変化を受け入れることと経緯を大切にすること。バランスとアンバランスの境界線。仕事と趣味と社会と個人。
あいつとおいらはジョージとレニー




先日の話。
今の職場の連中が、内々に送別会を催してくれるという。嬉しいじゃ
ありませんか。ということで、おいらは休暇中だったんだけど、夜の
新宿に向けて出掛けた訳さ。
すると、だ。
最寄りの地下鉄駅では、黒山の人だかり。

あ、電車止まってるな。

どうやら、架線に何かが引っかかったらしく、運行できないとか。
隣駅から新宿方面は折り返し運転しているとのこと。
しょうがないから、隣駅まで歩きましたよ。
そしたら、そこはもう黒山連山状態。それを押して、何とかホームに
辿り着いたはいいけど、待てど暮らせど電車は来ない。挙句の果て
には「全線で運転を見合わせており、復旧の目処は立ってません」
とのアナウンスが流れる始末。

おいおいおい。

あのね、おいらはPASMOでこの駅に入場したのさ。この入場記録を
どーしてくれるんだよ。
つか、動いてるって言うから歩いて来たんだよ。
でも、辺りは人人人だらけ。文句を言う相手さえ見つからず、しょうが
ないからドサクサに紛れて外に出た。そして更にもう一駅歩いてみた。
そこで入場記録をキャンセルしてもらおうと思った次第。
ところが、当たり前のように次の駅も人だかり。
勢い余って更にもう一駅歩いたさ。そこからは、他の路線に接続して
いるので、それに乗りたかった。案の定、その駅も人だらけ。
ムカついたから、またまたドサクサに紛れてホームに入場。何かあり
まして? とすかした顔して接続線に乗ってやった。その線は振り替え
輸送の対象で、どえらい混みようでしたよ。
勿論、バスもタクシーも長蛇の列状態。エライ目に遭ったもんだ。

結局送別会には1時間遅れで出席したんだけども、急いで歩くこと3駅
分。そのせいなのかな、腰痛が激しくてですね、困ってます。
3駅分も歩くなら、1駅分位を他の方向に歩けば別路線に乗れたものを。

教訓。
トラブル周辺には近付くな。確実な代替手段を選択せよ。

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 <目次>      (今回の記事への掲載範囲)
 序 章         掲載済 (1、2)
 第1章 帰還     掲載済 (3、4、5、6、7)
 第2章 陰謀     掲載済 (8、9、10、11)
 第3章 出撃     掲載済 (12、13、14、15、16)
 第4章 錯綜     掲載済 (17、18、19、20)
 第5章 回帰     掲載済 (21、22、23、24)
 第6章 収束     掲載済 (25、26、27、28)
 第7章 決戦      ○  (33:5/6)
 終 章          未
----------------------------------------------------------------
第7章 《決戦》  (続き 5/6)

