今日もミューズが微笑んで

歌うように暮らしたい。アートの道探しを楽しむJasmineのきままな日々。

ラインマン オペラ「リア」

2013-11-10 | いろんな舞台鑑賞ノォト

ラインマンのオペラ「リア」見てきました。
拍感があるんだかないんだか、テンポが揺れるというよりあるのか?とか歌うというより叫んでる?
歌手の皆さんはどうやって覚えたのか想像がつかないオペラでした。
リアというタイトル、リア王を題材にした創作オペラと勝手に思っていて、本番数日前に紹介されたBキャストの高田正人さんブログでやっと内容を理解したわたし´-∀-`;)。
あまりにも勉強不足を反省して、日生のサイトを見ると開演前にこのオペラの作曲者ラインマン氏のプレトークがあるというので、今日はそれを聞いて臨みました。


フィッシャー=ディースカウのために作られた作品だそうですが、オペラというより演劇に近かったかなー。
いや、歌詞(セリフ)は物語りを説明するために原作から引用にしてるに過ぎないようにも思えました。
演出もモダンがといえばモダンなのだろうけど、装置を象徴的に使ってはいましたが、いわゆるコンビチュニーみたいなモダンとは違います。とってもシンプル。栗山民也さんの演出です。


で、歌、というよりセリフについてる音楽・・・とオケが登場人物の心情を語ってくれてる感じで、それはもうこれでもかってほどドロドロ・・・
ドロドロ過ぎて言葉にならないから音楽・・・なんでしょう。
ラインマンさんによれば、一人の人間としてのリアを描くという意味でリア王でなく「リア 」としたのだとか。 
このオペラはリアが財産分与について自分への愛を試すように問いかけるところからスタート。財産欲しさに美辞麗句を並べる2人の姉妹の言葉を信じ本当は一番愛情を持っていたはずの末娘の心の声を聴けなかったことから悲劇は始まるわけですが、こんなことって私たちの日常にもあることではないでしょうか。どこかで軌道修正はできなかったものなのか。できずに坂を転がり落ちての結末・・・
肩書きをはずした一人の人間が踏み外してあらわになる「負」の部分をここまで大きく描くというのは、いやはや大変なこと。究極のヴェリズモとも言えるのか。
そして人として生きることを真剣に考えさせられました。

 

大変なオペラの各登場人物を歌い演じた歌手の皆様、だれもが素晴らしかったです。
最初は不協和音のようなオケに「そっか、現代ものだもんね」と自分に言い聞かせていましたが、でも、結構受け入れていた自分がいました。 

さて歌手の皆様。

コーディリアは私と同じ声種ですね。もちろん私にはゼッタイ歌えませんが。透明感のある声が役にピッタリ。
裕福で威厳のある王の冒頭の音楽はアカペラ。そして転がり落ちて哀れな老人と化していく姿を演じきった小森さんも素晴らしかった。最後、コーディリアをひきずるようにして歩き回る姿を見たときには、あまりにつらくて涙が出てきました。オペラを見て泣いたのは初めてです。

1幕ではほとんど歌わず(しゃべらず)その役どころを表現したオルバニー公の宮本さん。ラインマンオペラは2回目ということもあって余裕だったのかなー。そして演劇系?オペラで鍛えられているだけあって、わずかな表情の変化や仕草を音楽の中で見せるのはさすが!


そして師匠演じるリーガンの狂気、ゾクっとしました。ネッダなんかもそうでしたが、激しい感情表現は日頃の伯爵夫人系の美しい役のイメージと180度変わることでまた狂気な雰囲気が拡大して見えたのかもしれませんが。目玉くり抜くんですよ~~あの美しい師匠が・・・じゃなくてリーガンとそのダンナ、高橋淳さん演じるコーンウォール公。あり得ない残虐さ。後ろ向きになっていたけど向こう側に鏡があるという演出で残虐ぶりをさらに拡大。。。はぁ~タメ息・・・
イタリアオペラならリリコの役どころだけど、ジェットコースターのようなコロラトゥーラで見事な狂気な女ぶり。
 

