国人となっており、これに加えて船内の表示もBEETLE程日本語が多くない事もあって、博多に到着する少し前まで日本に帰国するという感が無く、乗組員が全て日本人で構成され、釜山に着くまで海外旅行へ行くという雰囲気を感じず、帰国の際も船に乗り込んだ瞬間から、日本へ帰ってきたと感じるBEETLEとは対照的です。

これらに加え、KOBEEでは船内での物販品目などがBEETLEと異なり、BEETLE利用のパッケージ商品利用時などに配布される船内でのドリンク引換券などは利用可能な様ですが、JR九州が30歳以下の若者向けに発行しているナイスゴーイングカードの会員が、BEETLE乗船時に特典として無料で貰えるコーヒーのサービスが無い点は要注意です。

今回KOBEEに初めて乗船した際の感想としては、グリーン席の有無を除けばBEETLEとは大同小異といった印象を受け、どちらの船舶で運航しているかよりも、利用したい時間に運航している船舶を選んで乗船すれば良いのでは…という印象を受けたものでしたが、KOBEEは日本人観光客が利用しやすい時刻に運航する事は比較的少ないのが現状です。

そのため韓国にお住まいの方や、日本人観光客が余り利用したがらない時間帯での乗船を除くと、KOBEEを利用する機会は少ないかと思いますが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も韓国へ行かれる機会があり、乗船希望時間帯にKOBEE運航の便がありましたら、BEETLEと乗り比べてみては如何でしょうか?

ちなみにBEETLEに関しては、以前「MAKIKYUのページ」で公開した記事もありますので、興味のある方はこちらもあわせてご覧頂ければと思います。

(「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様へ)
最近更新頻度が低下気味となっていますが、日本国内各地の記事とあわせ、先月MAKIKYUが出向いた韓国関連の記事も今後続々と公開したいと思っていますので、韓国関連の記事を期待されている皆様は、もう少しお待ち頂ければ…と思います。


内灘駅前に停車していたほくてつバス~NEW AEROSTARも地方へ

2009-11-08 | バス[北陸]

 

もう2ヶ月程前になりますが、9月はじめにMAKIKYUが北陸を訪問し、先日取り上げた北陸鉄道浅野川線に乗車した際には、終点の内灘駅前で数台の北鉄グループが運行する路線バスの姿を見る事も出来ました。

9月に内灘を訪れた際には、時間の関係もあって内灘では路線バスに乗車していないものの、見かけた車両の中には非常に気になる車両の姿もありました。

その気になる車両が写真のバスで、北陸鉄道本体ではなく子会社の一つ・ほくてつバスに所属する車両で、三菱ふそうのNEW AEROSTARですが、今もなお各地で増備が進んでいるこの車両も、初期の車両は製造から12年が経過して大都市圏における排ガス規制による使用期限満了を迎える程になっており、比較的新しい車両と言う印象があるNEW AEROSTARも、結構長い間製造が続いているものと改めて感じるものです。

このNEW AEROSTARも、元は首都圏の某事業者が導入した最初期のNEW AEROSTARで、国内で三菱ふそうのバスを最も多く走らせているこの事業者では、最近になってNEW AEROSTARの廃車も本格化しており、MAKIKYUが日頃利用する機会が多い営業所の所属車両でも、最近になって離脱車両が発生しています。

とはいえ子会社では首都圏で見る機会は少なくなった、U-規制のAEROSTAR M(U-MP218M)が今でも数台残存しており、MAKIKYUも写真の車両を目撃した後に乗車する機会があった程ですので、もう中古で地方に流出したのか…と感じたものでした。

このNEW AEROSTARは標準サイズより大き目のバンパーや、前ドアステップ部分に設けられた補助ステップ(ほくてつバスでは跳ね上げ状態で固定)、側面の出入口表示(前払い・後払い路線双方で対応できる様に切替可能)などがそのまま残存し、内装も北陸鉄道グループの他車両とは大きく異なる某事業者そのままに見受けられたなど、異色ぶりが際立っています。

そして国内ではNEW AEROSTARの車両数でダントツの日本一(国内での所属車両数は2番手です)を誇る首都圏某事業者の一般路線車では、一部の例外を除いて前面左窓下に運賃支払い方法を表示する幕(前払い・後払いを切替可能)が取り付けられており、この関係でNEW AEROSTARの大きな特徴とも言える死角確認窓が設けられていないのも特筆点です。

専ら「中乗り前降り・運賃後払い」の整理券方式となっている北陸鉄道グループでは、運賃支払い方法を案内する必然性がない事もあってか、運賃支払い方法を表示する幕は撤廃されていますが、この部分は埋められても死角確認窓がないために奇妙な印象となっており、今後各地で続々と登場する事が予想される首都圏某事業者のNEW AERSTAR譲渡車では、同形態の車両が各地で見られる様になるのか否かも気になる所です。