 悠然と立ちすくしているだけに見えた隊員は、目にも停まらぬ素早さで肩にかけた銃を持ち替え、確実に相手を倒すニ連射を加えてから地面に伏せた。リーダー役の少年は、文字通り瞬きをすることしかできなかった。二発の銃弾は、彼の腹部を貫通して行った。そこで彼は、実戦訓練の時に教官が怒鳴っていた台詞を思い出した。
「撃つ時は相手の腹を狙え。それも必ず二発だ。どちらかが命中すれば良いし、両方当たったら留めになる。腹を打ち抜かれると相手は前屈みになるから、断末魔の反射で引き金を引いたとしても、弾はこちらに向かって来ない。地面にめり込むだけだ。」
その通りであった。地面に顔面から崩れ落ちる過程で、彼は引き金を引いていたが、銃弾は空しく地面を穿っただけであった。その僅かな間に、親衛隊の隊員からは次の攻撃が開始された。倒れ込むリーダ役に駆け寄ろうとしていた少年が、次の標的であった。そこでやっと少年達から反撃の銃声が響きはじめたが、既に錯乱した彼らに狙い等ない。がむしゃらに放たれる銃弾が隊員を捉えることはなかったが、彼の標的は確実に的を射て行く。あっという間に少年達の戦意は消失し、銃を置いてその場で立ちつくしかなかった。降伏を認めた隊員は注意深く敵に歩み寄り、そこではじめて少年達の容姿を確認した。王子の取り巻きである。彼は一瞬の動揺を見せたが、事の次第を隊長に報告するに滞りはない。無線で報告を受けた隊長は、自ら少年達を連行しに来た。王宮の中で、夜中に、幽閉されている王子を標的に、武装集団が進入したのだ。これ以上は無いという程の大事件である。当事者にその自覚があったかは疑問だが、隊長が事の重大さを理解していたのは当然である。ここ数日、王宮やその付近では過去に例を見ない大銃撃戦が繰り広げられる可能性があった。王室での親衛隊と王室憲兵の睨み合い然り、軍情報部での情報部長と親衛隊隊長のやり取り然り。その他にも、ルナ派形成の過程において、そのような危険はあった。しかし、それらは全て現実にはならなかった。それは、流す血は最小限でなければならないという隊長の信念故であり、唯一の例外は明日の武装蜂起の時だけに限られるべきだったからだ。それがこんな所で、それも子供の犠牲者が出てしまった。このやるせなさの幾らかでも実行犯の少年達には理解が及ぶだろうか。無理だろうし、それは銃声だけを聞いていたこの地区の人々とて同じだろう。本来ならこの地区を親衛隊の武装隊員に封鎖させ、徹底した緘口令を出すところである。しかし、タイミングが悪かった。隊員の殆どは武装蜂起に向けて出払っており、地区全体を封鎖するための人手がいない。止むを得ず、少年達と隊員に射殺された死体を王子とは別の部屋に監禁した。そして王子の部屋を哨戒していた隊員にその部屋の哨戒も命じ、隊長はその場を去った。時間が無かったのである。真夜中だったために、この地区の人々は何が起こったのかは知らない。しかし、王子が囚われている所で銃撃戦があったのだ。野次馬と化した人々から立つ噂は概ね予想がつく。そしてそれは、夜があける前の段階で既に面白おかしく語られ、広がって行った。夜があけた時、相変わらす不動の姿勢で哨戒する親衛隊の隊員の周囲は、あたかも昨晩と同じ状態のようになっており、銃撃戦があった痕跡は見当たらなかったし、当事者は誰もが静かであった。野次馬達とは反比例して。王子は事の次第を知らないので、騒ぐはずもない。新たに監禁された少年達も別の部屋で大人しくしている。彼等ははじめて『死』を身近に感じたのだ。ずっと喜怒哀楽を共にして愛憎を振りまき、さっきまで夢を語り絶望を嘆いていた仲間が、人間から蛋白質の塊に変わる瞬間を見てしまったのだ。泣き声さえ上がらなくとも無理は無いだろう。この静けさが、人々の好奇心を一層高めてしまった。噂の核心は『王子はもうここにいない。王子は脱出した。』であった。そして、親衛隊が何事も無かったかのように取り繕っているように見えるということが、噂に信憑性を与えていた。この噂の意味するところ、影響はとてつもなく大きい。相手は王子であり、場所は王宮の中なのである。

 ブリタニアから来た親衛隊編隊が王宮に放った爆弾は、絶対値としては決して大型ではないが、王宮内で炸裂したものとしては歴史上最大であろうもので、それは中庭の池に落ちて爆発した。その炸裂音は、王国の首都一帯に猛烈な爆風とともに広がっていった。動揺する人々をよそに、軍施設の中ではちょっとした争いが起きていた。ルナのシンパが武装蜂起したからである。数では少数だが要所要所に配置されたルナのシンパは、効果的に周辺を征圧していった。そして、ルナのシンパとそれ以外の者達の勢力が拮抗した時点で、争いが止んだ。争いの継続が総力戦を意味し、王国の壊滅に繋がると両者が判断したのである。親衛隊は王室を押さえ軍の統帥を拘束したが、王国の軍では司令官の消失が戦闘能力の崩壊を意味しない。王国軍は、優れた指揮系統とバックアップシステムを備えているのである。そして、代替の司令官として指揮を任された将軍は、事態の収束を急がないことにした。親衛隊がクーデターを起こしたのは間違い無い。しかし、古来より親衛隊のクーデターというものは、より相応しい指導者を選択する一つの手段なのである。つまり彼等の主張は、現指導層に問題有り、なのだ。必然的に、その向こうにはルナの影が見え隠れする。ドーバー戦役の英雄であり、理不尽な退陣を国のために躊躇無く受け入れた義人、そんなルナに心酔する兵士は、現在においても少なくはないのだ。新司令官は、結論を急ぐ余りに拙速に走ることなく、何らかの結果が出てから行動を起こしても良いだろうと判断したのだ。
 この一事を指導した親衛隊の隊長の判断も、結果的には同じ行動に繋がった。クーデターを起こす側として、短時間でより多くを制圧するのが正道だろう。しかし、国の将来を憂いで行動を起こした彼にとって、同国の者同士の争いは最小限に留めたかったのだ。ルナが作戦を成功させて戻れば、この争いは必然的に収まる、そしてそれは必ず成されると彼は考えていたのだ。根拠らしい根拠は無かったが、確信していた。
 実際には、ルナ派の武装蜂起は少数に過ぎ、そのままでは制圧される可能性は充分にあった。ところが『王子が脱出した。』という噂は、この時には王宮内から外にまで広がっており、必然的に『王子、起つ』として受け止められていた。王子がルナに心酔しているのは有名であったし、ルナは王子をかわいがっていることを隠していない。そんな事実が「王子派はルナ派を支援する。」と人々に思わせたのであり、それが国軍の抵抗を止めたのである。『王子派』など本当は存在しないのだが、それだけにその勢力は計り知れず、不気味であった。国軍司令官は、ルナ派との衝突が『内戦』に繋がると考え、戦闘の継続を迷った。そして、王子派の登場で『保身』のためにも膠着させることに決めたのだ。
 少年が若い命を投げ出したという事実。そのこと自体は批判を免れないだろう。彼等は浅はかであったと。しかし、結果的にとは言え、そして一時的であったかもしれないが、少年達は内戦を抑止したことにはなるまいか。短絡敵であろうと、あるいは迂闊であろうと、その心根が純粋であった場合、そこから導き出される行動からは学ぶべきことが満載されているものだ。後年、その時代の価値観によって批判も評価もされようが、いずれにせよ人の活動には意思がある。結果の良否とは別の次元で、それは受け止めるべきだろう。少年を射殺した親衛隊の隊員は、少年達の銃に込められた弾が殺人用ではなかったことを後から知って、残りの生涯を苦しみ続けることになる。彼の苦しみは、人が分かち合わねばならない最も大事なものではなかろうか。

