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「ガラスのなかの少女」 ジェフリー・フォード 田中一江訳 ハヤカワ文庫

2011-02-16 | 読書
蝶を飼っているいんちき霊媒師、幻惑的筆致。
「アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作」
と言うので、ブラッドベリ好きはフラッと来た。「何かが道をやってくる」のかけらでも落ちていないかと期待して読んだ。

話はその霊媒仲間だった少年が80歳を超えてから話す思い出で、67年前彼が17歳のときの出来事だ。
彼ディエゴはメキシコ移民の孤児だったが、今はいんちき霊媒師で詐欺を働くシェルに引き取られて、交霊会の助手をしている。
もう一人の仲間は大男で、大道芸をしていたのだがボディーガード兼運転手になり、これも詐欺の手助けをしている、アントニー・クレオパトラというふざけた名前が気に入っている。

土地の名士の娘が行方不明になり、霊を呼び出して交霊詐欺は成功するが、そのときガラス窓に少女の姿が映ったのを、シェルが見る。

三人はその少女を探し始める。

霊媒師だという謎の美女も加わって、死体を見つけるが。

一方土地の富豪に取り入って、得意先を増やそうとしていた矢先、使用人も含めて全員が惨殺される。

下働きのメキシコ人の少女が一人生き残っていた。
シェルは自宅に彼女を保護し、ディエゴは一目で恋をする。

禁酒時代だったので、背景に酒の密輸組織がいるような、KKKの地下組織が生きているような、とさまざまな情報を得るが決め手ではなかった。

シェルの昔仲間、芸人や、見世物になっていた怪しげな人たちに助けられて、話が進んでいく。

異形の怪物に襲われたり、危険な罠が待ち構えていたりする。

屋敷に愛蝶室を作って育てているシェルというリーダーが複雑で、繊細で、心の動きに敏感で、この詐欺を成功させているのだが。

変化に富んだストーリー運びはおもしろい。ただシェルがつかまるあたりから、あのギャンブラーでマジックの天才がなぜ、と少しトーンダウンするのが惜しい。

いい終わり方で読後感も暖かいが。散漫なところも感じられるのが残念。

読んで損はしない。
でもほんの少しブラッドベリを期待したが外れた。

★★★3

読書 
 
23作目

24作目 「盗まれた貴婦人」
     2010年刊 この年ロバート・B・パーカーが77歳でなくなった。記念碑的作品。
     ファンでなくても読んでおこうと思う作品。

     オランダの画家のたった一枚残っている作品の「貴婦人と小鳥」の絵を巡って起こる事件を、
     お馴染、私立探偵スペンサーが追っていく。 読みやすく面白く機智に富んだ会話が弾む。

     ★★★3つ、ファンに叱られるかもしれないけど。


コメント
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