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まもなく終焉を迎える苫小牧市営バス(4)~トップドア車編

2011-11-29 | バス[北海道]

「MAKIKYUのページ」でここ数日取り上げ、まもなく終焉を迎える苫小牧市営バスですが、現在使用している車両は路線バスで一般的な前中扉の路線車が主流を占めるものの、他に前ドアのみの車両(トップドア車)も活躍しています。

苫小牧市営バスでは一般路線だけでなく、貸切事業も行っている為に、少数ながら貸切専用車(いわゆる観光バス)も存在しています。

 
こちらは事業縮小の関係で一部車両が売却された事もあり、純粋な貸切専用車は僅かに残存するだけとなっており、MAKIKYUが交通部(新開)を訪問した際には、2台の貸切専用車は共に車庫内に駐車している状況でした。

そして苫小牧市営バスの中で最も特徴的で、趣味的にも注目と言えるのが、一般路線と貸切・契約輸送用途の双方に使用可能な貸切兼用車の存在で、このタイプの車両は殆どが交通部所属となっています。

貸切兼用車の中で比較的新しい車両は、主に観光・高速バスで使用される日野SELEGAとなっており、北海道では事業者によっては高速バス用車両を一般路線に充当したり、苫小牧市内では札幌行き高速バスが市内区間のみで利用可能である事などを踏まえると、さほど驚く事でもないかもしれませんが、SELEGAでは非常に珍しい非冷房車が存在する事は注目です。


貸切兼用のSELEGAは3台在籍しており、MAKIKYUが交通部を訪問した際には3台全てが車庫内に駐車している状況(その後市内で契約輸送に従事している姿も目撃しています)でしたが、その内写真の車を含む2台が非冷房車との事で、夏場に窓を全開にして走る姿も一度見てみたいものです。


貸切兼用車は他に一般路線車タイプも存在しており、こちらは富士重工製車体にいすゞ製の下回りを組み合わせたもので、一般路線車でもエアサス標準の苫小牧市営バスですので、当然ながらエアサス車ですが、今日でも多数が活躍する7Eボディでも、決して新しい車両でない事もあってか、非冷房車となっています。


そして最も注目の存在と言えるのが、最近では地方へ足を運んでも見かける機会は少なくなった富士重工5Eボディの貸切兼用車で、古参車だけあって廃車が進み数を減らしていますが、今日でも1987年(昭和62年)式105・106号車の2台が在籍しています。


交通部を訪問した際には、交通部職員の方の好意で106号車の車内も見学できたのですが、車内は後に座席を交換したらしく、古さを感じさせず綺麗な印象を受けたもので、座席はリクライニング機能も装備しています。

また105号車は、貸切兼用車としては例外的に錦西営業所に配置され、錦西営業所で最も年式が古い車両であると共に、特異な車両として注目を集めており、他の一般路線車と共に一般路線で活躍しています。

MAKIKYUが苫小牧を訪問した日には、105号車は残念ながら稼動しておらず、その姿をカメラに収める事も叶いませんでしたが、帰路に札幌から函館へ向かうJR特急列車(スーパー北斗号)に乗車した際には、錦岡を過ぎて車窓右手に樽前山を望む雄大な景観と共に、樽前ガロー線に充当されている姿を目撃できたもので、古参車ながらも健在振りを目にする事ができたものでした。

現在苫小牧市営バスでは、一般路線用の2扉車で5Eボディ車は全廃されており、この点だけでも105・106号車の存在は非常に注目ですが、おまけに5Eボディで長尺トップドア車、おまけに豪華なリクライニングシートを装備するにも関わらず、非冷房車となると、日本全国のバスを探しても他に同種のバスが存在するのだろうか?という珍車で、交通部の方から実際に以前106号車を指定しての貸切依頼があったという話も聞いた程です。

MAKIKYUは随分前にフェリーで渡道し、フェリーターミナル~苫小牧駅間で市営バスを利用した際には、このタイプの車両(車番未確認)に乗車した記憶がありますが、先月苫小牧市営バスを利用した際には残念ながら105・106号車に乗車する事は叶いませんでした。

また105号車は快適なリクライニングシートを装備し、混雑時に立席乗車になると通路が狭く、大変な事を除くとかなりの乗り得車両である反面、知人によると座席配置やドアが1箇所しかない事が災いし、乗降に時間を要する事から充当可能なダイヤが限られており、使い勝手は余り良くない上に、経年車故に草臥れた部分も見受けられるとの事でした。

最古参の経年車でおまけに非冷房車、路線車としての使い勝手が芳しくない事なども踏まえると、いつ退役を迎えても不思議でない車両ですが、来年春の道南バス移管後も継承されて使い続ける事になるのか気になる所です。


まもなく終焉を迎える苫小牧市営バス(3)~移籍車両編

2011-11-25 | バス[北海道]

先日「MAKIKYUのページ」では、苫小牧市営バスで活躍する路線車に関して取り上げましたが、今日はその続編として、他事業者から移籍した車両に関して取り上げたいと思います。

苫小牧市交通部では、平成11年を最後に新車導入がストップしているものの、その後も老朽車淘汰の為に車両代替は必須となる事から、新車導入終了後は毎年の様に他事業者からの中古車両を導入しています。

現在その数は30台を越え、市営バスで活躍する路線車の3分の1以上が他事業者からの移籍車両という程ですので、結構な頻度で遭遇しますが、移籍車両は道南バスに運行委託している錦西営業所に配属される割合が高くなっています。

市営バスにおける移籍車両の特徴としては、まず局番に新車で導入した車両とは異なる300番台の番号が割り当てられ、関東鉄道バスの9000番台が割り当てられている車両などと同様に、振番ルールさえ知っていれば、誰でも容易に移籍車である事が見分けられる事が挙げられます。

また苫小牧への移籍前は、皆首都圏で活躍していた車両ばかりで、現段階では首都圏と共に排ガス規制による特定地域に指定され、地方へ多数のバスが移籍している阪神地区や中京圏の車両は存在していません。

車種も大半はいすゞ製の大型短尺車になっている事が挙げられ、新車で導入された車両は長尺車ばかりなのとは対照的です。

冬場の運転性にはやや難がある様ですが、元々首都圏で使用していた車両だけあって全て冷房装備となっており、苫小牧市営バスの冷房車比率向上にも大きく貢献しています。


最初の移籍車は元東京都交通局(都営バス)の車両で、富士重工製車体のいすゞ車ですので、巣鴨か深川のいずれかで活躍した車両かと思いますが、苫小牧市営バスで中扉4枚折戸となっているのは、今の所はこの元都営バスのみです。
(苫小牧市内では道南バスにも中4枚扉の移籍車両が在籍し、MAKIKYUも姿を目撃していますが、こちらは本州の民間事業車からの移籍車両です)