 高空から大地を凝視していたルナは、風防の外を流れる風からリメス・ジンの匂いを嗅ぎ取った。異様な殺気とともに、陸と海の境界線を越えて来る怪鳥は、一機しか見当たらない。編隊を組んでいるはずだが、僚機は見えなかった。恐るべき破壊力を持つリメス・ジンの兵器は、一端発動してしまうと僚機までをも破壊してしまう。つまり、攻撃圏内には味方機を配置できないという宿命を負っているのだ。これは迎撃隊にとって有利な条件である。ルナ隊は、タイガー・ルナの性能的限界点まで上昇し、リメス・ジンの上空に移動して機会を待った。そうこうしている内に、怪鳥の目は西ケルト公国の宮殿を捉えてしまった。そして、何の躊躇もなく、稲光に似た最終兵器を発動させたのである。

<次回、最終話にして初めて章題と内容が一致!>

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キャンプやら温泉やらで忙しいお休みが終わった。
終わってしまった。
毎度のことながら、終わってみるとあっけないもんだ。
今回のトピックスは、燻製。
燻製器を借りて、さくらのチップを買い込み、ベーコン(ブロック)と
チーズとラム肉を燻してみたんだ。
マジ、まいう~。
ま、このネタはいつか機会を作って記録するとして。

今回の温泉もいつもの「満願の湯」。
毎度思うけど、ここは名湯だよ。
秩父にも温泉が多いし、入浴施設がどんどん増えているように思う。
でも、他に行こうという気になかなかなれない。非常に満足度の高
い施設です。これでスタッフの態度が良ければなぁ。あとカラオケを
何とかしてくれたらなぁ、とは思うけど。

終わった休みに未練たらたらのおいらは、スーパー銭湯にも出かけ
てみた。天然温泉が出ているという。700円也。これが悪くなかった。

という訳で、お肌すべすべな現在。
英気を養いつつ、花粉症と戦いつつ、ガソリン代が戻って助かったり
もして、やっぱり地方の星空はとても美しいことを思い知った。

そうだ、今度はもっと星空に拘ってみよう。随分前になるけど、会津
の方で観た星空が思い出される。星が見え過ぎて星座が分からな
い状態。あんな夜空を観に行こう。

次の目標ができた。
でも星空は冬に限るから、来年かな。

待ち遠しいな。

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今年も採って来た。

ピンボケだけど、土筆の群れ。

毎年同じ場所で採れないのは何故だろう?
今年の収穫量は極端に少なく、去年の2割程度かな。

油で炒めていただきました。

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逆恨みも甚だしい。
斑鳩さんとしては、復讐される覚えなどないというのに。

という訳で、早速リベンジして来た。

今度は「斑鳩」の文字が若干は読める位置から撮影。待ち行列に並んで、
この位置に進むまでおよそ30分。この後更に30分後に食べられた。

旨い。
確かに旨い。
優しい感じのスープと、懐かしみを覚えるチャーシュー。細麺好きのおいら
でも、この組み合わせならやや太の麺も納得。
これはリピートしちゃうってもんだ。

満足でした。

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行って来た♪

光ってって全然分かんないけど、九段下のラーメン屋「斑鳩」さん。
滅茶苦茶旨いらしい。

・・・らしい?

だって、、、大行列しててさ、並ぶ元気が無かった訳さ。
また、次の機会ということで。

わざわざ店の前まで行って、
   そのまま帰って来るようなお馬鹿さんは何処のどいつだい?

