梅雨の雨の音が激しくなるたびに、お隣の雨樋まで伸びた柊木犀が気になって
いた。「葉が落ちない木だし花はいい香りがするし、大丈夫ですよ」とお隣の方は言ってくれていたが、大きな枝を切ってもらってすっきりした。
神戸の山の麓にある祠の横で、真っ白い花をびっしりつけた銀木犀を見た。
しばらく眺めて観察した。「金木犀のようだけれど花が白い、香りも違う」
と房になって咲いている小さな花の塊を見て、白い花も小さくて可愛い
香りもいい。帰ってさっそく近くの造園屋さんに苗木を植えてもらった。
ところが、暫くして神戸で見たのと葉の形が違うことに気が付いた。銀木犀の
深緑でカーブしたあの葉ではない。図鑑でみると、柊と混じって生まれた柊木犀で、銀木犀ではない。植え替えてもらおうと、当時元気だった母に話すと
柊は魔除けだというし(おお、初めて気が付いた、節分のあの柊か)
同じ花が咲くならこちらがいいのでは、という。
せっかく機嫌よく根付いたらしいし防犯にもいいかもね、とそのまま狭い裏庭の木にした。そして今では、庭の隅ですくすくと育ってあたり一面に枝を伸ばし、花を咲かせ、おまけに珍しく実がたくさん生る。それが落ちでなんと可愛らしい柊型の小さなはっぱを広げていたりする。庭だって裏も表も猫の額で育てるほど広くないし、気が付かないと隅の方で30センチほどに育っていて、君たちごめんよ。といって抜いている。
秋には近所にいい香を撒いて、なんの香りですかいいですねと、褒めてもらうようになった。でも雨音が激しくなって風もきつい日はお隣の樋が気になる。元気に伸びてくる小枝は私が切ってきたが、大きな枝をやっと切ってもらった。ちょっと気の毒で銀木犀だとよかったのにと思っても口には出さない。葉っぱを袋に詰めて、ゴミの日に出し、大きな枝は束ねて粗ゴミに出す。
剪定しなかったので大きく雑然と広がった。
地上は私の仕事。葉っぱをパチンパチンと切る。ここでもう疲れた。
まぁなんということでしょう、枝にひっかけていた物干しの棒の形に曲がっていた。それとなく気を使っていてくれたのね。