ちなみにこの記事で取り上げている写真は、リンク先サイト「カナちゃん号」様にも提供しており、こちらでも公開されていますので、興味のある方はこちらも合わせてご覧頂けると幸いです。

あと首都圏以外の方などで、首都圏某事業者のNEW AEROSTARはどんな車両か?と思われる方や、元事業者で活躍する車両との際を比較したい方なども居ると思いますので、この事業者で今も活躍するほぼ同形態の車両の写真をご覧になりたい方は、こちらをクリックして下さい。
(この写真の車両はやや年式が新しく、アイドリングストップ&スタート装置が装備されているなどの差異がありますが、見た目はほくてつバスに譲渡された年式の車両とほぼ同等です)


北陸鉄道 8000系電車~浅野川線で活躍する元京王車

2009-11-07 | 鉄道[北陸]

  

MAKIKYUが9月に北陸を訪問し、北陸鉄道に乗車した際には、鉄道2路線(石川線・浅野川線)双方で共通利用可能(両線間は直接連絡しておらず、別運賃が必要なJRか北鉄グループのバスを介しての連絡となります)な一日乗車券を利用した事もあり、先月末で末端区間(鶴来~加賀一の宮)が廃線となった石川線だけでなく、金沢駅を基点に海岸近くの内灘へ至る浅野川線にも乗車したものでした。

浅野川線は車両近代化こそ石川線より遅かったものの、金沢駅地下化と関連して90年代に車両取替えが行われ、浅野川線では同時に直流600V→1500Vへの昇圧も行われています。

この車両取替えの際に導入された車両が8000系と呼ばれる車両で、元京王井の頭線の3000系電車を短編成ワンマン化など、北陸鉄道向けに改造した車両で、車内はリニューアル前の京王3000系の雰囲気が色濃く残っていますが、一部のつり革を撤去した跡などを見ると、古巣とは大きく異なる環境に移った車両という事を強く感じたものです。

2両1編成で構成される8000系は5編成が在籍しており、この5編成が浅野川線で現在活躍する旅客車両の全てになりますが、8800番台と8900番台の2つの番号区分に分けられており、前者が2編成、後者が3編成の陣容となっています。

MAKIKYUが9月に浅野川線を利用した日には、8900番台が2編成稼動し、金沢駅にも1編成が停車している状態でしたので、乗車した車両は当然8900番台の方になりますが、この車両の導入時期には3000系の地方譲渡が次々と行われていた事もあり、ほぼ同種の車両は幾つかの地方私鉄でも姿を見る事が出来ます。

また北陸鉄道ではこの車両の導入から10年程のブランクを経て、更に1編成だけ京王3000系を追加導入(北鉄での形式は7700系)していますが、こちらは石川線用に導入された車両だけあって、京王時代に用いていた直流1500Vの下回りはそのまま使えず、他の石川線車両と同様に西武鉄道などで発生した廃車発生品に取り替えています。

そのため7700系の見た目は、浅野川線車両に良く似ているものの、下回りが別物(浅野川線車両は京王時代の下回りを使用)だけに乗り心地は大きく異なり、導入時期が異なるだけあって車内にも違いが見られる点などは興味深いものです。
(興味のある方は、この記事と7700系の記事の写真を比較してみて下さい)

あとMAKIKYUが9月に訪問した際には、残念ながら2編成とも内灘の車庫で休んでいた8800番台の車両は、数多くが製造されて一部は井の頭線で最後の活躍をしており、地方でも多数が走り回っている京王3000系の中でも、最初期に製造された片開き扉車です。

こちらは現在北鉄のみにしか存在しない希少な車両で、MAKIKYUも一度だけ浅野川線で乗車した事がありますが、稼動している姿を見かけたならば、是非乗車しておきたいものです。

写真は8900番台車とその車内の様子、内灘の車庫で休む8800番台車です。


北陸鉄道 7000系電車~古巣と同じ形式を名乗る石川線の主力車両

2009-11-03 | 鉄道[北陸]

  

先日「MAKIKYUのページ」では、北陸鉄道石川線で1編成だけ活躍する元京王車で、近年導入された7700系に関して取り上げましたが、現在石川線で活躍する車両は、この1編成を除いて元東急の車両で統一されています。

元東急の車両は、かつて日比谷線直通列車でも用いられた18m級ステンレス車の7000系で、北陸鉄道では1990年に運用を開始していますが、同系は北陸鉄道以外にも各地の地方私鉄に譲渡され、今日でも幾つかの地方私鉄で活躍する姿を見られます。

それどころか東急自体でも下回りの取替え(VVVFインバーター制御化)や内装更新など、大規模な改造を施された車両が、7700系と形式を改めながらも池上線などで今でも活躍し、外観は7000系の雰囲気を強く残していますので、お馴染みの方も多いかと思います。

その中でも北陸鉄道に移籍した車両は、600Vという低電圧の路線で用いる事もあって、下回りを東急時代のものではなく西武鉄道などの廃車発生品に取り替えているのが大きな特徴で、この事は他の東急7000系譲渡車には見られない大きな特徴となっています。