 おいらだよ。

近日リベンジ予定。

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夢を見たんだ。

都会の街並みがウチの窓から見渡せる、という設定だった。
曇り空な午後三時頃、街に超巨大なイノシシが歩いているではないか。
どれくらい大きいって、ウルトラマンサイズですよ。
正義の味方は出てこなかった。
ウルトライノシシはのしのしと歩を進め、高層ビルに激突しそうになった
刹那、ちゃんと避けるのね。
なんだ、悪いヤツじゃないんだ。
ところがおいら、逃げている。隠れている。
どうやらですね、ヤツに喰われることから逃げている様子。

喰われてなるものか。

巨大だけどヤツは凄く敏捷で、目が合おうものなら喰われるんですよ。

場所が変わって港町。巨大な魚も現れていた。
戦々恐々なおいらは、逃げて隠れて。
ただそれだけの夢でした。

目覚めはあんまり良くなかった。
人間で良かった。
喰われる恐怖って、あんな感じなのかな。
踊り喰いとかされたらヤだし。
新鮮ですよ、刺身ですよ、なんてメにも遭いたくない。
オスはメスより不味いですから割り引いときますよ、とか。

何度もここに記録したけど、命を喰らって生きている。そのことを改めて
思い出させる恐怖だった。

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 <目次>      (今回の記事への掲載範囲)
 序 章         掲載済 (1、2)
 第1章 帰還     掲載済 (3、4、5、6、7)
 第2章 陰謀     掲載済 (8、9、10、11)
 第3章 出撃     掲載済 (12、13、14、15、16)
 第4章 錯綜     掲載済 (17、18、19、20)
 第5章 回帰     掲載済 (21、22、23、24)
 第6章 収束     掲載済 (25、26、27、28)
 第7章 決戦      ○  (32:4/6)
 終 章          未
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第7章 《決戦》  (続き 4/6)

 西ケルト公爵の別荘では、公爵からルナに王国の宣戦布告が知らされていた。
「予想を越えるものではないと思うが、どうだ、若造?」
「確かに。これ位の内容だと思っていたさ。」
「で、王国の軍は何処に向かう? やはりローマか? それともまずは神聖同盟か?」
「ついさっき、情報が入った。はっきり言おう。奴等はここに来る。」
「何だと?! 同盟を申し込んだ我が国に攻撃すると言うのか! さては貴様、我がケルトの同盟者が実は貴様達であることを漏らしたな!」
「そんなことをして何になるってんだ? 奴等はケルトを焼き払うことで、帝国と神聖同盟に脅しをかけようとしているんだ。」
「脅しをかけるだと? そんなに兵力に余裕があるとは思えん。」
「いや、あるんだ。この前、怪鳥の話をしただろう? それが編隊組んでやって来るそうだ。王国は、あんた達を抹殺することで絶対的な兵力を見せつけるつもりということだ。」
「我々は同盟者だぞ? そんな暴挙が許されるわけがないだろう!」
「王室の連中に聞いてくれ。俺に分かるのはここまでだ。それより、今は事態の打開が優先される。」
「あいかわらずの横柄さ、虫唾が走るわ!」
「お互い様だってことは言っておくぜ。ただ、お互いがお互いを必要としているってことを俺は忘れていないがね。……爆撃隊の目標は宮殿だろう。人々を避難させておくんだな。」
「やっておく。間に合うか……。」
「やらないよりましさ。」
「守って見せろ、このケルトの地と人民を。」
「そのつもりさ。」
言い残してルナはタイガー・ルナの格納庫に急いだ。情報によると、十機の怪鳥 ~リメス・ジンと言うらしい~ が王国を飛び立ったと言う。後は王宮の親衛隊の首尾を信じるしかあるまい。
「上がるぞ! 着いて来い!」
ルナの一声の元、ルナ隊のタイガー・ルナが離陸して行った。

