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「北の狩人」 上下 大沢在昌 幻冬社文庫

2014-10-27 | 読書
  



久し振りに大沢さんを読んだ。「鮫」シリーズを読んだのが随分前で、新しいシリーズがあるのを知らなかった。最近雑用が増えて読書に使う時間が少なくなった。それでも手に本がないと淋しい、余り考えない面白くて読みやすい、どこでも読み始められるこの本にした。


やはり新宿が舞台になっている。今回も警察と新宿に根を張る暴力団との争いに絡んだ人たちの話。これは以前「鮫」の構図と同じ様に感じられる。
ただ今回は殉職した父親の死の原因を調べる息子(梶雪人)と、それに関わる刑事、後援者、暴力団組員が利害の枠内で命がけで争う。

秋田で発生した殺人事件で警官の父親は同僚と二人で犯人を護送するが新宿で殺害され、護送警官の一人、梶の父は死体で発見される。
だがもう一人の警官は行方が知れなかった。同じように殺害されたと言うことで解決していた。

この事件のキーワードが山草の「春蘭」と可愛らしい。どこにでもある花だが、たまに見つかる変種は好事家のあいだでは莫大な値で取引されていた。
新宿を拠点とする暴力団、田代組はこの事件に関わって組長が殺されて潰れ、構成員だった団員は、他の大きな組の傘下に入りそこでのし上がろうとしていた。

また秋田にいる梶の祖父はまたぎであった、だが山は痩せ猟ができる機会も減ってきていた。そこで息子を警官にしたが事件に巻き込まれて死亡し、その息子の梶は祖父に育てられ、やはり警官になった。

祖父から自然の節理や自然とともに生きていく智恵を授かり、またぎの暮らしの中で身体を鍛え、警官になったチャンスを生かして父親の真相を調べに上京するところから話が始まる。

新宿に来て父の事件を調べる梶が巡査だと言うことを知り、新宿書の刑事佐江が協力する。祖父の釣り仲間は財力が会って梶を保護する。
また、かって田代組の組員で組長の死に不信感を持っていた男も。関わってくる。

大まかな始まりはこういうところで、梶が暴力団の勢力争いに巻き込まれ、そばにいた一匹狼の冷徹な男に絡んだ贋札作り、中国マフィアと話が広がる。
ただ「春蘭」から始まった警官殺しから、息子が真相にたどり着くという一本のメインストーリーがあって、サブストーリーは単純なものになっている。

フロストを思わせる太めで生活観のない佐江という刑事が新しいシリーズの根回しをするようだ。
今回で解決した梶巡査は、新宿で知り合った少女を連れて秋田に帰り。
また新しい話では別の人物が話に加わってくると言う形になって、シリーズ化されている。

比べるのもおかしいかもしれないが、「鮫」を読んだ印象からすれば、主人公も作者の苦心の跡が見えるが、全体に読みやすく薄味。

次の「黒の狩人」は評価がいいらしいが、「鮫」を読み通した以前の読者はどのくらいいるだろう。「毒猿」をしのぐと言う意見だけは信じて、また機会があれば読んでみたい。





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