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岩手県・三陸地方の車窓~震災から1年半が経過した今日でも…

2012-10-09 | Weblog

先月MAKIKYUは、昨年春の東日本大震災による津波によって壊滅的な被害を受けた岩手県~宮城県北部の沿岸部を、震災後初めて訪問したものでした。

震災後に被災地域へ足を運ぶのは、昨年夏に宮城県石巻周辺へ足を運んで以来2回目、先月この一帯に足を運んだ際に乗車し、BRT(Bus Rapid Transit)として仮復旧したJR気仙沼線気仙沼~柳津間に関しては、乗車した際の沿線の車窓なども取り上げていますが、気仙沼以北に関してはまだ取り上げていませんので、今日取り上げたいと思います。

岩手県沿岸部は津波による壊滅的な被害が発生し、過去に幾度もの津波による被害が発生している地域だけに、他地域に比べて防災意識の高い土地柄であるにも関わらず、家屋などの流失による経済的被害に加え、昨年の震災による津波の規模が桁外れだった事もあり、多くの人命も失われてしまった事は忘れてはならない事です。

この様な状況ですので、当然ながら交通機関にも多大な被害が発生しており、震災前は三陸沿岸をずっと鉄道を乗り継いで移動できたものの、現在過半数の区間で不通が続き、復旧見込みすら立たない区間も存在しています。

震災から約1年で完全復旧となったJR八戸線と、一部区間が震災から数日で運転再開となった事でも話題となり、現在は大半の区間(久慈~田野畑・小本~宮古)で運転再開となっている三陸鉄道北リアス線を除くと、全て不通となっており、三陸鉄道は再開見込みが示されているものの、残るJR山田線宮古~釜石間と、大船渡線盛~気仙沼間に関しては、復旧見込みすら未定と言う状況です。

それどころか岩手県内の不通区間は、鉄道乗車券で乗車可能な代行バスの運行や、普通乗車券利用時におけるバス振替すら行われておらず、路線バス(臨時路線含む)で定期乗車券などのみ振替対応という状況ですので、震災前に比べると、公共交通の便は非常に悪くなっています。

しかしながら震災直後には、不通区間が多数存在し、バス運行が行われている区間も1日2往復程度と、地元の学生などが利用する最小限度の本数が運行されているという区間も存在する状況でした。

そのため余所からの訪問者が、公共交通機関を乗り継いで三陸沿岸を移動するのは、極めて厳しい状況でしたが、今でも震災前に比べると著しく不便な状況である事は否めないとはいえ、状況は随分改善されており、MAKIKYUが先月三陸一帯を訪問した際にも、JR八戸線・三陸鉄道と路線バスを乗り継いで移動したものでした。


1枚目の写真は、震災から約1年を経てようやく復旧となった三陸鉄道北リアス線・陸中野田~野田玉川間の列車乗車中に撮影したもので、震災後に復旧工事を行った事もあり、新線の様な雰囲気を感じます。

北リアス線の田野畑以北は、津波で大きな被害を受けたのはこの1駅間だけとはいえ、車庫が久慈に存在している事などもあって、陸中野田以南の復旧までは、結構な時間を要したものでしたが、同区間の運転再開で岩手県北部を移動する際の利便性は大きく向上しています。


2枚目の写真は、田野畑駅近くにある三陸鉄道車両に似せて作った水門で、現在田野畑~小本間で運行している、岩手県北バスの臨時路線バス車中から撮影したものです。

この水門は結構な高さがありますが、それでも金属製の扉が破損している様などを見ると、震災における津波の威力が凄まじい事を示していると言えます。


3枚目の写真は、道の駅やまだ(岩手船越)~上大畑(釜石)間を結ぶ岩手県交通の路線バス(釜石駅経由)車中から撮影した、大槌町中心部の様子です。

震災前から岩手県北バスが運行している宮古駅~岩手船越駅(現在休止中)間の路線バスと乗り継ぐ事で、概ね2~3時間程度(乗継の待ち時間によって差があります)で岩手県三陸沿岸の主要2都市間を移動する事ができます。

この2つの路線バス車中からは、今もなお至る所で震災の爪痕を見る事が出来ますが、特に陸中山田・大槌・鵜住居一帯は壊滅的な状況でした。


4枚目の写真は、釜石~大船渡(盛)間を結ぶ岩手県交通の路線バス車中から撮影した平田(Heita)地区の仮設団地で、被災地ではここに限らず至る所で似た様な仮設団地が多数建設されています。

この路線バスは、両都市間を結ぶ三陸鉄道南リアス線が不通となっているために、震災後に急遽運行開始した路線で、朝の一本を逃すと昼過ぎまで便が…という状況ですが、それでも運行開始当初に比べると増便され、利便性は幾分向上しています。


5枚目の写真は、陸前高田~気仙沼間で乗車した、岩手県交通の一関~大船渡(盛)間を結ぶ特急バス車中から撮影した陸前高田市中心部の様子です。

陸前高田市は市街地が低地に位置していた事も災いし、昨年の震災では特に大きな被害が発生した地域の一つで、大槌町や宮城県の南三陸・女川両町と共に役場も全壊した程です。

昨年の震災では、福島・宮城・岩手県の沿岸部は、どの都市も皆相当な被害が出ており、茨城県や青森県などでも結構な経済的被害が生じていますが、MAKIKYUが見てきた被災地の中でも、役場が機能しなくなった自治体は、特に被災規模が…と感じます。


そして6枚目の写真は、これも陸前高田~気仙沼間で乗車した特急バスの車中から撮影したもので、県境を越えて宮城県に入った気仙沼市鹿折(Shishiori)地区の様子で、バスのガラスが着色ガラスとなっていた事もあり、少々青みがかかっています。

バスが走る国道沿いは、建物の土台だけが残存して壊滅状態になっているものの、その少し先には何事もなかったかの様に建っている家屋などもある、僅かな標高差で明暗が分かれる津波被害を象徴している光景と言えます。

宮城~岩手県境で人的流動が限られるのも影響しているのかもしれませんが、8月に増便(それでも震災前に比べると半分以下です)されても4往復しか走っていませんので、三陸沿岸で最も公共交通の便が悪い区間の一つと言っても過言ではありません。

陸前高田市の壊滅的な被害状況では、震災前の位置でそのまま鉄路を復旧させるのも現実的な話とは言い難いかと思いますので、大船渡線のBRTによる仮復旧か、さもなければ岩手県交通の特急バスを震災前程度の本数で運行し、普通乗車券や各種乗車券類も含めた振替対応を行うなど、陸前高田・大船渡方面への公共交通の早急な利便性確保を望みたいものです。

先月乗車した三陸鉄道や、定期券など利用者に対して振替輸送を行っている路線バスに関しても、近日中に別記事で取り上げたいと思います。