都営バスが地方への中古バス転売を中止した後は、川崎市交通局や国際興業の中古車両が多数導入されており、これらは苫小牧市営バスでかなりの勢力を誇るまでになっています。

 
阪神地区などからの移籍車は存在しない事から、西日本車体工業(西工)製こそ存在しないものの、富士重工製車体(7E)と純正(キュービック)の双方が存在し、川崎市営から移籍した車両の中には、両者が混在しています。


これらの中には、導入当初は少数派だった逆T字窓(最近のバスはこのタイプばかりですが…)の車両や、ワンステップ車(最近のワンステップ車より床面が10cm程高く、ステップの段差はやや大きいです)も含まれているのが特徴です。


比較的最近になって移籍した車両は、大都市圏での淘汰対象がV8エンジン搭載車になっている事から、MAKIKYUの中ではまだ新しいバスと言う印象があるKC-LV380Lなどが導入されていますが、国際興業からの移籍車はV8エンジン搭載車でもリーフサス(板バネ)で2段窓、2段ステップ車でシフトレバーもロッド式であるなど、年式の割には…と感じてしまう気がします。


最も最近導入された移籍車は、京浜急行バスで活躍していたキュービックのバリアフリー対応ワンステップ車で、サスペンションもエアサス(空気バネ)を装備するなど、デザイン的には型落ちの印象が否めないとはいえ、最新の新車に見劣りしない接客レベルを備えた車両と言えます。

移籍車は主に錦西営業所に配置される傾向があるものの、苫小牧市営バスでは比較的新しいV8エンジン搭載車は、大半が交通部所属となっており、特に最新導入車の元京急ワンステップ車は、導入された2台共に交通部所属となっています。

そして忘れてはならないのが、309号車と呼ばれる川崎市営バスからの移籍車両で、いすゞ車ばかりの移籍車群に混じり、1台だけの移籍三菱エアロスターMとなっており、苫小牧市営の三菱車で唯一のリーフサス車にもなっています。


この車両は錦西営業所に所属し、新車で導入された三菱車は全て交通部所属という事もあって、錦西営業所で唯一の三菱車と言う事でも注目の存在と言えますが、MAKIKYUが苫小牧を訪問した際には、偶然駅前のターミナル待機場に停車している姿を目撃できたものでした。

苫小牧市営バスに関しては、一般路線用とは異なる特殊用途の車両に関しても、近日中に別記事で取り上げたいと思います。


まもなく終焉を迎える苫小牧市営バス(2)~古株一般路線車編

2011-11-22 | バス[北海道]

先日取り上げた苫小牧市交通部(市営バス)ですが、平成11年までは新車が導入されており、公営交通だけあってか車両は国産4メーカー全てが導入されていますので、車両のバラエティは結構豊富で、趣味的にはなかなか面白いものです。

 
車体長が長く、後部ウインカー・ブレーキランプが厳つい印象のバスが多いのは、北の大地を走る路線バスならでは…という印象があり、新車で導入された車両は基本的にエアサスを装備し、平成9年頃に導入された車両でもワンステップ低床車が導入されると共に、バーコード読取式運賃箱やバスカード(トマッピーカード)を比較的早期に導入されるなど、比較的進んだ印象を受ける一面もあります。


ただ土地柄もあってか、ノンステップ車は交通部所属の三菱製1台だけで、この車両が導入されて以降は新車導入がストップし、以降の車両代替は大都市圏中古車導入によって賄われていますので、現在の他事業者移籍車数は30台を越える程になっています。

 
一方比較的冷涼な土地柄が影響してか、平成7年までに導入された車両は、今日の日本国内における路線バスでは少数派の非冷房車となっており、非冷房車が数多く走る点も趣味的に注目です。

また新車で導入された三菱ふそう製車両は皆交通部に終結しており、錦西営業所所属の新車導入車両は他の3メーカーばかりになっています。

ちなみに先月MAKIKYUが苫小牧を訪問した際に会った知人は、現在この市営バス運行に携わっており、MAKIKYUも知人が運転するバスに乗車したものでしたが、MAKIKYUの苫小牧訪問日に乗務していたバスも、全国的には数少なく、苫小牧名物とも言える非冷房車の71号車でした。

 
富士重工7Eボディに、いすゞ製下回りを組み合わせた71号車は、デザイン的にはさほどの古さを感じないものの、車齢20年を越えたP-規制車(P-LV214N)だけあって、よく見ると結構古さを感じたものです。


苫小牧市営バスでは、この71号車をはじめ、比較的古参の車両は床が昔ながらの板張りとなっている点も特徴で、シフトレバーもロッド式でしたが、一方で市内バスにしてはやや豪華なハイバックシートが装備され、その座席モケットは「トマッピー」のキャラクター入りデザインとなっていたのも興味深いものでした。

北海道を走る2段ステップの路線車では、床が板張りの車両が今でも結構活躍しており、先月MAKIKYUは道内他都市でも床が板張りのバスに当たっていますが、「床が板張りの非冷房車」は全国的にもかなり希少で、趣味的には興味深い反面、知人によると夏場は結構シンドイとの事でした。


また苫小牧市営バスでは現在、行先表示は全てLED式に改められているのですが、中には前面表示で名産のホッキ貝をイメージしたイラストが表示される「ホッキフェスタ」の表示(側面は文字表示のみ)もあり、知人に頼んで普段なかなか見れないこの表示も出してもらったものでした。

苫小牧市営バスでは他に少々特殊な車両や、他事業者からの移籍車両も多数活躍しており、こちらに関しては後日別記事で取り上げたいと思います。


まもなく終焉を迎える苫小牧市営バス(1)~駅前に構えるターミナル

2011-11-19 | バス[北海道]

先月末から今月初めにかけて、MAKIKYUは北の大地・北海道へ出向いていましたが、最大の目的地は苫小牧で、以前職場で同僚だった知人を訪問すると共に、まもなく終焉を迎える苫小牧市営バス(苫小牧市交通部)に乗車し、その姿をカメラに収めて来る事でした。

