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井笠鉄道事業廃止・会社清算へ~一部路線は中国バスなどが継承

2012-10-24 | バス[中国]


岡山県西部の笠岡市に拠点を置き、同市内や井原市、そして県境を跨いだ広島県福山市など、俗に福山圏とも呼ばれるエリアで路線バスを運行する井笠鉄道株式会社が、12日に突如今月限りでの事業終了・会社清算を発表した事は、福山圏やその周辺の方をはじめ、他地域の方でもバス事情に精通している方などは、ご存知の方も居られるかと思います。

近年地方における公共交通を取り巻く環境は厳しく、鉄道の廃線→バス代替や大手・中堅バス事業者の倒産→民事再生法などの適用で新体制による再スタートといった話を、次々と耳にするのは非常に残念な話です。

それでもバス会社倒産の場合、民事再生法などの適用などによる新体制での再スタートにより経営陣や資本関係が変わっても、公共交通としての路線バス運行は従前通り…という事例が大半ですが、今回の井笠鉄道の件では突如事業廃止を発表して会社清算、地域の公共交通自体が…という異例の事態に陥っています。

井笠鉄道はかつて笠岡~井原間などで運行していた軽便鉄道に端を発する事業者で、鉄道廃止後は代わって鉄道運行区間の代替バスも運行するなど、永年に渡って岡山県西部や福山市内の公共交通を担い続けています。

MAKIKYUはこの地域に縁のある人間ではありませんので、同社バスには一度乗車した事があるだけですが、永年に渡って地域の公共交通を担ってきた功績は多大なものです。

近年では地方における公共交通では何処も苦しむ乗客減に加え、第3セクターの井原鉄道開業による乗客流出などもあり、地域の公共交通を何とかして維持しようにも遂に…と言った状況に陥り、今回の件では地方における公共交通の維持確保を民間任せにする今までのやり方には、限界がある事を示した一例にも感じられます。

事業廃止となる11月1日以降は、福山に拠点を置く両備グループの中国バスが、過半数の路線を大幅減便しつつも、他の既存交通機関では賄えない路線・区間を中心に暫定的な肩代わり運行を行い、他に一部路線は北振バスなどによる運行となりますが、井笠鉄道程の中堅事業者が突如事業廃止を打ち出すのは異例の事です。
(近年で比較的類似した事例としては、茨城県南部を運行していた茨城観光自動車などがあり、こちらは大半の路線を関東鉄道が継承しています)

通常路線廃止や運行事業者移管が行われる場合は、事前に乗車券の払い戻しや移管後の取り扱いなどに関しても発表があるのですが、今回の件ではかなりの数の定期券やバスカードなどが11月以降は…という話も出ています。

何ら罪のない乗客、それも通勤通学などで必要に迫られて日頃井笠鉄道バスを利用している乗客に、大きなしわ寄せが波及することも危惧されており、何らかの救済措置が取られることを願いたいものです。

この事に関しては11月以降の主たる事業継承先となる中国バスや、その親会社である両備ホールディングスのHPでも社長からのメッセージが掲載されていますが、事業者側の努力だけでは乗り越えられない部分も多い事ですので、行政側の姿勢転換も必須と感じます。

今回の井笠鉄道会社清算・路線廃止は、最も望ましくない形での路線バス終焉といえ、今後井笠鉄道に続く事業者が出ない事を願うと共に、運行事業者が変わっても地域に不可欠な公共交通が維持される事を望みたいものです。