 時を同じくして、ブリタニアを飛び立った親衛隊編隊が、ブリテン王宮に接近していた。親衛隊の隊長は軍情報部の取り込みに成功していたが、その後も積極的に行動を続け、軍内部に相当数のルナのシンパを獲得したのだ。そして、王室が親征を以って大陸侵攻作戦を実施するとの情報から、国王不在の間に王室占拠の作戦を進めていた。ブリタニアからの親衛隊編隊が王宮内の中庭の一つに爆弾を投下するのを合図に、ルナシンパの各部隊が武装蜂起する算段になっているのだ。
 ここに至るまで、王室に残った親衛隊の道のりは平坦ではなかった。一つづつ乗り越えて来たのだ。最大の障壁は、親衛隊は常に王と行動を共にする、ということであった。親征なのであれば、親衛隊の編隊もリメス・ジンの編隊に同行しなければならない。もとよりルナの元にその過半数が去った今、王の護衛に充てられる機数からして少なく、最大限を護衛に付けたとしても数が足りない。そこで、王の権威を国内に示すために一部を王宮に残す、という屁理屈で誤魔化すことにした。情報部による情報操作も手伝って、それは上手くいったようである。王の編隊に同行する親衛隊は、実は国王座上機に侍る一個中隊だけなのである。しかし、国王座上機を特定させないように、何機かのリメス・ジンを親衛隊の中隊に護衛させるべし、と情報部から上申させたのだ。影武者は親征の王道であり、一機あたりの攻撃範囲が広いリメス・ジンは、編隊とは言っても各々が目視できる距離にはいないという事実もあって、同行する親衛隊の数に疑いを持たれることは無いはずである。各々のリメス・ジンは、自分達以外の他の機体に護衛が付いていると思うことだろう。これでこの問題は解決したかに見えたが、ことはそう単純ではない。そもそも人数が少ない親衛隊の隊員、その一部が王の護衛に飛び立ってしまうのだ。武装蜂起を指揮する者が足りなくなってしまった。親衛隊の隊長が下したこの問題への回答は、いたずらに数を頼るのではなく、数は少なくとも意思と団結の強い集団の形成であった。忠誠が不安定な烏合の衆よりも、高い志に支えられた強固な集団による確実な蜂起を選択したのだ。内戦状態に陥らせるつもりは無いわけであり、それを許す状況でもない。ルナが帰還できる環境さえ整えれば良いのだ。隊長の判断は、クーデターという混乱が必至であり且つ各々の局面において個々に判断が求められる行動において、勢力を分断したり細分化する要素は少ない程望ましい、であったのだ。
 飛行禁止区域である王宮周辺に向けて、ブリタニアから来た親衛隊の編隊は悠々と飛び続けた。親衛隊の編隊が飛んでいることに誰が異常を察知し得ようか。むしろ、国王不在の親征中にあって、王宮上空から威圧するために編隊飛行しているものと誰もが思った。王宮を預かっていた軍の統帥は、親衛隊の飛行計画を自分が知らないことを不信には思ったが、親衛隊の暴走程度としか考えなかった。国王直轄であるが故に、親衛隊の暴走はよくあることなのだ。統帥が何かおかしいとやっと感付いたのは、編隊から一機が離脱して爆撃コースを取った時であった。その段階で撃墜指令を出した統帥には、類稀な才能があったと言うべきだろう。しかし、時速数百キロメートルで降下し始めた航空機が、腹に抱えた爆弾を手放すまでに要する時間では、統帥の撃墜指令は官僚組織機構のニつ目辺りに届くのがやっとであった。
 
 この前日の深夜に、王宮内では一つの事件が起きていた。市街地と言える地域に存在する施設としては広大な王宮の中で、そのはずれに平和そのものの地区がある。そこでは、国が戦時体制に突入したという雰囲気は殆ど感じられない。王族の子息とその取り巻きが暮らす一画である。この国の教育熱心なことは、二千年の昔から引き継がれた美徳とされており、成人と呼ばれる年齢までは様々な教育が施されるのだ。老師と呼ばれる教育係と王子、そして王子の取り巻きがつい先日まで授業を受けていたのだが、雰囲気は平和であっても、親衛隊による王子捕囚以来はあらゆる教育カリキュラムが停止していた。つまり、リーダーである王子を取り上げられた少年達は、何もすることがなくなってしまったのだ。血気盛んな少年が時間を持て余した時、彼等がリーダーを奪還したいと考えてもそれは無理もない。誰からともなく王子の開放が言い出され、それはとても自然なことのように思われた。彼等は実戦訓練も用兵学も幾らかは学んでおり、その知識を揮いたいという欲望もあったのだろう。そして何よりも、かつてローマの地でブルータスの襲撃からカエサルを守った英雄がいたが、男の功績は今なお語り継がれていることを学んだばかりの彼等が、その栄誉に憧れたということなのだ。戦闘訓練用に用意されていた武器の奪取は、瞬く間に成し遂げられた。管理・監督する立場の老師が、王子の捕囚によって意気消沈してしまっており、事実上は武器庫までもが無警戒に陥っていたのだ。この地区の平穏さがそのことへの危機感を喪失させてもいた。武器を手にした少年達は、本来なら成されるべき綿密な計画や地道な準備よりも、正面突破による華々しい方法を選んだのだが、それは少年たる所以だろう。身を呈することが、救出劇に彩りを添えると信じて疑っていないのだ。武器の調達が難なく成功したことも、彼等の気持ちをより昂ぶらせたに違いない。しかし、闇夜の先に建つ王子が囚われてる建物の前で哨戒しているのは、教育係ではない。親衛隊の隊員なのだ。確かに、ルナ派の武装蜂起の直前であり、親衛隊も充分な哨戒要員を配置できない事情がある。事実、扉の前には一人の隊員が立っているだけであった。それでも、彼はプロである。怪しさや危うさを嗅ぎ付ける嗅覚も、動作の素早さも、そして射撃の腕も、少年達の比ではない。彼は瞬く間に押し寄せる敵の数を把握し、指揮系統を探り出してしまった。家系や年齢と性格から自然に構築された仲間内のヒエラルキーをそのままに、王子の代理としてリーダ役を演じる少年は、中腰に身を屈めて彼等が組織する部隊の中央を進んでいた。親衛隊の隊員としては、闇夜のために迫り来る敵が子供であることは分かりようがない。ただ、その動作から稚拙さだけを読み取っていたのだが、彼にとってそれは、単独で戦わねばならない状況で相手に恵まれた、ということでしかなかったのである。

