文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

桜の森の満開の下

2020-10-24 08:28:23 | 書評:小説(その他)

 

 桜には二面性がある。「願わくば花の下にて春死なんその如月の望月の頃」と呼んだのは西行法師だが、桜が満開の時は本当に美しい。しかしあっという間に散ってしまう、その潔さが日本人の心に響いたのだろう。桜は日本人の最も愛する花だと思う。

 一方満開の桜は、人々の心に不安を掻き立てるものでもある。梶井基次郎は、「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる」と言った。これはそんな二面性に満ちた物語だ。

 昔、鈴鹿峠のある山に一人の山賊が済み始めた。その山賊がある日一人の女を8人目の女房にするためにさらってきた。ところがその女はかなりアブナイ奴で、山賊の女房たちを、女中として使う一人を除いて山賊に殺させる。

 都に住むようになった山賊たちだが、女は人の首を欲しがった。首で遊ぶためだ。山賊は女のために沢山の首を狩ってきた。しかし彼はそんな生活がいやになり、山に帰ろうと思う。女も山賊についていくという。ところが、桜の森で満開の桜の下に来た時、事件が起きる。

 この作品は、以前紹介した「夜長姫と耳男」にも負けない驚くようなグロさなのだが、不思議な耽美に溢れている。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 桐谷さん ちょっそれ食うんす... | トップ | チャンピオンRED 2020年 12 月号 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

書評:小説(その他)」カテゴリの最新記事