セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「SANJU/サンジュ」

2019-06-17 00:31:27 | 映画感想
 「SANJU/サンジュ」(「Sanju」、2018年、印)
   監督 ラージクマール・ヒラニ
   脚本 ラージクマール・ヒラニ  アビシャート・ジョーシー
   撮影
   音楽 A・R・ラクマーン  アトゥル・ラニンガ  サンジャイ・ワンドレーカル
   出演 ランビール・カプール
      アヌシュカ・シャルマ
      パレーシュ・ラワール  ヴィッキー・コウシャル
      ソーナム・カプール  ボーマン・イラニ
      (サンジャイ・ダット)
    ※急に上映を決めたのかバンフレット無いし、ネットの日本語版でも撮影者が解らない状態。

 銃器不法所持の刑で6年の実刑が最高裁で確定したインドのスター サンジャイ・ダット。
 彼は世に出回る、誇張された暴露本に悩んでいた、家族の名誉の為、本当の事を書いてもらおうと著名な女性ライターに自伝の執筆を依頼する、真実を話す条件で。

  予告編 https://www.youtube.com/watch?v=qaSNBhdtxco

 日本で公開されたヒラニ監督の作品は、喜怒哀楽を詰め込みながらもテーマは明確でした。
 「学ぶ事の意味」をテーマにした「きっと、うまくいく」
 「宗教を題材に盲信の危うさ」を訴えた「PK」
 「マスコミの偽善性」をテーマにしようとしたのだと思う本作、だけど、前2作ほど上手くいってない気がします。

 監督はテーマを、実在のスター サンジャイ・ダットの半生を描く事で表現しようとしたのだけど、結果として2時間使って描いたサンジャイ(サンジュ)の伝記部分のウェイトが重すぎで、残り40分では肝心のテーマが伝記部分に押し潰され、サンジュの不幸を見るのかマスコミの「真実より売れる」の欺瞞を見るのかを明確にし切れなかった。
 サンジャイ・ダットというインドでも特異なスターは、日本でいえば勝新太郎に近い。有名監督で下院議員となった父、母は大スターというサラブレッド、七光りで主演しスター街道に足を掛けるが偉大な両親の存在が負担となり酒に逃げ、ヤク中から廃人手前まで突き進んでしまう。施設に入り更生するも自分と家族を守る為、秘密に所持した自動ライフル銃の出元が大テロ事件に使われた銃器と同じだった為、テロ幇助罪で服役、結局、テロ幇助罪は無罪になるも「親の七光り」とされテロリストの汚名が付いて回る、おまけに闇社会(インドの893)の付き合いもある。
 実にテーマを浮き出す材料として最適なんだけど、そこが落とし穴だったんじゃないかな。又、監督とサンジュの関係が近すぎたのもバランスが崩れる遠因のような気がしてしまう。(監督の初作品の主演がサンジュで幾つもの賞を取り、サンジュも再浮上する切っ掛けとなったとか)
 実在の人物を使った為(それも現役の)、どうしても現実に縛られ今までのように飛躍が出来ない、モデルのサンジュ自身、親の名声に潰されるのを、自分の心の弱さと言い訳してるけど、酒とクスリは言い訳どうりとしても、女癖は単にだらしないだけのクズで、しかもお金持ちだからシンパシーを抱きにくい。
 確かにその分、庶民の想像外の苦労を生まれながらに背負い込むし、父母、妹、子供達に汚名を着せる事のプレッシャーは如何許りかなんだけど。
 普通の人間がマスコミの利益の為、人生を狂わされるというのは在り来たりで確かにインパクトに欠ける、だからと言って、だらしないスターを代わりにしてもね、という感じ。大概のスターさんは上手く立ち回ってる訳で。(もう一つ、その役をボリウッド一番のプレイボーイと噂されるランビールに演じさせるってのも悪趣味に感じた。監督、「PK」の償いだったのかな、まぁ。お気に入りなんでしょうが。上手い役者は間違いない〜個人的にディピカに手を出したのが許せんのかも(結局そこか(笑))
 
 「きっと、うまくいく」、「PK」のように明るい作品ではないけど監督の腕でそれなりに面白い作品に仕上がってはいます、只、それ以上には感じませんでした。

※アヌシュカ・シャルマとソーナム・カプールの無駄使い、別に彼女たちビックネームでなくても務まる、特にソーナムの使い方、酷い!出番ちょこっとだし(泣)。彼女、内藤洋子(古い)を陽性にした感じでインドでは珍しく可愛い顔立ち(インド女優ですから美人はデフォ)ヒラニ監督も三谷幸喜になってきたのかな。
※エンドロールで唄う歌、サンジャイ本人とランビールが演じてるのですが、なんの事はない、この5分くらいの歌でテーマは語られてる、何の為の159分だったんだろう。
※ランビール・カプール 三大カーンの次の(次)世代のトップスター。カリシュマ、カリーナ(「きっと、うまくいく」、「バジュランギ」)姉妹の従兄弟と聞いた事がある。

 R1.6.15
 新宿武蔵野館

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