<そろそろ纏めに入らないと。>

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はい。
ホワイトデーから1週間が経ちました。
何時もながらに記事にするのは今更だけど、当日はちゃんとやりましたよ。

買いました。
揃えました。
贈りました。
感謝の気持ちを込めて。

ありがとう。

選ぶ時間が年々短くなっていくさ。
ははは。

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「華麗なる一族」は、どのあたりが華麗だったのかな。
儚さを以って華麗と言ったか。
キャストの可憐さを華麗と表現したか。

原作を読んでませんが。
凄まじく暗いハナシだったね。
最後まで救いの無い物語って、何を伝えたかったのかな。
おいらは未熟者なので、よく分りませんでした。

しかし、木村拓也君。
あなたは稀有な人ですね。
ド素人なおいらでも、素敵だと思いましたよ。

頑張ったね、拓やん。

何はともあれ、長谷川京子さん。
あなたの美しさは反則ですよ。

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今回は、体にいい高バランス食。
旨いです。光源の問題から発色悪くて、不味そうだけど。

レシピ。
 大根を短冊に切る。
 人参も短冊に切る。
 マッシュルームをスライスする。
 ブロッコリーのスプラウとを用意する。
 これらを
 市販のローストビーフ(薄手のもの)を広げて、中に包む。
 胡麻油を熱してコンソメを溶かしたものをソースとする。
 あとはソースをかけてオシマイ。
 写真のは、円状に並べて、真ん中にベビーリーフを盛った
 状態。
想像通りの味でした。おいらは好きです。
ビールにも焼酎にも合います。
ソースをオリーブオイルとバジルソルトに変えて、パルメザン
チーズをたっぷりふりかけてもいいです。
この場合は、ワインにも合います。赤も白もOK。

肉の代わりに魚でもいいし。オリーブオイルなら白味魚がベター。

飲み屋でも始めようかな。

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まだまだ人生半ばだと思っているけど、これまでに確信したことって
どれくらいあるだろうか。
根拠は無くてよろしい。証明とかもしなくていいさ。
必要なのは【心から信じている】ということ。
勿論、ちゃんと論理的に理由が説明できてもいいんですよ。それに
越したことは無い。

でもね。

本当に信じ得るものって、最初から疑わないのだよ。
つまり、証明とかできたりするものって、最初はちょっとは疑ってた
はず。色々調べたり考えたりして、信じるに足ると判断したものだけ
が残るんだ。でも、正直に言うなら、こういうプロセスを経たものって、
心の一番奥底では未だ疑っていたりするんじゃないかな。

別に構わないんだけど。

前置きが長くなったけど、おいらにも幾つかの確信がある。
その中の一つ。

『努力は報われる。最良のタイミングで。』

これは絶対の真理である。惜しむらくは、タイミングが選べないという
ことかな。努力中の段階では「今すぐ報われて~」と思うもんだけど、
問屋さんはなかなか卸してくれない。

後から振り返ってみると、なるほどと思う。必ず思う。いい時に結果が
出たんだね、と。
ちゃんと自分が納得できるだけの努力をしていれば、の話だけどね。
だから、何某かの結果を求めている時、決して焦る必要は無い。絶対
に結果は伴う。

さてさて。

このところ、努力らしい努力してないなぁ。
つかさぁ。次男坊なおいら、そもそも努力知らずなんじゃねーの?
それなりの結果が出るかもしれない。ま、長い目で見ると一つの通過
点でしかないけど。

去年は3つの願をかけた。
ことごとく望む結果を得なかった。一時的にせよ、本心はかなり凹んでた。
通過点だと考えること、今は未だその時じゃないんだと思うこと、結構
大変だったけど、それは時が解決して。
凝りもせず、今年も同じ夢を持つことにしてみた。
慌てず、騒がず、寝て待とう。 

家宝よ来い!

