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党内の事情。
この党自身が、政権交代による本格的政権をと訴えているようですから、自民党にとってかわるつもりです。そのためには、自民党を支えてきた階層の支持を奪い取るだけでなく、従前の民主党支持層をもひきつけて置くこと、さらには別のエントリーでみたように共産党支持に流れる左派支持層部分も民主党に回収してしまうこと―が必要になってきます。
これらはもともと右と左の、斥力で互いに反発する性質のはずですが、肝心の問題を先送りすることで、選挙前の今の局面を民主党が乗り切ろうとしているように思えます。この矛盾を、もちろん解決しようともおそらく思っていないし、解決はしえない。端的にいえば、大企業の歓心も買わないといけないし、少なくとも改憲を良しとしない勢力をもつなぎとめておく、これが「政権交代」のための必要条件でなくてはならない。
直嶋正行は「外交は政権取って直面しないとわからないことがたくさんある」などとワケの分からぬことを平気でのべています。まあ、自らの政調会長としての役割を完全に忘れているようです。「政権取って直面しないと」なんて、これこそ政権交代至上主義的な言葉の典型です。
ましてや党内には、平和・憲法をめぐって、いやその他の分野でも同様に、いくつかの潮流があるわけですから。したがって、民主党にとって、問題先送りとは、党内の分裂を駆動しかねない個別の問題での亀裂を、選挙前に拡大せず、封印するための唯一の選択肢なのかもしれません。だから同時に、先送りは、そもそも政党再編を一方ではにらんだものであるともいえそうです。
民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)で示す外交・安保政策がわかった。小沢代表の3原則をもとに「強固で対等な日米同盟」と「国連平和活動への積極参加」を打ち出している。ただ、自衛隊の海外派遣の原則も示さないなど、あいまいにしている点も多く、政権交代後に課題を先送りした。 日米同盟は「日本外交の基礎」とし、「米国と役割を分担し責任を積極的に果たす」と記したが、役割分担の中身には踏み込まなかった。日本の安全保障に深くかかわる事態にとどめるのか、世界各地の「テロとの戦い」まで含むのかは不明確なままだ。 国連との関係では「国連平和活動(PKOなど)への積極参加」もうたうが、06年の「政権政策の基本方針」で示した「国連憲章42条によるものも含めて」という表現は盛り込まなかった。42条は安保理決議に基づく武力行使を認めており、参加には憲法改正か憲法解釈変更が必要。党内には消極論もあり、政権担当時の対応を詰め切れていないためだ。 自衛隊海外派遣の原則については、小沢代表は「明確な国連決議」が必要としているが、マニフェストでは明示していない。インド洋での補給支援活動に反対する理由では明確な決議がないことは持ち出さず、政府による効果検証と説明不足のみを挙げた。 米国の期待が強いアフガニスタン支援では、民主党が提出して審議中のテロ根絶法案を踏まえて対応するとした。自衛隊の陸上派遣を人道復興支援に限り認める内容だが、現時点では想定しにくい「抗争停止合意」が前提で、1年の時限立法。基本原則を示すものとみるのは難しい。 政権公約にあいまいな点が多いことについて、直嶋正行政調会長は「外交は政権取って直面しないとわからないことがたくさんある」と説明。テロ根絶法案には安全保障に関する「基本法整備」を速やかに行うと記しており、政権獲得後に詰めることになる。 |
さて、米国が北朝鮮のテロ支援国家の指定解除を決めました。
「拉致被害者の会」の幹部がこの米国の態度決定に反発するのは、これまでの彼らの言動から当然、予測されたことですが、自民党をはじめ右派勢力にも少なからぬ波紋を投げかけています。
その1。
「米政府の点数稼ぎ」と批判=北テロ指定解除で-平沼氏
拉致議連の会長ですから、当然といえば当然の反応です。
「米国の決めたことを唯々諾々と聞かざるを得ないという雰囲気がある。政府は言うべきことをしっかりと言っていかないといけない」と平沼赳夫は語ったようです。閣外にいる人物だからこその発言といえましょうが、ただ「雰囲気がある」という表現にむしろ、仮に執行部にいれば自分も「唯々諾々と聞く」といわんばかりのものを感じます。
その2。
「日本の政権だらしないから」=北テロ指定解除で-民主・鳩山幹事長
民主党の鳩山由紀夫曰く。
「1年に2度も首相が代わるから、日米同盟を命のように思っていても米国から袖にされる。政権がだらしないからだ」。
これも閣外にいる平沼氏と同じスタンスの発言なのかもしれません。
しかし、「命のように思っていても」いなくても、日米同盟は関係の対称性を規定するものではありません。日本国は米国に従属する関係にすぎません。日米同盟を民主党もまたうたい強調しているわけですから、自民・民主のちがいはない。
対等平等の関係構築を民主党がほんとうにめざすのであれば、現日米同盟はいった破棄し、両国の友好条約の締結をめざすべきだと私は思います。
その3。
拉致置き去りを否定=米の北テロ指定解除「1つの方法」-麻生首相
先の国連で、米国への忠誠を高々と宣誓してきた麻生氏です。従順です。逆に、彼が閣外にいたら、どんな反応を示しただろうかと、想像もします。この点では、米国の態度決定に従い、それをそのまま受け入れることを一国の首相が表明したにすぎない発言ですが、そこに外交における主体性のなさ、米国の顔色一つで日本国の態度もまた決定するという、従来の政権のとってきた態度を一歩も出ていないともいえます。
対北朝鮮外交もまた、このように米国いいなりで動いてきたのではないでしょうか。
今回の事態がブッシュの思惑が働いた結果であるにせよ、解決の展望すらみえないまま、これまで「被害者の会」という一つの任意団体と同じようにブルーリボンを胸につけてはばからない閣僚たちに象徴的なように、拉致問題をイデオロギー的結集のアイテムとして最大限活用してきた自民党の路線に、破綻に近いものを私は感じます。
ただし、いうまでもなくテロ支援国の指定解除は、それ自体、昨年10月の6カ国協議の合意にもとづく、朝鮮半島の非核化への可能性をもつでしょうし、これを機に北朝鮮の核兵器の完全放棄につなげる国際的世論の高まりがいよいよ必要となるのではないでしょうか。
拉致問題を理由に6カ国協議で合意した対北支援への参加を見送ってきた日本政府には、日本に合意の履行を求める他の協議参加国からの声に応えていくことが求められているのは当然です。
(「世相を拾う」08203)
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