苫小牧市営バスは現在車庫を市内2箇所に構え、90台弱の車両を保有・運行して市内路線バスの大半を担っていますので、地方都市の市営バスにしてはそこそこの規模を誇っています。

約半数の車両が交通部(新開)に所属し、残りの半数は民営委託(道南バス)の錦西営業所(錦岡)に所属していますが、来年春で現在錦西営業所の受託運行を行っている道南バスに全面移管される事が確定しており、これにより北海道では公営バスの歴史に幕を下ろす事になります。
(北海道では比較的近年まで札幌と函館でも市営バスを運行しており、MAKIKYUも以前乗車した事がありますが、どちらも電車運行は続いているものの、バス部門は民営移管されて消滅しています)

また苫小牧は酷寒の北の大地だけあり、冬の気候は極めて厳しく、各交通機関にも影響が及ぶ事もしばしば…という事で、この時期の訪問は避けたい事や、知人からの訪問要請なども踏まえると、今年中には何とか訪問を…と思っていたのですが、東日本大震災やその他の個人的事情により、先月末にようやく訪問できたものでした。

  
この苫小牧市営バスは、苫小牧駅前に乗車券売り場や待合室、バス待機所も設けた比較的大規模なターミナルを構えており、なかなか壮観ですが、運行本数の割には設備過剰な印象があり、おまけに地方都市の典型とも言える駅周辺の中心市街地空洞化も影響してか、やや寂しい雰囲気が漂っているのは残念な限りです。

 
このターミナル内にある待合室には、永年の市営バスにおける軌跡を振り返る写真展示なども行われており、まもなく市営バスが終焉を迎える事を強く実感させられたものでしたが、最後まで無事に地域の公共交通としての役割を果たす事を願いたいものです。

現在活躍中の市営バス車両に関しては、近日中に別記事で取り上げたいと思います。


黒部峡谷のトロッコ電車(2)~窓付き客車の主流を占めるリラックス客車

2011-11-17 | 鉄道[北陸]

先日「MAKIKYUのページ」では、黒部峡谷鉄道のトロッコ車両に関して取り上げましたが、今日はその続編としてMAKIKYUが先月乗車したリラックス客車に関して取り上げたいと思います。

黒部峡谷鉄道の旅客用客車は、先日取り上げた名物のトロッコ客車が普通運賃のみで乗車できる一般車両の扱いで、この車両は普通客車とも呼ばれていますが、それ以外の窓付き車両は運賃の他に追加料金が必要となっています。

この追加料金を要する車両は、ボックス席の特別客車(料金360円)と転換式クロスシートのリラックス客車(料金520円)、そして1両だけの存在で特別客車と連結して運用され、転換式クロスシートを装備するパノラマ客車(料金630円)の3種が存在しており、現在追加料金を要する窓付き客車は、リラックス客車が主流を占めています。

現在黒部峡谷鉄道で運行している旅客列車の大半は、特別客車(パノラマ客車1両を混成した編成も含む)かリラックス客車を6両と、普通客車を混成した編成で運行していますが、中には普通客車のみで運行する列車や、逆にリラックス客車のみで運行する列車も少数存在します。

このリラックス客車は、白と赤の装いのボハ2500・ボハフ2500形と呼ばれる車両(ボハフは車掌室設置車両で、ボハと混成して運行しています)が主流を占めています。


最近ではボハ3100・ボハフ3100形と呼ばれる新型のリラックス客車も登場し、こちらは装いが白に黄緑色とオレンジ帯に改められると共に、車両間に非常用貫通路が設けられ、客扉窓が最近の阪急電車の如く拡大されるなど、既存リラックス車両とは大きく異なりますので、一目で識別する事ができます。

MAKIKYUが欅平駅でリラックス車両券を購入した時には、この車両の充当を期待していたのですが、今後増備が見込まれるとはいえ、まだ1編成だけの少数派だけあって残念ながら既存車両の方でした。

そのため新型リラックス客車は、途中の鐘釣駅でMAKIKYUが乗車した列車とすれ違う列車に充当されている姿を目撃しただけですが、外から見た限りでは最新車両だけあって座席下の足元が広く確保されているなど、既存リラックス客車よりも上等な車両に見受けられたものでした。


ただMAKIKYUが乗車したリラックス客車は既存車両でも主流のボハ2500・ボハフ2500形ではなく、これまた1編成しか存在しない天窓付きの少数派車両ボハ2800・ボハフ2800形で、側面窓も他の既存リラックス客車より大きくなっている様です。

乗車券購入時に列車が指定される黒部峡谷鉄道では、この車両の姿を見て飛び乗るのも…という事を考えると、新型車両ではなかったものの、狙ってもなかなか乗れない車両に当たったのは幸運と感じたものでした。

ちなみにこのボハ2800形をはじめとするリラックス客車は、車体の大きさがマイクロバス並みに小柄な上に、客室内に通路を確保するために、座席は2+1列配置となっており、車両中央に設けられたドアを境に、2人がけと1人がけの座席配置が逆転する格好となっています。


転換式クロスシートの座席も「リラックス」と呼べる程の広さでは…とも感じたもので、決して新しい車両ではないだけに、座席下の足元も塞がっているなど、満席に近い混雑時には車両の狭さもあって、少々窮屈に感じそうです。

とはいえ客車には窓だけでなく暖房装置も備えていますので、雨天時に車内に雨が吹き込まないだけでなく、少々寒い日でもそこそこ快適に過ごせ、この事が雨天時に乗車したMAKIKYUが要追加料金のリラックス客車を選択した大きな要因ですが、土地柄も影響してか冷房装置の装備はありませんので、夏場の利用は要注意です。


またMAKIKYUが旅客列車で乗車したリラックス客車をはじめ、欅平下部駅~欅平駅間の黒部ルート公募見学会参加者移動で乗車した関西電力の事業用車両ボハ2550・ボハフ2550形(ボハ2500・ボハフ2500形とほぼ同形です)は、車内の化粧板や客ドアのガラス支持方法が、一世代前の東武線車両に類似したものとなっており、アルナ工機→アルナ車両が製造した車両(黒部峡谷鉄道の客車は殆どこのメーカーが製造している様で、上部軌道の客車もアルナ車両製でした)ならではと感じたものでした。


黒部峡谷を走るトロッコ電車(1)~名物のトロッコ車両

2011-11-15 | 鉄道[北陸]

先月初めにMAKIKYUが関西電力の黒部ルート公募見学会に参加した際には、黒部ダム集合コースに参加した事もあって、有名な黒部川第4発電所などを見学した後、欅平駅で解散となりました。

