文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:水戸黄門 天下の副編集長

2018-07-27 10:22:18 | 書評:小説(その他)
水戸黄門 天下の副編集長 (徳間時代小説文庫)
クリエーター情報なし
徳間書店

・月村了衛

 天下の副将軍水戸の黄門さま(実際には江戸時代には副将軍という役職についた者はなかったようだが)が、「大日本史」の原稿が遅れている著者のもとに原稿取りに。ドラマのように世直し漫遊記ではなく、原稿取り漫遊記。つまりは一種のパロディもの。

 おなじみ助さん格さんも出てくるが、こちらは佐々介三郎、安積覚兵衛とモデルになった人物の実名。つまりは介さん覚さんというわけだが、どちらも学究肌の人物で、ドラマとは違って、腕の方はさっぱりという設定だ。

 腕が立つのは、ご老公一行と原稿取りの旅に同行する、かげろうお銀ならぬ鬼編集長である鬼机のお吟。その正体は、ご老公が一番信頼する甲賀流忍者だ。

 この机のお吟というのは、つまりは「デスク」ということなのだろう。なお、作品中においては「編集」とは言わずに一貫して「編修」という言葉になっている。デスクというのは必ずしもすべての会社で同じ扱いではないのだが、概ね編集長のようなものだろうか。

 風車の弥七らしきものは出てくるが、こちらは将軍からご老公一同を助けるように命じられた公儀隠密。その本名が公儀隠密小頭衆筆頭中谷弥一郎だったり(ドラマで風車の弥七を演じていたのは中谷一郎)とパロディ精神がこんなところにも発揮されている。ただし柘植の飛猿やうっかり八兵衛なんかは出てこない。

 ご老公一行に立ちふさがるのは、大日本史をパクリ、豊臣に有利な歴史をつくろうとしている真田の姫君真田月読と配下のくノ一4人。パクリやスランプなどの語源には民明書房ネタが使われている。ロミオとジュリエットのパロディなんかもある。果ては、月読と中谷が互いに魅かれあったりとなんだか思いもよらない展開に。

 ドラマのような予定調和的な活躍はないが、そこかしこで笑えるシーンが満載だ。黄門さまが自ら原稿取りに行くというアイディアがなんとも面白い。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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