エドガー役のカンターテノールの藤木さん、かつて私たちのイドメネオにイダマンテ役で出演していただいたのですが、カウンターテノールに転向して美しいまるでソプラノのような声、そしてその声でトムとの2役を演じ分け、プラス抜群の演技力。お見事でした。

 

全員のことを書けなくてすみません。とりあえずなんらかのつながりある方のみ・・・ 
だって、このオペラに興味があったというよりは、つながりのある方が出ているから見に行くことにしたというのが 正直なところで、ご縁がなければ観ていませんでした。たぶん。 


あまりにもすごいオペラでBキャストも見たかったとは言えないのですが(これを2日続けて見るのは結構シンドイということ) 、この役を昨日はあの方がやったのね、などと頭の中でB組の方を思い浮かべながらも見ました。
きっと素晴らしかったことでしょう。だからB組の分も拍手してきました。 

皆さん確かな実力の持ち主であり、舞台のクォリティは 評価されるものだったと確信しています。

手ブレしてますが写真で雰囲気だけ。ラインマン氏のプレトークと席から見たオケ。

オケピは弦楽器のみ48人でいっぱいになり、日生の舞台を正面から見たときの額縁型の装飾をはずし舞台上手に金管、下手が木管(未確認ですがたぶん)。
やや下手寄りでしたが、2F席の3列目だったのでよーく見えました。
オケもすごかったですよ。Vlも刻みばっかり?とかCbは打楽器?弦は、1日弾いたら弓がボロボロになって毛替えしないとダメなんじゃないかと思うくらい、力強い演奏。金管は奇声あげてるような・・・ 楽器のいつもと違う声の発し方は、もはやメロディの音楽では表せないドロドロ感情ってことなんでしょうね。
下野さんの指揮は、見ていれば拍を見失うことはないだろうと思うほどとても明確で、拍感があるのかないのかわからずに音楽が流れていく中に、確実に拍を送り込んでいました。3,2,1とか指で出しているのもよく見えました。あの音楽をまとめられる指揮者もすごい。

 

そして何度も書くけど歌手もオケも、どうやって練習したのだろう・・・・ これを成し遂げた皆様、本当に素晴らしいと思います。
オペラ終わって今夜はうなされなるんじゃないかと余計なことを考えながら家路につきました。 
 

かなり衝撃的なオペラでしたが、原作が名作ということもあって、メッセージは明確に伝わってきてました。
でもまた見たいかと聞かれたら、ちょっと微妙。見終わったときの爽快感というより疲労感が残ったのは初めてかも。
それは、現代音楽でつまらないとかそういうことではなくて、人間誰もがもつ闇の部分を直視し続けなくてはいけなかったのが苦しかったのではないかと今になって思います。つまりは見事な舞台だったってことです。 
またプログラムを読み返して、そのシーンどうだっけ?なんんて思うところはあるので、もしかしたら時間が経てばまた見たいと思うかもしれないかな。でも、今はやっぱりいい(´-∀-`;)

再演されたら、演劇の人とかオケの人にぜひ見ていただきたいですね! あと、シェイクスピアが好きな人にも。

みなさまお疲れ様でした。 

 

写真、手ブレしてますが、イメージの参考にのっけときます。

 作曲者ラインマン氏のプレ・トーク。ドイツ語で通訳がつきました。

 

 

蛇足ですが言葉を聞き取ろうと必死で耳を傾けましたが、聞こえてくるのは、undとかnichtとか、どうでもいい単語ばかりでしたwww でも、しゃべるときのドイツ語って、そんなに子音を立てるって感じがしなくて、結構なめらかだった。なにしろ、歌でしか聞いてないですからね、ドイツ語。少しドイツ語のイメージが変わりました。

 

オケの様子。読売日響。指揮は下野竜也さん。
舞台上か上手が金管セクション。下手が木管セクション。 プロンプも見えます。でも、あんなに遠くて聞こえるのか・・・

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