欅平駅からは黒部峡谷鉄道以外の公共交通機関が通じておらず、自家用車などでアクセスする事も不可能な事から、ここからは必然的に黒部峡谷鉄道を利用して宇奈月へ抜ける事になり、久々に同鉄道の旅客列車を利用したものでした。
(MAKIKYUが以前利用したのは幼稚園の頃で、乗車した記憶がうっすらと頭の片隅にありますが、それ以来20年以上乗車機会がない状況でした)

この黒部峡谷鉄道は元々発電所建設の資材輸送を目的として建設された路線で、日本国内の旅客鉄道では数少ないナローゲージ(軌道幅762mm)の鉄道としても知られています。
(国内で他に現存するナローゲージの旅客鉄道は、三重県内を走る近鉄ローカル線の一部と、近鉄から地元私鉄に移管された路線程度です)

現在も関西電力の事業用列車が多数走るほか、旅客輸送は通勤通学用途などで利用されることはまずなく、関電関係者輸送を除くと完全に観光向けとなっている事から、運賃はかなり高額に設定されています。
(旅客輸送に関しては、かなりの高額運賃でも赤字の様です)

20.1kmの宇奈月~欅平間全線乗車では片道1660円(追加料金券を購入しない最も安い運賃)・通勤定期1ヶ月39820円(まず利用者はいないと思いますが、一応設定があります)と、首都圏の辺境・北総監獄(千葉ニュータウン)を走る「開発を止めた某鉄道」(元○○開発鉄道)や、宇奈月駅で接続し、如何にもローカル私鉄といった印象の社名を名乗る鉄道など、国内私鉄の中では極めて高額な運賃設定と言われる事業者(ただ後者は定期券割引率などの面では配慮しており、割安な通学フリー定期券の設定なども大いに評価できます)と比較しても、ダントツの高額設定と言えます。
(参考までに同程度の距離で運賃を比較した場合、前者は北総監獄中央~矢切間20.6kmで690円(通勤定期1ヶ月30320円)、後者は電鉄富山~南富山経由~横江間20.6kmで810円(通勤定期1ヶ月22120円)です。
ちなみにJR本州3社幹線で20km強の距離を利用した場合、普通運賃は400円(通勤定期1ヶ月11970円)となります。)

おまけに冬季は全面運休となり一部の軌道や架線が取り外されるなど、日本全国の鉄道を見渡しても他に類がないこの鉄道ならではの特異な点が幾つも見られるのは興味深いものです。

この黒部峡谷鉄道はナローゲージの路線だけあり、活躍する車両も極めて小柄な車両ばかりですが、その反面旅客列車は最大13両と言う私鉄最大両数を誇り、連結両数だけならば高速運転で定評ある首都圏の標準軌某大手私鉄をも凌ぐ程です。
(1両当りの輸送力はかなり小さいですので、1列車当りの輸送力は首都圏の標準軌某大手私鉄支線以下しかないのですが…)


しかも動力分散方式が殆どを占める日本国内の旅客鉄道においては珍しく、電化鉄道ながらも在籍する車両は機関車(電気・ディーゼル)と客車・貨車のみとなっており、旅客輸送は全て機関車牽引の客車列車という動力集中方式のみとなっているのも特徴です。


旅客列車を牽引する箱型の電気機関車は大抵重連となっている事から、機関車の両数も含めると、旅客列車の両数は日本国内のJR在来線最大両数にも匹敵する程で、車両のサイズは小柄で、速度も極めて低速(最高速度25km/h)ながらも、長編成の列車が峡谷を行き交う姿は壮観です。

 
旅客列車で用いられる客車は、以前からトロッコ車両を使用している事で知られており、この鉄道の名物ともいえますが、ごく一部の列車を除いて客窓や暖房装置を備えた客車との併結編成を構成しており、旅客列車でトロッコのみの編成は極めて少数派となっています。


このトロッコも現在旅客輸送で使用している車両は、黒部峡谷鉄道の車両にしてはそこそこの車体長と輸送力を誇るボギー車が使われていますが、過去には2軸車も旅客輸送に充当されていた様で、今日でも関電の事業用列車に充当される姿を見る事ができます。

MAKIKYUが黒部峡谷鉄道に乗車した際は、欅平からの片道利用で、雨が降る生憎の天候だった事もあって、名物のトロッコ車両ではなく、リラックス車両と呼ばれる要追加料金の車両に乗車したものでしたが、再び黒部峡谷を訪問する機会があり、もし天候が良ければこのトロッコ車両にしたいと感じたものでした。

またMAKIKYUが先月乗車したリラックス客車に関しては、後日別記事で取り上げたいと思います。


JR北海道・バーベキューカーに遭遇~5両編成で純粋な気動車は…

2011-11-13 | 鉄道[北海道]

先月末にMAKIKYUが北海道へ足を運び、上野駅から乗車した寝台特急・北斗星号を苫小牧駅で下車すると、反対側ホームには気動車列車の姿がありました。

苫小牧周辺の普通列車は、非電化の日高本線や室蘭本線岩見沢方面をはじめ、電化区間となっている室蘭本線苫小牧以西でも、非電化となっている東室蘭以西での運用も兼ね、一部列車が気動車で運転されていますので、気動車列車自体は非常にありふれた存在です。


使用車両も旧国鉄から継承したキハ40形が主力を占めており、MAKIKYUが反対側ホームで目撃した気動車列車も、キハ40形が先頭(室蘭方)に立っていましたが、2両程度での運転が多い苫小牧周辺のローカル気動車にしては妙に編成が長く、この時点で異様な雰囲気を感じたものでした。


中間には色や形が大きく異なる車両が連結されており、良く見ると釧路所属の貨車改造付随車・ナハ29000形が組み込まれていました。

この車両はバーベキューカーとして、道内各地の団体列車などで用いられるのですが、定期列車で運用される事はまずありえない神出鬼没の車両で、旅の始まりでいきなり凄い車両に偶然遭遇する事になったものでした。

ナハ29000形はキハ40形の後部に、ナハ29001とナハ29002の2両が連結され、この2両は貨車改造車である事や、こげ茶色の装いこそ共通するものの、良く見ると窓割などは異なっており、如何にも改造車といった雰囲気を漂わせていたものでした。

