電力と周波数の関係を表すのに、
ΔP=KΔf ・・・(1)
という式がよく使われる。これは、本来は非線形となる電力と周波数の関係を線形で近似したものであるが、この式が表すのは単純明快なことで、電力の供給が多くなれば、周波数が上がり、電力が不足すれば(ΔPがマイナスになる)、周波数が下がるということだ。これは回転機である発電機の特性を大きく反映している。
大容量発電機は回転機であるため、回転に伴う膨大な運動エネルギーをため込んでいる。もし電力が不足すれば、その運動エネルギーを吐き出して需給のバランスをとる。運動エネルギーを吐き出すから発電機の回転は落ちる。すなわち周波数が下がることになるのだ。また電力が余っているときには、逆に発電機が回転のための運動エネルギーを増やすことになるので、周波数は上がる。
さて、ここで(1)を導くため、次のような発電電力PG、負荷の消費電力PLと周波数fの一般的な関係式をとして次のようなものを考えて見よう。
F(PG、PL,f)=0 ・・・(2)
もちろんこの関係式を正確に決めるのは容易ではないし、それぞれの変数の値によっては、式の形が変わってくるかもしれない。しかし、今考えるのはある均衡点(PG0,PL0,f0)の周辺だけなので、その近辺で何らかの関係が成り立っていると思えばよい。今、PG0→PG0+ΔPG,PL0→PL0+ΔPL、f0→f0+Δfと変化したとする。このとき上式をTaylor展開して、2次以上の微小項を無視すれば、
F(PG0,PL0,f0)+∂F/∂PG・ΔPG+ ∂F/∂PL・ΔPL+∂F/∂f・Δf=0 ・・・(3)
均衡点(PG0,PL0,f0)では、(2)式が成り立つから、F(PG0,PL0,f0)=0となるので、(3)式は、結局次のようになる。
∂F/∂PG・ΔPG+ ∂F/∂PL・ΔPL+∂F/∂f・Δf=0 ・・・(4)
ここで、偏微分である係数は、均衡点の値を代入した定数になる。また線形近似できるなら、PGの増加する影響と、PLの減少する影響は、単に逆向きの電力変化に対するものを表しているだけなので、
∂F/∂PG=-∂F/∂PL ・・・(5)
またPGが増えれば周波数も増加するが、(4)式が成り立つためには、∂F/∂PGと∂F/∂fは逆符号でなければならない。そこで、
∂F/∂PG=-∂F/∂PL=a、 ∂F/∂f=-b・・・(6)
とおくと、(4)式は、
aΔPG-aΔPL=bΔf・・・(7)
となる。 ここで、
PG-PL=P(つまりΔPG-ΔPL=ΔP)、b/a=K ・・・(8)
と置けば、結局(1)式が導出できることになる。おそらく通常の電力系統工学の教科書には、結果としての(1)式だけしか書いていないと思う。理論的に導かなくとも、経験則として(1)式が成り立っていることが知られているというようなところもある。しかし、このように理論的に考えてみれば、頭の体操になってよいのではないだろうか。
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