文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:なんくるない

2014-05-13 19:52:08 | 書評:小説(その他)
なんくるない (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


 よしもとばななの描く、沖縄を舞台にした宝物のような4つの物語、「なんくるない」(新潮文庫)。

 表題作の「なんくるない」は、女優もやっていたことがあるイラストレータの主人公が、心がささくれだった都会の暮らしから離れて、ゆったりした時間の流れる沖縄で、自分を取り戻していく物語である。夫と離婚し、書店では店員から理不尽な八つ当たりをされ、逃げるように沖縄に旅立った桃子は、たまたま立ち寄ったパスタの店でテツいう男性と出会う。バカだけど裏表の無いテツに主人公は魅かれていく。

 「リッスン」は、ちょっとおもしろい作品だ。主人公は、島で変わった少女と出会う。14歳位のようだが、黒くて、薄汚くって、いかつい顔だけどわりとかわいい。でもひげがうっすらと生えているという、かなりワイルドな娘である。(いったいどんな娘や!?)彼女から、「木陰でセックスしてみない」と誘われるが、自分は綺麗な部屋でしたいからと、いっしょに那覇に行かないかと誘う。その娘は、すぐさま自分の誘いに乗らない主人公の股間を触って、「硬くなってるから、許すわ」とのたまう。これには噴き出してしまった。

 これら2つは、出会いの物語と言っても良いが、後の2つは別れの物語である。「ちんぬくじゅうしい」は、両親の夫婦仲がおかしくなり、叔母夫婦に預けられた少女の話だ。自分の子供のように可愛がってくれた叔母だが、彼女が中三の時にガンで亡くなってしまう。

 「足てびち」では、恋人と二人で旅した沖縄で出会った素敵な夫婦との思い出。また来ますと言って別れたのだが、おばさんの方が不慮の事故で亡くなってしまう。どちらも、胸が苦しくなるようなお話である。

 沖縄のような南の島には、私たちが失ってしまった大切な何かがありそうな気がする。それは私たちの勘違い、単なるノスタルジックな思い入れかもしれない。それでもやはり、これらの物語は、沖縄という舞台があってこそなのだろう。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。
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