道外の訪問者が偶然こんな車両に遭遇する機会は滅多になく、貴重な機会とばかりにその後この列車が停車している反対側ホームへ出向き、車内へ立ち入る事は叶わなかったものの、窓越しにその様子を見る事も出来たものでした。


ナハ29000形の客室内は木製座席がボックス配置で並び、各ボックスには木製の固定式テーブルが設置されていましたが、貨車改造車で木製座席となると、乗り心地は凄まじいのでは…と感じたものです。


ちなみに木製テーブル上にはホットプレートと、焼肉のタレが用意されており、苫小牧駅から団体客を乗せた後は、恐らく車内で焼肉かジンギスカンでも…といった雰囲気でした。

苫小牧駅ホームで停車している列車の車内には、食材が入っていると思われる発泡スチロールの箱などが搬入されている姿も目撃したものの、この日はどの様なメニューが提供され、何処へ向けて走っていたのかも気になる所です。

またナハ29000形2両は貨車改造の付随車で、動力を持たない事もあってか、牽引はディーゼル機関車でも良さそうな気がしますが、先頭のキハ40形は機関車代わりの役割も果たしており、付随車牽引でパワーが要求される事もあってか、良く見ると苫小牧周辺のローカル輸送で使われる700番台車(北海道仕様車をワンマン改造した車両)などではなく、札沼線(学園都市線)で活躍している道内のキハ40系列では少数派の冷房改造車で、非ワンマン車の300番台でした。

この車両はエンジン換装を行い、出力向上を果たしている事も、バーベキューカーの牽引役に抜擢される要因かと思いますが、バーベキューカーは運転台もない事から、反対の札幌方にも気動車が連結されていました。

札幌方もキハ40系列で問題ない気もするのですが、こちらは苫小牧周辺では定期列車で充当される機会のない学園都市線用の客車改造気動車・キハ141形2両が充てられており、このお陰で5両編成中純粋な気動車は1両だけ、その後ろは貨車改造車と客車改造車と言う、どちらも元々は機関車に牽引される車両で編成構成されていたのも興味深いものです。

学園都市線は一部複線区間を含み、札幌近郊では各駅に自動改札機を設置してICカード利用にも対応しており、通勤時間帯には10分程度の運転間隔で都市型輸送を行っている路線にしては珍しい非電化線区として知られていますが、国内で同種の路線は、他には関東鉄道常総線位しか思い当たらない独特な路線です。

ただ来年の電化が確定しており、既に工事はほぼ終了して電化線区さながらの様相になっていますので、来年に電車運転が開始されると、名物とも言える主力の客車改造気動車も経年車である事から、かなりの数が淘汰される公算が高く、現在バーベキューカーではキハ141系列を含む5両編成での運転が定番となっている様ですが、今後もこの編成での運転が継続されるのかも気になる所です。


寝台特急・北斗星号で北の大地へ~今回は初めて途中駅で下車

2011-11-11 | 鉄道[北海道]

先月前半に関西電力の黒部ルート見学会参加で富山方面に足を運んだMAKIKYUですが、今度は先月末~今月初めにかけて北の大地・北海道へ足を運ぶ機会がありました。

北海道はMAKIKYUも数度は訪問した事があり、過去には青春18きっぷ利用による普通列車乗り継ぎや、苫小牧港発着のフェリー利用などで足を運んだ事もありますが、今は仕事持ちの身で運賃が安くても、所要時間が非常に長いこれらの利用は少々厳しいものです。


またMAKIKYUは幾ら早い・購入時期や方法次第では安いなどと言われても、空を飛ぶのは余程の事でもない限りは…という事もあり、今回往路で寝台特急・北斗星号を利用したものでした。


北斗星号は本州方の牽引機関車が新鋭EF510形500番台に変更されてからは初乗車で、日本国内でVVVFインバーター制御の電気機関車が牽引する客車列車に乗車したのも、先月末が初めてで、EF510形は少数派のメタリック色(カシオペア色)ではなく、多数派のブルートレインカラー(北斗星色)の機関車でした。
(隣国韓国では、VVVFインバーター制御の電気機関車が牽引する旅客列車に幾度も乗車しているのですが…)

 
その後海峡トンネルを跨ぐ青函間ではシングルアームパンタに換装されたED79形、北海道内ではディーゼル機関車のDD51形重連と、3つの機関車が交代で牽引を務める旅客列車と言うのも、客車列車自体が僅少の日本国内では非常に貴重です。

これに加え、今日の日本国内では北海道直通寝台列車のみとなっている食堂車が連結され、原則として毎日運転の定期列車ではJR唯一という点も注目です。


食堂車(グランシャリオ)は夕食(予約制)とパブタイム(21時以降・予約不要)、朝食の3時間帯で営業しており、予約制の夕食は7800円のフランス料理コースなどかなり値が張りますが、その後のパブタイムでは市価より割高なのは致し方ないにしても、予約制の時間帯に比べると手頃に利用出来ますので、パブタイムを狙って利用したものでした。


MAKIKYUは過去にも北斗星号を上下各1回ずつ利用した事があり、先月で3度目の乗車になりましたが、以前上り北斗星号を利用した際には、パブタイムでビーフシチューセットを注文しており、これと異なるメニューを…という事で、今回は煮込みハンバーグセット(2000円)を注文し、ソースがかなり濃厚な印象を受けたものでした。
(セットでは写真のハンバーグ・ライス(パンも選択可)・サラダに加え、食後にコーヒーor紅茶が付きます)

パブタイムは盛況で、見渡した限りではピザの注文が結構多い気がしましたが、結構な盛況ぶりで相席での案内となり、4名席全てが単独客相席という状況でしたが、相席の方との話も弾み、日頃なかなか堪能できない充実した食堂車の一時も過ごせたものでした。

係員の方に伺った限りでは、ビーフシチューとハンバーグは各9食ずつ積込との事で、滅多に売り切れる事は…という話でしたが、パブタイムでの食事物狙いであれば、なるべくパブタイム開始直後を狙った方が良さそうです。

 
ちなみに今回MAKIKYUは恒例の単独行動だけあり、独房(1人用個室ソロ)の利用も検討したのですが、3年程前にソロを利用した際、個室内でもタバコの匂いに懲りた事(空調ダクトを伝って煙の匂いが充満し、ホテル喫煙室の比ではありません)もあり、開放室B寝台(Bコンパート含む)以外は未だに全車喫煙可という列車ですので、今回は禁煙の開放室B寝台を利用したものでした。