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合ってるとかさ。
間違ってるとかさ。
そういうんじゃなくて。

レベルの高い低いでもなくて。
立ち位置が違うというか、土俵が異なるというか。
プロトコルが合わない、としか言いようがない人がいる。
極めて不愉快だけど、お互い様なんだろうね。

非常に不安で悲観的な近未来。
おいらの精神状態は今、とても不安定な状態にある。
なるようになるんだろうけど、やっぱり面白くない。

別にいいけど。

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久しぶりにカレーを作ってみた。
香辛料を揃えて具財に拘って、という以前のような凝り性的カレーでは
なく、至ってシンプルなもんです。
これがだ。

我ながら、旨い。

驚くほど旨かった。確かに、一手間二手間かけましたよ。
野菜が中心なポークカレーなんだけど、細かく刻んだり、摩り下ろしたり、
入念に炒めたり。手間暇かけまくり。
通常の3倍以上の野菜を投入したのと、隠し味に使った「酒粕」も功を奏
した模様。

まずは、基本を丁寧にじっくりと。
バリエーションはその次でいい。

いい勉強になりました。

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カテゴリの 『連載』 を選ぶと、古い記事から続きモノの物語になります。
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 <目次>      (今回の記事への掲載範囲)
 序 章         掲載済 (1、2)
 第1章 帰還     掲載済 (3、4、5、6、7)
 第2章 陰謀     掲載済 (8、9、10、11)
 第3章 出撃     掲載済 (12、13、14、15、16)
 第4章 錯綜     掲載済 (17、18、19、20)
 第5章 回帰     掲載済 (21、22、23、24)
 第6章 収束     掲載済 (25、26、27、28)
 第7章 決戦      ○  (31:3/6)
 終 章          未
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第7章 《決戦》  (続き 3/6)

 これまでのようである。そもそもこの密使は、王が彼の帰国を引き止めようとすることを想定していたのだろう。あるいは確認していたのか、その態度は毅然としたものであった。王は宰相に目配せし、密使の拘束を指示した。すぐに親衛隊が王室に乱入して密使に手錠をかけたが、それまでもが想定の範囲内だったのか、彼の表情に驚きの色は全く無かった。
「掲げる目標は同じなのだ。ただ、我々には我々のやり方がある。それに気付いただけのことだ。」
王が密使に掛けた最後の言葉だった。
「不忠者め、思い知るがいい。」
それだけ言い残すと、密使はその場に倒れ込んだ。何処かに自殺のカラクリを仕込んでいたのだろう。その死顔は大義に殉職した潔さと強固な意志を現していた。
「親衛隊、死体を片付けろ。」
王は王室に残った宰相に命令した。
「リメス・ジンの行先を変更する。二手に分けで、一方をローマに向かわせろ。」
「ローマを焼いてもよろしいので?」
「止むを得ん。皇帝の動きは思ったより早い。こちらが先手を打つ必要がある。」
「指揮官が足りなくなりますな。」
「予定通り、ケルトには余が行く。ローマ行の部隊は貴公が指揮を執ってくれ。」
「王室を空けると申されるか?」
「我々の不在中は、王国を軍に預ける。」
「ローマへの攻撃部隊こそ陛下が統率されるべきです。ケルト行きの部隊は軍の統帥に任せるのがよろしいでしょう。王室には私が残って国務を代行致します。」
「それも道理よな。しかし、だ。余の親征ではあるが、余が直接ローマに攻め込むよりも、後方で増援を仄めかす方が、より迫力が出せるのだ。そのためには、完全に余の代行が勤まる者がローマ行きの部隊を率いなければならん。」
王の真意を測ろうと宰相の目が鋭く輝いている。勿論、この狸に国政を任せるわけにはいかない、というのが王の本音である。軍の統帥は有能な政治家ではないが、分かり易い性格のため、コントロールもし易いのだ。
「親征は数世代に渡って無かったことです。我々の姿勢を内外に示すため、陛下にご出陣願うわけです。そして、軍の統帥が同行することで、全軍を上げての作戦であるという位置付けまでをも同時に示すのです。」
「貴公の言うことは一般論として理解できるが、実態を考えてみよ。あやつめに実戦部隊を任せることができるか?」
「軍には有能なスタッフがおります。充分に補佐してくれるでしょう。」
「古来より、重要な攻撃軍の総司令官は執政官(コンスル)が努めている。親征の時でさえ、皇帝が執政官をわざわざ兼務したこともある。我々の姿勢や作戦の位置付けを示すためにも、我が国の執政官とも言うべき、宰相の貴公に同行してもらいたいのだ。」
もともとは宰相と軍の統帥を両方とも王室に残して行くことになっていた。王は、統帥をコントロールして宰相を押さえようと考えていたのだ。しかし、部隊を分ける必要が生じた今、どちらかを同行させる必要がある。宰相を残してはならないと王の直感が強烈に訴えかけていた。
「余とともに歴史に名を残す者として、貴公こそが相応しいのだ。」
そこまで言われては宰相も引き下がれない。悪い気もしない。
「いいでしょう。お供させて頂きます。」
「貴公が来てくれることで、今度の作戦は一層磐石となった。」
「ご期待に添えますよう全力を尽くします。」
歴史には『世界都市ローマを焼き払った男』として貴公の悪名が残るのだよ、と心の中で呟いた王は、話題を切り替えた。
「宣戦布告の時間だ。布告後、ただちに出撃する。」

