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「真珠郎」 横溝正史 角川文庫

2014-12-22 | 読書



これを初めて読んだのは、中学一年生のときだった。横溝正史初読みになったこの本は、何かの折には話題にしたが、いつだったか、角川の「横溝正史フェア」で見かけて立ち読みをした。妖気が漂う耽美的な文章、時代を感じさせる舞台装置や血なまぐさい殺人事件、少し思い出したが読み返す気分ではなかったのでまた次にしようとそのままになっていた。
そのとき展示されていた25冊の殆どは読んでいたし、そのときは、こどものころに受けた珍しい「真珠郎」という題名の衝撃がまだ収まっていなかった。

先日立ち寄った古書店でたまたまこの本を見つけた、古い本独特のにおいと黄色く変色した表紙が懐かしかった。

浅間山の麓の湖際に建つ、妓楼を移築した眺めのよい部屋を借りた二人の大学生が、殺人事件に巻き込まれる。
棲んでいる家族は二人だけだと聞いていたのだが、渡り廊下の先にある蔵に誰かいるらしい。夜湖畔の柳の下に立っている世にも稀な美少年を目撃する。しかし、そういうものはいないと家人が言う。
そして第一の殺人が起きる、湖の水が流れ入る洞窟で「真珠郎」名づけられた少年が返り血を浴びて、船の上で奇怪な笑い声を響かせていた。
舞台は東京に移り、また殺人事件が起きる。真珠郎が目撃されていたが、その後姿はかき消したように跡形もなく消え、事件が起きるたびに目撃される。

主人は「真珠郎」を生まれたときから蔵の中で育てた、望みどおり怪奇な殺人者に成長し、鎖を破って逃走する。その後に起きる事件が、複雑な彼の生い立ちとともに周りの人々の思惑が絡んで、話は陰惨な場面が続く。


このときはまだ金田一探偵は書かれていない。探偵役が出てきて、絡んだ糸を簡単にほぐしてしまう。
不気味な雰囲気は、当時子供だっただけに心に焼きついたものの、恐怖譚や妖しい物の怪話など嫌いではなかった。改めて読み返すと、表現や言葉遣いに時代を感じるものの、ミステリとしても面白く、読み終わって思い出す場面も多かった。

横溝正史のものでは「本陣殺人事件」が一番。仕掛けの面白さに驚いた。映画化された有名作品もいいが短編中篇の魅力が今読み返しても薄れていない。




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