カシオペア号(1人旅では極めて使い難い列車です)では半分程度が禁煙車と言う事も踏まえると、そろそろ複数両連結しているソロやデュエット(B寝台2人用個室)でも禁煙車を設定して欲しいものですが、道内昼行特急や東北新幹線が完全禁煙化された今日、こららとの差別化で敢えて禁煙車を少なくしているのかも気になる所です。

また以前北斗星号を利用した際には、上野→札幌と札幌→上野でそれぞれ上下列車の全区間を利用したのですが、今回は用件もあって途中駅の苫小牧で下車しており、苫小牧で下車した後の事は、後日別記事で取り上げたいと思います。


黒部ルート公募見学会(7)~欅平上部駅と車載エレベーター・専用列車

2011-11-09 | 鉄道[北陸]

MAKIKYUが先月参加した関西電力の黒部ルート公募見学会では、先日取り上げた高熱隧道を走る上部軌道に欅平上部駅まで乗車した後、停車場のすぐそばにある展望台に案内され、僅かな時間だけながらも、一般人が足を運ぶのは容易でない欅平上部からの山並を堪能する事が出来ます。


MAKIKYUが見学会に参加した日は、雨が降る生憎の天候だった事もあって、余り良い展望は堪能できなかったのは惜しい限りですが、関電関係者以外の一般人がこの様な所に足を運べるだけでも相当贅沢な話です。

ただ黒部ルート公募見学会では、黒部トンネル内の専用バスを除き、関西電力が通常事業用に定期運行している交通機関を乗り継いで利用する事もあってか、この展望台での見学時間はかなり限られてしまうのが惜しい限りで、すぐに欅平下部駅へ向かうエレベーターに案内されます。


このエレベーターは、黒部峡谷鉄道の終点・欅平駅と、仙人谷や黒部第4水力発電所(くろよん)の間の標高差が200m以上あり、そのまま鉄道を敷設するのは難しい事から、欅平駅近くの欅平下部駅から上部軌道の起点となる欅平上部駅間を結ぶために建設されたもので、荷物用の巨大エレベーターと、併設して人員用のエレベーターの2基が設置されています。

荷物用のエレベーター内には線路幅762mmの軌道が敷設され、上部軌道の車両1両を運搬可能な造りとなっており、国内最大規模のエレベーター(比較的最近まで日本一・現在でも国内2番目)としても知られていますが、この設備を昭和10年代の上部軌道建設時に造り上げ、今日まで健在と言うのは大したものです。

上部軌道の車両は車両限界の関係でかなり小柄とはいえ、鉄道車両1両を運べるエレベーターというのは、日本中を探しても他にどれだけあるのか…という代物で、くろよんの巨大なペルトン風車の輸送には耐えられないとはいえ、見学会参加者(MAKIKYUの参加日は29名)と関電の案内員を一度に輸送できる輸送力を誇ることから、見学会参加者は人員用ではなく、この荷物用エレベーターに案内されます。


このエレベーターでの移動時間は約2分程で、エレベーター内には非常時に備えて脱出用の足掛けが付いているのも特徴的でした。


欅平下部駅に着くと、ここは黒部峡谷鉄道の欅平駅構内と言っても過言ではないのですが、短い距離ながらも徒歩での移動ではなく、欅平駅へ移動する専用列車が仕立てられており、この列車に僅かな時間だけ乗車して、黒部ルート公募見学会はお開きとなります。

この専用列車は関電関係者用客車1両と、見学会参加者用客車2両に、上部軌道~下部軌道(黒部峡谷鉄道本線)間を直通する貨車1両を混成した混合列車で、客車は黒部名物のトロッコや狭い特別客車ではなく、転換式クロスシートを装備したリラックス客車タイプでした。


牽引機関車も凸型の古参電機という豪華版で、おまけに欅平下部駅を出てすぐにスイッチバックするなど、僅かな乗車時間の列車ながらも注目の存在です。

この専用列車で欅平駅に到着し、改札前で関電案内員の方から挨拶があった後、貸与ヘルメットを返却して見学会は終了となりました。

黒部ルート公募見学会は一般人の立入が制限される特殊な区域を駆け抜けるだけあって、団体行動となり見学時間も制限されるのは惜しい限りでしたが、様々な事業用交通機関への乗車は非常に希少で、MAKIKYUの様な乗り物好きの参加も多いとの事でした。

乗り物だけでなく、滅多に足を運べないくろよんの発電所内見学や、高熱隧道の異様な雰囲気を堪能できたのも貴重な体験で、遠方から足を運ぶ甲斐のある、非常に充実した見学会だったと感じています。

またこの見学会に参加すれば、殆どの乗客は来た道を返すしかないといっても過言ではない黒部峡谷鉄道を、全線片道だけ利用し、黒部ダム方の交通機関と合わせて周遊ルートを構成できる点も注目です。

黒部ルート公募見学会は毎年恒例になっているとはいえ、当選・参加は年に1回だけと限られており、それも抽選で当たった場合だけで日時も限られるなど、なかなか簡単に参加できるものではありませんが、機会があればまた来年以降も参加したいと感じたもので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も興味がありましたら、是非黒部ルート公募見学会への応募を検討してみては如何でしょうか?


黒部ルート公募見学会(6)~高熱隧道を走る上部軌道・路線編

2011-11-04 | 鉄道[北陸]

先日「MAKIKYUのページ」では、上部軌道などと呼ばれる関電上部専用鉄道の車両に関して取り上げましたが、今日はその続編として、乗車列車の停車した各停留所の様子などを取り上げたいと思います。

黒部第4水力発電所(くろよん)~欅平上部間を走る上部軌道では、関電関係者や黒部ルート公募見学会参加者を乗せた客貨混合列車は、両端の駅の他にくろよんから900m程進んだ所に位置し、上部軌道で唯一トンネルから顔を出す箇所でもある仙人谷停車場にも停車しますので、停車する停車場は合計3箇所になります。


MAKIKYUが参加した黒部ダム出発コースの黒部ルート公募見学会では、くろよんで発電所設備を見学した後、黒部第4発電所停車場から上部軌道に乗車する事になりますが、この停車場は上部軌道では唯一、車両のドア高さに合わせたホームが設けられています。

また上部軌道の列車は先日の記事で取り上げましたが、バッテリー式機関車が客車などを牽引する動力集中方式を採用しており、最後尾客車からの推進運転にも対応していませんので、機回し線も設けられています。