 宣戦布告は、帝国と近隣の国々の隅々にまで届いた。ブリテン国王が敵とするのは、ローマ帝国の正当な後継者であるブリテン王国を侮辱する国々、即ち、帝国を名乗ってローマを占有している国やその庇護の下に生きる全ての国々とそれらの為政者である。布告は全面的な無条件降伏を求めていた。その期限は本日の十七時ちょうど。例え降伏が検討されるとしても、数時間で結論が得られるような問題ではない。つまり、ブリテン王国は十七時に何らかの攻撃を仕掛けるということなのである。
 神聖同盟では同盟国全てが王国への臨戦体制を整えていたので、即座に徹底抗戦と帝国の防衛を担うことを宣言した。
 西ケルトからは、西ケルト国王名義でブリテン王国との同盟が申し出られた。勿論、ケルト公爵が同盟を申し出た相手は王室の連中はなくルナなのだが、未だ誰もそのことには気付きようがなかった。
 帝国の元老院では、主戦派の勢いが益々強まっていた。先方から宣戦布告が出された以上、穏健派と言えども開戦に躊躇しているわけにはいかない。皇帝からは全軍に臨戦体制を敷くべく勅令が下され、神聖同盟には体制整備までの帝国防衛が下知された。
 帝国全域が戦争状態に突入しようとしていた。人々は数千年来無かった事態に右往左往し、何もかもが混乱していった。
 この時皇帝は、ブリテン王室に裏切られたことに怒りを覚えていたが、なぜかその表情は満足そうでもあった。謀略を企てて事を成すのも良いが、直接的に戦争を指揮した皇帝は、歴史書を古代にまで遡らねば出て来ない。やはり自分は歴史に名を成す皇帝として生まれ出たのだという確信が、彼には芽生えていたのだ。
 戦争の被害者は一般の人々である。しかし、彼等の悲劇が歴史に記録されることは無く、記憶の糸が途絶えたところで忘れ去られてしまうのだ。千年来戦争を経験していない帝国の皇帝が、これから起こるであろう数多の悲劇よりも、戦いに勝って凱旋する自分を想像してしまうのは仕方のないことなのだろうか。それは人知の限界か、あるいは属人的な問題か。

 宣戦が布告されるとすぐに、王と宰相はリメス・ジンに搭乗すべく空軍基地に向かった。その道すがら、宰相が解決していない事態への配慮を見せた。
「ルナ殿は何処で何をされているのでしょうな。」
「リモーからの報告によると、ルナ隊に編入した仕官が我々の策略を鋭く見抜いたということだが……。」
「ルナ殿が我々の策略をどこまで知り得たのか、気になります。この作戦が終了したら解明せねばなりますまいな。」
「奴が我々への復讐に燃えているのは間違いない。しかし、一介の軍人に何ができる?」
「正直に申し上げますが、私は彼を恐れております。リモー艦隊に配属した時点で、彼が逃げ果せる可能性は無かったはずです。底知れない強運を感じます。」
「うまくいかないこともある。考え過ぎるでないぞ。」
あれだけ用心深かった王の余りに楽天的な物言いは、宰相に幾らかの猜疑心を植え付けたが、これから大陸侵攻作戦に赴くにあたり、これ以上そのことに彼の思考がとらわれることはなかった。その様子を横目で確認した王は満足げであった。
 王は、ルナをリモー艦隊に派遣する作戦を考えていたあの時には、未だ彼を守ろうと考えていたのだ。ルナを守るために、リモーが宰相派に属すことと、大陸侵攻作戦に何か裏がありそうだ、ということだけを含ませた情報士官を空母に潜り込ませたのは王なのであった。艦内にルナを助ける者が必要だろうと考えたのだ。敢えて女性を送り込んだのも、殺伐とした作戦稼働中にルナの心を癒すためでもあった。抹殺してしまうには、ルナは魅力的に過ぎた。今では、何とも余計なことをしたものだと思う。しかし、ルナが離反し、大陸侵攻作戦が失敗したが故に、皇帝の呪縛から逃れる術を見つけられた。あの作戦が予定通りに進んでしまったとすれば、自分はいつまでも皇帝の駒として使い尽くされたことだろう。あるいは、用済みになった時点で皇帝に消されたかもしれない。結果的にこれで良かったのだ。王はそう考えることにした。とは言え、あの仕官は何としても消し去る必要がある。真相を宰相派の耳に入れさせるわけにはいかないのだ。そのためには宰相が言う通り、ルナの行方を追って、ルナともども抹殺するしかないだろう。あるいはその仕官をルナ抹殺に利用するか。やり方は色々ありそうだ。女であれば尚更である。
「暫くは正念場ぞ。」
王は宰相にそう言い残して自らが座上するリメス・ジンに乗り込んで行った。その言葉を宰相は素直に受け止め、彼も自分の機体に搭乗したのだった。
間も無く、轟音とともに巨大な怪鳥は群れを成して飛び立って行った。

<未だ未だネタはあります。>

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