なんくるない (新潮文庫) | |
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よしもとばななの描く、沖縄を舞台にした宝物のような4つの物語、「なんくるない」(新潮文庫)。
表題作の「なんくるない」は、女優もやっていたことがあるイラストレータの主人公が、心がささくれだった都会の暮らしから離れて、ゆったりした時間の流れる沖縄で、自分を取り戻していく物語である。夫と離婚し、書店では店員から理不尽な八つ当たりをされ、逃げるように沖縄に旅立った桃子は、たまたま立ち寄ったパスタの店でテツいう男性と出会う。バカだけど裏表の無いテツに主人公は魅かれていく。
「リッスン」は、ちょっとおもしろい作品だ。主人公は、島で変わった少女と出会う。14歳位のようだが、黒くて、薄汚くって、いかつい顔だけどわりとかわいい。でもひげがうっすらと生えているという、かなりワイルドな娘である。(いったいどんな娘や!?)彼女から、「木陰でセックスしてみない」と誘われるが、自分は綺麗な部屋でしたいからと、いっしょに那覇に行かないかと誘う。その娘は、すぐさま自分の誘いに乗らない主人公の股間を触って、「硬くなってるから、許すわ」とのたまう。これには噴き出してしまった。
これら2つは、出会いの物語と言っても良いが、後の2つは別れの物語である。「ちんぬくじゅうしい」は、両親の夫婦仲がおかしくなり、叔母夫婦に預けられた少女の話だ。自分の子供のように可愛がってくれた叔母だが、彼女が中三の時にガンで亡くなってしまう。
「足てびち」では、恋人と二人で旅した沖縄で出会った素敵な夫婦との思い出。また来ますと言って別れたのだが、おばさんの方が不慮の事故で亡くなってしまう。どちらも、胸が苦しくなるようなお話である。
沖縄のような南の島には、私たちが失ってしまった大切な何かがありそうな気がする。それは私たちの勘違い、単なるノスタルジックな思い入れかもしれない。それでもやはり、これらの物語は、沖縄という舞台があってこそなのだろう。
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