駅構内の軌道は機回し線部分も含め、全て路面電車の併用軌道の如く舗装されているのが特徴で、お陰で公募見学会参加時にはホームから軌道へ降り、停車中の列車脇を歩いたり、一般人はなかなか乗車機会のない上部軌道列車との記念撮影をする事も容易です。


そして黒部川第4発電所停車場から仙人谷方は、駅構内を出るとトンネル高さがかなり低くなっており、一般の旅客用鉄道とは大きく異なる関電の事業用設備ならではと言う雰囲気です。

以前有名な年末の紅白歌合戦で、くろよんからの生中継を行った某アーティストも、正確な出演場所はくろよんの発電所内ではなく、この上部軌道を仙人谷方に少し進み、トンネルが少し広くなっている所(100m位との事です)だったという話を聞いたものでした。

くろよん~仙人谷までの区間は、くろよん建設に伴って昭和30年代に建設が進められた区間で、1kmもない距離ですので、大した速度は出さない上部軌道の列車でも、あっという間に仙人谷停車場に到着となります。

仙人谷停車場は黒部川の橋脚上に位置し、列車の交換設備や側線などは存在しない棒線駅となっていますが、冬場の厳しい環境もあってか頭上は覆われ、側面も塞げる様になっており、このお陰で黒部峡谷鉄道本線(下部軌道)が一部軌道撤去・運休となる冬季でも、上部軌道は通年運行が可能になっています。


この停車場内も路面電車の併用軌道の如く足元が平滑となっており、関電関係者だけでなく一般人(専ら黒部ルート公募見学会参加者)の便宜を図っている事が伺えます。


ただホームの設置は無く、車両と停車場内に段差が発生するために、その気になれば何とか乗降できる高低差とはいえ、公募見学会参加者の乗降に際しては踏み台(ステップ)が用意され、これは欅平上部停車場でも同様です。

また黒部ルート公募見学会参加者の訪問を想定してか、ご丁寧にも駅名表や時刻表が掲げられており、日本国内の旅客営業を行っている下手なローカル線の小駅よりもずっと立派な雰囲気です。


時刻表を見ると上部軌道の列車は、MAKIKYUが乗車した8列車を含め定期列車だけで4往復、不定期列車も含めると6往復運行しており、インクラインに比べると運行頻度は低いものの、旅客営業を行っている鉄道でも、もっと運行本数の少ない路線が幾つも存在しますので、一般人が足を踏み入れるのはかなり困難な地を走る事を考えると、結構な本数が走っていると言えます。

 
ここで公募見学会参加者は一旦列車を下車し、黒部川にかかる橋梁上の仙人谷停車場から、黒部ルート公募見学会への参加を除くと、余程手馴れた登山家や関電関係者でもないとなかなか見る事ができない秘境にある仙人谷ダムや、周囲の峡谷景観を堪能し、カメラにその様子を収める事ができますが、MAKIKYUの公募見学会参加時にはあいにくの天候だったのは残念な限りでした。

そして仙人谷停車場を出発すると、欅平上部までの間はずっとトンネル内を走行し、途中に側線が設けられ、外へ抜ける横坑のある幾つかの停車場は全て通過しますが、この区間は戦時中の電源開発に伴って建設された区間で、素堀りとなっている箇所も多数見受けられます。

仙人谷停車場の欅平上部方は、有名な高熱隧道区間となっており、建設当時は約160℃もあったとの事で、建設にはかなりの困難を極め、厳冬の時期でも作業員に黒部川の冷たい水を掛けながら作業し、ダイナマイトの自然発火・爆発などで多数の死者が発生した事でも有名な区間です。


列車が仙人谷停車場に停車している際にも、欅平上部方のトンネルは硫黄の匂いと生暖かい湯気が出ており、硫黄の影響で金属の侵蝕劣化が著しい事が、上部軌道が電化できずにバッテリー式機関車を使用している大きな要因となっています。

この高熱隧道区間では軌道劣化が猛烈な勢いで進むために、2年程度で取替えを余儀なくされるほか、上部軌道の車両も寿命は15年程度との事で、一般の鉄道車両に比べると寿命は随分短いものです。

列車がこの高熱隧道区間に差し掛かると、客車は耐熱仕様になっているものの、関電の案内員が敢えて客車のドアを開け、高熱隧道に関して案内する事もあって、車内には温泉地に居るかの如く硫黄の匂いが充満してきます。

温度と湿度の高さもあって窓ガラスも曇り、上部軌道の客車名物とも言える車内外双方のガラスを拭き取れる手動式ワイパーの出番となります。

高熱隧道区間では現在、導水管が敷設されている事もあって、建設当時の超高温よりはずっとマシな状況になっていますが、今日でも平均で約40℃程度、MAKIKYUが公募見学会に参加した際には天候不順で湿度が高い事もあってか、関電関係者によると45℃程度はあるのでは…という話でした。


この高熱隧道を過ぎた後は、ずっと真っ暗なトンネル内を走り続けて欅平上部停車場に到着となりますが、欅平上部では欅平下部停車場との間を往来する車両運搬対応の巨大エレベーターが存在する他、上部軌道の客車や貨車の留置箇所も設けられています。


そのため乗降用ホームと機回し線のみで、比較的シンプルな配線となっている黒部川第4発電所停車場に比べると、駅構内の配線は複雑なものになっていますが、この駅構内も一般人の利用を想定し、足元は路面電車の併用軌道の如く平滑となっています。

欅平上部駅に到着した後は、一旦停車場から外に出て周囲の山並みを眺められる箇所へ案内され、その後巨大エレベーターに乗って欅平下部へ向かう事になりますが、この続きは近日中に追って別記事として取り上げたいと思います。


黒部ルート公募見学会(5)~高熱隧道を走る上部軌道・車両編

2011-11-02 | 鉄道[北陸]

先日「MAKIKYUのページ」では、先月MAKIKYUが参加した黒部ルート公募見学会参加時に見学した黒部川第4水力発電所(くろよん)の様子を取り上げましたが、黒部ダム出発コースではくろよん見学の後、上部軌道などと呼ばれる関西電力の専用鉄道に乗車し、欅平上部駅へ向かいます。

この路線の正式名称は「関西電力黒部専用鉄道」で、黒部川第4発電所駅~欅平上部駅間は6.5Km程の距離があり、途中には仙人谷・阿曽原・折尾谷・志合谷などの停車場が存在しています。
(ネット上では更に別の停車場も記されている場合がありますが、上部軌道客車内の案内では両端を含め、6停車場の名称が記されていました)