また北陸鉄道での形式は、古巣の東急時代と同じ7000系を名乗っているのも大きな特徴ですが、同じ形式を名乗りつつも原型の先頭車で構成された編成と、中間車に運転台を増設した改造先頭車で構成された編成で番号帯が異なります。

その上原型の先頭車で構成された編成の1本は、東急時代と同様に非冷房のまま(その他の編成は北陸鉄道移籍時に簡易型の冷房装置を搭載)となっており、この編成も番号帯が分けられている事から、移籍車両数は2両5編成(計10両)だけの割には、7000番台・7100番台・7200番台と番号区分が複雑なのも大きな特徴と言えます。

この7000系は北陸鉄道移籍後、今日に至るまで石川線の主力として活躍しており、1編成を除いてこの形式ですので、石川線に乗車する機会があれば、遭遇頻度は非常に高いものです。

MAKIKYUが9月に石川線に乗車した際にも当然乗車機会がありましたが、幾ら車体が耐久性の高いステンレス製とはいえ、北陸鉄道移籍からもうそろそろ20年、製造年から数えるとかなりの年数を経ている車両だけに、車内などはやや草臥れた雰囲気を感じたのも事実で、今後車両更新(東急7000系移籍車の中では、水間鉄道への移籍車が近年大規模な更新工事を施工しています)や取替えなど、大きな動きが出ないのかも気になったものです。

写真は7100番台(原型先頭車の冷房改造車)と7200番台、乗車した列車の車内の様子です。


北陸鉄道 7700系電車~北鉄2路線の主力車を折衷した1編成だけの珍車

2009-11-01 | 鉄道[北陸]

   

石川県の金沢市内とその近郊を走る北陸鉄道石川線は、10月31日限りで末端の鶴来~加賀一の宮間が廃線となり、9月にMAKIKYUがこの区間に乗車した際の様子も記事として先日取り上げていますが、今日はMAKIKYUが9月に石川線を利用した際に乗車した車両の一つで、MAKIKYUは9月に初めて乗車した7700系電車に関して取り上げたいと思います。

北陸鉄道では1990年に東急からの中古車を導入して石川線の近代化、その後1996年に京王からの中古車を導入して浅野川線の近代化を行った事は、ご存知の方も多いかと思います。

この相次ぐ90年代の車両入れ替えにより、既存の旧型車は退役し、暫くは大きな動きもなく推移するものと予想していた方は多いかと思いますし、MAKIKYUもその様に予測していました。

そんな状況でも殆ど稼動機会の無い旧型の予備車取替用と、夏季の車両検査発生時等における非冷房車の運用充当回避を目的に、比較的近年になって石川線に1編成だけ新形式が導入されており、この車両が7700系と呼ばれる車両です。

7700系は浅野川線の車両と同じく、元京王井の頭線3000系を改造した車両で、装いもステンレスにオレンジの北鉄カラーを纏っていますので、見た目は浅野川線の車両に非常に類似しています。

車内も座席がバケットシート化されている事や、LEDによる次駅案内表示装置が設けられている事など、種車が同一形式でも比較的近年導入された車両らしく、浅野川線車両よりやや進歩した部分も見受けられます。

ただ種車が京王での大規模なリニューアル工事の施行対象からは外れた車両である上に、北陸鉄道移籍に際しても内装の抜本的改装などは行われていませんので、比較的最近導入された車両にしては余り見栄えがしないと感じたのも事実です。

また浅野川線は京王中古車の導入に合わせて直流1500Vへの昇圧を行っているものの、石川線は600Vの低電圧のまま車両近代化を図った事もあって、石川線で用いられる7700系は浅野川線で活躍する元京王車とは異なり、下回りを取り替えているのも大きな特徴と言えます。

取り替えた下回りは西武鉄道などの廃車発生品を用いており、こちらは石川線で活躍する元東急車とほぼ同等ですので、車体は浅野川線車両とほぼ同等、下回りは石川線既存車両(元東急車)とほぼ同等という北陸鉄道の2路線双方で活躍する主力車両を折衷した印象を受ける車両になっています。

そのため1編成しか存在しないにも関わらず、知らないと見ても乗ってもさほど珍しさを感じない車両というのも事実で、珍車の割には違和感を感じないものですが、1編成だけの存在故に常に稼動しているとは限らず、稼動している姿を見かけたら是非一度は乗っておきたいものです。

あと余談ですが、この車両は石川線での優等列車(準急)の設定廃止後に導入されているにも関わらず、「準急 野町」などの字幕が装備されており、先日廃駅となった加賀一の宮駅で折り返しの際、字幕を回している時に準急幕の姿を見る事が出来ましたが、この字幕が実際に使われる日が訪れるのか否かも気になる所です。

写真は7700系の外観と車内の様子、車内に設置されたLEDによる次駅案内装置(表示駅名にも注目)と加賀一の宮駅で字幕を回している際に目撃した「準急 野町」表示です。