6.5kmの路線はほぼ全区間がトンネルで占められており、地上区間はくろよんから800m程の距離にある谷を跨ぐ鉄橋上に設けられた、仙人谷停車場のみとなっています。

しかもこの停車場すら冬季の降雪などに備えた屋根が設けられ、しかも側面まで塞げる設計となっており、仙人谷停車場では旅客列車が停車し、公募見学会参加者が実際に列車を降りて周囲の景観を観察する事もできます。

それ以外のトンネル内にある途中停車場は、貨車が停車している事もある事業用側線が設けられているだけで、旅客列車は通過となっており、その気になればこの設備を使用し、上部軌道での列車交換による複数列車運行も可能かと思いますが、現状では1列車が往復するのみとなっています。

線路幅は762mmのナローゲージで、欅平上部駅~欅平下部駅間の車載エレベーターを介し、黒部峡谷鉄道本線との車両直通が物理的に可能となっており、実際に貨車などの直通運行が存在しています。


しかしながら途中には有名な高熱隧道が存在するなど、トンネルの採掘だけでも大変な地帯を走る事も影響してか、トンネルの高さは極めて低く、人並みの身長でもトンネル内を歩くとすれば頭すれすれといった感じになり、身長約170cmのMAKIKYU(顔部分は画像加工しています)が列車と並んだ場合でも、車高と身長は大差ない程です。

そのためただでさえ小柄な黒部峡谷鉄道本線の車両よりも、更に小さい上部軌道専用車両が用意されており、この専用車両は小柄なだけでなく、高熱隧道区間を走行する関係で、耐熱設計の特殊車両となっているのが大きな特徴です。

上部軌道の列車は線路が繋がっている黒部峡谷鉄道本線と同様に、今日の日本では珍しく動力集中方式を採用しており、機関車が無動力の客車や貨車を牽引する編成となっています。

機関車は内燃式(ディーゼル)では燃料に引火して大事故になる恐れがあり、電化しても高熱隧道区間では硫黄による架線劣化が恐ろしい勢いで進行する事から、バッテリー式機関車となっているのが特徴です。


MAKIKYUが乗車した列車では、BB72という番号の機関車が牽引を努めており、上部軌道には最低でももう1両のバッテリー機関車が活躍している様です。


このバッテリー式機関車は、車高が限られ運転席内から立ち上がって移動する事もままならない事から、前後どちらの向きで走らせる場合でも運転席内を移動しなくても済む様に、運転席が進行方向に対して横向きに設置されているのも特徴的です。


そしてMAKIKYUが乗車した欅平上部行きの列車では、貨車1両の後に客車が5両連なっており、ハ171~175の車両番号が振られていましたが、その内欅平上部方2両は関西電力関係者向けとなっており、黒部ルート公募見学会参加者は「社客用」という札の付いたくろよん方3両に分かれて乗車する事になります。

見学会参加者の乗車車両も、1両当りの座席定員は10名程度しかない小柄な車両で、立ち上がると天井に頭をぶつける程の車両(上部軌道乗車に不慣れな公募見学会参加者は、ヘルメット着用必須です!)だけあり、各客車に1両ずつ乗車している関電の案内員を含めると、社客用客車はどの車両も皆満員といった状況になります。

以前は好きな車両に乗車する事ができた様ですが、その際に2車両で1席ずつ座席が残り、最後に乗車した夫婦での参加者が、無念そうに別々の車両に乗車する事になったケースが発生した事があるそうです。


この対策として現在、公募見学会参加者で同一グループは同じ車両に乗車できる様に、乗車車両は事前に割り当てられており、くろよん見学の際にシールが渡され、その色と同じシールの貼られた札の出ている車両に乗車するシステムとなっています。

個人的には任意の乗りたい車両を選べないのは、1人参加だったMAKIKYUとしては少々惜しい気もしますが、MAKIKYUが渡された赤色シールの札が貼られた車両は最後尾のハ171号で、なかなか乗れない上部軌道の様子を観察するのに絶好の車両だったのは嬉しい限りでした。

この客車は欅平上部行きでは進行方向右側のくろよん方向に、1箇所だけ手動式ドアが設けられており、このドア付近に関電の案内員が乗車して、列車の走行中に黒部ルートや上部軌道に関する案内を行います。

客車に乗り込むと、車内はロングシートとなっており、客車内ではまともに立ち上がる事もできない位ですので、当然ながら走行中に他車両との間を往来する事もできません(黒部峡谷鉄道本線の車両ですら、走行中に他車両との間を往来する事は不可能です)が、蛍光灯がグローブ付きとなっているのは、頭をぶつけても怪我や蛍光灯破損発生を防ぐためには必須と言えます。


客車は高熱隧道区間で窓が曇ってもすぐにふき取れるように、車内外双方で連動する手動式ワイパーが取り付けられているのも、一般の旅客営業用の鉄道車両ではなかなか見られない大きな特徴です。

こんな特殊な車両でも、製造は路面電車製造などで定評があり、黒部峡谷鉄道本線の客車製造も手がけているアルナ車両製で、客車内には同社が2004年に製造した事を示すプレートが貼られているのも注目です。

黒部ルート公募見学会では、6.5kmの距離で仙人谷以外の途中停車はないものの、この上部軌道に約30分程乗車する事になり、関電関係者から聞いた話では、速度は最高25km/hの黒部峡谷鉄道本線よりも遅いそうです。

また公募見学会参加者向けに事前に送付される「黒部ルート見学のしおり」にも「黒部ルートは、すべて地下トンネル区間です。各乗り物は工事用設備のため、一般交通機関に比べ、車内は大変狭く、また振動が強いため快適ではありません。」と案内されている程です。

それでも車内の狭さは致し方ないとしても、アルナ車両が21世紀に製造した客車が、整備された軌道を走り、大した速度を出さない事もあってか、日本国内の旅客用鉄道に比べれば居住性は劣るものの、以前MAKIKYUが中国四川省を訪問した際に乗車したナロー鉄道(勿論有償で旅客を輸送している鉄道です)に比べれば、車両の居住性や振動、軌道状態などははるかに良好と感じたもので、非常に特徴的でなかなか乗車機会のない路線・車両だけに、機会があればまた乗車したいと感じたものでした。

上部軌道に関しては、MAKIKYUが乗車した列車が停車した各停留所の様子などを取り上げた続編記事も、近日中に公開したいと思います。